パレスチナ〔新版〕 (岩波新書 新赤版 784)

著者 :
  • 岩波書店
3.71
  • (40)
  • (39)
  • (68)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 446
感想 : 43
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307846

作品紹介・あらすじ

まさに泥沼ともいうべき、流血の対立の渦中にあるパレスチナとイスラエル。だが、ここに至る関係の歴史を正確に知る人は、意外に少ないのではないか。六〇年代後半からこの問題を追い続けてきた著者が、旧版以降の流れを新たに加筆、現地取材にもとづく最新の状況にもふれて、一冊で今日までの歴史と背景を辿れる新版として刊行する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • パレスチナ寄りの記述であるとしても、非常に大切な視点であることは確か。これでもかというほど和平への失望の繰り返し。そしていま、ハマス掃討の名目で、これほど民間人の犠牲を出しても攻撃を止めないのは、こういうことであるのかと知る。
    著者は2023年12月現在も、イスラエルから慎重な視点でもってSNSで状況を伝えている。この本が版元で品切のままなのは、著者に考えがあってのことだろうか。

  • 広河さんの本は弱者へのまなざしがとてもやさしく好感を持てる。内容は、著者が実際にイスラエルのキブツに入ってからパレスチナ問題について知って、パレスチナの人にあって、その中に入り体験したこと、調べたことが中心で、今、福島に入っている著者の原点がここにある。読んでいて、こんなひどいことがあっていいのか!正義はどこにあるんだ!と怒りが込み上げてくる。何か行動しようと思わせてくれる1冊だ。わたしは何かあると広河さんの本を読んで、闘志を燃やすことにしている。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705446

  • =====佐藤匠2016/2/5========
    【概要】
    パレスチナで起こっている事象について、過去の歴史や宗教を絡めて説明されている本。
    ユダヤ教の迫害に絡む歴史等、ユダヤ人とパレスチナ人の間に渦巻く問題が描かれている。

    【評価】
    60点

    【共有したい内容】
    ユダヤ教の迫害の歴史についての記述がある点。
    個人的には、パレスチナの問題について、なんとなくの理解で終わらせてしまっていたため、読むことで何が起こっているかの概略をつかむことができた。

    具体的な概略として、
    ユダヤ人とパレスチナ人の対立がメインであること。
    対立の背景として2000年以上自分の国を持たずに迫害されていきたユダヤ人の独立国家を国連がメインとなって建国(それが、現イスラエル)。パレスチナの地にユダヤ人が独立国を建国することで、当初そこに住んでいたパレスチナ人との軋轢が発生し、未だにそれが続いていること。

    何よりも歴史的に迫害を受け続けてきて同情的な感情を持たれやすいユダヤ人が、イスラエル建国にあたり、パレスチナ人の虐殺を実行してきたことが衝撃的だった。

    また、イスラエルのバックにはアメリカがいる。

    アメリカのニューヨークにおけるユダヤ人の人口は約200万におり、イスラエルの次に多い。
    アメリカの中でもメインの都市で多くの成功者を輩出したユダヤ人は、アメリカ経済及び政治において強い影響力を持っているため、自分と同じカテゴリーに含まれるユダヤ人の国家であるイスラエルを支持するのは当然のことだと感じた(他にもさまざまな権益が絡んでいると思うが)。

    旧約聖書で神から約束の地として提供されたパレスチナは現在分割状態にあるが、これが解決(すべてのパレスチナ人を追い出す?分割して別の国になる?)されるには多くの犠牲と時間がまだまだかかると感じた。

    【読んだ方がいい人】
    パレスチナの現状を知りたい方

    【悪いところ】
    細かい戦闘についての記述が多く、全体としての概略以外のストーリーはあまり面白くないし、全体としてのストーリーを分かりにくくしていると感じる。
    多くの人は全体としての概略がつかめればそれでいいと思う。
    細かい戦闘に関する記述については、時間節約のために飛ばし読むことをお勧めします。

    【どういうときに役に立つか】
    パレスチナの現状とユダヤ教について理解を深めたい方。

    【自由記述】
    ユダヤ教やイスラム教、キリスト教の関連性に関する話しやユダヤ人がなぜ優秀なのかについての話もあり、面白い。
    (宗教の関連性について)
    3つの宗教の神様はアッラーですべて同じである。
    ユダヤ教→キリスト教→イスラム教の順番で生み出され、キリスト教はイエスキリストを予言者として持ち、イスラム教はムハンマドを預言者として持つ。

    ユダヤ教は旧約聖書、キリスト教は旧約聖書+新約聖書、イスラム教は旧約聖書+新約聖書+クルアーンと呼んでいる本が増える。
    ※新約聖書は支配するため支配されるためのものとして、旧約聖書の解釈に言い訳をつけて甘めのものとして作成された。

