ドイツ史10講 (岩波新書 新赤版 826)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308263

作品紹介・あらすじ

ゲルマン世界、神聖ローマ帝国、宗教改革、絶対主義、二回の世界大戦…二千数百年の激動の歩みを、一講ずつ、要点を明確にして、通史的に叙述。中世的世界、大学や官僚と近代化の役割など重要なテーマに着目しつつ、つねに「ヨーロッパの中のドイツ」という視点から描き、冷戦後の統一ドイツの位置にも新たな光を当てる。

感想・レビュー・書評

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  • ▼ハンナ・アーレントさんの「エルサレムのアイヒマン」を読もうと思い。準備体操にドイツ史の本を何か読もう・・・と手に取った1冊。期待に違わずかなりドイツな気分にさせていただけました。ありがたい。

    ▼「ドイツ史10講」坂井榮八郎。岩波新書、2003年。坂井さんという方は、1935年生まれの歴史学者さんだそうです。無論、一般向けの分かりやすい歴史書、というコンセプト。印象に残ったのは、ルターとナポレオンでした。

    ▼ルター=宗教改革については、とにかくルター自身の腐敗したカトリック教会への勇気ある反論活動。それに教義などとはあまり関係なく、さまざまな思惑が絡んで、プロテスタントが成立した、という雰囲気が(なんとなく)わかりました。全部がルター個人がやった訳では無くて、政治経済的にカトリックの一極独裁体制に、多くの国、州が嫌気が差してきていたから。さらに同時期にさまざまな相関関係でスイスでもカトリック否定の過激運動が勃発して、それがカルヴァン派、ユグノー、長老派、ピューリタンになっていく。知らなんだ。さらに、そんな新教の動きへの反発でカトリック内で起こった自浄運動が、イエズス会で、ザビエルさん。そこから日本にキリスト教がやってくる。うーん。世界は連動しています。

    ▼それからナポレオン。ドイツ史なんだけど。この本を読んでいて正直、中世までは、それなりにはオモシロかったけど、どうしても耳慣れない固有名詞と勢力分布の移り変わりが激しすぎて、もやっとしています。ところがそれが、ナポレオンですっきり。つまり、坂井さんも潔く書いていますが、「ナポレオンが全欧州を席巻してしまう。そこで、ぶっちゃけ全て一度、ご破算になってしまいます。全部、短期間でもナポレオン趣味にされてしまう。つまりフランス革命的な共和制を輸出、植え付けてしまう。その後リバウンドがあって、ナポレオンは失脚、王政帝政が戻ってくるんだけど、もはや共和制的な萌芽は揺るがない。統一国民国家、共和制民主制の緩やかな受け入れの方向になっていく」ということです。ナポレオン、やっぱり大物です。

    ▼かなり間違っているかもですが、中世に栄えしドイツ=オーストリア、神聖ローマ帝国。ですが結局、栄華のゆえに新興国に植民地競争で大いに遅れをとり、ドイツは諸州諸侯の乱立闘争。さらにイギリス&フランスに18世紀~19世紀の植民地経営で出遅れ。結局、植民地経営=グローバル貿易、資本主義、合理主義=平民ブルジョワジーの台頭=共和制民主主義という流れに乗り遅れた。合理的に運営できる規模、すなわちオーストリアを切り離した小ドイツでの中央集権国民国家の成立、そして後発が故の軍事国家へ、鉄血宰相ビスマルクで謳歌した帝政末期の強国時代も、第1次世界大戦でオーストリアと共倒れ。ヴェルサイユ条約体制の経済苦境に、世界恐慌のダブルパンチでヒトラーの台頭・・・。

    ▼そう考えると、冷戦終結~グローバル化のリバウンドとしての民族主義の再台頭から、コロナショックのダブル経済打撃が、更なるヒトラーの台頭を呼ばないことを祈りたくなってきますが、それは2度の敗戦と冷戦に蹂躙された20世紀を過ごしたドイツよりも、20世紀を勝ち抜いてしまった海の向こうの大国の方が心配ですね。トランプ大統領、どうなることやら・・・。

    ▼さて、アーレントに上陸します。

  • ☆☆☆2017年12月レビュー☆☆☆


    ドイツとは何だろう?現在のドイツは19世紀に生まれた新しい国で、歴史を遡ればその地域には「神聖ローマ帝国」があった。自分なりに解釈すれば、諸侯連合のボスといった存在だったのだろうか。諸藩連合のトップの江戸幕府のようなものか? 


