技術官僚―その権力と病理 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307747

作品紹介・あらすじ

高まる批判をよそに、止まる気配を見せない大規模公共事業。くりかえし引き起こされる薬害事件の悲劇。これらの問題の深層をさぐると、官僚制のなかで力をつけた技術者集団の存在が浮かび上がる。これまで目が向けられてこなかった技術官僚に焦点をあて、その実態と病理に迫り、改革への道すじを提示する。日本官僚制論の新しい試み。

感想・レビュー・書評

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  • テクノクラート、技官について関心を持ち本書を手に取った。本書は技術官僚の権力構造を省庁ごとに見た後、過去の問題事案を題材に改善点を提案している。私の関心は前者を理解することが第一だった。

    先行研究によれば、明治中期の技術官僚は、留学組・国内養成組のいずれもインフラを担うポジションで重用されていた。その後20世紀初頭から「冷遇」が見られるようになったという。「銓衡」により官吏ではなく「嘱託」として採用されたことも一つの要因だとする。しかし戦時中は軍部と技官の連携により、前述の法制度の改善はなかったが、次第に権力を得ていった。こうしたことは、科学動員とその波長が似ているようにも感じた。

    戦後の高度経済成長と科学技術の著しい進展は、技術官僚の指導できることではなくなり、技術官僚は技術の衣をまとった行政官に過ぎなくなった。行政官としてのコントロールと進捗状況監視・プロジェクト管理が主な役割となっている。ただ以前からの風土は残っており、勤務する部署が事務官と異なり特定のセクションになる。また当然人事の発令系統も別のルートになる。かつ入省段階で決められたキャリア歩んでゆく。

    本書後半では、技官の分野別の閉鎖性と強固なセクショナリズムの指摘がある。一方、種々の組織においても、技術畑、営業畑、管理畑及び教学畑等といった括りや同族意識が自然と形成されている。これは一般的な理解といっていいだろう。他方さらには今日の大学界隈では、高度専門職や専門的職員に係る議論が展開されている。若干テクノクラートの香りがするこうした職種が、将来、教員と職員以外の新たなセクショナリズムに発展しないよう留意されることを望みたい。各人の心がけ次第だと思うが。

  • 事務官と技官の"助け合い"による省益確保、行政官の業務の制度的(体系的)"無責任性"、"技術の衣をまとった行政官"という今日の技官の姿、省ごとの採用や天下りによる"帰属意識"の涵養、…といった問題群が指摘される。

  • 「技術官僚」に焦点を当て、日本の官僚制に切り込んでいる。技官と事務官の相互依存的な関係により、「技官の王国」が築かれ、日本の官僚制の無責任体質につながっているという論旨。

  • ななめ読み。技術系をメインとした官僚機構の歴史について詳細に書かれていた。農林水産・国土交通・厚生労働について特に詳しい。

  • 技術官僚と一緒に仕事をした経験に基づいて書かれていないので、
    現実味のない、伝聞の話が多く、だからどうというのが分らなかった。

    技術系の公務員の分類が、明確にできていない。
    本書でいう技術官僚とはどういう人のことかが分らない。

    技術系の公務員で、研究、開発などを実施していて、日本の技術の先導的な役割を果たしている人たちもいる。

    同じ職種の技術屋で、権力を持っているのが、事務屋と同じような仕事をしている人たちだということも掘り出せていないのではないか。

    利権は、官僚側だけにあるのではなく、その対極にある企業側にあることも掘り起こせていないような気がする。

    技術的な仕事なのに、自分では仕事をせず、民間企業にお金を払って自分のすべき仕事をしてもらっている人たちがいることを掘り起こせていない。

    技術環境の権力と病理は、実際に仕事をした人なら知っていることのはずなのだが。

  • [ 内容 ]
    高まる批判をよそに、止まる気配を見せない大規模公共事業。
    くりかえし引き起こされる薬害事件の悲劇。
    これらの問題の深層をさぐると、官僚制のなかで力をつけた技術者集団の存在が浮かび上がる。
    これまで目が向けられてこなかった技術官僚に焦点をあて、その実態と病理に迫り、改革への道すじを提示する。
    日本官僚制論の新しい試み。

