原発事故はなぜくりかえすのか (岩波新書 新赤版 703)

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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307037

感想・レビュー・書評

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  • 今から12年前、福島原発から11年前に書かれた、高木仁三郎の遺書である。化学者の放射能の扱いに比べて物理学者の放射能の扱いがいい加減ということが他の本にも書かれていない。
     3.11について卒論で書こうとする学生にとって、その原発推進組織がどのようなものであったかを知るためには避けて通れない本であろう。

  • 原発事故を生む精神的土壌にまで踏み込んでいる

    公共性とはなにか、アカウンタビリティーの本来の意味は何なのか、それをどう日本や日本人は履き違えているのか、ということに言及した哲学書だと思う。

  • JOCの臨界事故の後に出版されたこの本では
    原発事故を引き起こす理由を明解にしてくれる。
    著者は元原発の技術者だけに、
    企業内部や現場での状況に詳しい。

    そもそも原発はアメリカの技術をコピーしたものに過ぎず、
    ブラックボックスも多いので企業内での
    自発的な安全性の追求がむつかしく、またその気もない。
    その予算規模や事故時の想定賠償額の大きさから
    単独企業ではリスクが大きすぎ、国が主導した
    寄り合い所帯となるので互いの、
    あるいは設計と現場の間の意思の融通に欠ける…。
    など、構造的に問題を抱えている。

    政府、電力会社、メーカーの、誰も責任を取らなくていい
    システムが、福島の惨状にまっすぐに繋がっている。

    既に予言されていたことが、いとも簡単に起きてしまった。

    残念である。

  • この本はガンで逝った市民科学者・高木仁三郎氏が闘病中に残したラスト・メッセージです。国の政策や原子力産業の問題、技術者の姿勢…。今だからこそ読んでいただきたいです。

    はじめに言っておきます。今回の福島第一・第二原子力発電所がああいうことにならなかったら、僕はきっとこの本を読まなかったでしょう。先日、地元の新聞で著者の同級生だとおっしゃる方が、コラムで取り上げていたというのもあるのですが、この本はぜひ、読んでいただきたい文献のひとつになってしまいました。肝心の内容はというと、「生涯をかけて原発問題に取り組み、ガンで逝った市民科学者・高木仁三郎が闘病中に残した最後のメッセージ。」

    ということで、僕もこの方のことはつい最近知ったばかりですが、経歴を見る限りでは、ゴリゴリの原子力関係者で、なぜ高木先生がある時期を境に反原子力の立場を貫くようになったかは残念ながら不勉強でわかりませんが、こういう本があるからこそ、『日本の原発世界一』という某ロックシンガーの歌詞のような宣伝にあーそーなんだと今まで何もしらないで電気をこうして使っていたということに読み終えたあとに少し気落ちしてしまいました。

    ここに書いてあることがもし本当だとするのだったら、今回の事故は起こるべくして起こった結果なのかなと、残念ながらそんなことを考えてしまいました。しかも、それがたまたま今回の福島だったというだけで、本当は日本全国どこだってありえたのだと言うことも考えてしまいました。それでなくてもやっぱり大なり小なりもれていたんですね。放射能って。今は責任の所在を云々するときではないのかもしれませんけれど、今回のことが『想定外』だったのか?それとも『想定の範囲内』なのか。それを判断するためにどうかご自身で目を通して判断をしていただけると紹介した身としてはこれに勝る喜びはありません。

  • 「会社の理念」にひたすら忠実に働くとは異常なことなんだ。
    本来、自分の行いが社会にどんな影響をもたらすのか、どんな意味があるのか、という自分のもたらす公益を考えて働かなくてはならない。
    それがなく、皆がただ誰かの言う「理念・方針」にしたがってだけいるから、誰も責任がとれなくなってしまうんだ。

  • 原子力産業の黎明期に携わった人だからこそ指摘出来る、現場の危機意識の欠如。ごくごく当たり前のことが出来ない原子力村の人たち。自己検証をおざなりにして来たから、福島の事故は起こったのではないのか。もう少し、生きていて欲しかった。

  • 日本の原子力政策のトップダウン的性格に起因する、責任の所在の曖昧さ、実際に放射性物質を取り扱う技術者の認識な甘さや、データの改ざんや捏造等杜撰な管理体制等をするどく指摘されていた。どれだけ科学技術が発達していったとしても、その技術を扱うのは不完全な人間であるということを忘れてはならないと思った。

  • フクシマの惨事から半年が経過しようとしている。
    何もできない私はしばらくの間、余暇を読書にあてることとした。

    核に関わる書籍との付き合いは不思議と焦燥感にかられる。
    ゆえに一気読みになってしまう。

  • 市民科学者として著名な高木仁三郎氏が、福島第一原発事故よりもずっと以前に人類に向かって発信していた警告の書。名著である。もっと早く知っておくべきだったと深く後悔。

  • 日本の政府・公的機関、原子力に関する学者、技術者の問題点が良く理解できた。

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著者プロフィール

理学博士。核科学専攻。原子力の研究所、東京大学原子核研究所助手、東京都立大学理学部助教授、マックス・プランク研究所研究員等を経て、1975年「原子力資料情報室」の設立に参加。1997年には、もうひとつのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。原子力時代の末期症状による大事故の危険性と、放射性廃棄物がたれ流しになっていくことに対する危惧の念を最後のメッセージを記し、2000年10月8日に死去。

「2004年 『高木仁三郎著作集 全12巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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