社会的共通資本 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306962

感想・レビュー・書評

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  • 9月27日、宇沢弘文先生が亡くなったニュースを読まなければ、この本は積んだままだったであろう。
    経世済民が経済学の根本思想であるということを考えされられる論考であった。
    社会的共通資本という言葉の意味を理解することは、一定限度の前提知識を有するために、この本を読むにも多少の骨折りはいるだろう。
    しかし、自由主義経済が、世界中で行き止まりを長らく叫ばれているなかでは、宇沢氏の指摘はとても有意義であり、多くの人が知りうるべきものと考えられる。
    宇沢さんが、農家の青年と知り合ったことで、人間的に様々な刺激を受けたと書かれた文章を目にして小躍りしてしまった。

    大学教育を受けていない人にも、必ずエネルギーを与えてくれる一冊であるはずだ。

  • 社会的共通資本という概念枠組み(フレームワーク)は良いのだが、思想内容には共感できないところが多かった。
    筆者が農民を好きなのは伝わってきた(笑)
    あと、「大学の先生は、いいご身分ですねえ」と言いたくなった。さんざん「大学の自由」と言いつつ、「大学の社会的コスト」については一言も言及しない。都合の悪い話はしないんだねえ。不誠実だ。

  • 豊かな社会とは

    すべての人々が先天的、後天的資質と能力を存分にいかし、それぞれの持っている夢やアスピレーションが最大限実現できるような仕事に携わり、その私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化水準の高い一生をおくることができるような社会。

  • ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する。このことを可能にする社会装置が「社会的共通資本」である。

    この本でも触れられている「社会的共通費用」の概念はむしろもっと重要ではないかと思う。自動車の普及による公害、環境破壊、歩行者や子供たちがこれまでのように街路を安全に使えなくなってしまうこと等、本来所有者が払うべきコストを社会全体としてどれだけ被っているかを尺度化しようというもの。

    これを読んでふと思い出したのが、CO2見える化による環境対策という名目で経産省が主導したカーボンフットプリント。実際は、売り手にとってコストが大きく、失敗に終わった模様。何となく棚上げになってしまった感があるけど、スウェーデンの炭素税導入のような国をあげた民主的なアプローチやAEONのレジ袋有料化などをもとに、負担する立場になって、社会的費用の回収を実行に移していくフェーズにあるのではないか。

    また、都市、農村、医療、教育、金融制度などは「社会的共通資本」として見たときにどうあるべきなのかという点もそうだけど、電気やガス、水道等のようにこれからますます社会的インフラとして当たり前になりつつあるITはそもそもどういう役割を果たすべきなのか、代償として負担すべきコストはないのか・・等、本書をきっかけに改めて考えてみる必要がありそうだ。

  • 国家の経済活動の基盤となる「社会的共通資本」の観点から、農業、都市、教育、医療、金融、地球環境について語る新書。
    特に前半は自然を崇め、そこで生きる人々を讃える古い価値観が強調されており、学者の文章としては気持ち悪さを感じたが、教育の章と金融の前半は読む価値がある。

    一昔前の学者の文章を読むと、若い学者の書くものとは異なる分野の教養に支えられていることが多く、その意味では新たな発見も多い。
    結局、制度学派経済学の主張の要旨はよく分からなかったが、その主張の基礎にある多様な知見には目を向ける価値があるように感じた。

  • 自分のいる社会にとって一体何が課題となっているのだろうか、を考えようと思って読んだ本。
    新古典派とケインズ経済学の対立を超えた道として、社会的共通資本という概念を打ち出していて、経済学の考え方を基盤としたこの問題意識を理解しないと、本書の主張を理解するのが難しいと思う。
    農業、教育、医療が社会にとって重要な「資本」であり、農業の経営単位の拡大が重要であることや、都市のあり方についての観点など、これらの「資本」についての指針は示唆に富んでいるが、それがなぜ重要か、これらの示唆がどのような問題意識や理念に裏打ちされているについては、主張の基盤となる経済学の考え方を理解する必要あるため、引き続き考えていきたい。

