植物のこころ (岩波新書 新赤版 731)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307310

作品紹介・あらすじ

「人間は考える葦である」といわれる。それでは「葦」に代表される植物とは、どのような生き物なのだろうか。彼らは考えることをしないし、感情も持たない。けれどもその感覚は鋭く、生活のプログラムは精妙に組まれており、クローンで増える能力さえある。これら植物たちの知られざる生の営みをつぶさに紹介し、生命の本質を説く。

感想・レビュー・書評

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  • テレビで塚谷先生を拝見する機会があり、その決して驕らない人となりに惹かれて。
    優しい語り口で植物の世界を垣間見させてもらった。
    進化を知る、生き方を知ることで植物がこれまでよりずっと親しい存在になった。日常に植物は溢れているのに、見ていたようで見ていなかったことに気づく。

  • 植物のこころ 塚谷裕一(著)

    おもしろい。植物は、不思議な国、ワンダーランドである。

    三島由紀夫の言葉で始まる。
    『しかし植物の魂といふものは 、ひょっとすると極めて残忍なものかもしれない。
    樹木が静かな様子をしているのはそのせいかもしれない。』

    植物は死ぬと言わずに枯れるという。
    動物の生とは違ったものとしてとらえられている。
    感情のやり取りができる、感情移入ができることと
    植物が生きているのとは違う。

    生命とは、自己複製とたいしゃののうりょくをもち、
    細胞構造を有するものを生物とする。
    生物は、すべて、同じメカニズムの中にある。
    パスカルは、人間は考える葦だと言った。じつは、植物の生命と動物や人に生命とは、そんなに違わない。

    クーロンが、危険だと言われているが、植物の世界では 、無性繁殖のものは多い。
    植物にとって個とは、クーロンでなんで悪い。
    ここで、塚谷は、いう。
    『これまで日本では、科学の進歩に対して疑問を感じることが、文化人の必須条件とされているかのような風潮が続いてきた。その行き過ぎを解決できるのは、やはり科学である。』
    この文章の切れ味は良い。

    ラメットとジェネット。
    自然選択の標的は、一個体一個体 である。
    そうであるとしたら、有性繁殖 よりも、無性繁殖の方が効率はいいはずだ。
    突然変異は、無方向 に起き、意図的にはできない。

    ヒルガタワムシ 3500万年から4000万年前から無性繁殖。

    植物は融通無碍である。
    植物は動物とにアナロジーでいえば、大人になることにない生物である。
    動物は、性的に成熟した後は、もう老いるだけである。
    花についていえば、融通がきかない。あらかじめ決まった形となる。
    エボデボ。Evolution Deveropment

    花の形の進化は、案外少数の遺伝子に変化で引き起こされてきたのかもしれない。
    自主的に花を形成する経路と外の環境に応じて花を形成する経路。
    春化依存経路と光周期依存経路。

    植物には感覚がある。
    重力、コルメラ細胞、アミロプラスト。
    光受容体、フィトクロム、クリプトクロム。
    音、カルモジュリン。

    環境ストレス。
    植物の生き方の基本的な仕組みがわからなければ、農業への応用もむつかしい。

    つる植物、着生、寄生、腐生。食虫植物。
    だます植物は、双方の誤解にもとずいた、結果。
    アリ植物とダニ植物は、おもしろい。
    昆虫との共進化。
    イヌビワとイヌビワコバチの関係。

    無駄な努力をしないのが自然選択のもとでの原則である。
    花の色に変化は、虫に対する合図。
    収斂進化と適応進化。

    やぁ。実に、進化論を十分に理解した上での植物論だ。
    やりますね。

  • 「植物のこころ」塚谷裕一著、岩波新書、2001.05.18
    218p ¥735 C0245 (2022.08.03読了)(2022.07.29借入)
    樹木や野草についての本は読んだことがあっても、植物全体を考える本は読んでこなかったので、読んでみることにしました。
    なかなか興味深く読むことができました。遺伝子レベルでの操作もある程度できるので、植物の研究方法もずいぶん変わってきているようです。

    「生物」の定義(8頁)
    「自己複製と代謝の能力を持ち、細胞構造を有するものを生物とする」
    植物は大人になることがない生物(38頁)
    植物は動物とのアナロジーでいけば、大人になることのない生物ということもできよう。いや、体のあちこちではたえず大人びた器官、たとえば花とか葉とか実とかを作ってはいるのだが、その一方で枝々の先や根の細かい先の方に、動物の胚と同じ状態の組織が保たれ続けているのである。老若入り乱れた状態、これが植物の体というわけだ。

