定常型社会 新しい「豊かさ」の構想 (岩波新書)

  • 岩波書店
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307334

感想・レビュー・書評

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  • ★本書のメッセージ
    「成長」に代わり「定常」であることを新しい豊かさとよう

    ★読んだきっかけ
    戸田氏の『働く理由』に引用されていたため。今後の社会において、どういった働き方をしたいのか考えたく、読んでみた。2001年に書かれた内容であるが、現在にも十分通ずる内容。そう思うと、今の政府の在り方・価値観は全く転換するに至ってないのだと分かる

    ★本の概要・感想
    人口が減少し、GDPも伸びていかない社会で、どのような国・政策の在り方がよいかを考える。社会保障や政策の知識が無いとスムーズに理解するのは難しい。
    ムリに成長を志しても苦しいだけだろうなぁ。

    ★本の面白かった点、学びになった点
    *「成長」という概念の位置づけ自体が、実は経済学の理論パラダイムの中では必ずしも重要視されていなかった、ということ
    ・経済成長に価値があるとされたのは、失業問題との関連である
    ・実物経済で需給が均衡しても労働市場が均衡するとは限らず、そのため政府が追加投資を行って実物経済を高い水準に引き上げる必要があった
    →労働市場が改善されていないのであれば、経済成長には本来の意義はかなり弱まる

    *定常型社会とは変化のない、退屈な社会ということではない
    ・量的な変化は志向しないが、質の変化は継続しておこるものとなっている

    *もともとヨーロッパにおいては、大きな政府を志向する社民系も、小さな政府を志向する保守系も「経済成長を志向する」という観点では共通に意識していたこと
    ・経済成長をより効率的に達成する手段として、自由放任なのか、ケインズ的積極的財政政策を取るのか、といった違いなのである

    *不断の経済成長は「人間の需要は制限なく拡大する」ことを前提に考えられていたため、現在はその仮定にムリが出てきている

    *本質的な現代の先進国の課題3つ
    ・外的な課題ー資源が有限であること
    ・内的な課題ー人間の欲望、消費需要が無限に拡大しないこと
    ・分配の課題ー富の総量を増やしても、きちんと、貧富の差が埋まるようには分配されないこと

    *定常型社会の3つの意味とその条件/根拠
    ・第一の意味「マテリアルな消費が一定となる社会」
    →脱物質化← 情報化や「環境効率性」の追及を通じて
    ・第二の意味「経済の量的拡大を基本的な価値ないし目標としない社会」
    (=脱量的拡大)←「時間の消費」を通じて
    ・第三の意味「<変化しないもの>にも価値を置くことができる社会」
    ←「根源的な時間の発見」を通じて、行われるものとなっている

    ●本のイマイチな点、気になった点
    ・そんなに簡単な本ではない。社会保証やサステナビリティ、マクロ経済学の知見がベースに無いと理解できない
    →勉強し直して、また今度よもう

    ●学んだことをどうアクションに生かすか
    ・社会保障の政策についてもう一度考えたいと思った際、もう一回読みたい
    ・やっぱり、いまだに物質的な成長、量的成長だけをひたすらに志向するのはナンセンスっすよね

  • ・2023年 明治学院大学 社会学部 社会福祉学科 B日程
    ・2018年 名古屋大学 法学部 前期

  • 内容は素晴らしいが、定常型という呼称が馴染ます、再考の余地があるのではと感じた

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/61764

  • 内容:
    「(経済)成長」・「物質的な富の拡大」という目標が機能しなくなった現代において、「定常型社会」という新しいコンセプトを提示する

    MEMO:
    ・定常型社会
    ① マテリアルな(物質・エネルギーの)消費が一定となる社会
    ② (経済の)量的拡大を基本的な価値・目的としない社会
    ③ <変化しないもの>に価値をおける社会

    ・情報の消費から、時間の消費。
    ・ひいては、経済とは離れて、時間自体を楽しむこと。

    ・福祉政策が需要の増加(経済の拡大)に寄与する点をあらためて認識できて面白かった;

  • [第1刷]2001年6月20日

  • 2021.72
    ・ゼロ成長社会。
    ・人と環境、人と人の問題に収束する。
    ・自然とつながることで長い時間軸を取り戻す。

  • 2004/04/30読

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784004307334

  • はっきり言って僕にこの本をしっかり読むだけの社会的知識はなかった。でも、このタイトルにひかれてとりあえず読み始めた。小泉首相は「構造改革、構造改革、改革なくして成長はない」などと言っている(2001年9月現在)。しかし、本当に成長する必要はあるのだろうか。もう十分成長したのではないか。これからは、NPOなどをはじめとして、あまり余分な利益を追求しない社会が求められるのではないだろうか。利潤を追い求めたことで私たちには環境問題というツケが回ってきた。すでにそのことに気付いている人は多くいるはずだ。なのに、なぜ、我が国の首相はいまだ同じことを繰り返そうというのか。アメリカはなぜ、環境を無視して自分たちの利益を求めるのか。私たちの必要なのは、もはや物質的豊かさではない。精神的な豊かさが必要だ。それは言い換えると、時間的な豊かさと言えるかも知れない。朝早く出勤して、終電で自宅に帰り(帰れるだけまし?)、家には寝に帰るだけというお父さん、それがあなたにとっての幸せですか?子どもと接する時間が全く持てなくて幸せと言えますか?「ほっとけ、幸せは人によって違う。」と、おっしゃる方もいるかも知れません。それはそうでしょう。それでもやはり、社会は違う方向に向かっていると思われます。時間的なゆとりが必要です。特に30代、40代の親は子供と接する時間をたっぷり持ちたいものです(もっとも働き盛りではあるのだけど)。そのためにも、日本で成功するかどうか分かりませんが、「ワークシェアリング」などの発想で、働く時間を減らすべきです。収入はいくぶん減るでしょう。でも、きっと心のゆとりは増えると思います。案外お金をかけなくても、幸せな気分は味わえるものです。また身近な地域社会で「相互扶助」的な活動が行われるようになると、お金のためではなく、自分の得意な分野で他人に何かをしてあげ、その分で他人から何かしてもらうこともできるようになるでしょう。地域通貨というシステムがその仲介になるかも知れません。少し時代をさかのぼれば、そういう世の中もあったのでしょう。いまから電気のない社会にもどすことはできません。でも、気持ちの持ち方を少し変え、社会のシステムを大きく変えると、ずいぶんとたくさんの人が幸せを感じられるようになると思うのですが、どうでしょう。経済や社会保障について自信のある方、あるいは将来勉強しようという方は本書を一度読んでみて下さい。そしていろんな意見を聞かせて下さい。待ってます。

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著者プロフィール

広井 良典(ひろい・よしのり):1961年生まれ。京都大学人と社会の未来研究院教授。専攻は公共政策、科学哲学。環境・福祉・経済が調和した「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱。社会保障、医療、環境、都市・地域等に関する政策研究から、ケア、死生観、時間、コミュニティ等の主題をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。著書『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で大佛次郎論壇賞受賞。『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)でエコノミスト賞、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社、2019年)で不動産協会賞受賞。他に『ケアを問いなおす』(ちくま新書)、『ポスト資本主義』(岩波新書)、『科学と資本主義の未来』(東洋経済新報社)など著書多数。


「2024年 『商店街の復権』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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