  • ウエブレンの提唱した制度学派の考え方を基礎に、人間が人間らしく経済活動をするために必要な社会的共通資本について論じた著作。

    マネタリズムの新古典派経済学派の対極にある考え方である。

    経世済民、本来の経済活動はこうあるべきだと高邁な議論が展開されている。

    社会的共通資本をガバナンスする資質を如何に育てられるかその社会のあり方が問われる。

  • 5月勉強会の課題図書

    社会的共通資本とは、ゆたかな経済生活を営み、持続的安定的な社会を維持するために必要な資本。これを自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本といった3つのカテゴリーから考えることが出来る。

    自分の言葉で置き換えるなら、「誰」のものというわけでなく、みんなで共有するような資本の総称。

    議論がいきなり、感情的なものとなり、経済学的な知見から分析し意見されているのに、途中で破綻する話が多い。
    良かった点は、新古典派→ケインズ→反ケインズという経済学の流れをざっくりと触れることが出来た点。

    勉強会で話題となった部分。つまるところ、筆者の中で、「社会的共通資本」、「豊かさ」の定義付けがあいまいであるということ。そのため、議論していても途中でわけのわからない話に突入している。
    まあ、こういう機会でもなければ読まなそうな本であったからよいか。

  • 宇沢弘文氏が以前から提唱する「社会的共通資本」の考え方について、簡略にまとめられている。
    社会的共通資本の領域については、無原則に市場原理・競争原理を導入するべきではないという視点は参考になる。

  • 拝借


    えーーーーと
    岩波新書だからかもしれないけど、何が言いたいのか分かりませんでした。。
    ちょうどゼミで社会的資本?SC?やってるときに借りたんだけど、
    読むの遅くなった上にこんな感想で申し訳ない。

    前人と話していて、
    当たり前のことを当たり前のように分析しなおす本とかはつまんない
    という話があって、
    そんなことをちょっとだけ思い出した。
    幸せな状態とは「 ・・・  」と定義していて、それにのっとって議論が進んでいくのだが・・・・
    うーん。

    多分導入本?

    追記:違うところで新聞への寄稿を読みました。そっちはとても感銘を受けた。やっぱ導入本すぎておもしろくなかったんだな

  • 著者のことをテーマにしたイベントに興味を持ったので、一冊読んでおこうと手にしたのがこちらの一冊。
    著者のような学者の方の書かれる独特な文体が、普段ビジネス書等で読者を意識した(悪く言えば媚びたような)読みやすい文体に慣れてしまっている私にとっては読みづらく感じました。
    なんか、こう、やたらまわりくどい記述がわかりにくいことをよりわかりにくくしているような。
    平易に書いていただければ、もっと多くの人に伝わるだろうになぁとも思った次第です。
    誤解を恐れずに言えば、結局のところ当然のことを書かれているように感じました。
    付箋は16枚付きました。

  • 内容はかなり難しいが、ジャーナリスト堤未果さんの本から辿り着く。経済至上の資本主義でもなく既に破綻した社会主義でなく、と、何となく考えたくて。一読に値するとは思う

  • 自分には難しい。途中で断念。

  • 「はじめての新書」フェアで気になった本

  • 2018.04.20 社内読書部で話題になる。

  • 難しかったので、再読。

  • 本文より
    現行の医療制度について、そのもっとも重要な問題点は、保険点数制度に基づくら診療報酬制度である。この診療報酬制度のもとでは、医療の供給体制を長期間にわたって、望ましい状態に保つことはほとんど不可能であるといってよい。
    日本の医療制度の矛盾するを一言で言ってしまえば、それは、医療的最適性と経営的最適性の乖離ということではなかろうか。