    [ 目次 ]
    第1章 なぜ技術官僚なのか(日本の官僚制の特質とは何か 技術官僚と法制官僚 ほか)
    第2章 歴史のなかの技術官僚(官僚制の形成と官主導の近代化 支配体制の確立と技術官僚の地位 ほか)
    第3章 なぜ公共事業は止まらないのか-土木技術官僚を中心に(事業計画を決定するのは誰か 「独立」と「棲み分け」の技官人事 ほか)
    第4章 なぜHIV薬害事件はおきたのか-医系技術官僚を中心に(事件をふりかえる 厚生省薬務局の技官と事務官 ほか)
    第5章 「技官の王国」の解体へ(行政組織法制の改革 キャリアパスの改革 ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 事務官僚に比べて技術官僚は冷遇されている、と言われているのか。そんなことも知らなかった。
    なぜ公共事業がとまらないのか、なぜ悲惨な薬害事件が繰り返されるのか、といったことを、技術官僚に焦点を当てて書かれている。
    また、「技官の王国」なるものの解体を提唱されている。

    2002年に出版された本なので内容が少し古く、公務員試験も今は変更されている部分がある。2009年に改版されているのに内容が更新されていないのは非常に残念。

    提案されている内容の一部

    ・行政組織法制の改革
     政治的任用の拡大 (政治主導体制) とポジションごとの権限・責任の明確化

    ・キャリアパスの改革
     採用段階での種別による昇進可能性の制限をなくす

    ・規制行政の切り離し
     分野に応じて内閣から独立した行政機関 (独立行政委員会) を設置し,内閣や独立行政機関の活動を統制する

    ・技術評価の多元的チャンネル
     各省が行う政策・事業評価に対し,内閣から独立した機関である会計検査院が独自に包括的事業評価を行う

    P.170
    日本の行政組織法制において、局長、課長らのポジションごとの権限と責任は何ら規定されていない。だからこそ、意思決定過程は不透明となりがちになる。またそうであるから、「省益」や生涯にわたるキャリアパスを重視した技官と事務官の相互依存関係が濃厚となるのである。

    P.175
    行政組織全体にわたって、事業の継続ではなく事業計画を適合させる弾力的イノベーションを可能とするシステムが作られねばならない。そのためには、まず何よりも、各章における政治的任命職の範囲を広げることである。少なくとも、局次長級以上のポストを内閣が任命するものとし、現行の事務次官職を廃止することである。つまり、各省における政権チームを拡張子、政権の交代が起きたときに、新政権の政治思考が行政組織の意思決定に連動するシステムを築くことが必要なのである
    こうした政治的任命職のすべてに政治家が就任する必要はない。生涯職公務員の中から年功序列にとらわれずに任用してもよいし、外部の専門家を任用してもよい。いずれにせよ、各省にしっかりした政権チームができて初めて、事業の継続性を名分とした生涯職官僚機構の一体性を打破できる。

    P.177
    「技官の王国」の解体とは、官庁から科学・技術系職員を排除することではない。これまで見てきたような技官と事務官の相互依存関係を打破することである。この意味で、まずは以上に述べたような行政組織法制を改め、政治的任用の拡大を基本として、ポジションごとの権限と責任を明確にした組織の編成が求められるのだ。

  • 歴史の変遷、文献の整理。
    問題の一側面、根本理由の不明。

    ・行政組織法と行政作用法の整合
     →所掌の抽象的規定と自らの判断権限
    ・不明確な責任の所在
    ・~1885年 内閣制度導入、一応の定着
     外務、内務、大蔵、陸軍、海軍、司法、文部、農商務、逓信、9省+宮内省
    公共事業官庁:内務(土木局)、農商務、逓信、内閣(鉄道局)
    ・技術重視→社会基盤整備事業の完了→冷遇

  • 技術完了ははじめからある特定専門分野における専門知識と技術の必要性に応じてリクルートされてきた。
    逓信省の技術者は花形技術官僚だった。

  • 『技術官僚―その権力と病理』(新藤宗幸、2002年、岩波新書)

    省庁の中でどのように意思決定がなされているのかがよくわかる。
    省庁ではキャリア行政官(国家1種)が出世の道を歩んでいくが、
    実際の業務はノンキャリ行政官(国家2種)がスペシャリストとして担っている点や、
    事務官(文系キャリア)と技術官僚(技官;理系キャリア)とのすみわけや役割分担の点がおもしろい。
    ただ2002年出版の本なので、政権交代によって官僚組織がどのように変わるのか等については触れられていない。

    薬害問題はなぜ起きたのか、公共事業がなぜなくならないないのか、
    という点について、技官と事務官の関係から解き明かそうとしている。
    たいへん参考になる。

    (2009年10月2日)

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著者プロフィール

新藤 宗幸
新藤宗幸:後藤・安田記念東京都市研究所理事長/千葉大学名誉教授

「2016年 『現代日本政治入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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