    (ユダヤ人はなぜ優秀なのか)
    ユダヤ教として、生涯学習を勧めているため。
    人口の0.2%しかしめないユダヤ人がノーベル賞の20%を占めるなど、実績が輝かしい。
    これらは、生涯をかけて学ぶことをやめない民族的な文化に紐づく。
    また、キリスト教のイエスキリストを十字架にかけた人がユダヤ人とされており、キリスト教と仲が良くない。
    そのため、多数を占めるキリスト教から通常の仕事を与えてもらえず、金利貸業等の仕事を行ってきた。
    自然と資本主義社会の中心人物ともなってきており、現代の資本主義経済でもトップのランクにいる民族である。
    ※株や手形、会計のシステムを作ったのもユダヤ人である。

  • パレスチナと言うこの本。物事は2つの方向から読み解かなければいけないということを改めて考えさせられた1冊です。ユダヤ人が、自らがされていたことと同じ事をパレスチナの人たちに行っている。。しかしその真実は報道では殆ど流さることがないのです。。。

  • (後で書きます。実際に自身が目撃したエピソードが豊富だが、全体像の把握はやや粗雑で曖昧。参考文献なし)

  • イスラエルではアウシュビッツコンプレックスとも呼ばれる民族絶滅の危機感が今でも行き続kている。
    やがて再び起きるに違いない迫害と大虐殺に備えてこの国が必要だというのがイスラエルの建国思想。

    パレスチナに送り込まれたのがいつも東欧のユダヤ人で、送り込んだのが西欧諸国だった。

    イスラエルは戦争する理由があった。西ドイツからの巨額の賠償金支払いが終わって、景気が後退し失業が増えてイスラエルに来る移民よりも出ていく人の方が多くなってしまった。

  • そもそも何でここまでこじれたのか理解し難い中東問題。
    お勉強のつもりで読み始めた。しっかりとではないが、アウトラインは分かった。
    本書は、パレスチナよりの視点で書かれてるが、この問題については、完全なる中立はあり得ない。
    そもそも、大国による国境線の勝手な線引きに問題を発するいじょう、ゆ本来はその国々が責任を持つべきだと思う。
    また、テロには武力をのアメリカの姿勢はイスラエルを正当化するのに利するだけというのも、よく理解できた。

    喧嘩には、お互いに理屈があるだろうから、今度は、イスラエルの立場で書かれたものを読みたい。
    とりあえず、同じ新書の「イスラエル」を読んでみる。

  • 19世紀末のシオニズム運動(パレスチナの地にユダヤ人国家を建設する)から、現代(ただし、2002年まで)に至るまでのパレスチナの歴史が描かれる。しかし、これを読む限りでは、それはイスラエルによる徹底したパレスチナ人の追放と殺戮、弾圧の歴史であったことになる。ナチスによって抹殺されようとしたユダヤ人が、それと同じことをパレスチナ人にしているのだ。また、ユダヤ人の定義もきわめて曖昧であることもよくわかるし、そのことはイスラエルにとってのジレンマでもあったのである。今朝の新聞も、なおガザへの空爆を報じていた。

  • …重い。いまさらだが。いくらページをめくっても絶望感しかない。
    イスラエル建国時から今に至るまで、パレスチナの地で何が起こったか。
    ニュースの裏側で、イスラエルの歴史には決して書かれることのない「本当のこと」とは何なのか。いずれにしてもパレスチナの地で実際に血で血をぬぐうようなテロ、報復、報復の報復が今まで繰り返されてきたことに変わりはない。

    ナチスの迫害よりユダヤ人への同情があつまりイスラエルの建国が国連で承認された。(実際のところは欧米諸国が自国の利益を計るため、というのが大きいのだろうけれど)
    イスラエルは法律によって公然とパレスチナ人の土地を没収、迫害を加える。彼らの言い分はこうだ。
    「私たちが「安全」を考えなかったとき、誰かが私たちの身体から石けんをつくったのだ」

    歴史が証明しているように、当然これからも起きるであろうユダヤ人迫害のときに備えて団結したユダヤ人国家を作ること…。
    しかしイスラエルとパレスチナの武力の圧倒的な差にくわえて、ここに書かれている「報復」はいかにもやりすぎだった。

    「自爆テロ」そうニュースで聞くたびに馬鹿なことだと思ってきた。
    しかし近代的な武器で武装し(同時にアメリカはこの地を過去のブラジルのように兵器試用に利用した)、土地隔離政策・検閲によって自由に移動すらできないパレスチナ人にとってはもはや捨て身の自爆しか抵抗の余地は残されていないのだった。それほどまでに追いつめられた結果だということを、ぼくは知らなかった。

    ひとつの選択の誤りがボタンの掛け違えのように後でどんどん大きくなって、もはや取り返しのつかないことになる…そういう恐ろしさをとても感じる。

    「占領は外国勢力による支配を意味する。
    外国勢力による支配は、抵抗運動を生む。
    抵抗運動は、それへの弾圧を生む。
    弾圧はテロを生み出す。
    テロの犠牲者は、ほとんど罪のない人々だ。
    占領地を抱えることは、私たちを殺人者の国民に変える。
    ただちに占領地から撤退せよ!」

全43件中 1 - 10件を表示

広河隆一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×