神、この人間的なもの: 宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書 新赤版 806)

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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308065

作品紹介・あらすじ

大学時代の友人で精神科医となった二人が「人生を生きてきた末」に、かつて交わした議論を再開する。神は本当にいるのか?現代を新しい形の宗教に呪縛された時代と見ながら、教義や信仰のあり方からではなく、「信じる」ことを求めてしまう人間の方から、宗教とは何かを考えていく。精神医療から社会、歴史まで問いを重ねる対話篇。

感想・レビュー・書評

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  • 何十年ぶりかに再会した著者と友人の精神科医二人が、
    若い頃にしていた「神は存在するか」という議論の続きを70才を超えた今再開したらどういう答えになるのかという、その対話。

    って書くとすごく堅いのだけど、実際は文体も軽くてとても読みやすいし、
    キリストやブッダを人間として精神科医の視点で分析しているのもとても新鮮だし、

    他の人のレビューを見ると結論が弱いという指摘もあり、うなづけなくもないですが
    それ以上に
    自分の考えがひっくりかえるようなびっくりすることが沢山つまっていました。

    何をもって狂っているといい、何をもって正常だというのか、とか


    宗教とか何か気になるっていう人も、別に全然そうじゃないひとにも、すごくおすすめです。

  • 孤独をおそれるのは群れるため。
    群れるのは生命をつなぐため。
    だから人間は、集団に所属することで、安心するようつくられているのだと思う。
    その欲求を満たしてくれるのが宗教であって、形を変えながら、ずっと人間ととともにあるのかな、なんてことを考えた。

    不幸なことは、属するグループが小さいほど所属意識が強まることだ、といった一文があった。とても共感した。
    もし逆に大きければ大きいほど強まるのなら、もしかすると戦争はなかったのかもしれない。

  • 長らく日本人が抱く、宗教に対する答えが載る本書は、宗教を純粋に分析したい人におすすめの1冊。

    なぜ人は宗教に惹かれるのか?

    宗教の起源とは?

    今の宗教は教祖たちからはどう見えるのか?

    そもそも宗教とは?

    宗教に関するありとあらゆる疑問を2人の人物が対談形式で語っていく。

    めっちゃ面白いです。

  • 2006
    対話調で読みやすく、興味深い内容だった。本当に昔の精神病、戦後の真正天皇などの話が心に残った。なぜ、キリストが殺されたのか?精神科医的存在の人の立場があやうくなったから

  • 著者はこの本を恥知らずな老人の狂気と言っているが、普遍的でわかりやすく、多くの人々に伝わるべき宗教に対する考察である。

    科学によって神は殺されたが(自分は同意しないが)、宗教はこれからも生き続ける。人々に必要とされ続ける。
    その新たな担い手が心理学になりつつある。
    、と。

    これがボケ老人の狂気か?

  • 折伏しゃくぶく
    真っ向から説かれて入信する人が多い。社会には、折伏を受けやすい人間がある程度の割合でいる。

    問答集みたい。
    三大宗教は、部族の宗教の狂いを治療する、ホメオパシーのようなものではなかったか。

  • おそらく、彼の遺したあらゆる著書の中で、これが、一番やっかいで、また彼の人生と言ってもいいかもしれない。
    宗教の歴史的経緯とか位置づけとかはそんなもの学者に任せておけばいい。そんなことよりも、宗教はなぜ必要とされてきたのか。宗教を望むひとの精神、これは一体なんだ。神がいるいないとかの不毛なことを考えているのではない。神を望むのも、神を維持するのも、ひとえに同じ人間の心性だ。これ以上でもこれ以下でもない。ならば、ひとの精神に向かって生きてきた自分がこの心性を考えなければ誰が考える。
    このことを考えるのはかなり骨を折ったに違いない。正常・異常など、ただのことばにすぎない。ということは、自分が正常だとも異常だとも言えてしまう。自分の生がオセロのように簡単にひっくり返されてしまう。そんな可能性をはらみながら、宗教を考えていくと、どうもその始祖たちも同じところに行き着いたように思える。始祖たちの成し遂げた革命は、対立を超えた統一、ヘーゲルなら弁証法と呼んだそれだった。
    そこから2000年あまりが経った。始祖たちの思惑を外れ、世界は再び対立の中に後退していった。ひとの精神がこれを起こしてしまったのなら、再び統一に向かうのもひとの精神だ。精神医療は、そこに向かっていってほしい。人生の終わりにあたって彼が託した希望と言っていいだろうか。
    ひとは何かを信ぜずにはいられない。信仰のない、というのを考えることはどうも無理なようにできている。そんなことに気付くとき、何を信じるかで争うのはなんと不毛なことか。始祖たちの出発点が見えてくる。原理ではなく、この原点へ。それはすべてのひとに開かれている。慣習を捨てた先に待っていたのは、なんとずっと変わることのないこの慣習だった。

  • 結局のところ、人間は、宗教をはじめとして、信じる対象がほしいだけなのかもしれませんね。
    そして、教団をはじめとする組織は、大きくなることが目的になるような気がします。

    「キリストはキリスト教を知らない」という視点は、考えてみれば当たり前なんですが、この本で初めて気づかされました。
    また、3大宗教の教祖の弟子は、弟子から抜け出せなかったこと、さらには、宗教の経典化による、本来の宗教の意味(教祖の意図)の曲解など、宗教について「なるほど」と思えることがてんこ盛りでした。
    一神教における神や悪魔の設定も、すごく納得できました。

    平易な文章でありながら、深みのある考察を堪能できるいい本だと思います。

  • 宗教とは何か?という問いはさまざまな人が考えたことがある内容であろう.著者は宗教の根源は何か,ということから論を進める.特に,キリスト等の教祖が現れる前,教祖がいた時代,そして教祖の死後,について,人間集団(教団)がどのように動いたかを予想している.

    キリストはキリスト教の教義を知っているか?とか,意外な問いかけがちょこちょこ書いてありこれも面白い.

  • 宗教色の強い国に住んでいて、すごく宗教に関して悩んでいた時期がありました。友人にすすめられ、読んだのですが「しっくりきた」1冊です。
    予言者が心を穏やかにしてくれる存在だったかもしれない、という答えがすごくユーモアがありました。
    対談形式なので、凄く読みやすかったです。

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著者プロフィール

なだいなだ:1929-2013年。東京生まれ。精神科医、作家。フランス留学後、東京武蔵野病院などを経て、国立療養所久里浜病院のアルコール依存治療専門病棟に勤務。1965年、『パパのおくりもの』で作家デビュー。著書に『TN君の伝記』『くるいきちがい考』『心の底をのぞいたら』『こころの底に見えたもの』『ふり返る勇気』などがある。

「2023年 『娘の学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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