日本語練習帳 (岩波新書 新赤版 596)

著者 :
  • 岩波書店
3.49
  • (88)
  • (169)
  • (341)
  • (25)
  • (5)
本棚登録 : 2867
感想 : 190
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305965

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大抵の日本人は日本語を普通に話せるけれど、正確に使いこなせているかはまた別の話。
    よりよく日本語の読み書きができるようになるための、日本語トレーニングの手順本。

    練習帳とタイトルにあるように、途中ドリル的な問題が出題され、最後に得点計算もできる。

    「思う」と「考える」。
    「通る」と「通じる」。
    「意味」と「意義」。

    正しい使い方は感覚的にわかるのに、違いや定義を説明しろと言われると、意外と難しいもの。
    問題ごとに立ち止まって、きちんと自分の言葉でまとめようとする。
    考えさせられる本だった。

    一般的な学校文法とは違った、筆者独自の切り口もあった。

  • 水泳ができるようになるためには、練習が必要であるように、文章についても、初心者である方にも日本語の練習が必要である。そのための『日本語の練習帳』を用意したとのことです。

    気になったことは以下です。

    単語に敏感になる

    ・考えるとは、理性的な働きで、思うとは感情的なものである

    ・思い込むとは、一つの考えを心にもったときに、それ1つを固く信じて他の考えをもてないこと
     考えこむとは、問題に関わって、あれこれとしきりに考えをめぐらして止まらないこと

    似たような言葉をならべると微妙にニュアンスが違う。それを知るには、辞書をたくさん引いてその単語を調べること。

    助詞の使い方 「は」と「が」の使い方、どう違うのか。

     日本語文法のアプローチ。そもそも「文法が必要なのは、知らない言葉(言語)を学ぶとき」

     文章は長いより短くする 区切るとセンテンスが明確となり、言葉が鮮明となる

    文章をわかりやすくするコツ
     ① 「のである」「のだ」を消せ
     ② 「が、」を使うな

    縮約と要約の違い
     各段落ごとに要点をまとめてそれをひとまとめにするが、縮約
     文章全体の骨格と論旨、要件を集約してまとめるのが、要約

     大事なのは、わからない言葉があったら、辞書などをつかって調べておくこと

    文を書く上での要旨は、メモとしてまとめることができる。文を書くためには
     ① 頭にある事項を思いつくままにばらばらにメモに書きつけてみる
     ② それをできるだけ細かく書く。雑多な項目を眺めて、どれを最初に次に何をと、見定め、項目に番号を振っていく
     ③ その途中で、ある項目についての準備不足、知識不足、考察不足が見えてくる。その内容をもとに不足な材料を集める、調べる、考える
     ④ 書き上げた内容のまずいところを修正する。つぎに、自分の内容の要点を項目として、順に書きあげて並べてみる。すると順序が逆になっている、錯綜してることに気づく。それを整える

    文章を書くにあたって、求める限り、短く、細かく小分けに分割する


    目次

    まえがき

    Ⅰ 単語に敏感になろう
    Ⅱ 文法なんか嫌い 役に立つか
    Ⅲ 二つの心得
    Ⅳ 文章の骨格
    Ⅴ 敬語の基本

    配点表
    あとがき

    ISBN:9784004305965
    出版社:岩波書店
    判型:新書
    ページ数:215ページ
    定価:780円(本体)
    発行年月日:
    1999年01月20日第1刷発行
    2018年06月15日第62刷発行

  • #3225ー48

  • 皆さんは「思う」と「考える」の違いを説明できるだろうか。「通る」と「通じる」、「嬉しい」と「喜ばしい」の意味を正しく理解して使い分けているだろうか。「大丈夫」の使い方を間違えてはいないだろうか。
    私達は日本語で本や雑誌を読み、文章を書いている。コミュニケーションをとるのもほとんどの場合は日本語だ。それでも日本語を完璧に使いこなしていると自信を持って言える人は恐らくいないと思う。日常生活に支障はなくても、例えば参考図書として色々な本を読むときは、込み入った文章をもっと容易に理解できるようになりたいと感じるだろうし、レポートを書くときは、適切な表現を使ってもっと良い文章を書けるようになりたいと思うだろう。そんな学生や社会人のために書かれたのがこの『日本語練習帳』だ。練習帳なので、問題があり解答と解説が示され、自分の解答に点数も付けられる。繰り返し解いているうちに、読み書きをする上での考え方や技が身に着き、日本語の特質もわかってくるように工夫されている。
    著者は『岩波古語辞典』などの編纂も手掛けた国語学者で、日本語について多くの本を著している。その中の1冊である本書は1999年に出版され、190万部を超える大ベストセラーとなり日本語ブームのきっかけをつくったものだ
    単語の形と意味に敏感になる事、文法を理解すること、文章の骨格を見極めて要旨をつかむこと、敬語や謙譲語の成り立ちを知って適切に使う事などが日本語の基礎となる。
    日本語文法で大切なことのひとつが「ハ」と「ガ」についての理解だ。「私は大野です」と「私が大野です」、「花は咲いていた」と「花が咲いていた」など、意味の違いをうまく説明できなくてモヤモヤしていた「ハ」と「ガ」について、著者はその文法的な役割を解説し意味の違いを明確に論じている。まさに目から鱗が落ちる思いだ。
    文章の骨格をつかむ練習のために、1400字で書かれた新聞の社説を、論旨を損なうことなく400字に縮約し、更に200字に要約して見せた解答例は見事で、著者の文章に対する鋭い感覚と巧みな技には敬服せざるを得ない。本書は日本語の豊かさとそれを深く学ぶことの楽しさを教えてくれる。
    骨董の目利きになるためには、まず一流品を見続けなければならないのと同様に、日本語の優れた使い手になりたいと思うのなら、言葉に対してセンスが鋭い優れた小説家、劇作家、詩人、歌人、学者の作品や文章を数多く読んで文脈ごと言葉を覚えるのが良いというのが著者のアドヴァイスだ。多くの優れた文章に触れれば語彙も豊富になり、日本語を使いこなす力も上がるだろう。言葉に対して鋭い感覚を持ち、深く文章を理解し、良い文章を書き、正しい言葉づかいで話すという能力は、これから大学で学び社会に出ていく皆さんにとって大きな強みとなるはずだ。

