経営革命の構造 (岩波新書 新赤版 642)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306429

作品紹介・あらすじ

経済構造の大変革期の今こそ経営史に学ぼう。経営革命に取り憑かれた人々の夢と挫折。いつの時代も突出した個人が歴史を変えた。産業革命からシリコンバレーまでの技術と組織のイノベーションをたどり、二一世紀を展望する経営通史。経営者、ビジネスマン、企業家志望の学生必読。すべてはベンチャービジネスから始まった。

感想・レビュー・書評

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  • 経営のイノベーションの歴史を、18世紀のイギリス、19世紀のアメリカ、戦後の日本、を中心に述べた本。発行は既に20数年前の本だが、歴史として読む分にはたいへんおもしろかった。

    イギリスの産業革命が、織布と紡績の効率化競争により、どちらかが必ず供給不足となり、そのアンバランス解消が技術革新の動機となって進んでいく様がおもしろい。

    アメリカのビッグ・ビジネス(鉄鋼王カーネギー、石油王ロックフェラー、金融王JPモルガン、鉄道、フォードとGM、デュポン)のダイナミクスは感心する。実業界を支える学問の世界の深さも素晴らしい。

    1950年から、川崎製鉄初代社長の西山弥太郎氏が、川鉄千葉製鉄所を最新鋭の銑鋼一貫製鉄所として一挙に創り上げた話がしびれた。
    資本金5億円の会社が163億円の設備投資計画をぶち上げて見せる、というのは、自分の目利き力に絶対の自信がないとやれないだろう。


  • イギリス、アメリカ、日本におけるそれぞれの革命が起こった時期の動きが詳細に書いてありとても面白かった。
    やはり、市場の流れは様々な人の努力により少しずつ生まれていっているということを再認識できた。
    落ち込むことにより、課題解決的な目線による革命がこれまでは多かったが、今後は満たされた中での成長、革命を起こさないといけない。
    どりょくのじきはひつようあ。
    トヨタはすごい。

  • 経済史と経営史を学ぶこと。

  • 170405読了

  • 知識のインプット、気付き用として
    ・「新しいイノベーションが規制や既存勢力のらち外から生まれ出るのは、今も昔も変わらない。」(p.17)
    ・「産業の飛躍的な発達にとっては、二つの重要な要素…。一つは、産業自体がさまざまな工程あるいは部門から成り立っていて、その依存関係がお互いのペースを規定…。もう一つは、…技術自体もさまざまな構成要素から成り立っていて、それらのバランスをとろうとすることによって進歩が促進される…。」(p.20)
    ・「突出や逸脱を許さない平和的価値観が支配的になると、技術の進歩やダイナミズムは生まれない」(p.21)

  • 自動靴下編み機を作ったら靴下編み屋にボコボコにされる。そういうのを乗り越えて革新は続いていくのであります。たまにだるいけど面白い本であった。面白いすごい人はおるもんやね。

  • ■イギリスの経営革命の本質
    イギリスで起こった産業革命は、新技術や発明といった各要素を資本主義という仕組みによって生産システムや産業構造に結び付ける基本理論を構築した。
    ①発明が事業化や産業発展に結び付くことは稀
    ⇒既存の権益者の不利益となり、発明者は妨害されて利益を受けることは少ない
    ②縦方向の関連する工程間の不均衡は、相互補完的に発展を促進
    ⇒特許制度などの新規性へのインセンティブ、市場と技術の集積ダイナミズムの集積
    ③技師や職人とは別のタイプの企業家の存在
    ⇒戦略的志向を持った企業家による、分散要素の目利きと1つの方向性への統合

    ■アメリカの経営革命の本質
    西部フロンティアの拡大と産業革命や化石エネルギーの発展によるビジネスの巨大化、それらの大型生産設備増強を達成するための資本調達環境の整備が進められた。
    ①市場メカニズムに代わる内部取引の実現
     ⇒大量生産大量消費を実現するための大型設備投資と合併吸収による取引の内部化
    ②内部取引を効率的に達成するための複数職能の発生
     ⇒巨大組織を運用するための分業・専門化と、ミドルマネジメントの発生
    ③職能別組織を管理調整する経営層や本社機能
     ⇒投下資本の効率性を示す指標の整備と専門経営者による多角化戦略

    ■日本の経営革命の本質
    資源・設備・資金の困窮から多くの産業の基盤となる鉄鋼・石炭への傾斜生産を経て、重厚長大産業~軽工業~サービス産業といった形で産業の主役が変遷していった。
    ①鉄鋼・石炭への傾斜生産を実現したクライシス・マネジメント
     ⇒その後の重厚長大産業の発展を決定づける意思決定が、戦後の危機的状況で行なわれている
    ②銀行を中心とした系列企業による内部取引化と長期投資のための資本安定化
     ⇒最先端の技術を導入するための投資を行なう資本調達環境の整備と需要先の確保
    ③カンバン方式のような、市場メカニズムと内部取引の良いところ取りをする経営
     ⇒アメリカの生産システムを模倣しつつ、在庫やリードタイムを圧縮する連続的な努力

    ■シリコンバレーの経営革命の本質
    インターネットの勃興によって、それまでのメーカー主導の産業構造が情報産業主導にシフトしていった。その中心であるシリコンバレーでは、現在進行形で新興産業を強化する取組みが行なわれている。
    ①情報化の進展による、蓄積モデルから確率モデルへの変化
     ⇒アイディアや新サービスをβ版でリリースして、オープンにしていくことで改良する
    ②個人資産などの担保を要求する銀行資本から、試行錯誤を勧めるベンチャーキャピタルの勃興
     ⇒資金や人脈の少ない若者でもチャンスがあり、成功者が資本家となるエコシステム
    ③内部組織からネットワーク型へと変化し、コア・コンピタンスの追求による競争力強化
     ⇒必要な職能を外部から調達することによって競争優位を実現できる情報環境の整備

  • 産業革命から現代のシリコンバレーまで、経営の発展は人を中心に進んできた。マクロ経済とはほど遠い、ワットからフォード、西山弥一郎(川鉄)、大野耐一(トヨタ・カンバン方式産みの親)など、人物論といってよい内容。約300年の歴史が主観的に描かれるのも、夫々の人物の改革への情熱が伝わってきます。

  • 今やアメリカに住んでも鉄道の恩恵を感じることはないけれども、実はアメリカの会社組織にこそ鉄道組織の真髄が受け継がれていた!そしてそれを乗り越える日本のジャストインタイム生産システム、シリコンバレーモデルによるアメリカの巻き返し。次のパラダイムシフトを起こすのは誰だ?研究室に閉じこもっていないで、社会でチャレンジしたくなる本。

  • 久しぶりに堅い本を読み返してみた。
    イギリスの産業革命に始まった企業組織。
    その近代企業を経営していくために行われた多くの試みと失敗を順を追って解説していく。この中で、生産・製品技術が進化することで組織そのものが進化し、新たな経営技術を編み出していく必要が生じる。
    この経営技術と製品技術の進化の過程を追いかけていく1冊。
    この本は数年前に会社から指定されて、渋々という感じで読んだのだが、改めて(自主的に)読み返してみると、現代の会社組織がなぜこのようになっているのかがよくわかる。

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著者プロフィール

一橋大学教授

「2015年 『オープン・イノベーションのマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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