- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004306887
感想・レビュー・書評
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精神科医が、いくつかの症例を紹介した本で、キーワードは「純愛」。
「理想の恋愛」や「運命の出逢い」といった言葉に
呪縛されているかのような人たちの姿が浮かび上がる。
自分に相応しい人が必ずどこかにいるはずだから、
手近で間に合わせないで積極的に探しに行こう――でも、
探したけれど見つからない……で、不具合が生じる、と。
自分には人間としてこれだけの価値があるのだから、
充分、釣り合いが取れる相手でなければ、
恋する意味がないという発想に基づいているらしい。
それはつまり他者に対して強く承認を求めるということであり、
裏返せば過剰な自己愛の現れなのではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋愛とか純愛とか、そういうことに興味がなかったけれどこの本はもう一度病むくらい誰かを好きになることも良いのかもと、幻みたいに思わせなくもない。
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著者は「あとがき」で、次のように述べています。「ドラマに準えて言えば、今日の“愛”というのは、主人公と監督がともに「自分」の自作自演なのだが、普通の恋愛がとかくその二人の「自分」の妥協によってすっきりしない仕上がりになるのに対して、純愛では、主演の俳優女優の都合に合わせて監督が譲歩するどころか、役者はあくまで監督の理想、つまり「純愛」の物語通りに演じさせられる」。本書は、こうした現代的な「純愛」のありようについて、著者自身の臨床体験を交えつつ論じています。
純愛の「物語」を追及する監督としての自分と、現実のなかで振る舞わなければならない役者としての自分との齟齬によって、精神に変調を来してしまった〈患者〉たちのエピソードが多くとりあげられています。
著者のもとを訪れる患者たちは、いずれも本人としては苦しんでいるにはちがいないのですが、本書に収められた彼ら「純愛」のエピソードが、珠玉の短編小説のように美しいと感じてしまいます。 -
症例がなんだかわかる。
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純粋なものほど壊れやすい。
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本書は精神科医である著者のもとを訪れた患者たちの話である。著者が多くの書で身近なテーマを取り上げてきたのと同様、恋愛という誰もが一度は悩んだであろうテーマを扱っている。
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やさしさ・豊かさに引き続き面白かった。
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新人類が誕生して以来、若者の恋愛観に変化が起きた。
若者はメディアから得たイメージ・概念に自分を当てはめて
自分の経験を理解する傾向があり、自身で概念を生成できない。
むしろ自分をイメージ・概念にあわせようとする傾向がある。
テレビ・漫画で見たような恋愛に憧れを抱き実現しようとする一方、
それにそぐわないと「これは偽者」だと退けてしまう。
自分の抱くイメージ・概念でひとつのシナリオを脳内で構築し、
そのシナリオ通りに進む恋愛こそ「本当の恋愛」と認識する。