市民科学者として生きる (岩波新書)

著者 : 高木仁三郎
  • 岩波書店 (1999年9月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306313

市民科学者として生きる (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 1997年に環境・平和・人権の分野において「もうひとつのノーベル賞」と呼ばれるライト・ライブリフッド賞を受賞し、2000年に急逝した科学者・高木仁三郎氏が、自らの人生を振り返った自伝的著作。高木氏は、同賞の受賞直後にがんにかかっていることがわかり、死期を悟りつつ、1999年に本書を病床で書き上げたという。
    高木氏は、1938年に生まれ、高度成長の時代がまさに始まろうとし、その推進力のエンジンのようにして科学技術が存在し、ほとんどの人がその未来にバラ色の夢を描いていた時代に青少年時代を送り、東大で核化学を学んだ。そして、日本の原子力産業の黎明期に、当時原子炉を建設中だった日本原子力事業に就職したが、閉鎖的で没個性的な集団の中で、まだ原子力発電も行われておらず、多くの人が原発推進の妥当性を確信していたわけでもないにもかかわらず、原発推進の旗振り役を期待されていくことに強い違和感を覚え、同社を辞めて東大原子核研究所に移る。しかし、核研も、その後に移った都立大学も、暗黙のうちにある種の家族共同体的な集団に共通の利害が形成され、それを守ることが自明の前提となることに企業と大学の差はなく、行き場を失っていく。
    そして、その頃出会った三里塚闘争(成田空港建設反対運動)や宮沢賢治の思想から大きな影響を受けて、大学や企業のシステムのひきずる利害性を離れ、市民の中に入り込んで、エスタブリッシュメントから独立した一市民として「自前(市民)の科学」をするという考えを実現し、1975年に原発の情報センター的な役割を果たす「原子力資料情報室」の設立に関わる。その後、1979年の米スリーマイル島原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故を経験し、反原発の信念は一層強まり、そのための国際的な運動を含めた様々な活動に力を注いでいったのである。
    高木氏が生涯をかけて追及した問題意識は、氏が「この言葉に出会った衝撃といったらなかった」と語っている、宮沢賢治の残した「われわれはどんな方法でわれわれに必要な科学をわれわれのものにできるか」という言葉に言い尽くされている。そして、「市民の科学」とは「未来への希望に基づいて科学を方向づけていくことである。未来が見えなくなった地球の将来に対して、未来への道筋をつけて、人々に希望を与えることである」と締めくくっている。
    原子力については、平和利用は当然としても、大戦中に原爆を開発したのも“科学者”である。また、生命科学の進歩は、“科学者”が使い方を間違えれば人類にとって取り返しのつかない事態を引き起こしかねないところまで来ている。高木氏が存命であったなら福島第一原発の事故を何と言ったであろうかという限定的な問いにとどまらず、氏が追求した「科学とは何であるべきか」という根本的な問題を今こそ改めて考えるべきなのだと思う。
    (2008年12月了)

  • この著者が何者かも知らず題名だけ見て買ったので、読み始めて「この手の本だったか」と思わせられた。この高木仁三郎という人は、反原発リーダーとして有名だったようだ(本人がこの本の中で言っている)。その著者が癌による死期を感じながら、自分史を振り返り、未来への希望を書き連ねた本だ。正直いって、この人の生き様には共感できないが、(本人自身が本書で書いていたとおり)100人か1000人に一人ぐらいこうしたオルタナティブな自分が存在しても良い。震災後、リアクティブに脱原発を謳うのは簡単だが、70年代からプロアクティブにこれだけの発言をしてきた著者は評価されるべきである。昨今の文化人がしたり顔で語る原発問題とは一味違う迫力がある。

  • 在庫切れの合間にたまたま手に入れることが出来た。都立大助教授の地位を捨て、市民の立場で長年核問題に立ち向かってきた科学者の本。癌で闘病中ベッドの上で書き上げられた本です。

  • 《教員オススメ本》
    通常の配架場所: 3階開架
    請求記号: 289.1//Ta29

    【選書理由・おすすめコメント】
    大学や政府系の研究機関、あるいは原子力利用を推し進める側の企業と対峙する立場から、原発や放射性物質の危険性を世界に訴え続けた核化学者の、自伝的な著作です。将来を嘱望されながら、あえて体制側を飛び出して、市民科学者としての立場を貫いた生き方に、感銘を受けます。
    (経済学部 小林孝雄先生)

  • やはり破天荒な人生を歩んでらしたんだな、と納得。

  • 原子力がエネルギーとして礼賛され、商業原発が各地に設置されるにいたった時代。
    空っ風の原風景と職業的科学者という立場との葛藤。
    「市民科学者」としての半生。

    国家・電源三法による原発推進の力は、改めて文字で読むと、不気味なほど大きい。筆者が受けた嫌がらせの事実には、驚愕。それでも「市民科学者」として「本気」で脱原発に取り組み続ける筆者の姿に、感銘を受けた。

    あきらめを希望へ。
    私たち日本人は、いつまでもシカタガナイと言い続けるわけにはいかない。

  • 高木氏のこと、恥ずかしながら原発事故の後に知りました。
    広く世に読まれることを願って本棚に置きます。

  • 高木仁三郎の思想信条の全てに同調する者ではないが、これを読むと高木が、3.11以降に雨後の筍の如く発生したニワカ反原発とは一線を画す科学者であった事が理解できる。
    叶わぬ事ではあるが、もし今も健在であったなら、現状についてどう述べていただろうか知りたい。
    誰か天国に繋がる電話を発明して欲しい。

  • [内容]SBやNGOとはすこし離れてしまうかもしれませんが、純粋に面白いです。反原発の第一人者である高木仁三郎氏の自分史です。高木氏はもともと原子力関連の会社員で、核化学者に転身、しかし次第に原発に疑問を抱き、結局市民運動のリーダー的存在になりました。自分自身を常に見つめて人生を軌道修正していく筆者の姿には感銘を受けます。
    また個人的には筆者のとなえる「市民の科学」とSBの精神には合い通じるところがあると思います。

    さらにこの本では原発の生まれた背景や、今に至る過程などを知ることができます。高木氏の原発批判にはまるで3・11を予想していたかのような鋭さがあります。

    [文責]林

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