- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004306344
感想・レビュー・書評
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マルクスは資本論にて、社会の富は「膨大な商品の集積」、個々の商品は富の基本形態と記載。現代なら、ブランドの集積と書いただろうかと始まる。この出発点は、なかなか痺れる。
ブランドとは買い手の期待を反映するものであると同時に、買い手自身の生活や歴史や人生の意味を形成するものとして存在している。だからこそ他に何も変わりようがないものというのが根源的なブランドの価値である。コカコーラが新たな味に変更した時、その味は高く評価されたが、それ以前の低い評価の味を買い手は求めた。この事例と説明が非常にしっくり来た。
買い手と売り手には、情報量に差がある。買い手は、それを使ってみるまで、製品の性能を詳しく知り得ない。だから、想像で補う。この製品を背後にした「想像」こそが、ブランドだと思う。安心できる性能だとか、世の中に認められた実績だとか、その製品と共に過ごした記憶とか。だから、ブランドを形成するには、実績とコマーシャルによる、ある種の洗脳的アプローチが必要である。本著は、これを色んな言い方で解説しているような内容である。
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神戸大学大学院教授によるブランド論。
ブランドとは、製品に従属するものではなく、製品がブランドに従属するものである、という主張は日本の電気製品メーカーの製品に対するネーミングを例に挙げられており、説得力がある。たとえば、松下電器はかつて、テレビに「画王」、「横綱」といった名前をつけたが、これは製品の特性をネーミングで説明しており、ブランド名が製品に従属している典型的な例である。こうした例は、電気製品に限らず日本のメーカーに多くあり、製品が入れ替わると自動的にそのブランドは消滅し、次の製品ブランドに入れ替わられる。たとえば、P&G社のIvoryという石鹸は誕生してから100年以上の歴史をもち、今尚、同社の中核ブランドとして存在しつづけている。日本のブランドにおいて、こうした長寿ブランドがなかなか存在しないのは、ロングセラーブランドを育てる意思をもったマネジメントが行われていないからであろう。著者は、「ヒット商品は偶然によって生まれうるが、ロングセラーは企業の積極的な意思をなくしては育たない」と主張しているが、まったくその通りだからこそブランドマネジメントが経営戦略の一端を担うのである。
序盤は、グリコのポッキーは当初、プリッツのライン拡張として「チョコテック」という名前で発売されたという。その名前が既に登録商標であったことから、「ポッキンポッキン新型チョコレート」というキャッチフレーズからポッキーという製品名が産まれたということである。当初は意図されていなかった偶然によって名づけれた商品がいまやグリコを代表するブランドとして数あるお菓子の商品群の中でも存在感を示しているのは、やはりグリコが意図的にそのごポッキーの新しい使用用途を提案しながら、あたらしい世界観を構築していったからに他ならない。こうした序盤のケーススタディは、欧米発のものが中心のブランド研究分野においては貴重である。
読む進むにつれ、内容はコンセプチュアルな領域へと入っていく。そもそもブランドとは何であるかという問いは、ブランドに関するどんな本にもかならず触れられており、さまざまな定義がなされているが、本書ではデカルトなどの哲学を織り交ぜながら、これまでのAakerやKellarといった定番による定義とはまったく異なった視点でそれを解説している。実務にかかわるものにとって、ブランドとは何かという問いに対して、こうした米国の研究者による定義がひとつの模範解答であり、業界においてもスタンダードとされてきているが、しっくりこない部分もすくなからずあった事かと思う。本書によるこうしたコンセプチュアルな記述は、そういった意味で、これまでの研究者がうまく説明できていなかった部分、たとえばブランドが時系列的に変化していく様は、本書の哲学を交えた説明により納得がいくような気がする。そもそも抽象的なブランドという存在を新鮮な観点から見ることができるという大きな意味と収穫があった。また、時間をおいて再度読んでみたい本である。 -
「ポッキー」や「コカ・コーラ」、「無印良品」といった例を取り上げながら、ブランドによる価値の創造の謎に迫る試みです。