  • この本は、語の意味の中心を的確に把握し、それを表現するための方法論である。

    著者は『岩波古語辞典』の制作に長く携わってきた。これは言葉(や概念)の中心的な意味をひらすら掘り下げ、掴み取った単語の特徴を文章で説明する仕事に従事していたと言う意味である。
    そんな経験から打ち出された文章によって次々と、今まで感じていたモヤモヤを言語化し思考をクリアにしてくれた。
    言葉に対して敏感になるために日本語と向き合ってきたからこそ、本質を掴み平明に表現できるのだろう。

    必要な状況に応じて、ぴったりな言葉を選び取り表現する。本書はその訓練の方向性を確かなものにした。

  • 日本人なら日本語を話す(書く)ことができると思いますが(大坂なおみのように日本人でありながら海外生活が長く英語の方が堪能なケースもありますが)、日本語を使いこなすことができる人はどれだけいるでしょうか。

    例えば、「はっきりとした」を意味する言葉として「明白な」「明確な」「明晰な」「鮮明な」などがあります。

    文脈によって的確な言葉を使うことで、「はっきりとした」では表しきれない、奥深さを伝えることができます。

    本書は、このような事例を交えながら、日本語の奥深さ、表現の豊さを説くなど、参考になる箇所満載です。

  •  何の番組かは忘れたが、テレビのバラエティ番組でかつてのベストセラーとして紹介されていた。ずいぶん前に出版されていたのに知らずにいた。最近の自分の趣味に合ったので読んでみることにした。ただ読ませるだけでなく、タイトル通り練習問題を多用し解説しているので、最後までとても興味深く読み進めることができた。

     また学生のトレーニングとして読書感想文ではなく、既存の文章の縮約訓練を推奨している。著者が言うように読書感想文にあまり訓練効果が無いなら、これまで世の国語学者たちは何をしていたのかと言われても仕方がないだろう。これは早急に結論を見いだし、教育現場に反映させるべきではないのか。

     中でも面白いと思ったのは敬語の使い方だ。一般に敬語については、それだけでひとまとめの本になっているようだが、このように国語の解説の一部として取り上げでいるのはあまりなさそうだ。その中で太宰の「斜陽」に使われている敬語を批判している。確かに「斜陽」の敬語にはずいぶん違和感を持った。太田静子の日記を丸写ししたからそんな表現になったらしいが、そもそも太宰は津軽弁ばかりしゃべっていだろうから、正しい敬語や標準語など解らなかったのではないだろうか。

     志賀直哉が戦後の国語改革にあたり、日本語を廃してフランス語なり先進外国語を採用すべきと主張していたとは驚いた。そんなことにならずに良かった。いかに愚かなことか隣国を見ればわかる。漢字を廃してハングルのみにした半島の人々は、自分たちの古典さえ読めなくなってしまったという。わが国の国語も危うくローマ字や英語などにされるところを回避して本当に良かったと思う。

  • 時折ヤフコメを目にする機会があるが、漢字の誤りは当たり前、用語の選択が間違っていたり、論理が破綻していたりするコメントが非常に多く、国語力の低下に驚くことがある。いや、これは低下ではない。ネット以前の社会ではプロの書く文章しか目に入らなかったが、いまや誰でも自分の文章を公開できるようになって、市井の人たちの文章を目にする機会が史上初めて出現したことが真相だろう。匿名とは言え、よく恥ずかしくもなく投稿できるなと感心する(この駄文を書いてるお前が言うな、と言うのは無しで。。。)。
    一方でブクログのレビューにはヤフコメのようなひどいものは少ない。やはり読書量と表現力は比例するんだな、と実感した次第。

  • 日本語は難しい。
    毎日使ってるけど、間違うこともたくさんある。
    日本語の使い方を学ぶため、非常に良い本であった。

  • 日本語の難しさ、奥深さがひしひしと感じられる。また、自身の国語力の低さも痛感させられる。

全190件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1919-2008年。東京生まれ。国語学者。著書に『日本語の起源 新版』『日本語練習帳』『日本語と私』『日本語の年輪』『係り結びの研究』『日本語の形成』他。編著に『岩波古語辞典』『古典基礎語辞典』他。

「2015年 『日本語と私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大野晋の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×