日本語の教室 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308003

作品紹介・あらすじ

日本語はどういう言語なのか。日本の文化・文明とどうかかわって来たのか。質問に答えながら問題の核心に迫って行く。日本語はどこから来たか、いかに展開して来たか、日本語の過去のみならず現在を見据えて、将来日本人は文明にどう対処すべきかを語る。著者の生涯を懸けた見解をあますところなく披瀝する渾身の書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 日本語の語源や現状から、日本という国を批判的に、しかし冷静に分析した名著。

    英語で「~学」を表す「~logy」の語源は「logos」で、この意味は、「手で取って集める、選び取る」。つまり、数ある情報や事柄の中から適切なものを「発見し」、選び取っていくことが学問の本質とされた。
    一方、日本では、「真似ぶ→学ぶ」ということからも分かるように「真似る」ことが学問の根幹をなしてきた。
    「真似る」と「発見する」。この、学問に対する向き合い方の違いこそが、文明を「創り上げてきた集団」とそれを「輸入してきた集団」との違いをはっきりと表している。

    このように、鋭い洞察がなされている。どんな人も一読する価値はあると思う。

  • 日本語に精通する事と論理的思考の繋がりを再認
    特に漢字を理解する事の重要性
    確かに大和言葉だけでは事象の機微は表現し難い

  • 日本語の教室

  • ここに、僕の言いたいことは全部詰まっていました。
    と言うのは、あまりに僭越に過ぎますけれど。

    冒頭は、古代日本語の起源について触れます。
    著者の大野晋氏の論説に依れば、古代日本語の発祥は、IndiaのTamil語らしい。
    これは、「やまとことば」と呼ばれる、漢語以前の日本語についての論説です。
    始めに読んだ時は、へぇ、いろんな説があるもんだ、としか思いませんでした。

    しかし、本も中盤へと差し掛かるに連れ、主題がshiftしていきます。
    そして、そこで書かれる内容は、まさに!と膝を打ちたくなるものでした。

    僕が前から主張している事柄に<b>言語は全ての基礎となる</b>というものがあります。
    即ち、思考の組み立てにおいても、感性の発露においても、全ては言語。
    その人の「母語」となる言語形態、そして、その規則性に支配されている、というもの。
    日本人、と言うidentityは、日本語という<b>言語</b>です。
    文明、文化、思想、感性などの、全ての基礎は母語に依るのです。
    本書には、似たようなことが分かりやすく書かれています。
    まあ、ぼくの主張ほど極論ではないですけれどね。

    そして、何よりも共感したのは、言語教育の過ちによる害悪についての論説です。
    漢字を減らすこと、古文、漢語を学ばせないこと。
    これらによる計り知れない影響について、とても克明に説明しています。
    感心した一文を、以下に引用しましょう。<blockquote>文明と言っても実はその基本は、「集める、選び出す、言語化する、論理化する」という行動にある。「組織としてものを見る」態度にある。その行動と態度において傑出した人を世に天才といっているが、天才はその集団が保持するロゴス的姿勢の水準から生まれるものだと思います。ただし、ここで注意すべきは右に上げた人々はみな戦前の教育を受けた人であり、漢文や漢文訓読文で育ち、明晰・的確・秩序を心がけて育った人々だということです。</blockquote>この前のsentenceでは、湯川秀樹氏を筆頭にした日本の学者さんたちが挙げられています。

    文明、というものの本質を、見事に突いた文章だと思いました。
    そして、いまの日本に足りないものが何なのかを、よく表す文だと。

    日本語の特色として、論理性の欠如が挙げられます。
    これは、精緻に、かつ厳密に文章を紡ごうとすると直ぐに分かります。
    冗長に、そしてクドくなり、どんどん分かり難くなっていくのです。

