当事者主権 (岩波新書 新赤版 (860))

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308607

感想・レビュー・書評

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  •  この本は,あるMLを通じて知りました。その後,何度も書店で探しましたが見つからず,結局ネットを通じて購入しました。
     社会福祉では,当事者の意向を尊重すると言いますが,いつもその前に「最大限」とか「可能な限り」という言葉がつきます。いつも,これらの言葉について,どのように考えるべきなのかを気にしていたところ,この本に出会いました。「最大限」とか「可能な限り」という専門家ではなく,「当事者」がまさに自分のこととしてどのように行動していけば良いのかについて書かれています。
     当事者が生活する上でのニーズを自らが確認し,自分たちのために行動することの重要性を強調しています。また,社会福祉サービスの担い手としての女性の意見を尊重しないという視点でも書かれています。
     精神障害をもつ人の福祉を考えるときにも大いに役立つ視点が多く書かれています。

  • 【目次】
    目次 [i-iv]

    序章 当事者宣言 001
    1 当事者主権とは何か 
    2 当事者であること 
    3 自立支援と自己決定 
    4 当事者になる、ということ 
    5 当事者運動の合流 
    6 専門家主義への対抗 
    7 当事者学の発信 
    8 「公共性」の組み替え 

    1章 当事者運動の達成してきたもの 021
    1 当事者運動の誕生 
    2 自立生活運動の歴史 
    3 「自立」とは何か? 
    4 自立生活センターの成立 
    5 自立生活支援という事業 
    6 当事者の自己決定権とコミュニケーション能力 
    7 介助制度をどう変えてきたか 
    8 自立生活運動の達成してきたもの 
    9 新たな課題 
         
    2章 介護保険と支援費制度 061
    1 介護保険が生まれてきた背景 
    2 介護保険の老障一元化をめぐって 
    3 支援費制度のスタート 
    4 介護保険と支援費制度の違い 
    5 育児の社会化をめぐって 
         
    3章 当事者ニーズ中心の社会サービス 081
    1 属人から属性へ――自分はそのままで変わらないでよい 
    2 だれが利用量を決めるか? 
    3 だれがサービスを供給するか? 
    4 社会参加のための介助サービスをどう認めるか 
    5 家族ではなく当事者への支援を  
         
    4章 当事者たちがつながるとき 095
    1 システムアドボカシー 
    2 縦割りから横断的な連携へ 
    3 ノウハウの伝達と運動体の統合
    4 組織と連携
    5 適正規模とネットワーク型連携
    6 法人格の功罪
    7 事業体と運動体は分離しない
    8 採算部門は不採算部門に対して必ず優位に立つ  
         
    5章 当事者はだれに支援を求めるか 125
    1 障害者起業支援
    2 介護保険と市民事業体の創業期支援
    3 政府・企業・NPOの役割分担と競合
    4 規制緩和と品質管理
    5 雇用関係
    6 ダイレクト・ペイメント方式
    7 ケアワーカーの労働条件  
         
    6章 当事者が地域を変える 147
    1 福祉の客体から主体へ、さらに主権者へ
    2 家族介護という「常識」?
    3 施設主義からの解放
    4 精神障害者の医療からの解放
    5 脱医療と介助者の役割
    6 医療領域の限定
    7 サービス利用者とサービス供給者は循環する  
         
    7章 当事者の専門性と資格 161
    1 ヘルパーに資格は必要か 
    2 ピアカウンセラーの専門性 
    3 資格認定と品質管理――フェミニストカウンセリングの場合
    4 ケアマネジメントか、ケアコンサルタントか
    5 ケアマネジャーの専門性と身分保障
    6 成年後見制度と全人格的マネジメントの危険性
    7 新しい専門性の定義に向けて  
         
    8章 当事者学のススメ 185
    1 女性運動と女性学
    2 性的マイノリティとレズビアン/ゲイ・スタディーズ
    3 患者学の登場
    4 自助グループの経験
    5 精神障害者の当事者研究
    6 不登校学のススメ
    7 障害学の展開  
         
    おわりに 自己消滅系のシステム 205

    あとがき(中西正司/二〇〇三年九月 上野千鶴子) [209-214]
    当事者運動年表 [1-2]

  • 全ての人がなんらかの当事者になることができる社会なのだから、全ての人が読むべき本でしょう。
    障害者の底力に驚かされる。
    障害者自身が雇用主となるという思想は有償ボランティアの必要性にも応用できるかなと思った。
    「福祉」という言葉が存在する限り、世の中に生きにくさを感じる人が必ず存在するんだなぁ。

  • 「私の現在の状態を、こうあってほしい状態に対する不足ととらえて、そうではない新しい現実をつくりだろうとする構想力を待ったときに、はじめて自分のニーズとは何かがわかり、人は当事者になる」「ニーズはあるのではなく、つくられる。」「ニーズをつくるというのは、もうひとつの社会を構想することである。」

  • この本の内容も題名も時期尚早かもしれない
    現在の世界は建前民主主義にたどり着きながら
    反作用に犯されて
    大きく唯物的競争原理に逆行している最中である
    そんな中で膨れ上がった金融マフィアを筆頭とする経済界や
    政治や行政である今の権力者達は
    この本の内容を最も毛嫌いしているからである

