定常型社会―新しい「豊かさ」の構想 (岩波新書)

著者 : 広井良典
  • 岩波書店 (2001年6月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307334

作品紹介

経済不況に加え、将来不安から閉塞感をぬぐえない日本社会。理念と政策全般にわたる全体的構想の手掛かりは何か。進行する少子高齢化のなかで、社会保障改革はどうあるべきか。資源・環境制約を見据えて、持続可能な福祉社会のあり方を論じながら、「成長」にかわる価値の追求から展望される可能性を提示する、問題提起の書。

定常型社会―新しい「豊かさ」の構想 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • はっきり言って僕にこの本をしっかり読むだけの社会的知識はなかった。でも、このタイトルにひかれてとりあえず読み始めた。小泉首相は「構造改革、構造改革、改革なくして成長はない」などと言っている(2001年9月現在)。しかし、本当に成長する必要はあるのだろうか。もう十分成長したのではないか。これからは、NPOなどをはじめとして、あまり余分な利益を追求しない社会が求められるのではないだろうか。利潤を追い求めたことで私たちには環境問題というツケが回ってきた。すでにそのことに気付いている人は多くいるはずだ。なのに、なぜ、我が国の首相はいまだ同じことを繰り返そうというのか。アメリカはなぜ、環境を無視して自分たちの利益を求めるのか。私たちの必要なのは、もはや物質的豊かさではない。精神的な豊かさが必要だ。それは言い換えると、時間的な豊かさと言えるかも知れない。朝早く出勤して、終電で自宅に帰り(帰れるだけまし?)、家には寝に帰るだけというお父さん、それがあなたにとっての幸せですか?子どもと接する時間が全く持てなくて幸せと言えますか?「ほっとけ、幸せは人によって違う。」と、おっしゃる方もいるかも知れません。それはそうでしょう。それでもやはり、社会は違う方向に向かっていると思われます。時間的なゆとりが必要です。特に30代、40代の親は子供と接する時間をたっぷり持ちたいものです(もっとも働き盛りではあるのだけど)。そのためにも、日本で成功するかどうか分かりませんが、「ワークシェアリング」などの発想で、働く時間を減らすべきです。収入はいくぶん減るでしょう。でも、きっと心のゆとりは増えると思います。案外お金をかけなくても、幸せな気分は味わえるものです。また身近な地域社会で「相互扶助」的な活動が行われるようになると、お金のためではなく、自分の得意な分野で他人に何かをしてあげ、その分で他人から何かしてもらうこともできるようになるでしょう。地域通貨というシステムがその仲介になるかも知れません。少し時代をさかのぼれば、そういう世の中もあったのでしょう。いまから電気のない社会にもどすことはできません。でも、気持ちの持ち方を少し変え、社会のシステムを大きく変えると、ずいぶんとたくさんの人が幸せを感じられるようになると思うのですが、どうでしょう。経済や社会保障について自信のある方、あるいは将来勉強しようという方は本書を一度読んでみて下さい。そしていろんな意見を聞かせて下さい。待ってます。

  • 今年、パラダイムの転換を予感させる、「ポスト資本主義」という本を出した著者の、2001年の著作。同じ岩波新書から出ている。
    十数年前の本作でも、成長一辺倒で突き進んできた「資本主義」が、人口動態からの需要の限界や、地球環境の限界から、成長が頭打ちしており、今後「定常化」せざるを得ないという主張がなされ、最近作と同じものであった。以前より、分かる人には分かっているものであり、現実や社会の大勢の感覚が、ようやく追い付いてきたのだと思う。
    最近作では、拡大・成長と、成熟・定常を繰り返す歴史のサイクルを受けて、この次にくるのが、定常ではなく、技術的特異点(シンギュラリティ)が来るといった議論も紹介している。いわゆる、ポスト・ヒューマン的な断絶が来る想定で、著者は否定しているのだが、さすがにこちらにはまだその手の議論はなかった。
    最近作になかった点で、参考になった点としては、「機会の平等と潜在的自由」の議論があった。
    公平にするということは、一方で自由の侵害であるとし、公平や平等と自由を対立するものとする考えがある。しかし、機会の平等が保証されていなければ、それは個人の(潜在的な)自由の浸食を意味し、実は、自由と平等は重なり合う概念であると指摘している。こうした認識に基づいて、社会保障制度の見直しなどが必要であると指摘していた。
    今後も、もちろん科学・技術的な発展もあるだろうし、当然、そうしたものから得られる豊かさも期待できる。しかし、現代が向き合っているのは、成長か定常かといったレベルを超えて、社会制度を成り立たせるわたしたちの価値観や認識の変革であると感じた。