    【目次】
    はじめに―植物の生命
    Ⅰ 存在
    1 個のありかた
    2 性の意味
    3 融通無碍な体―全能性
    4 花の設計図
    5 花芽を作るとき
    6 世界をとらえる―光・重力・音
    Ⅱ 戦略
    7 天へ向かって―「つる植物」の生き方
    8 利用できるものは利用する―着生・寄生・腐生
    9 入居者募集―アリ植物とダニ植物
    10 捕らえる―食虫植物
    11 ポリネーター―昆虫を利用する花1
    12 だます―昆虫を利用する花2
    Ⅲ 適応
    13 ヒマラヤの高みで
    14 水の中で生きる
    あとがきにかえて
    参考文献

    ☆関連図書(既読)
    「名前といわれ野の草花図鑑(上)」杉村昇著、偕成社、1985.04.
    「名前といわれ野の草花図鑑(下)」杉村昇著、偕成社、1985.04.
    「名前といわれ野の草花図鑑(続編1)」杉村昇著、偕成社、1987.10.
    「名前といわれ野の草花図鑑4(続編の二)」杉村昇著、偕成社、1990.06.
    「植物知識」牧野富太郎著、講談社学術文庫、1981.02.10
    「春の草木」宇都宮貞子著、新潮文庫、1985.02.25
    「夏の草木」宇都宮貞子著、新潮文庫、1984.06.25
    「秋の草木」宇都宮貞子著、新潮文庫、1984.08.25
    「冬の草木」宇都宮貞子著、新潮文庫、1984.12.20
    「スキマの植物図鑑」塚谷裕一著、中公新書、2014.03.25
    (「BOOK」データベースより)amazon
    「人間は考える葦である」といわれる。それでは「葦」に代表される植物とは、どのような生き物なのだろうか。彼らは考えることをしないし、感情も持たない。けれどもその感覚は鋭く、生活のプログラムは精妙に組まれており、クローンで増える能力さえある。これら植物たちの知られざる生の営みをつぶさに紹介し、生命の本質を説く。

  • 植物には心があると言った似非科学的な内容を期待して読みましたが、色々な進化の形を教えてくれます。面白い!

  • これは名著でした。読んで良かった。

    著者は植物学の権威、東大教授の塚谷祐一さん。放送大学の塚谷さんの講義がおもしろかったので興味を持ち読んでみました。さすが権威の方、深く理解している方は非常にわかりやすく、かつおもしろく語ることができるという良い例だと思います。こういう方の講義を学生の頃に聞いたらもっと植物に興味を持っただろうな、と思います。

    塚谷さん、小さい頃から植物に興味を持っていたとのことです。男の子にしては珍しいなと思いましたが、最初は昆虫少年で、そこから派生して植物に興味を持つようになったとのことです。

  • [ 内容 ]
    「人間は考える葦である」といわれる。
    それでは「葦」に代表される植物とは、どのような生き物なのだろうか。
    彼らは考えることをしないし、感情も持たない。
    けれどもその感覚は鋭く、生活のプログラムは精妙に組まれており、クローンで増える能力さえある。
    これら植物たちの知られざる生の営みをつぶさに紹介し、生命の本質を説く。

    [ 目次 ]
    1 存在(個のありかた;性の意味;融通無碍な体―全能性 ほか)
    2 戦略(天へ向かって―「つる植物」の生き方;利用できるものは利用する―着生・寄生・腐生;入居者募集―アリ植物とダニ植物 ほか)
    3 適応(ヒマラヤの高みで;水の中で生きる)

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  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:471||T
    資料ID:95010106

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著者プロフィール

1964年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。現職は東京大学大学院理学系研究科教授。岡崎統合バイオサイエンスセンターおよび放送大学客員教授も努める。おもな著書に、『漱石の白くない白百合』(文藝春秋)、『変わる植物学、広がる植物学』(東京大学出版会)、『スキマの植物図鑑』(中公新書)など。趣味は、植物に関するさまざまなこと、エッセイ書き、おいしいもの探索など。

「2018年 『多様な花が生まれる瞬間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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