    一方、感性や情感を表すのには、非常に適した言語でもあります。
    微妙なnuanceを、少ない語彙で綺麗に表すことが出来る言語です。

    筆者は、こうした言語の特色を捉えた上で、必要なものは俯瞰する視点だと説きます。
    つまり、細部に目を凝らし、断片で判断するのではなく全体を見渡して評価すること。
    そして、全体の流れやbalanceを常に意識する思考能力を身につけること。
    感性だけでは、冷静で本質的な議論や思考は不可能だからです。
    正確な論理性による精緻な骨格があってこそ、そこに肉付けされる感性が際だつ。
    これは、全てに共通する美意識だと僕も思います。
    いまの日本語教育は、その骨格部分を無視しすぎている。
    だから結果として、「美しいもの」が見えなくなっているのではないかと思うのです。

    あまりクドクドしく書いても仕方ないですね。
    とりあえず、一読してみて下さい。
    これは、かなりの名著だと評価します。

  • 日本語の歴史や日本文化について多く書かれている本。

  • 日本語のを上手に使うための本というわけではなく、日本語とはどんな言語なのか、日本語を学ぶとはどういうことなのか、そして戦後の日本が失ってしまったものとはなんなのか、という哲学めいた内容が中心でした。

    「日本語をもっと上手に使いたい」「美しい日本語を使いたい」という人には向かない内容です。昨今多い「美しい日本語」へのアンチテーゼとも言える「論理的な日本語」については襟を正す思いで読んでいました。
    この本を読めば、我々が現在使っている日本語が、いかに戦前から衰え、衰弱してしまったか、という危機感を持つことができるかもしれません。

    16の質問を通して大野晋の考えが展開していきますが、特に「漢字」「漢文訓読体」に関する記述が面白いと思いました。たしかに教科書によく掲載される文学的小説の代表作家、夏目漱石、芥川龍之介、中島敦、森鴎外、といった面々は、どれも漢文的調子で文を展開していますし、漢文を愛読していたことが、歯切れの良い文章形成へと繋がったことを感じさせられます。
    日本的、源氏物語的な、情緒に訴える作品は好まれますが、論理的な文章展開を源氏物語から学ぶことは出来ないでしょうし、簡潔な言い回しや、客観的な視点などを多く含んだ漢文の教養が、しっかりとした文章表現を支えていたという話は納得できるものです。

    また、晩年力を注いでいた「タミル語起源説」に関してもまとまった記述があります。個人的には、基礎語、文法のみならず、宗教的慣習や、生活的慣習まで類似しているということは、信憑性は高い学術論に思うのですが…。「日本語の起源」等を読み、考えてみたい課題です。

    また、学問に対する思いも熱く、たんに好きだから好きな本を読んでいた、というだけの大学時代の学び方に対しても反省させられました。

    さすが、日本語を生涯学び続けた人だけあり、文章が大変読みやすく、幅広い知識と豊かな語彙には舌を巻きました。

  • 言語の研究は,特に日本語の起源といった問題は情況証拠は挙げられても証明ができないのがつらそうである.タミル語起源を主張する著者であるが,タミル語との共通起源の言語なんてものを考えてみるのも面白そうだ.

  • 日本語はどういう言語なのか? 日本の文化・文明とどうかかわって来たのか? 大野晋氏が質問に答えながら問題の核心に迫る。

    第1部 さまざまな質問に答えて
    第2部 日本語と日本の文明、その過去と将来

  • 日本語はインドのタミル語が起源だ!
    という論をどう受け取るかで評価は変わるでしょうね。
    わたしは、面白いと思いつつ説得力は微妙と感じました。

    そもそも教室というからには、もっと学術的に確かな、基本的な講義を期待していたのですが…。
    日本語の文法を学び直したい、という期待には答えてくれません。

    タミル語起源説についてはもっと深く掘り下げた研究を読んでみたいですね。

  • 日本文化の元が全て輸入だったとは。
    日本辺境論を読んだ後だからやたら納得しちゃいました。

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著者プロフィール

1919-2008年。東京生まれ。国語学者。著書に『日本語の起源 新版』『日本語練習帳』『日本語と私』『日本語の年輪』『係り結びの研究』『日本語の形成』他。編著に『岩波古語辞典』『古典基礎語辞典』他。

「2015年 『日本語と私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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