源氏物語の世界 (岩波新書)

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著者 : 日向一雅
  • 岩波書店 (2004年3月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308836

作品紹介

源氏物語は恋と愛の物語であり、王権と政治の物語であり、人の生き方と救済を問う物語でもある。千年にわたって読みつがれてきたその魅力の根源をこの物語のもつ多義的かつ多面的な構造に求めながら、冒頭の桐壷巻に仕掛けられた四つの「謎」を手がかりにその世界を読み解いていく。源氏物語は、読者に問いかける物語なのである。

源氏物語の世界 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 話型論で『源氏物語』を読み解いた本、ということだろうか。
    あるいは、引用や典拠という側面から見ていくという趣向。
    これまで、そのような本も読んだことがあるが、「そうなんだ~」という思いと、「で、何?」という気持ちとを同時に感じることが多かった。
    さて、本書は、というと、私にとっては興味深かった。

    問題の立て方が、面白かった。例えば、次のようなことだ。
    桐壺更衣の父の大納言や、明石の入道には男子がいない。
    彼らは、娘を入内させたり、高貴な男性に嫁がせることはできても、家に男児がいない以上、その家は断絶する。
    たとえ入内した娘が帝の子を産んだにしても、後見人がいない状態になり、即位は難しいだろう。
    にもかかわらず、なぜ彼らは娘の結婚に執着するのか、と筆者は問う。
    言われてみればそうだなあ、と思うけれど、今までそんな風には考えたことがなかった。

    源氏物語は、愛する人との別れを恨む、「長恨」と、得られないものの代償である「形代」の物語だ、と筆者は言う。
    「形代」の代表である紫の上には、継子譚の話型をなぞっている部分もあるが、彼女には子どもがなく、理想的な男君に見いだされ、幸せになるという話型から逸脱する。
    形代の物語としても、紫の上は晩年の、女三宮降嫁による苦悩を経て、むしろ美しさを増していく。これにより、ただの「形代」から脱するのだ、と筆者は考えている。

    もう一人の「形代」である浮舟は、本書では形代であると同時に、穢れを移して流す「人形」だという。
    が、彼女も、形代や人形から脱した女性だという。
    新書なので、あらすじの紹介がかなりの部分を占めるが、それをしながら、いかに薫や匂宮が浮舟に対してひどい扱いをしているかが、丁寧に解説される。
    生田川伝説ほどの純愛は浮舟には向けられておらず、二人の男の互いへの猜疑や嫉妬、そして報復によって倒れていくのだ、という解釈に共感する。
    入水によって形代になりきってしまうのだが、その後、出家し、薫の迎えを拒む浮舟には、大君や中君の形代の位置からも抜け出していく、と最終的にはなっていくようだった。

    ほかにも、そことそこがつながるのか、と驚かされた部分もあった。
    なかなか楽しかった。

  • 2004年刊行。著者は明治大学文学部教授。源氏物語を近代の観点から切り取った解説書は数あれど、本書は「近世」の源氏物語注釈から源氏物語の検討をする。しかも、政治面・人間関係面(男女関係も含む)・因果応報や物の怪など、源氏の複雑さを反映した濃い内容である。また、端的に、近世史・文学史(文学思想とは大袈裟かも)を叙述する面もあろうか。

  • 『源氏物語』の4つの謎に答えるという形式の本です。

    一つ目の謎は、桐壺帝の時代を「いづれの御時にか」と曖昧に表現しているのはなぜか、というもの。2つ目は、桐壺更衣の父である按察大納言が、自分が真でも更衣の入内は必ず成し遂げよと遺言したのはなぜか、3つ目は、高麗の相人が光源氏の人相を占ったときに述べた「帝王の相」とは何か、そして最後の一つは、桐壺更衣を失った桐壺帝の悲しみとその後の藤壺更衣への愛情を、「長恨」と「形代」として捉えることの意味は何か、というものです。

    著者は、『源氏物語』が執筆された当時の政治的・文化的状況を参照するとともに、物語の構造にも立ち入って、これらの謎を解明していきます。冒頭の「桐壷」巻が、物語全体の豊かな内容を示唆するような謎を孕んでいるという本書の問いに導かれて、しだいに『源氏物語』の奥深い世界へと入っていくことのできる入門書ではないかと思います。

  • 自分の中で源氏物語が分かりやすく整理されてスッキリした。式部が意図した登場人物の性格設定や行動の意味付けなど、興味深く理解できた。

  • 【資料ID】25304
    【分類】913.36/H99

  •  『源氏物語』の解説本。大きな枠組みごとに章が分かれており、その最初に描かれているあらすじが、1ページにまとまっており、非常にわかりやすかった。

     プロローグにおいて、筆者が4つの謎を問いかけており、それを中心にいろいろと描かれているのが面白かった。その4つの謎とは、桐壷巻における謎・桐壷更衣の入内にかかわる謎・物語は光源氏がどのようにして「帝王の相」を成就するのかという謎・そして桐壷帝の更衣に対する「長恨」の悲しみは癒されたのかという謎、である。


     三つ目の謎である、光源氏が「帝王の相」をどのように成就させたのか、というのは、自分の不義の子を天皇にしたり、また、明石の姫君の子を東宮にそえたりといったことで成就していったのではないだろうか。また、桐壷帝の更衣に対する「長恨」の悲しみは、私は、癒されなかったのではないかと考える。それは、光源氏が柏木の女三の宮に対する密通を気づいてしまったように、桐壷帝も光源氏が桐壷更衣の形代である藤壺と密通しているのを気づいてしまっていると思うからである

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