    つまり個人がその個性と全体観を持って自律し
    お互いの足りない部分を補い合い共生する調和の繋がりを求め
    直接民主主義を目指す者を根絶やしたいと
    権力機構は躍起になっている最中なのである

    この本でも主権という言葉を使っているけれども
    本質的に權利とか所有という傲慢で利己的な競争原理社会を
    否定しているのである
    部分でありながら全体でもあるという意味で
    全ての存在が当事者同士でありお互いに
    対等で自在な関係であることを
    納得し合った関係にあるべきだということなのだと思う

    調和というのは一瞬一瞬においてお互いの主張を認め合うことで
    中庸な無摩擦の点を目指して限りない相乗効果に乗って
    創造の踊りを愉しもうということである

  • 上野千鶴子さんが 介護保険の欠陥を支援費制度との比較で書いている

  • 高齢者の介護及び障碍者の介助についてを中心にして、自己決定能力が欠けていると(社会的には)みなされることの多い「当事者」たちに、「主権」―すなわち「自分の身体と精神に対する誰からも侵されない自己統治権、自己決定権」―を奪還させよう(そのために社会・制度を再設計しよう)という訴えをしている。

    高齢者・障碍者を対象にして論じるとわかりやすいし全くそのとおりなのだが、これを、一般的な社会的弱者にまで拡張しようとすると少し問題は複雑になるだろうとは思った。
    しかし全体的な主張としては、「基本的に誰でも自己決定はしているし、できる」という考え方(周囲の人の「コミュニケ―ション能力」という認識を含む。)や、第三者としての「専門家」(及びパターナリズム)についての論考など、大いに納得・賛同した。

    ※蛇足)
    例えばまちづくりにまでこれを拡張しようとした場合、「誰が当事者なのか」という問題の他にも、いくつかの論点がうまれると思う。つまり、専門家(あるいは「ケアマネジャー」のような役割)の存在意義として、
    ①複雑な仕組み(法制度)を使いこなすための補助(著者の一人である上野が「ケアマネジャーの役割として考えているもの)、
    ②「個人の身体・精神」以外を調整すること(つまり、肉体的・時間的(世代間的)外部性の考慮)、
    があると考える。
    いずれにしろ、「客観性」のあるべき姿を問われる機会に本書がなったのも事実。より深く広い「主観」の積み重ねこそが客観、ということか。

  •  中西正司氏と上野千鶴子氏の共著。中西氏については寡聞ながら初めて知ることとなり、そのエネルギーにただ驚かされた。そして意外に感じられたのは上野千鶴子氏の今までとは違う「筆力」だ。
     中西氏は確かに行動的な方だが、失礼ながら単著をお見かけしないところをみると、この本については基本的にコンセプトと主張を提示し、それを上野氏が「脚色」したのではないかと思う(違ってたらお許しを)。
     私にとって上野氏の論調は、その視点を常に極端なレベルにおいて、そこから「中庸」の部分に斬り込んで行く姿勢を取っているように感じられ、常に一人称を強調するような印象がある。
     しかし、この書において、視点は完全に中西氏のものであるように思えた。上野氏が脚色のみを担当したのであるとしたら、すばらしい黒子ぶりである。

     障碍者の介助については詳しくなかったのでいろいろと学ばされることが多かったが、高齢者の福祉については書かれていることを読んで暗うつ、とは言わないまでも救われ難いものを感じた。
     この書は10年も前、介護保険にそれなりの期待があった時代のものだ。しかし中の指摘を見ると、当初から「家族」をアテにしたものであったということ。現在もそれは同じであり、いやむしろ「在宅、在宅」と施設収容を前提に置かせないという部分など、もっと家族への負担を課すような政策になっている。
     
     そしてその一つの原因も本書ではみごとに指摘されている。社会が「平均」と「標準」を基準に設計され、政策もそれに応じたものになっているということ。しかし、「平均」と「標準」にぴったり当てはまる人間などいない。人はそれぞれ平均値からの偏差を自分で修正しなければならない。そのためには何らかの力が必要となる。そのための最も簡潔な手段は「金銭」であり、現在満足のいくだけの介護を受けようと思ったら、「財力」が不可欠な要因となっているのだ。

     10年前、私は母を看取った。そしてこの10年間、大なり小なり介護に関わる生活をしてきている。その間「制度」としても「現状」としても介護が向上しているとは残念ながら思えない。

     行政のつくる「制度」をいただくだけの「クライアント」のままでは今後もこれは変わらないだろう。本書で主張された『一人一人の個人が自らの人生の責任ある当事者として生きること』という言葉がほんとうに清冽に響く。

  • 出版社/著者からの内容紹介
    障害者,女性,高齢者,子ども,不登校者,患者など社会的な弱者として「私のことは私が決める」という最も基本的なことを奪われてきた当事者たちが,近年,様々なところで発言し,社会を変革している.障害者自立生活運動を長年行ってきた中西氏と,高齢者・女性の新たなネットワークを提唱している上野氏が,当事者運動の実際,そして可能性を熱く語る.

  • [ 内容 ]
    障害者、女性、高齢者、子ども、不登校者、患者…。
    問題を抱えているとみなされた当事者たちが、「私のことは私が決める」と声をあげた。
    自立の意味を転換し、専門性を問い直し、社会を組みかえる、緊急かつ大胆な提言の書。

    [ 目次 ]


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