能楽への招待 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308232

作品紹介・あらすじ

面の中で両眼をふさいだり、「心」字形に杖をついて歩いたり…。能の演出には不思議がなんと多いことか。じつはここにこそ、能の世界の本質がある。「型附」という秘伝書には何が書かれているのか、世阿弥が到達した最高の美は「幽玄」なのか。基礎知識から本質論まで、演技者の眼からズバリと解説した斬新な能楽入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 「基礎知識から本質論まで、演技者の眼からズバリと解説した斬新な能楽入門書」とあるが、1章(能の空間)と3章(能楽の歴史)以外の本質論は抽象的で、入門書にしてはかなり難解。禅をはじめとする仏教文化や日本の伝統芸能にある程度通じていないと、著者のメッセージを理解するのは難しい。

    本書の最終章で解説されている「無」というのは、あらゆる世俗的な「価値」や意味づけから解放され、自由に楽しく、自分が主人公となって生きられる状態を指す。能楽に限らず、日本の芸能の歴史は、日常的な所作に非日常的な意味合いを持たせることによって、世間的な「価値」の転倒を図り、あわせて余分な表現を徹底的にそぎ落とすことによって本質を探究することの繰り返しであった。このようにして、例えば茶道だったら客人中心主義で考えた真のホスピタリティーを、能楽だったら「この世は無常だ」(すべてのものは移ろい、定常状態にあるものは何もない)ということの最もドラスティックな表現を、それぞれ実現している。つまり日本の伝統芸能は、アプローチは異なるものの、いずれも本質を極めた「無」の状態を体現している、と言えるのである。

    そしてこの「無」の境地には、学問をするだけではたどり着けない。修行を積むことによって、身体のレベルで、反射的に世間の価値を疑い、本質を追究できるようにしなければならない。お釈迦様の成道(悟りの完成)も、言葉では伝承できないため、「正法眼蔵、涅槃妙心」(しょうぼうげんぞう、ねはんみょうしん)という、わずかな表現だけで弟子に伝えられたという(この言葉は、「文字や教えを超えたもの」そのものを表現しているため、解釈してはいけないことになっている。ちなみに、この教えの意味するところを理解したのは、お釈迦様の多くの弟子の中でも 摩訶迦葉・まかかしょう だけだったという)日本文化は極めて革新的で本質的、かつ身体的な世界を持ったものなのだ。

  • 自分をどんどん脱いでいく。
    壊していく。
    その先にあるものを目指して。

  • 難しい。
    素養がないので文章に入りこめない。
    おもしろそうな演目例はあった。実盛、屋島、
    型について
    振付ひとつひとつ名称をつけて型と呼ぶ。
    型を信仰し、伝授してもらう側はそれを購入する、p98
    それはファン層の獲得でもある
    型はビジネスとして役割を果たす
    習い物、型のシステム、メッセージ

    ・・
    シテ(主役)は神や亡霊が多いと聞いて、
    新鮮な驚きがあり、少しお勉強を、と思いました。
    精神世界が身近
    信長秀吉家康に好まれたのはなんでなのかなぁ。
    屋島は義経の霊だとか
    実際にYouTubeで観てみたけど
    やはり、入りこめない。

    修行必要ね。

  •  能楽師かつ研究者である梅若猶彦の著作。
     能楽について全くの無知であった私には、本書で解説される能の独特な思考と演じ方はとても斬新に映った。お能のあの基本、超絶スローの動作にはちゃんとした理由があったのだ!(当然のことかもしれないが)。著者海若によれば、シテ(役者)が身体を動かさずに内部の衝動のみを引き起こしたときにはじめて、動いていないはずのシテ(役者)の身体を目にしているはずの観客に、シテ(役者)の内面の衝動が伝わる、というのだ。
     本書は、能楽についての基本知識や成立背景、家伝の型腑の読解解説を織り交ぜながら、能の精神に関わる本質的な部分を紹介している。能は流派間で差異を誇張し合いながら生き残り、発展してきた部分がある。一方で、本書では能の「型」が「無形文化」として安定した社会的地位を築くために必要だったことは認めながらも、「型」を何よりも重んじて内側の精神を二の次にするという現在の「型」信仰を批判する。
     「型」は身体の動きのパターンに過ぎない。重要なのは「型」ではなく、精神的な価値を内面から身体の動きに与えるということである。それが、「身体性によってのみ真実が具現化する」(p.113)ということである。しかし同時に、その心理の動きは観客はおろか自分にさえ隠さければならない。その思考が、世阿弥のいう「無心」である。この「無」の観念は、禅の精神を引き継いでいる。
     世阿弥の「幽玄」は能楽の美的観念と捉えられがちだが、世阿弥による最高美は「妙」と「安心」である。「幽玄」はあくまでも鑑賞される側から見た姿であり、一方で「妙」というのは「形のない姿」のことで、表現者の内的な原理と鑑賞者の印象にまたがって機能する観念であるという。最高美の「妙」が「形なき姿」というのは、身体性なくしては成立しない能における「無」の境地と繋がっている。
     本書を読み、気付いたことがある。私のこれまでの能の鑑賞の仕方では、いくら観ても何も見えてこなかったということだ。能を目にする機会はごくごくたまにあれど、私は必死で能の「型」を見ようとし、他方で余りにも緩慢に見える動きに飽き飽きして、お能の面白さが全く分からなかったのだ。伝統芸能に対する固定観念としての「型」の認識は、能に関して無知だった私にも例外ではなく、私も「型」に捉われてカタチだけの鑑賞をしていたのだ。動きの「意図」を内面の衝動に留め、身体を動かさずに観客に伝える。次に能を見るときは、型ばかり見ようとせず、能楽師の意図や精神を感じてみたい。

