憲法と国家―同時代を問う (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306269

作品紹介・あらすじ

「自由」主義市場経済の混乱、あいつぐ地域紛争・民族紛争など、未曾有の激動が世界を覆うなか、あらためて、自由と国家の意味が問われている。著者自身の憲法対話の実践を紹介しながら、「近代国民国家」「人権」「民主主義」といった基本的問題をめぐる現在の論議を検証して、「選択」の重要性を示す。刺激的な比較憲法の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 『自由と国家―いま「憲法」の持つ意味』(岩波新書)の続編です。主として前著刊行以降に起こったアクチュアルな出来事をとりあげながら、比較憲法学の観点からの考察を展開しています。

    本書は、近代市民社会的な自由の理念と、それに対して現代のさまざまな領域においておこなわれている批判との錯綜した状況を、わかりやすく解きほぐしています。とりわけ現代における「ネーション・ステート」の意味を問いなおし、自然の存在としての「エトノス」と、諸個人の社会契約という擬制によって説明される「デモス」との齟齬によって生じる問題が、それぞれの国家において多様なかたちで現われてきていることが具体的に紹介されています。

    理論を天下り的に説明するのではなく、それぞれの国家において生じている具体的な問題にそくして考察が進められていて、比較憲法学という学問が現実の問題にどのように対峙しうるのかということを学ぶことができたように思います。

  • 比較憲法の話が大半を占めていた印象。読み進めるのが決して楽ではなかった一冊。本書に関する理解は充分とは言えないので、評価(星)は避けさせてもらいます。

    ドイツやフランスの事情に関する知識がまったくないと読むのが苦しいかもしれない。なので、興味の持った部分以外は読み飛ばすのも一つの手(初読ならば)。


    目に留まった部分についてコメントしていきます。

    ☆人権の恐ろしさ(106頁)
    人権というのは、如何に優生思想を否定した前提があったとしても、「人権」である以上、区別するという点で一つの価値判断が表れざるを得ないものだという。すなわち、生命の尊重はずばり「人間」に適用されるものであり、例えば「エイズウイルスの生命の尊厳」等、むしろそれへの攻撃を是とする場合もある、と著者は説く。何を当たり前のことを…と思われるかもしれないが、では「人間」の定義を考えるとなると、人の誕生のどの時点から「人間」としてカウントするか…というような問題にも繋がる。…これは単に要約しただけな気がしてきた、ごめんなさい。


    ☆ゆるい言葉の使い方(112頁)
    人権という言葉は広く一般に使われているが、実は区別されるのだという話。狭義と広義の2つに区分される。

    狭義の「人」権:
    「人および市民の権利の宣言」(フランス革命)に由来する「人」権は「国家からの自由」として追求されるもの。すなわち、身分制共同体(例えば、貴族・聖職者・それ以外のような階級が存在する)から解放された個人が、「人」一般としてその主体となること、だ。共同体のことを構うことなく、共同体から離れて自由に生きる、ということ…だと自分は理解。

    広義の人権:
    国民主権という概念がある。これを個々の人々に着目してみると、それは「市民」の権利、つまり参政権と捉えられる。これは「人」権とは同じではない。実は世の中での人権という言葉の使われ方はもっとゆるく、自由権・参政権・社会権(civil rights→political rights→social rights)の3つを含んであり、これらを総称して「広義」の人権と自分は理解した。


    ☆憲法9条について言及している著者の持論:
    1991年4月のパリの報告会での著者の発言について、一部が抜き出されている。分かりやすく、「正しい戦争」とは何だろう…と考えさせられた(187〜193頁)。とりわけ192頁の「正しい殺人?」の部分が戦争の意味を考える上で大切な部分になると思った。

  • 吉里吉里人
    アイヌ新法
    ミュンヘンの教訓

    文学,地方,国際という異なる視点から、憲法と国家について考えている。

  • [ 内容 ]
    「自由」主義市場経済の混乱、あいつぐ地域紛争・民族紛争など、未曾有の激動が世界を覆うなか、あらためて、自由と国家の意味が問われている。
    著者自身の憲法対話の実践を紹介しながら、「近代国民国家」「人権」「民主主義」といった基本的問題をめぐる現在の論議を検証して、「選択」の重要性を示す。
    刺激的な比較憲法の入門書。

    [ 目次 ]
    1 戦後史をさかのぼって―比較憲法見聞(1960年代の日本と西欧 70年代から「89年」へ―西と東の憲法対話のなかで ほか)
    2 近代憲法の基本枠組―「国民」国家と「人」権(「近代国民国家の終わり」か? 「ヒューマン・ライツはヒューマン」か?)
    3 近代憲法の制度運用―「民主」主義と/あるいは「法治」国家(「議会政治は政党政治」なのか? 「司法権の独立イコール裁判の独立」なのか?)
    4 近代憲法を通して、また、それを超えて―あらためて憲法九条を考える(日本は何に「貢献」できるか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 購入。読了

  • 択一の点を倍にすべく、景気づけに読みました。

  • \105

  • すごく興味深く読めました。
    デモスとエトノスの対比のところなんかは、個人的に研究に
    役立ちそうな気がします。
    近代国家が個人の解放を原則とするならば、近代国家における政治も
    個人の政治思想を尊重すべきですが、実際は共同体(選挙区)に
    有権者も被選挙者も強く規制される。それが日本では歴史的にどういう
    経緯をとるのかという点は、もっと歴史学の視点から考えられて
    いいんじゃないかなと思った。そういうことを、僕は考えたい。

    それにしても今さらこんな新書で入門的なことをしていていいのだろうか。
    もっと専門書も読まないとなあ。
    今まで政治思想的なことに全く思いを致してなかったのが悔やまれる。
    開かれた地平は限りなく広い。

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著者プロフィール

東北大学名誉教授・東京大学名誉教授

「2017年 『憲法の尊厳 奥平憲法学の継承と展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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