    今回の読書で印象に残ったのは、オーストリアのヨーゼフ2世の改革だろうか。「啓蒙絶対主義」の国王により、農民開放や信教の自由がなされたというのは興味深い。
    ドイツ統一から第一次世界大戦、ヒトラーの出現に至る歴史にも触れている。


    ドイツを中心にヨーロッパの歴史を学ぶのに分かりやすい良著だと思う。

  • 英仏は国家統一を進め、教会所領に国王が課税権を持った。ローマ教皇は英仏に手を出せない。一方、神聖ローマは世俗領邦と同じく、国内の教会も半独立。国内がばらばらで介入がしやすいため、ローマ教皇はドイツの教会を通じて金を吸い上げていた。ドイツは「ローマの雌牛めうし」。教皇レオ10は、サン=ピエトロ大聖堂の修繕費を賄うため、ドイツ人に贖宥状を売って金を儲けた。いい加減にしろ、ということでルターの95か条(1517)。

    大衆動員をしたナチス。大衆民主主義の苦い経験。西ドイツは徹底した議会中心の間接民主にした。ワイマール時代に小党が乱立して政権不安に陥ったので、得票率が5%未満の政党に議席を与えないことにした。

    ヴィリー・ブラント(西ドイツ首相1969-1974)。ドイツ社会民主党(SPD)。オーデル川・ナイセ川より東をポーランドの領土と認める(1970)。ノーベル平和賞(1971)。東ドイツを主権国家として承認(1972)。しかし、秘書ギュンター・ギヨームが東ドイツのスパイだと判明、辞任(1974)。社会主義インターナショナル議長(1976-1992)。

    ※神聖ローマ。現ドイツ、現イタリアの北側、ブルグント(仏の南東)などを含む。当時「ドイツ人」という意識はない。
    ※聖職者の任命権は教皇にある。英仏(1107)。独ヴォルムス(1122)。
    ※シュタウフェン家フリードリヒ2。ナポリ大学設立(1224)。

  • 岩波新書の「10講」シリーズの既刊3点を読んでみたが、本書が一番読みやすかった。新書一冊でドイツ史まるごとを語るというのはそもそも無理なので、題材の適切な取捨選択が必要だが、本書の著者はそこら辺の塩梅を大変うまくやっているように思った。結果、全編の見通しがとてもよい本に出来上がっている(この点、あれもこれもと詰め込んで混沌としている『イギリス史10講』と対照的である)。著者自身の体験を交えて語られる現代ドイツのくだりも興味深い。

  • 本書は現在のドイツに相当する地域の歴史を10章立てで概説している本です。著者も後書きで述べているように、著者が恣意的に重要と思われるイベントを中心にピックアップし、それに対して過去の先達の見解もふまえながら自分の見解を披露しつつ、歴史の前後関係を説明しています。このアプローチは良かった。特に著者も強調されているように、ヨーロッパの中のドイツという視点が一貫して取られているので、なぜその当時(例えば)神聖ローマ帝国がこういう行動に出たのか、ビスマルクはドイツ統一ができたのか、という点について、簡単ではありますが、初心者にも納得がいくように説明されています。

