偶然性と運命 (岩波新書)

著者 : 木田元
  • 岩波書店 (2001年4月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307242

作品紹介・あらすじ

恋人たちはなぜ、偶然にすぎない出逢いに「運命」を感じるのか。その瞬間、二人の内面では何が起きているのか-。この問いを手がかりに、ショーペンハウアー、ニーチェ、ドストエフスキー、ヤスパース、ハイデガー、九鬼周造ら、近代理性主義の克服をめざした思想家がくりかえし思索のテーマとしてきた「偶然性」と「運命」の問題に迫る。

偶然性と運命 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • われわれが単なる偶然にすぎない出来事に運命を感じるのはどうしてなのかという問題を、主として西洋の実存哲学を参照しながら考察している本です。

    著者はハイデガーの『存在と時間』を参照し、そこで現存在の根底に「時熟」すなわち「おのれを時間化する」という時間構造を見出していることに注目します。こうした人間存在の時間構造に基づいて、未来への投企と過去の反復によって外的で偶然的でしかない「めぐり逢い」が整理しなおされ、いわば生きなおされることで、あたかも自分のこれまでの体験の内定展開の必然的到達点であるかのような意味を与えられることになると著者は論じています。さらに著者は、九鬼周造の偶然論や、「生」を根源的存在とみなすドイツの形而上学伝統の系譜を整理しながら、偶然についてこれまで哲学者たちがおこなってきた思索を整理しています。

    最後に、著者自身も若い頃に大きな影響を受けたドストエフスキーの作品のなかから、『悪霊』におけるスタヴローギンと『カラマーゾフの兄弟』におけるコーリャのエピソードを対照的な仕方で参照しながら、固く閉ざされた自我の構造が他者との邂逅によって打ち破られることの意義について考察をおこなっています。

    実存哲学に依拠した偶然論・運命論として、興味深く読みました。ただ、さまざまな領域においてアーキテクチャによる宿命論の内面化が生じている現代的な状況にも目を向けて、本書の議論がどれだけの射程を持っているのか測りなおす必要があるようにも感じました。

  • 2001年刊行。著者は中央大学名誉教授。◆ある人にとって偶然というべき出来事が、運命と感じさせる場合がある。その感覚的な現象は、それ以外とどのように区別できるか。あるいは運命と感じさせるものの本質は何か。このようなごく普通に体験する事柄をネタにして、哲学的な思考方法を開陳して見せる。◆客観的な因果性はそれこそ無限に存在する中、偶然性は予見の欠如、その一方で、運命と感じさせるものは、過去から持ち続けてきた(つまり記憶)モノの中で、良きものとしていたモノとの近接性の大小なのではないか。という印象が…。

  • ハイデガーや九鬼周造における、時間・偶然性・運命についての論述。本来的時間と非本来的時間の区別など。ベルクソンとの比較可能。

  • 「運命」についての疑問提起から、偶然性の議論を展開し、運命に関するこれまでの思想史に立ち返りつつ筆者の考えをまとめている。筆者自身が述べている通り、運命における謎は明確の答えを持たない議論になりやすいが、筆者なりの考えは最後に分かりやすく述べている。非常に難解な引用が多く、筆者が噛み砕いて分かりやすくまとめている部分もあるが、哲学書に慣れていなければ一度では読み切れない難しさもある。

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  • ハイデガー、九鬼周造の時間論などかなり難しい哲学的な論文ですが、ドストエフスキーの小説の中から2つの邂逅の説明が新鮮です。「悪霊」スタヴローギンとマトリョーシカ、「カラマーゾフ」コーリャとイリューシャ。破滅と救済に至る分水嶺ともいうべき2つの対照的な出会いです。カラマーゾフの続編で主人公となるべきだったコーリャの「秘密」が少し理解出来たように思います。あとは難しくて理解出来ないことが多かったのですが、ハイデガーの過去・現在・未来ではなく、将来と既在に分けるユニークな時間論。またお互いに尊敬し合った九鬼の親密な関係のみ理解しました。

  • メモ。
    運命のように感じられるとは何か。人間はある未来を見ることから、そばにあるものとしての現在、既にあったものとしての過去=既在を構成する。そのメカニズムによって、かつては連関していなかった過去同士が有機的に結びつくことによって運命感が生まれる。

    必然性の三様態。論理的必然性、経験的必然性、形而上的必然性。対応してそれぞれ定立的偶然、仮言的偶然、離接的偶然をなす。
    論理的必然性は三角形と三つの線で囲まれたという特徴、というように本質的関係を示す。偶然性はイデアと個物の関係。概念と非本質的徴表。経験的必然性は因果的必然性と目的的必然性で、その反対にある原因から当然と思われていない帰結が現れることや、ある目的ー手段からいつだつする事象が起こること。形而上的必然性は、すべての事物それ自体のあいだを支配している必然性=決定論のことであり、形而上的偶然性はその究極的な原因の根拠のなさのこと。偶然とは「偶」=「遇」であり、二つの系列の出会い。

    運命について、いろんな思想家を手早くまとめる。特に僕にとってはジンメルが考えるに値する。

    そういった問題系のよい手引き。木田元はやっぱりまとめるのがうまい。

  • 10年の時をへだてて読了。感無量。

    もっと、人間の意識をこねくり回した考察になるかと思ったが、それほどでもなかった。福田恆存の「人間・この劇的なるもの」のほうが、ずっと、感覚的であるようでいて、実は論理的ではないかと思う。その意味で、本書では、福田恆存の本を取り上げてほしかった。

  •  この本は著者の木田元さんも本文中で書いてる通り、哲学的考察で偶然なり運命に解決を見るものではなくて、大まかに「運命」をテーマに取り上げた四つのエッセイと捉えてさくさく進めるような読み方が良さそう。
     ……だと思うんですが、この本に関しては前提として少なくともハイデガーの時間論の「sich zeitigen(おのれを時間化する)」とかいった辺りの考えを消化して何を言わんとしているかのイメージができるレベルでないと筆者の考える運命がちゃんとは理解しにくいように感じました。
     人間を、「……と共にある」生まれながらの社会性動物と捉え、それが自己であったり他者と出会うことで世界へと開かれていく。個人の歴史の意味をを過去・未来にわたり書き換えるその出逢いこそ運命と言う、ってことなのかな。
     自己と他者のテーマにも触れる問題でもあるようなので時間論なりもっと勉強し直してから再び挑戦してみたいです。
     P.S.あとがきの解説から読むと読み始めやすいように思いました。

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階 学士力支援図書コーナー 請求記号:112//Ki12

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