  • ゆたかな社会とは:すべての人々が、先天的・後天的資質と能力を十分に生かし、それぞれの持っている夢とアスピレーションを最大限実現できるような仕事にたずさわり、その私的社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化的水準の高い一生をおくることができるような社会。
    これに必要な基本的諸条件は
    ①美しいゆたかな自然環境が安定的、持続的に維持されている
    ②快適で清潔な生活を営むことができるような住居と生活的、文化的環境が用意されている
    ③すべてのこどもたちが、それぞれの持っている多様な資質と能力をできるだけ伸ばし、発展させ、調和のとれた社会的人間としての成長しうる学校教育制度が用意されている
    ④疾病、障害に際して、その時々における最高水準の医療サービスを受けることができる
    ⑤様々な希少資源が、以上の目的を達成するために、最も効率的、かつ衡平に配分されるような経済的、社会的制度が整備されている
    自動車の社会的費用:自動車の所有者や運転者が負担すべき費用を歩行者や住民に転嫁していること。これが放置されると自動車を利用するほど大きな利益を得るようになり自動車需要は増えていく。
    学校教育が果たしている3つの機能:社会的統合、平等主義、人格的発達
    大学の意義:学問の研究と学生の教育。教育は副次的。研究といっても特に、規律・規則がなく自由な精神にもとづいて行われる点が企業などとの違い。
    日本の保険システムのゆがみ:人件費、設備維持費の赤字分を検査料、薬剤料などから出る黒字で補填している点。医療的最適性と経営的最適性の乖離。

  • 2000年刊。著者は東京大学名誉教授。◆表題の社会的共有資本とは「全ての人々が豊かな経済生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会の持続的・安定的な維持を可能にする社会的装置(抄)」で、教育制度・医療制度・金融制度の社会制度、環境、都市・交通機関・電気ガス水道電話の社会的インフラなどを意味する。◇また、何を社会的共有資本とするかは、地域の歴史・自然・文化・経済・技術に即し政治的に決定する。◆本書が示すのは、経済学的思考方法を用いて、社会的共有資本が、自由の貫徹を許容すべき対象でない点だ。
    ◆つまり、読了済みの倉阪氏「エコロジカル…」での問題意識とは次元が違うとの理解に。倉阪氏は、具体例を上げつつ、環境問題の是正のため、経済活動の分析において、排出物やロス、廃棄物を費用に含めて検討すべきとする。◆が、本書(つまり宇沢氏の立ち位置)は、フリードマンらマネタリストの世界的・社会的亢進への反駁・批判の意味が大。金融制度項目で生き生きと書かれる彼らへの批判がこれを雄弁に語る。◇この宇沢氏の、皆でハッピーになるために、各々自制心と自省心、倫理感と弱者への共感を持つべきとの姿勢は素敵。
    ファンと言ってもイイ。が、故に気になる箇所も。社会的共通資本を政治的決定する点と、社会的共通資本の目標の具体化過程だ。◇前者は農業に端的に。著者と同じく環境と農業の関連をいうならばともかく、既得権維持にしか作用しないと、著者に批判的ならどうか?◇後者は教育が想起。教育の具体的目標は何。例えば、ノーベル賞輩出の増。将来の主権者たる国民の判断能力を増進。全体の底上げ?。芸術・文学を含む人間の生きる張り合いを増す能力を身につけさせること?。◇これに著者は何も答えてくれない(著者なりの理想社会像がある故だろうが)。

  • 過去の論文などをまとめたもののようだ。そのためか、農業、都市、教育、医療、経済、環境を取り上げているが、それぞれのテーマでは細かい議論に入り込んでいる印象が強く、全体としてのまとまりが感じられなかった。

    共有地の悲劇は、オープンアクセス、コミュニティの規約の制約を受けないことを前提としている。コモンズでは人々の集団またはコミュニティが確定され、その利用に関する規制が設けられているため、共有地の悲劇は発生しない。空海による満濃池の大修築と溜池灌漑の管理のコモンズ制度は、持続可能な農の営みであった。

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著者プロフィール

元東京大学名誉教授
1928年生まれ。51年東京大学理学部数学科卒業、56年スタンフォード大学経済学部研究員、58年同助手、59年同助教授、60年カリフォルニア大学バークレー校経済学部助教授、61年スタンフォード大学経済学部準教授、64年シカゴ大学経済学部教授、68年東京大学経済学部助教授、69年同教授、89年東京大学を定年退官、新潟大学経済学部教授、中央大学経済学部教授、同志社大学社会的共通資本研究センター所長などを経て、2014年死去

「2017年 『経済と人間の旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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