日本文化の歴史 (岩波新書 新赤版 668)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306689

作品紹介・あらすじ

日本人の日常生活に息づく伝統が解体しつつある今、私たちの自己認識はどこにたどり着こうとしているのか。人々の価値観や生活意識を示すものとしての宗教や思想を中心に歴史をたどり、国家や社会組織のあり方の変化に対応して、新しい時代の文化を主体的に形作ってきた日本社会の活力と、その固有のエートスを描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 中央地域から遠い北海道アイヌや沖縄には縄文人の特徴が強く残る。p.14

    称徳天皇。仏教を深く信仰。天皇即位の際の大嘗祭(765)の儀式に外来宗教である仏教の僧を参加させる。さらに皇位を仏教僧の銅鏡に譲ろうとする(宇佐八幡宮の信託により阻止)。p.53

    京都。鬼門に延暦寺、裏鬼門に石清水八幡宮。p.61

    秀吉の明遠征。全国の諸大名の総力を結集した国家事業。明の抵抗により失敗に終わる。しかし、その後まもなく女真族が朝鮮に出兵し、朝鮮王を降伏させ属国化。北京に入り明の旧領を支配下に入れ、さらにモンゴル・チベット・ウイグルまで領土を拡大。p.149

    桃山文化は公的な組織(国家)の全体性を表現。元禄文化は私的な個人の内面性を表現。元禄文化では、個人もしくはその支持者が経済力をもつようになり、権力に頼ることなく、自分の生き方・芸術・学問を表現した。p.163

    日本的な個の意識。人間関係を大事にし、その中で与えられる役割を忠実に果たしていくことが、自己を活かすことになる。p.226

  • BM2a

  • 著者が放送大学でおこなった「日本文化論」の講義をもとにした本で、14回にわたって古代から近代にいたるまでの日本の文化史、とりわけ思想史について、簡潔に解説がなされています。

    とくに古代から中古の時代をあつかったところでは、比較的新しい歴史学の成果を紹介しながら、日本の文化と歴史の実態にせまろうとする姿勢が見られて、興味深く読みました。中世や近世については、著者自身の考えを織り込みつつ、主要な文化史上のトピックが解説されています。

    岩波新書では、家永三郎の『日本文化史』がすでに刊行されていますが、こちらは内容そのものよりも文化史をあつかう枠組み自体が古びてきた感もあり、新しい研究成果を踏まえた入門書が求められていたのではないかと推察します。本書はそうした読者の期待に十分にこたえる内容になっているのではないかと思います。

  • 発展する社会を支えるのは役割分担の巧拙に掛かっているのだろう。ただし日本の場合、合理性よりも情緒に配慮して組織が機能停滞する傾向が強い。その上、社会の各階層に閥(ばつ)がはびこっている。自由競争という言葉はあるが実態は存在しない。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/09/blog-post_20.html

  • 先日禅を読んだら、後ろの方の紹介ページに記載されていて、

    Amazonで良著と紹介されていたので買ってみました。

    旧石器時代から第2次世界大戦あたりまでの日本文化について、大きな流れを把握できます。



    goo辞書によれば、「文化」とは、

    人間の生活様式の全体。人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体。それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり、学習によって伝習されるとともに、相互の交流によって発展してきた。カルチュア。「日本の文化」「東西の文化の交流」

    1のうち、特に、哲学・芸術・科学・宗教などの精神的活動、およびその所産。物質的所産は文明とよび、文化と区別される。

    らしいのですが、どちらかと言うと2番のバックグランドとしての1番について書かれており非常に興味深く読むことができました。

    読んでて思い出したのですが、昔は女性の天皇もいたんですね。
    父から子への直系の継承となったのは奈良時代の光仁天皇あたりからで、
    その後江戸時代に2人女性の天皇がいた以外は、ずっと男性の天皇で続いてきたのは不思議です。

    他にも、最澄と空海の仏教の違いや、
    仏教本来の精神に反する、死者のための葬式や法要が主たる任務となった「寺」の背景や、
    死後に神として祀られたいと希望したのは豊臣秀吉が初めてであることや、
    年号の1文字目の選定に「保」と「平」は用いないとした暗黙のルールがあることや、
    江戸時代末期に開国するにあたって大名の意見を聞いた経緯など、
    たくさんの”初耳学”がありました。

  • 日本人の日常生活に息づく伝統が解体しつつある今,私たちの自己認識はどこにたどり着こうとしているのか.人々の価値観や生活意識を示すものとしての宗教や思想を考察の中心にすえ,さまざまな歴史的契機に応じて常に新しい時代の文化を主体的に形作ってきた日本社会の活力と,それを支える固有のエートスを描き出す.

