自白の心理学 (岩波新書 新赤版 721)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307211

作品紹介・あらすじ

身に覚えのない犯罪を自白する。そんなことはありうるのだろうか?しかもいったんなされた自白は、司法の場で限りない重みを持つ。心理学の立場から冤罪事件に関わってきた著者が、甲山事件、仁保事件など、自白が大きな争点になった事件の取調べ過程を細かに分析し、「自分に不利なうそ」をつくに至る心のメカニズムを検証する。

感想・レビュー・書評

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  • まず、これを全てと思ったらいけないっていうのは思うけど。
    でもそういう一面も、少なからずあるんだってことをすごく心に留めた本。
    冤罪は、自白は、作られる。
    読んでて、自分とは全く反対の立場で、しかも正義を掲げてる人と話すことの難しさを感じるのと似てるなって思った。しかも立場の上下がある中で、決めつけられていくしんどさ。
    警察のひとは、人の人生をそうやって自分が踏みにじってしまっているかもしれないという可能性を考えながら進んでいってほしいなと。
    自分が巻き込まれないために、大きな声はあげずに、見て見ぬふりをして、、自分ごとになった時、自分の大切な人が巻き込まれた時、自分はちゃんと負けずに正しくいられるのだろうか。

  • この本はすごい。信じていた足元の固い地面が急にぐにゃぐにゃと揺らいでいくような気持ちになった。

  • 「無実にもかかわらず、あえて自分に不利なうその自白をすることは考え難い。」
    一般国民はもとより、捜査機関(警察・検察)や裁判所にすらこのような「誤解」は蔓延している。


    本書は、実際の冤罪事件を題材として、人がうその自白に陥る心理的メカニズムを解き明かす。
    取調べという特殊な場の圧力によって、どんな人であっても、その自白をしてしまう危険がある。


    本書の出版以降、日本においても、被疑者国選弁護、裁判員裁判、録音録画の導入等、刑事司法制度改革が進められてきた。
    しかし、現時点(2017.3)においても、未だ取調べの全過程にわたる録音録画制度の導入までには至っていない。

    捜査関係者、法曹関係者にとどまらず、広く読まれるべき一冊。

  • 無実であっても、取り調べで得られたうその自白が証拠とされる。なぜ嘘の自白をしてしまうのか?本書は、4件の冤罪事件(内1件は再審中)の分析から、うその自白に至る過程、犯人を演じる過程を考察する。
    周りの圧力か…。ニュートラルな状況で取調べがなされるかと思ったが、どうやらそうではないらしい。犯人と決めてかかられる。無実の可能性を鑑みられることなく、進められてしまったら…。それぞれの事件の被疑者の心中を察すると、悲痛なこと極まりない。
    本著を読み、ショッキングだった。それだけ、冤罪事件に無関心、無知であったのだな。

    ・日本の有罪確定率99.9%→冤罪であっても無罪を勝ち取ることが難しいということ
    ・無実の人がうその自白に落ち、うその犯行ストーリーを語るというのは、心理的にきわめて異常な事態ではなく、犯人として決めつけられた時に誰もが陥りうる、自然な心理過程→被疑者を囲む状況の側の異常
    ・嘘は嘘である限り、本来は暴かれなければならない。しかしその嘘が本当だと思われた時には、むしろそれを促され、支えられることもある。
    ・被疑者は無実かもしれないという可能性を少しでも考えていれば、自白の嘘を暴くことはできる。ところが我が国の刑事取調べにおいて推定無罪は名ばかりで、取調官は被疑者を犯人として断固たる態度で調べるというのが常態になっている。
    ・こいつが犯人に違いないとの断固たる確信のもとに取調べが進行するとき、そこには被疑者を強く有罪方向へと引き寄せる磁場が渦巻いている。その磁場のもとにひたすら長く留めるだけで、まず大抵の人は自白に陥る。心理学的に自然な人間の姿。
    ・無実の人がうそで自白するとき、常軌を逸した状況の中で、被疑者はごく正常な心理として「犯人になる」ことを選ぶ
    ・自白して「犯人になる」と、今度はよりよく「犯人を演じる」ことを求められ、またそれに応じる以外にない
    ・状況の異常性なさらされて、どうにかそこで精神の正常を保つために自白する

  • 実に怖い本。
    ワロンの著作の翻訳者でもあった本書の著者の名前をアマゾンで検索していて、たまたま見つけたのだが、さっき読んでるとき玄関のピンポンが鳴ってびびった。新聞の集金のおばちゃんだったんだが。それくらいいつ自分の身にこういうことが降りかからないとも言えないのである。実に恐ろしい。とにかく読んだ方が良い。怖いけど。

  • 少々文体が読みづらかったが、自白について知識が皆無だったので参考になった。
    無実の人が自白に落ちるのはごく自然な現象であること、それは本人の問題ではなく確信に満ちた周りの環境が影響していること。そこからうそに落ちていく心理、そしてそれを見破るためには自白調書に無知の暴露があるかどうか。

    私は専門家ではないので、実際にこのような事件に関わることはないだろう。しかし裁判員制度や世論などで、冷静に考えられるようになりたい。

    ひとまずはこの本でレポートを書くため、さらに読み込んでいきたい。

  • 冤罪の作り方

    長時間の隔離と聴取
    + 絶対に犯人であるという取調官の確信
    =楽になりたいため、嘘の自白

    ・・・しかし、自白しても聴取は継続
    経緯、状況が説明出来ないという焦り
    (そもそも知らないものは話せない)
    +やったと自白した以上戻れないという諦め
    +状況に合う供述が欲しい取調官による添削
    =手探りで状況に合う説明を創作
    強力な証拠となり冤罪確定

    怖い。
    し、なんか会社の仕組みにも同じようなものがある気がする。過去の報告と合わない、とか。

  • 証言のあやふやさだけでなく,無実の人が自白させられ,自白に合わせたストーリーを作り上げる事象を紹介。

  • 疑われて自信を失い犯人と思い込む
    宇和島事件では、捜査官と号泣して自白
    甲山事件 検審バック、僅かに自白、死亡児童が転落したとの新供述
    仁保事件 6人殺し、自白テープはあったが、信用性否定
    袴田事件 4人殺し、著者が、鑑定人となり、本書も新証拠として提出わ

  • 735円購入2010-06-04

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著者プロフィール

1947年生まれ。発達心理学・法心理学者。現在、兵庫県・川西市子ども人権オンブズパーソン。発達心理学の批判的構築をめざす一方、冤罪事件での自白や目撃の心理に関心をよせ、それらの供述鑑定にも関わる。「自白の心理学」「子ども学序説」(岩波書店)「「私」とは何か」(講談社)ほか著書多数。

「2012年 『子どもが巣立つということ この時代の難しさのなかで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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