著者は、ブランドの価値を単に消費欲望の共時的な布置によって説明するのではなく、ブランドを作り出す側に自分たちのブランドを育てていこうとする持続的なブランド・マネジメントがあることに注目しています。その上で、ブランドのアイデンティティを確立する通時的なプロセスは、そのつど「命がけの跳躍」によってなされていることに、詳しい分析を加えています。
記号論的な消費文化論の通説を超えて、実在のうちに根拠を持たない価値の創造の通時的な側面に切り込んでいるところに、本書の一番のおもしろさがあるように感じました。 -
マーケティングの一分野であるブランド・マネジメントについて講学的に知ろうと読み始めましたが、説明のアプローチはかつての言語論や記号論そのままです。「ブランド」が製品の技術や使用機能の従属性から離れて生成発展していく説明は十分成功していると思いますが、言語論や記号論の知識がない読者はちょっと辛いかもしれません。ただし、こういった一連の概念に慣れると応用が利くので、知っておく価値は小さくないと思います。
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ブランドとは何かについて、哲学的・論理的にその価値創造のプロセスを分かりやすく説明している。予想してた内容とは違ったけど良本。
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ブランドは定義してはいけない。
静態的にブランドをとらえてしまっては流行に乗ってしまいやがて衰退してしまう。
動態的にみることが必要だ。ブランドを定義しない。環境に合わせて仮面を剥ぎ取っていくことが大事。我思う故に我在りのように。 -
ブランドの誕生、成長、飛躍という一連の過程についてわかりやすく書かれている。ブランドは担当者に育成しようという意識がなければヒットしない。
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ちょっと古い本ですが、友人が面白かったと言っていたので購入。
・96年のブランドランキングでトップ20の中に日本企業は5位のソニーだけ
・ブランドは環境の変化に影響うける。「受け手に対して意味をなすか」
・ブランドは消費者に対して、ライフスタイルを変え、新たな消費欲求を生み出す。
ちょっと私には、向かない本でした。
創造するには?いう言う本では、事例の説明が多い本。
一番の収穫は3番目のバブル木の日本や今の中国を反映したブランドの価値でした。 -
三田祭論文の参考になるかなあと軽い気持ちで読み始めた本書でしたが、内容が思ったよりもまともだったので、論文のことなど何処へやら、いつのまにか一読者として楽しんでいました。
なぜ「内容が思ったよりもまとも」ということをわざわざ明記したのかと言いますと、俺が「ブランド」という語そのものに対してちょっとした嫌悪感を抱いている部分があったからでありました。
いわゆる「ブランド」という語には金持ちが○○の一つ覚えみたいに何も考えずに「ただ周りが持ってるから買ってる」っていうイメージが付きまとったり(なんて保守的な考え!)、また、ただ顕示したいがために買ってるんだろう・・とか、「ブランド」で売れるんだったら企業も苦労ないよなあとか、なんかそんなネガティブなイメージです。
まあ、僕も今たまたまグッチの財布使ってるんですが・・笑
だから、この本だって、もし「こうすればブランド戦略はうまくいくっす!」とかあるいは「グッチっていいよね~はあと」みたいな(失礼ながら僕からすれば)アレみたいなことばっかり書いてあったら、もうその時点で読むのやめよう・・と思ってました。
でもそんな本ではありませんでした。
本書の特徴としては、「ブランド価値の定義は、したがって、無限の循環となる自己言及のプロセスとなりそうだ」(p99)といった文章からもわかるように、ブランドそのものを記号論などの、経営学の範囲を超えた、学際的な視点から捉えている点が挙げられます(当たり前っちゃあ当たり前なのかもしれませんが)。
もちろん経営の視点もはずしていません。
全体として、身近な例を出しつつも、言いたいことはとても抽象的で学術的です。
まあ、でもそんなことよりも、何より著者の態度が終始一貫して誠実でかつクールだったところに好感を持ちました。
それは特に第5章の「ブランドの命がけの跳躍」に現れていると思います(5、6章は特に面白い)。
あと著者が妙なブランド信奉者じゃなくてよかったです。笑
ブランドってそもそも何なの?と普段から懐疑的に感じている人や、逆にブランドを無批判に受け入れている人など、多くの人がブランドを考える上で参考になる、とても良い本だと思いました。
(2007年09月11日) -
ヴィトンやポッキー等を例にあげてブランドとはなんぞやを問う。分かりやすいし、ブランドの価値についての考え方がちょっと変わる。
でもブランドとは結局なにかについてはあんまり明確な答えはなかったかな…