  • ・日本文化の歴史と言われると、ついつい文化遺産や文化現象などの高校日本史的な意味での文化史を思い浮かべてしまうが、文化というのは本来もっと多義的なもの。著者は「文化」の定義を生活様式や思考様式にまで広げることによって、これまでにない豊饒な日本の歴史を描き出す。

    ・さらに著者は日本の歴史を世界の歴史法則と比較することによって、日本文化の特殊性をあぶり出していく。例えば、「採取経済から農耕経済へ、さらに国家の形成へと進むのは、世界の諸民族に共通した歴史の過程であるが、日本の場合はかなり顕著な特色を示している。それはこの過程が、とくに農耕文化の開始以降急速に進行したという事実である」(p.10)という観察から、欧米と異なる日本人特有の国家観が生まれたことを指摘する。こうした指摘が随所にあって、通俗的な日本人論が根底から覆される。新書版ながらとてもエキサイティングな本だ。

  • 家族制度、宗教、思想が内容の中心。

    古代
    ・前方後円墳では、後円部の墳頂の竪穴に前の王を葬るとともに、そこで王権継承の儀式を行い、前方部に進んで新しい王になったことを宣言する儀式を行った。
    ・日本では双系性家族が一般的で、これは東南アジア地域の諸民族に多くみられる。生活の拠りどころとなるのは血縁よりも地縁であり、地縁による団体「ヤケ」を統合した地域の豪族が「氏」と呼ばれた。
    ・仏教は紀元1世紀に中国に伝来して5世紀に普及し、日本へは6世紀半ばの欽明天皇の時代に伝来した。588年に飛鳥寺起工。
    ・4〜8世紀に大陸の政治情勢の変動に伴って、かなりの数の人々が日本に渡来した。
    ・太秦の広隆寺と伏見の稲荷神社は秦氏が創設。
    ・怨霊として恐れられた早良親王などの変死した8人を八所の御霊と呼び、それを祀るために設けられたのが上御霊神社。また、祇園御霊会が祇園祭につながっている。
    ・仏教の経典は、経・律・論に分けられる。経は仏陀の言葉を記録したもの。律は僧らが守るべき規律。論は仏陀の思想の解釈の論議。
    ・平安仏教の特色は、仏教を知識としてではなく、実践のための指針として受容しようとしたこと。最澄、空海は山林での修行者として過ごした。

    中世
    ・最澄は唐で天台宗を学んだ。人間は誰でも学んで努力すれば仏陀の教えた悟りの境地に入ることができ、成仏できるとの立場に立った。僧侶だけでなく、俗人でも守ることができる戒律として大乗戒を唱えた。没後に比叡山に大乗戒壇を建てることを許され、鎌倉仏教に影響を与えた。
    ・空海は唐で密教を学んだ。真言宗を建てて高野山を修行の場所とし、東寺を勢力下においた。
    ・12〜15世紀の中世は、氏から、養子や奉公人を包括した共同の組織である「家」に移行した時代。成員の平等性と自発性が進んだと考えられる。
    ・浄土信仰は、阿弥陀仏を信仰することにより極楽浄土に生まれ変わろうとする考え方。法然の門人である親鸞は、人はすでに仏によって救われており、ただその事実を知ればよいとする願力回向の説をとなえた。
    ・道元は曹洞宗を学んで開祖となり、人は本来仏であるが、仏であるからこそ無限の修行を続けなければならないと考えた。
    ・栄西は臨済宗を始め、後の禅宗の主流となった。
    ・日蓮は、「南妙法蓮華経」と唱題するだけで悟りの境地に至ることができると考えた。
    ・平安末期に両部神道(仏教神道)が現れたが、鎌倉時代から日本独自の宗教としての神道(伊勢神道)が唱えられた。
    ・南北朝時代から、地域ごとの共同生活の中心をなすものとしての神社がつくられるようになった。
    ・14世紀以降、鎌倉仏教は民間に普及して、それぞれが大きな教団を作るようになった。信者である檀家と菩提寺の関係が成立し、16〜17世紀には多数の民間寺院がつくられた。

