イラク 戦争と占領 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308713

作品紹介・あらすじ

短期間でイラク戦争を終結させたアメリカ。だが、その占領統治は相次ぐ武力抵抗によって混乱の極みに陥っている。亡命イラク人を重用しようとしたアメリカの目算はなぜ狂ったのか。イスラーム政治運動の拡大は、ポスト・フセイン体制をどのようなものにしていくのか。一三年ぶりの現地訪問を果した著者が、イラク「解放」の現実を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 2004年刊。イラク戦争直前から戦争後のイラク情勢を解説したもの。単純に言えば、戦後の見通しのないまま戦争突入。混乱・治安の悪化。米軍による治安回復の失敗、支持を得ない国外追放グループ。イスラム教地域指導者による治安回復。反政府・反米ゲリラによる反発続く。このような経過であろうか。イラク戦中戦後の状況を簡明に知る上で、有益なものである。

  • [ 内容 ]
    短期間でイラク戦争を終結させたアメリカ。
    だが、その占領統治は相次ぐ武力抵抗によって混乱の極みに陥っている。
    亡命イラク人を重用しようとしたアメリカの目算はなぜ狂ったのか。
    イスラーム政治運動の拡大は、ポスト・フセイン体制をどのようなものにしていくのか。
    一三年ぶりの現地訪問を果した著者が、イラク「解放」の現実を描く。

    [ 目次 ]
    第1章 帰還(混乱と破壊の果てに 何もしないアメリカ人 ほか)
    第2章 フセイン、最後の戦い(アメリカ、戦争の太鼓を叩き始める 空中分解する国連 ほか)
    第3章 「アメリカの占領」の失敗(ポスト・フセイン体制の準備 戦後統治政策の混迷 ほか)
    第4章 宗教勢力の台頭(地域共同体に根付いた宗教勢力 若きムクタダの台頭 ほか)
    終章 イラクはどこへ(戦闘の再開 歴史が語る教訓)


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    [ 参考となる書評 ]

  • 4004308712 244p 2004・1・23 2刷

  • 電力不足やそれに伴うインフラの不備に加えて、イラク人の生活にとって大きな障害となっているのは、通信網の破壊だろう。戦争で各地の電話通信センターが破壊されたが、半年経っても一部しか回復していない。わずかに同じ局番を共有する一定のエリア内で、地上電話回線が通じる程度。当然業務上の通信連絡にも支障をきたすことになるので、占領軍は7月以降、勤務復帰した公務員に携帯電話を配布することにした。
    実際、フランスとロシアにとって最も大きな懸念材料は、もしアメリカがイラクのフセイン政権を妥当して新たな政権を樹立した場合、自国がフセイン政権と取り交わした利権契約はどうなるのか、フセイン政権時代に積み上げられた膨大な借金を返してもらえるのか、ということだった。
    戦争が順調に進まなかった最大の理由はイラク国内で反政府暴動や投降が起きなかったことにある。

  • イラクという国の複雑な事情を背景として、戦後のアメリカ占領策が準備不足のままに失敗し、その後の復興も遅々として進まなくなった。
    客観的な事実をもとに淡々と書かれていて、イラクの戦後事情が次第に理解できるようになる。

  • 世界の警察・アメリカは、どこにでも土足で上がり込みすべてに自国のルールを適用しようとする。その失敗の例が戦後イラクの混乱だろう。

  • (2004.08.01読了)(2004.06.27購入)
    2003年3月20日に米軍、バグダードへの爆撃開始。5月1日にブッシュ大統領、戦闘終結宣言。7月13日にイラク人による統治評議会設立。12月13日に米軍、フセイン元大統領の身柄を拘束。
    戦闘終結宣言から、1年以上経過したのに、いまだに戦闘がやまない。フセインはこのような人たちをどのように統治していたのだろうか。アメリカは、十分研究したのだろうか。日本について研究した「菊と刀」に当たるようなものはあるのだろうか。

    「私の中のイラクは、以前から人や羊がのんびりと往来するような温かい伝統的共同体のイメージではない。近代産業社会の行き着いた果ての、工場とコンクリートとガソリンの臭いのイメージだ。」(イラクに平和が戻ったら、メソポタミア文明の発祥の地なので訪れてみたいと思っているが、現在はかなり近代的な国家のようだ。)
    「電力不足、ガソリン不足、通信網の破壊、復旧しようとしても修復した後から破壊されていっこうに復旧が進まない。」
    「かつてフセイン政権に土地や家屋を接収されて追い出された者たちが、政権崩壊とともに過去の所有権を主張して現在居住している住民と衝突する。大部族の土地だった場所などでは、武装した部族集団が大挙して住民を追い出すような事態も発生した。」(東西ドイツの統一の後でも同じような土地争いがあったようだ。)
    「2003年7月に、ウダイ、クサイというフセインの二人の息子が米軍の攻撃によって殺害され、12月にフセインが米軍に拘束されても米軍に対する攻撃は減っていない。抵抗勢力はいったい誰の指揮の下に動いているのか?」
    第2章では、大量破壊兵器の査察から戦争までが述べられ、第3章では、アメリカの占領後について述べている。アメリカの一貫性のなさ、迷走振りが述べてある。日本の統治と同じようにうまくはいかないようだ。アメリカの日本統治はいまだに続いているけど。
    第4章は、フセインの独裁で、徹底した中央集権体制をとってきたので、政権の崩壊後、無秩序な混乱状態が予想されたのに、宗教指導者による秩序の維持が行われている。

