社会起業家: 社会責任ビジネスの新しい潮流 (岩波新書 新赤版 900)
- 岩波書店 (2004年7月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004309000
感想・レビュー・書評
-
よい本。著者の情熱が分掌からひしひしと伝わってくる
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
名門大学を出て、自分で会社を興して、事業が拡大した暁には株式を上場し、第二のビル・ゲイツになるか、さもなければ大企業に就職して、ハードワークをこなしながら高級を得る
一昔前のエリートの考え方だったが、最近は事情が違うらしい。
「日本でもNPOが就職ランク1位になれるか?」
http://agora-web.jp/archives/1530290.html
今では、NPO(利潤も追及するNPO)が上位にきている
Humanities/Liberal Arts、日本でいう文系出身の新卒は
3位が、Teach for America(教育のNPO)
という記事を見て、この本をとりました。
社会起業とは何なのか、社会起業家が増えてきた時代背景など、一通り学べる。
自己啓発本よりも、はるかに自分が将来何を実現したいのか考えさせられる。
企業が社会性を求めている背景と理由
・企業のグローバル化(国家が衰退、GDPで比較すると、上位で21位でエクソンモービルが他国を抜いてでてくる)
・ステークホルダーの行動の変化(買う・買わないで意思表示。ナイキの不買運動など)
・エンロン事件の影響(自分は何のために働くのか、考えるきっかけとなった事件)
パタゴニアのイヴォン・シュナイザー
「会社は社会を変えるための道具」
この人を紹介している章を読んでしびれた。かっこよすぎる。
いろいろと勉強になりました。
次は、イヴォンの本買うぞーーー -
ひとつに、消費者の啓蒙の重要性を感じた。
環境に配慮していたり、きちんと労働基準を守る企業の商品を選んで買ってもらう。そういった雰囲気を醸成する必要がある。
市場における商品選択の基準を、より人道的・環境配慮的なものにシフトすることによって、企業の利益至上主義を資本主義の内部から解体させる。解体というより「ずらす」。そういう試みも可能なわけで、とても面白いと思った。
つまるところ、買い物は常に政治的な行為なのだ。
消費者としての市民は、労働者としての市民と同等に重要なトピックだと感じた。
そして、消費者がよりよい商品選びをするための選択肢を、社会事業家が積極的に示していく。
進歩的な企業の 良識的な振る舞いが、他の企業の経営方針にも影響を与えていく。
営業成績以外の評価基準を新設し、意識的な投資家たちに示していく。
そういった投資家が援助するのは、「所属する組織に対する忠誠心」よりも「目標達成に対する忠誠心」を持った人たち。市場原理に飲み込まれることをうまく避けつつ、思い思いの社会貢献事業を目指す。
企業や個人のミクロな行動が、マクロ的な市場全体に影響を与えることが可能であることを示していると思う。
ところで、筆者は行政のダメダメさを自明として、「官から民へ」みたいな項目もメリットとして掲げているが、「社会事業」って そもそも そういう枠組みの話なのか、対比されるべきものなのか疑問。
「官僚」ははたして非効率なのか、社会に関する事業をすべて個人に任せて良いのかは、また次の機会に考えてみたい。 -
国内外で活躍する社会起業家達のやりがいと困難をわかりやすい文章で簡潔に掘り下げていってくれる。
なかでも私はSRIであるとか、NPOにも求められるようになってきた経営的な視点に惹かれた。
善意だけでは長期的な社会貢献は難しいというのが私の考えである。第一世代の社会起業家達が、自らが正しいと思って営利活動に勤しみ、その結果として社会貢献が付随してきたというこのモデルこそ、理想であると考える。そのようなモデルが生まれる背景を作るには消費者の監視が不可欠である。
しかし消費者全てがいちいち「この企業のこの製品はどこどこでこのような方法で製品を作っている」という風に調べていくのは困難である。そこでSRIである。SRIが企業倫理の監査として機能するには私達、消費者が環境や福祉、労働基準といった新しい経済的価値について関心を持たねばならない。
我々消費者は、価格やブランドといった選択が主流となっている現状の経済から、もう一段階上へと考えをシフトする必要があると感じた。 -
岩波新書にしては分かりやすかった(笑)。社会起業家というのがどのようなものなのかよく分かった。ざっくり説明すると、社会に与える影響を十分に考慮しながら、最終的に公益につながような手法で利益を追求する起業家のこと。
高い志と優れたスキルがなければ社会起業家になれない訳ではない。社会起業家は、ちょっとした問題意識から生まれることもある。社会起業家は「難しい」とか「流行に過ぎない」とか思っている人には是非とも読んで欲しい。 -
【内容】構成としては、前半に社会起業そのものやその背景についての概念的知識、後半は実例の紹介というわかりやすい形になっていた。社会起業家についての知識がかなり少ない人への導入の本としては最適。
【文責】みなみ -
2004年に書かれた本である。
恥ずかしながら僕は社会起業家という言葉をこの本に出会うまでは知らなかった。そういう仕事の仕方があることは知っていたけれど、それにしても社会責任と言えば社会福祉、少し広義に捉えて環境に優しい、くらいのイメージでしかなかった。
ホットワイアード誌(現在はワイアード・ヴィジョンhttp://wiredvision.jp/)によるアンケート結果が紹介されていたが、社会起業家に共感するかどうかという質問に307人中276人が「共感する」と答えたそうである。既に言葉の意味が分かる人が母集団であったと思えなくもないが、それにしても高い数字である。
さて、その社会起業家。社会を良くするという理念のもとに起業する人であり、それ以上の定義は重要ではない。働く内容よりもその姿勢に特徴があり、「働き方と生き方が同じ」と斎藤さんは解説する。「事業を通じて自分自身をさらけ出し・・・」という表現は、起業した人がどういう価値観を持ち、それをどういう形で社会に問うか、あるいは貢献するかということをあらわしているのだろう。
ある程度大きな会社を対象とし、社会起業家あるいは社会責任に積極的な会社を応援する動きに、社会責任投資(SRI)や国際組織であるBSR(http://www.bsr.org/)などがある。
しかしSVN(=Social Venture Network, http://www.svn.org/index.cfm)の活動を見た斎藤さんは「自分ができることから始めるという単純な行為が大きな力を発揮しうる」と言う。つまりは、自分の価値観を大事にしつつも、「まずはできることから」というのが大事で、誰かが見ているからやるとか、競ってやるというのではなく、自らの精神性に素直に反応する、好きなことをやる、というのがその本質なのだろう。
ちなみに、NPOであっても株式会社であっても社会起業家になりうる。事業を続けるためには、キャッシュフローを継続的に確保することが大事なので、利益を出していくことも構わない。しかし、いくつかの社会起業家を例として紹介していたが、その多くは規模を追うことはせず、自分たちがコントロールできる範囲にとどめているところが印象的だ。
元同僚も最近、社会起業をした。日本では実績がない人が銀行借入れをするのは大変だという話を聞いた。上記にあるBSRやSVNなどは、アジアに拠点はあっても日本にはない。起業する人の割合も日本は低い。こういう残念な環境ではあるが、身近には既に行動を起こしている人がいるというのは実に嬉しい。
ボクのブログより:http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20090901 -
社会起業家ってなんだ?と聞かれても、正直答えられない。この本は「社会起業家」として活動してる人びとの実際の活動中心に書かれている。私はこのことを「考えるのではなく、感じて、行動しろ!」という著者からのメッセージとして受け取った。たぶん著者が伝えたいのはそういうことなんじゃないかな。日本の例が少ないのが惜しい。