多文化世界 (岩波新書 新赤版 840)

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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308409

作品紹介・あらすじ

イデオロギー対立、少数者への抑圧・攻撃など、苛酷な経験を重ねてきた現代の世界は、宗教・民族問題の先鋭化と同時に、グローバル化に伴う画一化・一元化に直面している。真の相互理解や協調は可能なのか。その鍵となる「文化の多様性」の擁護と「文化の力」をめぐって、理念・現状・課題を、文化人類学者としての豊富な経験から説く。

感想・レビュー・書評

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  • 大学のレポートのために読みました。

  • 青木保 「多文化世界」 多文化世界を構築して 文明衝突を避けようとする思考実験の本と捉えた。とても良書〜文化人類学は 世界を変える学問だと思う


    バーリンの文化多元主義(プルーラリズム) と ナイの ソフトパワー論 を主テキストにした2部構成。前半は多文化世界の概要を論じ、後半は どのように文化度を高め、多文化世界を構築していくか論じている


    国際政治学者 ハンチントン が提示した文明衝突論(異なる文明間の衝突は避けられない)に対して、多元主義とソフトパワー論を用いて反論している


    著者の結論
    *現代の国家、社会、人間の取るべき態度は 異文化理解を基礎として、多元主義を認識し、協調と説得を ひたすら行う
    *それぞれの文化が 文化度を高める努力をすることによって、一つのグローバルな多文化世界を構築する


    2000年沖縄サミットにおいて「文化の多様性」が21世紀の一層の繁栄のテーマとなっていることを初めて知った




  • 著者は文化人類学者。仏教国タイについての理解を深めるために、出家してタイの僧院で修行したエピソードは、目新しくて興味深く読んだ。民族.宗教.地域.言語が異なる異文化への理解を深めることで、自国の文化も深く理解でき、他者との相互理解に基づく深い交流が可能になるという。これからの未来を生きる全ての人にとって、今後の大きな課題の一つだと感じた。

  • 2003年の出版の本。

    911以降の世界を文化人類学の観点から考える、みたいな感じかな?

    大きく2つの部分になっていて、前半は、バーリンの議論を踏まえた文化の多様性と相互理解の可能性みたいな話で、後半は、ジョセフ・ナイの議論を踏まえた文化政策?みたいな話。

    前半で紹介されるバーリンの議論がとても面白い。

    プラトン的な世界観に基づいて、良かれと思ってやることが、結局のところ、全体主義に行き着いてしまうという構造。それに対抗しうる思想家として、マキャベリがいるという。。。。評判の悪いマキャベリが、なぜか多文化世界につながっているという不思議。

    自文化中心主義的で、他者に自分の文化を押し付けようとすることの問題はいうまでもないが(とはいえ、それって今でもたくさんあるんだよね)、文化相対主義も危険性を持っている。

    全ての文化が相対的であると、私はこういう文化なんです、という開き直りを生み、それは他の文化への理解を諦めてしまう可能性がある。単純化すると、他の文化で残虐な行為が行われていてもそれはその国の文化だから、という話しにはならないはず。

    文化は、相容れない価値を持っていて、大きな統合には向かわない。だが、それでも、文化間での理解を成立させるためにはどうすればいいのか?「唯一の真理」、「正しさ」はないけど、なんらかの人間の「共通感覚」は、あるはず。

    そこをなんとかしようという話は、アーレントが政治哲学でやっていることを文化哲学(?)でやっている感じだな。

    最近の問題意識にフィットした一冊であった。

    ただし、後半のナイの「ソフトパワー」論を踏まえた議論の展開は、そこまで新鮮な感じはしなかったかな。

    問題意識はわかるけど、前半に対して、やや集中力が下がる印象を持った。

    バーリン、面白そうだな〜。

  • 前に読んだ「異文化理解」に続く、文化人類学者・青木保先生の一冊。こちらでは、ジョセフ・ナイのソフトパワー論に触発されて「文化は力」と唱えていますが、刊行から15年たとうとしている日本では相変わらず理解されない思考なのが残念です。

  • 文化人類学ってのがそうなのかもなんだけど、なんだかフワフワしてよく掴みにくい本だった。けど文化都市とかブランド国家とか東アジアと南アジアの発展の仕方の違いって指摘はハッとさせる物がある。

  • 文化人類学者・青木保氏が、2001年の3.11米国同時多発テロとその後2年間の世界の動きを踏まえて、“多文化(の併存する)世界”の課題とそれへの対処の方法について考察したもので、2003年に出版された。
    本書出版以降も、世界各地でテロ及びそれへの報復が散発し、更に、ここ数年のIslamic Stateの台頭を背景に、この類のテーマに関しては専門家から数多の著書が出されているが、問題の根本要因のひとつである“異文化間の対立”の背景と、異文化の併存を前提に今後目指すべき世界の姿について、包括的かつ分りやすく述べているという点では、本書の価値は全く失われてはいない。
    著者は前段で、2000年2月に国連とユネスコで宣言として出された“文化の多様性”の擁護を第1のポイントとして、「人間がそれぞれに文化として発達させた価値は多様であって、その多様な価値をそれぞれ尊重しながら、何が共通の認識であるかということを、人間のより調和的な世界を達成するために考えていくという姿勢」が、その基礎であると述べる。
    更に、後段では、“文化の力”の向上を第2のポイントとして、「世界の各地域の文化の担い手がその文化の力を認識しながら魅力的なものに鍛えて、世界に発信し、地球全体の文化を豊かにするために努力をする」ことが大事であるという。
    そして、その双方を進めることによって、一つのグローバルな世界を構築していくという意志の表れとなる世界が“多文化世界”であり、それこそが21世紀の世界の平和と安定の条件であると主張している。
    現在世界各地に飛び火しつつあるテロの脅威は、軍事的な行動だけでは抑えられず、抜本的な認識の転換が必要であることを、世界中の人々が感じ始めている今、改めて読みなおす意義のある一冊であろう。
    (2005年9月了)

  • 文化相対主義という概念が理解できた。

  • 国際社会の知識がまったくといって良いほどない身としては
    読む際には片手に辞書が必要でした。
    特に印象に残っているのが宗教の話で、神道が世界から見ても極めて民族的な宗教だというのにはなるほど、と思いました。
    私たち日本人のほとんどはたとえ信者じゃなくとも、初詣やお祭りといった形で神道の文化を体験しているわけで、そうした体験もまた一種の日本文化と言えるんでしょうね。

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著者プロフィール

1938年東京都生まれ。文化人類学者。東京大学大学院修了、大阪大学で博士号取得。東南アジアをはじめ各地でフィールドワークに従事。元文化庁長官、大阪大学名誉教授、前国立新美術館館長。主な著書に、『儀礼の象徴性』(1985年、岩波書店、サントリー学芸賞)、『「日本文化論」の変容』((1999年、中央公論新社、吉野作造賞)などがある。

「2023年 『佐藤太清 水の心象』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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