伝統の創造力 (岩波新書 新赤版 762)

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307624

作品紹介・あらすじ

日本の文化が衰弱していると感じられるのはなぜか。教育改革論議で典型的に見られる「伝統尊重」の狙いは何か。情報化・消費化の進行を把え返しながら、詩歌・小説の歩みを思想性に着目して検証。伝統を「大胆な自己革新を行う運動体」「新しい文化芸術を形成する源」と位置づけて、混迷する時代における芸術・社会の再生を問う。

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    日本の文化が衰弱していると感じられるのはなぜか。
    教育改革論議で典型的に見られる「伝統尊重」の狙いは何か。
    情報化・消費化の進行を把え返しながら、詩歌・小説の歩みを思想性に着目して検証。
    伝統を「大胆な自己革新を行う運動体」「新しい文化芸術を形成する源」と位置づけて、混迷する時代における芸術・社会の再生を問う。

    [ 目次 ]
    第1章 文学の衰弱(熱気を失った現代文学;詩のもつ位置と現在―短歌・俳句への批判と反批判 ほか)
    第2章 衰弱の原因(統計から文化状況が見えるか;高度成長・技術革新―第一の理由 ほか)
    第3章 日本文化の伝統とは何か(伝統論を避けた印象批評、事大主義;論じられるべき伝統 ほか)
    第4章 伝統の継承(文学の危機への対応;“歌”は聴こえるか? ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 思索

  • 戦前の日本において国粋主義者たちが「伝統」を恣意的に歪め、それに対するアレルギーからか、戦後になって伝統を拒否する態度が広く蔓延してしまいました。このような状況に対して著者は、T・S・エリオットの伝統論などを参照しながら、「伝統」を創造の主体から切り離した知識として扱うのではなく、詩人や芸術家による創造的行為をうちから生み出す可能性をもったものとして捉えなおそうとする試みです。

    なお、その際に著者は、詩・短歌・俳句などの短詩の世界において「伝統」が果たしている役割を具体的に考察するとともに、現代の政治の領域において語られる「伝統」観に対する批判を展開しています。

    著者の主張そのものには、突飛な内容は含まれていないのですが、短詩における「伝統」は、とくに歌のような形をとる時には身体性と緊密に結びついているために、もう少しその中身について掘り下げる必要があるのではないか、と感じてしまいました。

  • 政治の場で最近使われることの多い
    “伝統”という言葉。
    ただ、これまでの歴史を振り返ると、
    特に戦前、戦中は、
    恣意的に使われていたことも多く、
    一言で、イメージで、
    「伝統」をまとめてしまうことの危険性を痛感しました。
    この本では、詩歌、小説に焦点を絞っているけど、
    それはその他の分野でも同じなんだろうと思います。
    一つおもしろいというか納得したのは、
    伝統は古くからある変わらないものというイメージがありましたが、
    実はそうではないということ。
    伝統も、時流に、生きる人に合わせ、変わっていくということ。
    なるほどなー。

  • 日本古来の伝統が失われた背景について考察を行った本。
    ここでその原因として挙げられているのは金銭至上主義。
    金銭を価値観の最上位におく現代の生活の中で、人間生活へどうのような影響が出てきているのか、そして、それが文化・伝統にどのように作用しているのかを記述している。

  •  これを、たまたま安倍自民・公明両党内閣の改悪「教育基本法」が国会を通過した後に読んだだけに、<伝統とは何か>を問う姿勢に共感するところが多々あった。改悪された教育基本法のポイントの一つは<伝統>とは何か。それを如何に引き継ぐか、ということにある。


     新教育基本法には、その前文に「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する」とあり、更に第2条5項に「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国の郷土を愛し」と書き込まれ、第5条2項の後半には「また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として」とされた。

    「真理と平和を希求する人間の育成」「普遍的にしてしかも個性的豊かな文化の創造をめざす」など旧法前文の、<平和を希求する><普遍的にしてしかも個性的豊かな>などの箇所は巧妙に抹消され、すり替えられてしまったのである。

      その意味で強調したいポイントは<伝統>である。
     安倍などの唱える<伝統>とは、彼らの戦後レジューム脱却論からいけば、戦前の明治天皇以降の軍国主義・侵略主義・天皇主義による侵略戦争の<伝統>であることを隠すことはできまい。
      この一冊は結果として、その古く歪んだ<伝統>論に厳しい批判の眼をむけ、伝統を「大胆な自己革新を行う運動体」「新しい文化芸術を形成する源」と位置づけ、国民から見た伝統の創造力を考える貴重な提言となっている。

  • わたしは、伝統を作り上げることは大変なのだと感じられました。また、伝統を長く似作り上げるということは大変なことなのだと思いました。

  • きのうの日本・おとといの日本 @千夜千冊 by 松岡 正剛

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著者プロフィール

小説家、詩人。元セゾングループ代表。著者に『茜色の空』など。

「2010年 『大澤真幸THINKING「O」第4号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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