    新聞、テレビではなかなかわからないことが、非常にわかりやすく述べてある。

    著者 酒井 啓子
    1959年生まれ
    東京大学教養学部教養学科卒
     アジア経済研究所参事
    著書 「イラクとアメリカ」岩波新書、2002年8月

  • 本書はイラク戦争が終結した後、現地訪問した筆者が現地での視察と知見を基に書いた本である。
    今でこそイラク戦争は間違った戦争と言われているが、当時のアメリカは与野党共にイラク戦争そのものに反対ではなかったという意見がほとんどであり、戦争をコストベネフィットで考えていたことにある。
    評者はイラク戦争は簡単に終わるが、テロなどの後始末で苦労すると考えていた。しかし、納得のいく説明ではあるまい。

    本書によれば、フセイン政権が崩壊してもイスラム社会は生きていたという点で興味深い。言うまでもなく、フセイン政権はバース党の一党独裁であったから、フセイン政権崩壊後は一から国家のシステムを作る必要があると思っていた。ところが、国防総省の「イラクの将来計画」ではバース党員に対しての警告を発していており、バース党に対して比較的穏健な姿勢をとっており、バース党全員を追放することに対して、警告を発している。
    しかし、アメリカは全てのバース党員を追放したために結果的に組織のシステムがうまく機能しなくなったのである。
    そして、戦後のイラク人は決して反米ありきではなかった。アメリカがイラク人の声を抑圧するようになってからイラク社会全体が反米姿勢に転じている。

    また、イラク戦争前に日本のメディアでもたびたび指摘されていたスンナ派・シーア派の対立はそれほどではなく、むしろ上手くイスラム社会としての仕組が成り立っていたのである。宗教分裂はむしろほとんど無く、共闘姿勢が目立っていたというところには注目に値する。そのイスラム化が実はフセイン政権がイスラム信仰キャンペーンを行うことで、当時行政サービスが行きとどかなかった不満をそらす意図があったという。それがイラク社会にイスラム志向の芽となったと指摘する。

    筆者はあとがきで「自分が関わり合う『他国』に対する個人の思いと、その国に対して自国政府が掲げる看板とに齟齬が生じないことは、幸せなことであろう。」と綴っている。アメリカは未だに効率性とイラク国民の主権との間で揺れ動いている。自国民と他国民の血を流した上での占領に対して、他国民に理解されないアメリカ。日本はこの国とどう向き合っていくのか考えなければならない。

  • イラク戦争の解説、イラク社会とアメリカの関わりについて述べている。何となく分かりにくいイスラム社会のことがよく分かる。この本を読むとアメリカがイラクで行っていることはことごとく逆効果を生んでいるのが分かってちょっと面白い。

  • イラク戦争の「終焉」がブッシュ大統領によって宣言されてから1年以上がたった。しかしながら、毎日、テレビで報道されているように、イラク市民やテロリストグループによる抵抗はいまだに続いている。そのような「戦後」イラクにおいて、何が一番必要なのかと考えたとき、やはり秩序の創造だと思う。インフラ整備も必要なことではあるが、秩序のない社会では、整備も滞るだろう。これらのことを踏まえて、イラクの戦後処理について考えてみたいと思う。
     第一、秩序の創造だが、現在ある有志連合軍の代わりにPKOと現地人による警察をおき、治安維持に活躍させてはどうだろうか。確かに、本書にもあるように現在のイラクでは、イラク国内にいる外国人・軍を敵視する傾向がある。しかしながら、だからといって武器を持たずにイラクで治安維持することは不可能であり、また、現状放置することもできない。そこで、有志連合より少し「マシ」なPKOをおいて、また、現地人の警察を組織して両者の話し合いによって治安回復を図っていこうと考えた。ここでは現地人警察をどのように組織すればよいのかという新たな問題も浮上するが、それ以前にPKOが現地に入れるような状態を作り上げることのほうが重要である。
     秩序の創造に続いて大事なことが先ほどにも述べたようにインフラ整備であると考える。
    本書にも出てきたように、現在は公共事業を担うのが多くはアメリカの企業となっており、そのことがまたイラク人の不満を買っている。インフラ整備において、先進国による支援は必要であるし、また各自の利益を求めながらの支援になることもやむをえないことだと思う。しかしながら、一方的に先進国の人が事業に携わると、現地人の不満も出てくるだろう。そうではなく、現地人も雇用して両者ともに公共事業に携える形態を作っていくことが大切である。また、そうすることによって、ある程度の雇用問題も解決されるのではないかと思う。
    いずれにせよ、アメリカがイラクから手を引き、国連がその後を継ぐような体制へと変わろうとしていることから、その後の国連がどのように活躍していくのか、見ていきたいと思う。

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著者プロフィール

1959年生まれ。東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業後、アジア経済研究所に勤務。24年間の同研究所在任中に、英国ダーラム大学(中東イスラーム研究センター)で修士号取得。1986~89年、在イラク日本大使館に専門調査員として出向。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授を経て、現在、千葉大学法政経学部教授兼同大学グローバル関係融合研究センター長。専攻はイラク政治史、現代中東政治。おもな著書に『イラクとアメリカ』(岩波新書、アジア・太平洋賞大賞受賞)、『イラク 戦争と占領』『イラクは食べる』(岩波新書)、『中東から世界が見える イラク戦争から「アラブの春」へ』(岩波ジュニア新書)、『<中東>の考え方』(講談社現代新書)、『移ろう中東、変わる日本 2012-2015』(みすず書房)、『中東政治学』(編著、有斐閣)など。

「2018年 『9.11後の現代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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