愛すべき名歌たち: 私的歌謡曲史 (岩波新書 新赤版 625)

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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306252

作品紹介・あらすじ

戦後を生きる人々の心を揺さぶり、時代の夢と息づかいを表現した数々の名歌たち。作詞家・作家として活躍する著者が「湖畔の宿」から「川の流れのように」まで、自分史をまじえつつ、時代を画した100曲の歌物語を語りだす。

感想・レビュー・書評

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  • 「やるな!小僧」

    2007年のNHK「通(つう)」というバラエティー番組の中で、作詞家阿久悠が俳優半田健人に対して放った言葉である。ヘッドフォン越しに歌謡曲を聴く半田にダメ出していた阿久氏は、半田の玄人もどきの歌謡曲の捉え方に接すると、前言を撤回し、「同志」的目線で番組を進行していく。

    「ザ・ベストテン」を始めとした歌番組を見て育った私は、「レコード大賞」「スタ誕」でお馴染みの阿久氏をこの番組で久しぶりにみたが、懐かしさと同時に、かなり老けたという印象を抱いた。(実際にこの放送直後に阿久氏は亡くなっている。)

    その阿久氏が、亡くなる8年前に自身の曲を含む100曲の昭和歌謡の解説を1曲につき2、3頁にまとめたのがこの本である。肝心の中身は、歌謡曲の解説を絡めた阿久氏の昭和自叙伝であり、中でも、岩崎宏美の「思秋期」、ピンク・レディーの「サウスポー」、ダウンタウンブギウギバンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のエピソードは、もっと頁数を割いてほしいほどの濃い内容となっている。

    最近、筒美京平氏の死去の報に接し、「昭和」という時代がさらに過去となったと感じる一方で、一部の若い人たちの間で、昭和歌謡というジャンルが見直されているらしい。その背景は分からないが、私みたいな昭和歌謡のファンが世代を越えて増えているのは嬉しいかぎりだ。

    阿久氏は、冒頭の番組の中で「歌謡曲」と「Jポップ」は、「映画」と「ブログ」ほど違うと語った。その「違い」を理解する若い「同志」たちが増えていることに、阿久氏は天国でほくそ笑んでいるに違いない。

  • 昭和歌謡曲探訪の続き.
    1997.4〜1999.4の朝日新聞連載をまとめたもの.昭和15年から平成元年まで,歌謡曲(自作,他作を問わず)で語る自分史という感じの本.今はネットでかなり古い歌でも聴けるのがありがたい.そうやって聴きながら読むと時代の臨場感が満点である.
    私的には後半の歌謡曲全盛時代が懐かしい.「時の過ぎゆくままに」「北の宿から」「津軽海峡冬景色」「サムライ」「舟歌」これらがすべて阿久悠の作詞だというのはすごいなぁ.沢田研二の歌っているのを今改めて見ると「スター」という言葉が自然に納得される凄みがあった.

  • 今回は昭和30年の歌まで。それも東京大衆歌謡楽団がカバーしている歌だけ拾い読みです。
    自分がものごころついていなかった時代の歌について、歌謡曲のプロ(作詞家)が流行当時の鑑賞について語ってくれるのは、興味深かったです。
    特に「お富さん」と「弁天小僧」のくだりは、当時を知る人でなければ語れないなと思いました。どちらも歌舞伎由来の名曲で、自分は「弁天小僧」の方をより好ましく思っているけど、圧倒的に人口に膾炙したのは「お富さん」だったのですね。
    懐メロは、予備知識なしいに聞いて好きになり、後から時代背景を知るのが最高だと思うので、あえて聞いたことのある曲の項だけ読んで読了。
    新しく懐メロを知ったらまた開くのを楽しみに。

  • 歌謡曲史を、有名な作詞家の個人史的観点から読む。面白い。

  • 歌謡曲の大家の作品の解説が、本人の責任で読めるのは嬉しい。
    この本が公式見解なので、一つでも知っている歌があれば、読むとよいだろう。

    20歳から70歳くらいまでの日本人で阿久悠の歌を知らない人は1%くらいではないだろうか。
    歌の題名、歌手、歌詞、どれか知らない場合でも、曲は知っているものがあると思います。

    1時代を築いた大家も、1曲づつ作っていたことが分かる。
    はやり歌の背景をしることができる。

  • 当時流行の歌謡曲とその時代の状況というのが表現されている。

  • 2冊

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著者プロフィール

1937年兵庫県生まれ。明治大学文学部卒業。82年『殺人狂時代ユリエ』で横溝正史賞、97年菊池寛賞、99年紫綬褒章、2000年『詩小説』で島清恋愛文学賞、03年正論新風賞を受賞。2007年、逝去。

「2018年 『君の唇に色あせぬ言葉を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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