法華経入門 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307488

作品紹介・あらすじ

霊鷲山に座して真理を説く釈尊、空中に浮かぶ宝塔、大地を割って現われる無数の菩薩たち。『法華経』の世界はあくまでも視覚的イメージに富む。インドに生まれ、漢訳を経て我々の手に伝えられたこの経典が、多くの人々を惹きつけてきたのはなぜか。「誰もが仏になれる」という究極のメッセージを中心に、その歴史、構造、思想を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 岩波新書の「法華経入門」。入門とタイトルされているが、法華経信仰への入門を薦めるためのもの、つまり信仰のための入門書ではない。仏教全体の中での「法華経」の位置づけとか、「法華経」の歴史とか、つまり「法華経」を学術的に研究した文学部教授による入門講義といえるだろう。

    本書は大きく二部構成で、第一部では「法華経」とは何かを、そして第二部では「法華経」の中心思想について説明されている。自身としては、前半部の法華経の歴史的な変遷について書かれていた部分をいろいろとイメージしながら特に興味深く読んだ。

    「法華経」を含む仏教といえば、言わずもがな釈尊の説いた教えであり、その釈尊が生きた時期は、紀元前6世紀~紀元前5世紀と言われている。今から2500年以上も前のこと。

    そんな過去に存在した一人の人物の教えが、2500年を隔てた現在まで残っているだけでも凄いと思うが、こうして今でも研究の対象となり続け、また信仰の対象となり続けていることだけでも驚嘆するし、興味深い事実だ。

    釈尊が当時語ったことは、人びとの口伝により語り継がれていた。語り継がれるということは、それだけインパクトのある人物だったのだろうし、その語る言葉に魅力があったのだろうと想像する。教えが深かった、聞いて救われる、希望が湧いてくる、そう人に語らせずにはおれない魅力があったに違いない。

    その釈尊が語った内容が、整理・編集される時期に二期あったとされ、その第一期めは釈尊の死後、摩訶迦葉が中心に500人の比丘が行った「第一集結」のとき。

    また、原始教団(つまり釈尊直系の弟子たち?)から上座部と言われるグループと大衆部と言われるグループへ分裂する契機に整理・編集が進んだと言われ、それを「第二集結」と呼ぶ。

    「第二集結」以後は、20ぐらいの部派に分裂し、それぞれの部派が、整理・編集を行っていったということだが、要するにそれはもともとの釈尊の教えに編集が加えられていくということだ。このことも十分イメージできる。現代と全く変わらない。

    一つの教えがどんどん派生していく。この20の部派のリーダーはどのような考えの持ち主だったのだろうか?師の教えを正しく継承させようと考える者、名誉欲や権威に取りつかれていく者、能力不足により教えを退化させていってしまう者、自分に都合よく解釈を加える者、・・・そう考えると部派仏教はむしろ釈尊の説く仏法とは異なるものだという発想さえ出てくる。

    この「第二結集」以前の教えを原始仏教といい、以後の教えを部派仏教というが、これは釈尊純正と、そうでないものとを区分しようという発想だろう。

    一方、紀元前1世紀頃には、これまで口伝から文字編集へと変わったとあり、ここからは一気に体系化が加速しただろうと想像する。

    それと同時期に、大乗・小乗(大乗は多くの人を救え、小乗は少しの人しか救えないという考え)という概念が生まれ、大乗による小乗批判が生まれたりした。これもそういう体系化が加速され、教えの優劣が明確化されたことが要因となっているんじゃないろうか?

    法華経は大乗経典に分類されるが、大乗仏教と部派仏教(小乗仏教が中心)では、大乗仏教の担い手が在家信者であり、部派仏教の担い手が出家の比丘だったという事実もとても興味深く読んだ。

    このころは、宗教としての仏教ではなく、学問の対象としての学問仏教が生まれてきたという事実があり、そういう学派で部派が分かれがたということもあるだろうし、そういう権威等にこだわる出家の比丘に、部派仏教が支持されたというのも分かる気がする。

    一方、やはり自分の生活直結の在家にとってもは、いかに人を救い、自身をも救えるかという視点が大事なことから、大乗の担い手は在家信者であったというのも納得がいく。

    宗教や哲学の生命は、もともとの教えが正しいということともに、その教えが正しく継承されているということがいかに大事かということだ。触れる者は見極めなければならない。

    後半部では、翻訳の話、注釈書の話も登場するが、それはまさに正しい継承に直結する話だ。その他、法華経の特徴的な思想、法華経に説かれるファンタジックで荘厳な虚空会の場面の展開、法華経の七つの比喩の紹介など、法華経は「深い」と改めて実感した。

  • うちは真宗だけど、法華経の持つマジカルさは魅力的。解ったような解らないようなひたすら広大な(それこそ久遠の)世界観。

  • 入門とは易しいという意味ではない。初学者にとっては専門用語も多く、理解しにくい部分もあるかと思うが、法華経の内容、特質、歴史、文化をよくぞ新書の形で纏められたと思う。

    ・古代の社会において人間の平等を説くことは衝撃的で危険な思想であった。
    ・法華経の独自性は、散漫とも言える全宇宙に散在する無数の仏を統合する強力、強烈な仏を新たに確立することであった。
    ・初期大乗経典は、悟り型でもなく、救い型でもなく、誓願の宗教であったことを端的に物語っている。

  • 私の知識量に対してぴったり合った解説でした。とてもわかりやすい。

  • 73点。古来「諸経の王」とたたえられてきた初期大乗経典の一つ『法華経』
    『法華経』は仏教の哲学的理論書というよりも寧ろ、一種の「宗教文学作品」というべきもので七つのたとえ話などが説かれていて、平易な内容の中に深い思想を読み取らせるものになっている。
    また釈尊が眉間からビームを発してみたりと宇宙的スケール(SF?)で展開する壮大かつドラマチックな経典でもあるのだ。
    死者を思う気持ちには些かの疑問もないが、題目を唱えるその中に加わる気持ちはなかったので手にとったが、こんなにも深く素晴らしい宗教思想に触れやがれ。くらいの筆者の思いが伝わりすぎる。入門書なんだからもっとリラックスして書いてくれないと。
    ウグイスが経読み鳥という名をもつのも「ホーホケキョウ(法華経)」と鳴くからなんだというのはちょっとした発見。

  • [ 内容 ]
    霊鷲山に座して真理を説く釈尊、空中に浮かぶ宝塔、大地を割って現われる無数の菩薩たち。
    『法華経』の世界はあくまでも視覚的イメージに富む。
    インドに生まれ、漢訳を経て我々の手に伝えられたこの経典が、多くの人々を惹きつけてきたのはなぜか。
    「誰もが仏になれる」という究極のメッセージを中心に、その歴史、構造、思想を解き明かす。

    [ 目次 ]
    第1部 『法華経』とは何か(『法華経』は初期大乗経典である 『法華経』の構想の基盤と全体の構成 『法華経』のテキスト 日本における『法華経』)
    第2部 『法華経』の中心思想(一仏乗の思想―だれでも仏になれる 久遠の釈尊の思想―永遠の生命 誓願の宗教―地涌の菩薩の思想 『法華経』の七つの譬喩)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 卒論に向けてのレポートを書くべく読みました(笑)。割と読みやすい部類じゃないかなぁ。

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