  • 問題意識を持つ大切さを思い出させてくれた書。

    このまま「成長」信仰でいいのか?より根源的な豊かさがあるのではないか?理想論でなく、時代の趨勢として、そのような問いに答えていく針路が見えた。

    ・介護に加えて、相続の社会化。
    ・障害者福祉も、事後的な保障ではなく、機会の平等のための支援策と考える。
    ・人件費を高くし、エネルギー費用を低く抑えるため、自然資源を使いすぎ、人間の労働力を十分使わないのが、現在の税制や社会保険料。
    ・地域が再び前面に出ている。1.高齢化=生産人口の減少:高齢者と子どもは土着性が高い。2.雇用の流動化と形態の変化。3.情報化
    ・エコマネー=地域通貨。交換・決済機能は持つが金融=信用創造機能は持たない。
    ・21世紀後半に向けて、世界は高齢化が高度に進み、人口や資源消費も均衡化するような、ある定常点に向かいつつあるし、そうでなければ持続可能ではない。
    ・経済成長はナショナリズムと関連。
    ・1.共同体からの離陸。2.土地などの自然的制約からの離陸。3.物質からの離陸=情報消費 =>拡大・成長の歴史(200~300年)
    ・生物として生きていくのに必要な量の40倍ものエネルギーを人間は消費。かつてより40倍も時間が早い。
    ・ケアという営みにおいて本質的な意味を持つものは「時間」という要素。遊び、自己実現も。
    ・成長が目標であり限り、都市に求心力が働き、地方分権は進まない。

  • ものすごいスピードで少子高齢化が進む日本はもう、高度経済成長やバブルにはならないと思ってる。だけど、偉い人が打ち立てる政策はかつての夢再びというようなものでガッカリする。14年前に書かれたこの本では、富の再分配と持続可能な福祉社会を目指すことの利点を紹介しているが、最初はちょっと難しいと感じても、物質でなく時間の消費にプラスの意味で価値を目指すとわかった点で、この「定常型社会」には今後の世界を生きることに様々な可能性がこめられていると思った。急な転換は難しくても、みんなが無理せず楽しく暮らしていける未来が楽しいに決まってる!

  • 定常型社会
    ①「マテリアルな消費が一定となる社会」…情報化・環境効率性
    ②「量的拡大を基本的な価値ないし目標としない社会」…時間の消費
    ③「〈変化しないもの〉に価値を置くことができる社会」…根源的な時間の発見

    「豊さ」とは何か。自分の価値観とすごく合致する。
    しかし、パイの拡大を続けなければ市場経済は成立しないという、資本主義論者を論破できない…

  • 世の中のベクトルが大きく変わる、そんな節目にあることを確信させてくれた本です。私の「豊かさ」の感性の原点がここにあります。

  • 以前から広井良典氏の著作には関心があり、初めて読んだのがこの一冊。

    「持続可能な福祉社会=定常型社会」という概念を軸に据えながら、社会保障、環境、コミュニティなどについても述べてある。

    話がかなりいろんな方向に波及しており、論の根拠があまり示されていないような箇所もあったが、非常にわかりやすく、構想自体もとても魅力的なものであった。

    「学びの流動化」「時間の消費」といった、これから学んでいくうえでも重要な概念を得ることができた。哲学的な内容にもっと踏み込んだ彼の著作もぜひ読んでみたい。

  • この本は、「環境―福祉―経済(市場)」という視点から、経済成長をしない定常的な社会での福祉や環境の在り方を書いています。

    近年でこそ「幸福度」や「豊かさ」と言う概念が注目されていますが、この本は定常型社会と言う、より全体的な社会の姿をイメージ的に提言していると思います。

    ただ、時間観や「過去に対する社会保障」など、僕自身がまだ理解できていない部分があるので、もう少し読み込みたいところです。

  • 【資料ID】25338
    【分類】364/Ko37

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