     とかく歴史の本は浅く広く書くと、初心者には全然分からないものになってしまいがちなのですが、本書はその罠に陥らないよう、かなり注意深く書かれた本という印象を受けました。また著者自身の意見が前面に出すぎるのも初心者には良くないと思いますが、そのバランスもいいです。私は本書を読んで、興味がわいたので、早速個別の時代を詳述している別の本を買いました。ドイツ史を勉強しようというきっかけには最適ではないでしょうか。

  • 連邦制国家という特性がドイツ史に強い影響を与えてるのがおもしろかった
    フランス史と同じく、ドイツ戦後史にも明るくなかったので興味深かった
    やっぱりヒトラーの存在が現在のドイツ国民の中でどう意味付けされてるのか気になる

  • 神聖ローマ帝国やらプロイセンやら、それがどうしてドイツになるの?と、ずっと思っていたので(^^)読んでみた。
    20世紀ヒトラーの侵攻が今のプーチンに重なって胸がざわつく。当時ナチスドイツのポーランド・チェコ併合を認めたことが第二次大戦につながったとことをみるとウクライナ侵攻は認められない。それにしても「人類の進歩」は簡単じゃない・・

  • あとがきで著者が述べているように、この分量でドイツの歴史を語るのは無理がある。駆け足で飛ばしていくところが多いので、ある程度歴史を知った上で読んだ方が良いと思う。個人的には、ナポレオンの時のライン同盟やその後の各国の改革など、プロイセンによる統一前までの流れが掴めて良かった。議会重視と権威主義の揺れ動き、上からの改革と下からの改革、ドイツの民主主義はこういった活動の賜物なんだと改めて認識した。

  • 「ドイツ史10講」坂井榮八郎著、岩波新書、2003.02.20
    232p ¥777 C0222 (2021.11.03読了)(2007.05.04購入)

    【目次】
    第1講 ローマ・ゲルマンの世界からフランク帝国へ
    第2講 神聖ローマ帝国とヨーロッパ
    第3講 カール四世と中世後期のドイツ
    第4講 宗教改革時代のドイツとヨーロッパ
    第5講 絶対主義の歴史的役割
    第6講 ドイツ統一への道
    第7講 ドイツ帝国の光と影
    第8講 第一次世界大戦とワイマル共和国
    第9講 ナチス・ドイツと第二次世界大戦
    第10講 分割ドイツから統一ドイツへ
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「物語 ドイツの歴史」阿部謹也著、中公新書、1998.05.25
    「ヒトラーの抬頭」山口定著、朝日文庫、1991.07.01☆関連図書(既読)
    「わが闘争(上)」ヒトラー著・平野一郎訳、角川文庫、1973.10.20
    「わが闘争(下)」ヒトラー著・平野一郎訳、角川文庫、1973.10.20
    「白バラは散らず」インゲ・ショル著・内垣啓一訳、未来社、1964.10.30
    「荒れ野の40年」ヴァイツゼッカー著・永井清彦訳、岩波ブックレット、1986.02.20
    「ナチス裁判」野村二郎著、講談社現代新書、1993.01.20
    「ドイツ人のこころ」高橋義人著、岩波新書、1993.01.20
    「脱原発を決めたドイツの挑戦」熊谷徹著、角川SSC新書、2012.07.25
    「ぼくのドイツ文学講義」池内紀著、岩波新書、1996.01.22
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ゲルマン世界、神聖ローマ帝国、宗教改革、絶対主義、二回の世界大戦…二千数百年の激動の歩みを、一講ずつ、要点を明確にして、通史的に叙述。中世的世界、大学や官僚と近代化の役割など重要なテーマに着目しつつ、つねに「ヨーロッパの中のドイツ」という視点から描き、冷戦後の統一ドイツの位置にも新たな光を当てる。

  • 新書の良さを生かした見取り図的解説。
    現代ドイツの問題は長い歴史、特に18世紀以降の経過を理解しないといけないと諭された感あり。まぁどこの場所でも近現代史の理解は必須なんでしょう。前にも書きましたが、近現代史をベースに学校教育の歴史教科を再構築する(らしい?)という方針には基本同意です。

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