    近世
    ・朱子学は、孔子による儒学から千年以上経過した12世紀の南宋の時代に新しく興ったもの。自分の感情や意志のはたらきを理性の力によって正しい方向に向けていく主知主義と、一人一人が道徳的に立派な人間にならなければならないという個人主義が特徴。五経と四書からなり、孔子の言葉などを集めた論語も四書のひとつ。
    ・18世紀後半に多くの藩で藩校が創設され、幕府も湯島聖堂に昌平坂学問所を開いた。
    ・江戸時代中期以降には、日本の古典を基に日本人の生き方や社会のあり方について考える国学が発達した。
    ・本居宣長は、文学は人が感じたこと「もののあわれ」を表現したものであり、道徳などを基準として評価してはならないと主張した。
    ・江戸時代の教育は朱子学が一般的だったが、西郷隆盛、吉田松陰など、個人としては陽明学に関心を持った者が多い。

    近代
    ・1857年に幕府が番書調書という洋学の学校を開設し、これが1877年に東京大学となった。
    ・薩摩藩では1853年に集成館を創設し、製鉄用の反射炉を造り、ガラスや陶磁器を製造した。
    ・ヨーロッパ風の民法を導入し、強い戸主権が定められたことにより、家と個人の関係に新しい問題が生まれた。

  • ・最初の70ページと最後の数ページだけ読んだ。慣れない固有名詞が非常に多かったため、私にとっては読みにくかったので(日本史の知識を再整備してから臨めばまた違っていただろうけど)。前記の範囲内でもっとも印象に残るのは、日本人は「お上」に対して弱い、と言われるが、日本の歴史を通観してみると、明治維新による西洋化まではむしろ逆に、権威に必ずしも従順ではなかったのではないか、という分析。「平安京の貴族社会が、地方の人々への配慮を怠ると、武士が勃興して、国家の公権力を代行し」(227)たように、「もともと共同体的な性格をもつ国家において、公権力は一部の人々によって独占されるべき性質のものではなく、その独占に近い状況が生ずると、必ず反撥が生じ、社会組織が変動する。それが日本の歴史なのである」(227)。ただし、「共同体的な性格」に対する私の理解が足りないと思うので、しっかりキャッチアップしておく。
    ・歴史を学ぶ意義とは何か。その一つは、現在を過去と対比してより明確に知ることにあるのではないかと思った。では未来に対してはどのような意義を持っているのか、と聞かれると難しいが、未来を描き出す上で、より正確な現状理解は不可欠であるから、将来予測の土台として大いに意義を持っているということだけは間違いない。

  • [ 内容 ]
    日本人の日常生活に息づく伝統が解体しつつある今、私たちの自己認識はどこにたどり着こうとしているのか。
    人々の価値観や生活意識を示すものとしての宗教や思想を中心に歴史をたどり、国家や社会組織のあり方の変化に対応して、新しい時代の文化を主体的に形作ってきた日本社会の活力と、その固有のエートスを描き出す。

    [ 目次 ]
    日本文化の源流
    古代国家の形成と日本神話
    仏教の受容とその発展
    漢風文化から国風文化へ
    平安時代の仏教
    鎌倉仏教の成立
    内乱期の文化
    国民的宗教の成立
    近世国家の成立と歴史思想
    元禄文化
    儒学の日本的展開
    国学と洋学
    明治維新における公論尊重の理念
    近代日本における西洋化と伝統文化

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著者プロフィール

1923年、大阪市生まれ。1949年、東京大学文学部国史学科卒業。東京大学助手、名古屋大学講師、名古屋大学助教授、東京大学助教授、教授を歴任。1984年、定年退職により東京大学名誉教授。以降も千葉大学教授、川村学園女子大学教授を歴任する。文学博士(名古屋大学、1962年)。日本学士院会員。専攻は日本近世史。
○著書
『日本封建思想史研究―幕藩体制の原理と朱子学的思惟』青木書店、1961年。
『幕藩体制の政治的原理と朱子学との関係に関する研究』(博士論文)1962年。
『大世界史16 閉ざされた日本』文藝春秋、1968年。
『江戸時代とはなにか』岩波書店、1963年。
『安藤昌益』(校注/『日本思想体系45 安藤昌益・佐藤信淵』)中央公論社、1974年。
『荻生徂徠』(責任編集/『日本思想体系16』)中央公論社、1974年。
『日本の歴史19 元禄時代』小学館、1975年。
『日本文化の歴史』岩波書店、2000年。

「2013年 『荻生徂徠「政談」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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