  •  みなさんは、「能楽」をどう思いますか?
     「う〜ん、京都で学んでるんだし、能のような伝統芸術にも親しんでみたいなあ。でも堅苦しそう・・」。そうおっしゃるあなたには、この薄めの岩波新書をお薦めします。
     梅若家に生まれた著者は、ロンドン大学で学び、レバノン人の女性と結婚し、英語で現代劇を創作するなど、文字通り「型破り」の能楽師。実はこの本、能楽が堅苦しく見えてしまう一因でもある「型」から能を解放しようという「型破り」の試みにあふれているのです。そして読者が、能楽も「内面」を表現する身体芸術なんだと思うようになったら、著者は「しめた」と思うに違いありません。梅若猶彦の明快な舞台を見たあとと同じ爽快感が得られる、斬新な能楽入門書です。 [ライフデザイン学科  脇田哲志先生]

  • ふと能について知りたいと思ったとき
    知らない自分でも一から知れたおもしろい本でした。
    戦国大名が好んでいたという話しをよく聞いていたので興味を持ちましたが、なぜ能を好んだかはハッキリわかりませんでした(笑)

    梅若さんは、600年続く梅若家に生まれ、3歳から能を舞っているそうです。この方が“TED TOKYO”という国際的な講演会で能を披露した動画を見てますます引き込まれました。

    能は、ほぼ後ろの壁の松の絵だけで、後はほとんど装飾がないそうです。

    なぜ惹かれるのか。シンプルだからか?
    荘厳だからか?見たことないけど懐かしいからか?
    とか、いろいろ考えながら読み進めていきました。

  • 秘伝書としての型附についての説明がある。
    秘伝書の写真があるのが嬉しい。

    能楽が好きではなかったが、
    勉強の対象として、日本の文化を理解するのによいことが分かった。

  • 王薌齋や片桐はいりの名前が出てくるとは思わなかった。

  • 新書では数少ないと思われる能楽の入門書です。能に関しての本って、探してみると意外とみつかりませんでした。

    第一章を読むだけで、能の基本的な知識や用語はだいたい身につけることが出来ます。面や能舞台の写真も載っていてわかりやすくすらすらと読むことが出来ます。
    一曲の前半後半の間に、『間狂言』が入ることや、能舞台の下に音を響かせるための瓶が13個置かれているなど、知っておくべきことがたくさんです。
    二章以下は能の歴史や専門知識などが書かれています。
    能のテキストとシェイクスピアの劇の原文を比較して、「ブロッキング内に書かれる動き(想定)」と「台詞の中に含まれる動き(翻訳)」との二つの動きがあると解説しているのも面白かったです。
    メタファー(比喩)についても興味深かったです。説明的な言葉は身体に浸透しにくい性質を持っていて、抽象的な達人たちの動きは比喩で書かれ、そこから演者の理解・読み込みを経て表現される、というものです。

    この本から例を一つ抜粋をすると、
    1)矢で的を射る。
    2)矢で月を射る。

    たったこれだけの比較で、メタファーの奥深さがわかります。

  • はじめの一冊には適さないかもしれないけど、真摯に能を舞う方の言葉で紡がれる能についての文章は、味わい深かくて興味深い。能に親しめば親しむほど「メタファー」としてのこの本の意図するところに近づけそうで、ワクワクするような本!

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