放射線と健康 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307457

作品紹介・あらすじ

検査や医療などで放射線を浴びる機会はますます多くなっている。また原発事故や医療事故のニュースは跡を絶たない。被曝による傷害やがんのリスクはどのくらいあるのだろうか。遺伝への影響も気にかかる。安心して医療を受け、日常生活を送れるように、目に見えない放射線の実体や身体・環境への影響、さまざまな単位をやさしく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 94円購入2014-02-17

  • 福島第一原発事故の後に、放射線と健康影響について、たくさんの一般向け解説本が出版されたと思うが、それらの内容では物足りないという方におすすめ。放射線の発見から利用、定量の苦労や単位といったことからリスクの考え方まで、歴史的経過を踏まえて詳しく解説されています。
    Sv(シーベルト)とGy(グレイ)の使い分けや、科学者がより安全側に健康影響を見積もり、規制を決めていることもよくわかります。
    もちろん急性被ばくによる確定的影響も詳述されています。医療事故などで、大量の放射線を浴びて消化管の細胞死によって亡くなる方などの症状は大変痛ましい。

  • 放射線影響のLNT(直線しきい値なし)仮説には批判的立場。確定的影響だけでなく、確率的影響にLNT仮説をあてはめることへも疑問を投げかけています。
    実証データもあり論理的な説明ではあるけど、ただ子供への(特にアルファ線による)影響についてはやはり気になるところ。
    500ミリシーベルトの放射線より、タバコのほうがよっぽど肺がん発症リスクが高いことは深く納得。

  • 「放射線と健康」

    だいぶ今さらなトピックな気もしますが、サークルで扱ったので。

    ① 放射線が人体に影響するメカニズム

    放射線にも三種類あるが、いずれも共通するのは活性酸素をつくることである。放射性物質から放出された粒子が人体を構成する分子に衝突すると電子をはじきだす(イオン化させる)。衝突する分子が水分子だった場合イオン化されると活性酸素になり、この活性酸素が遺伝子などの生体分子を傷つける。放射線が直接遺伝子に作用し傷つける場合もある。活性酸素というのは通常状態の人体でも生成されている物質だが、放射線によって発生する場合は短期かつ局所的であるため生体分子にもダメージが大きくなる。

    ② 確率的影響と確定的影響

    こうしたプロセスを経てもたらされる影響は二種類に分類することができる。基準は「しきい値を持っているか」であり、しきい値とは「これ以下の放射線量では影響が発現する確率がゼロで全く安心」という値である。しきい値を持つ確定的影響の中には火傷・出血・胎児への障害などの早期影響と白内障などの晩発影響がある。これについては少ししきい値の実際の数値を見てみれば現段階で心配する必要は全くないことがわかる。
    しかし多くの人が関心を抱いているのはしきい値を持たない確率的影響であろう。発現する症状としてはガン・白血病・代謝異常や軟骨異常などの遺伝異常がある。確率的影響は基本的には大量に浴びれば浴びるほど確率は上昇する。とはいえ少量の放射線の影響はよくわかっていないというのが現状である。ある程度の量で分かっている確率の上昇はいかほどかと言うと、100~200mSv/年(一部の症状のしきい値を超え確定的影響まで発現するレベルの放射線量)で発ガン確率が8パーセント上昇する。これよりもっと少ない放射線量についてこれより影響がすくないのは確かだが、比例関係が成立しているとは言えない(わからない)。ただこのしきい値をこえた放射線量ですら8パーセント程度の上昇というのは個人的にはとるにたらないように感じるのだが、そこはもう本当に個人差なのだろう。そもそも国際基準として設けられている許容量というのはこの「どれだけ気にせずに我慢できるか」という感覚の暫定的基準として設けられたものなのだ。この許容量としきい値の違いが明確でないひとは多いだろう。

    ③よくある誤解
    被ばくした段階で妊娠している場合を除いて「放射線の影響で将来の自分の子供が奇形のような障害を持って生まれてしまうのでは?」という心配は杞憂である。ショウジョウバエの精巣に放射線をあてる実験をした際には確かに奇形個体がうまれる例があった。ただハエよりはヒトに近いと言えるマウスではそのような例は確認されなかった。また広島長崎での九万人の被曝者ののちの子孫で奇形児の出産の割合が特段高いといった事実はない。この違いがどういったメカニズムによってもたらされるものかも詳しくは究明されていないが、実際に現状としてそうした例は報告されていないのである。

  • 原発問題に詳しい方から勧められて読んだ。なかなか分かりやすかった。

  • 日経サイエンスの書評で拾った本。
    新しい本ではない。が、チェルノブイリや東海村臨界事故よりは後に書かれた本。事故の重大さを踏まえつつも、冷静な筆致で書かれているとして推されていた(と思う。雑誌を処分してしまったので正確な評を確認できず、失礼)。

    著者は放射線医学の専門家。
    放射線傷害の治療というより、放射線を利用した治療を専門とされているようだ。もちろん、治療に付随する傷害・障害というのもあるわけだが。
    本書は、放射線と医学の歴史、日常の放射線、放射線を利用した治療、放射線による障害等に関して述べている。

    大事な点は:
    ・「確定的障害」(急性の大量の被曝によるもの)と「確率的障害」(比較的低い線量の被曝による長期的影響)を分けて考える必要がある。いずれにしても、放射線によって遺伝子に傷が入ることが大きい。
    ・「確率的障害」については、以前言われていた遺伝的影響よりも、癌に関する影響の方が重視されてきている。
    ・確定的影響とは異なり、確率的障害に関しては、どこまでは安全という閾値は設定されておらず、影響が線形であると仮定されている。

    *思ったよりも読み終えるのに時間が掛かってしまった。これは本書のせいと言うよりも、自分が放射線の単位についてよくわからず、調べたりしていたため。ベクレルからシーベルトに換算するのに使用する実効線量係数は、モデルやシミュレーションや追跡調査を元にしており、改訂されることもあるようで、要するに暫定的・推定上のものという理解でよいのかな・・・?

    *核種や線種、測定法について、もうちょっと勉強すると、整理されてくるだろうか(>自分)。

    *ブラジルであった一般人の被曝事故の話は本書で初めて知った。痛ましい事故だ。

  •  放射線医療に長年携わってきた著者の手による、放射線とその健康への影響をわかりやすくまとめた解説書。「放射線とは何か」ということをかな詳しめに紹介することから始まって、多くてわかりにくい単位のお話、放射線治療の試行錯誤の歴史、健康への確定的影響や確率的影響などを一通りまとめていく。
     放射線による健康への影響を一通りの知識として持っておきたいという人にはお勧めではあるが、若干専門的でわかりにくいように感じる部分がそこそこあったのが微妙なところ。とくに単位をしっかり説明した後ではあるが、事例に応じてシーベルトもグレイも使うのは(健康への影響の種類によるためという理由はわかるが)結構読みにくかった。しかし、確定的影響と確率的影響の2種類があることなど、絶対に押さえておきたい知識などはしっかりと書かれていると思うので、ちょっとむずかしめのところはあるものの悪くはない一冊だと思う。

  • 4004307457 237p 2001・8・20 1刷

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