ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書)

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レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309055

作品紹介・あらすじ

ヨーロッパ先進諸国に定住するムスリム人口は、二世、三世を含め今や一五〇〇万以上といわれている。増加と共に目立つようになってきた受け入れ国社会との摩擦は、何に由来するのだろうか。各国でのフィールドワークを踏まえて、公教育の場でのスカーフ着用をめぐる軋轢などの現状を報告し、異なった文明が共生するための可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパの忘れっぽさが半端無い

  • 著者の本は六割ほどは読んでいるが、主張が一貫していて好感が持てる。
    本書の特別な感想は失念してしまった。著者の他本で主張されていることが書いてあるという印象。
    こんなことを書くと申し訳ないが、著者の作品の中で本書はやや読みづらいと思う。(理由はわからない)
    一番読みやすかったのは、『となりのイスラム』『イスラームの怒り』だ。おすすめである。

  • 序章 ヨーロッパ移民社会と文明の発見
    Ⅰ章 内と外を隔てる壁とはなにか
    Ⅱ章 多文化主義の光と影
    Ⅲ章 隣人から見た「自由・平等・博愛」
    Ⅳ章 ヨーロッパとイスラームの共存

  • 筆者はイスラム地域研究者。イスラム寄りの立場から、ドイツ、オランダ、フランスにおける移民の社会あるいは個人の問題を例証し、解説している。グローバルヒストリーの視点から、イスラムとヨーロッパの共生のために何が必要か、示唆に富む提言が込められた好著である。

  • クロアチアがEUに加盟できて、トルコが足止めを食ってるのは、前者がカトリック、後者がイスラム信者が多いことによる宗教的な隔たりがあるからなのかな?と勝手に思ってました。宗教の違いよりも世俗主義の方が、断絶の根拠になってるのだという(人口の多さってのもあるんでしょうが)。

  • アル・カイダのナンバー2と言われるザワヒリ氏が、日本への攻撃を示唆したというニュースが飛びこんできた。イラク攻撃の正当性を依然として訴え続ける米英はともかく、スペインを筆頭に他の国々は、米英二カ国に距離を置こうとしている。大量破壊兵器の存在が認められないというアメリカの発表は、イラク戦争の正当性について重大な疑義を自ら示したと言えるだろう。国連事務総長までもがアメリカに対してはっきり批判的な態度を表明した今となっても頑なにブッシュ大統領支持を訴え続ける小泉首相の態度は、反イスラム的態度ととられても言い訳できない。

    郵政民営化でもそうだが、事態を冷静かつ客観的に見て取り、的確な判断を示すことより、自らの言い出したことに飽くまでも固執し、内実は捨てながら、名のみ残すことに拘泥する首相には、国を預かる資質があるのかどうか疑わしい。この人にとっては、国や国民より自分の方が大事なのではないだろうか。この難しい時代に、とんでもない人を国民は宰相に選んだものだ。

    そもそも、イスラムに対する米英その他のヨーロッパ諸国と日本は同じ位相にはいない。ヨーロッパとイスラムには、日本などには窺い知れぬ長い確執がある。テロリズム対民主主義などという単純な図式で、イラク戦争の大義を訴えるブッシュ大統領の言葉を真に受け、名誉白人的な位置に自分を置こうとする日本という国に対して、アジアは言うに及ばず、ヨーロッパでもその行動に不可思議なものを感じているのではないだろうか。

    筆者は、ヨーロッパにおけるムスリム社会でのフィールドワークの結果をもとに、移民に起きたイスラム復興の原因を明らかにし、ヨーロッパとイスラムの共生は可能かどうかという問題を設定する。ドイツ、オランダ、フランスの三国を中心に、それぞれの国におけるイスラム諸国からの移民の受容の違いを分析する部分は鮮やかで説得力を持つ。しかし、その分析の結果、明らかになるのは、二つの文化の共生は難しいということである。

    イスラムは、まず民族を超越している。国家の法が神の教えと衝突する場合、国家や民族という概念より、ムスリムであることの方が優先する。国家や民族という枠組みの中で発展を遂げてきた近代ヨーロッパとは相容れないものがある。次に、個人と自由という規範性を尊重する西洋文明社会と、神の前にあっては個人の自由というものが存在しないイスラム的規範とがぶつかり合う。さらには、次々と新しい科学や技術を採り入れることを良しとする進歩主義的世界観を前提とする西洋文明と神の定めたものを絶対とし、その不変性、無謬性を疑わないイスラムの世界観とが衝突する。

    キリスト教的な宗教観に基礎を置きながらも、政教分離により、それを相対化してきた西洋では、過去を否定することで人間は進化し、発達するものだという世界観を疑う者はいない。それに対し、イスラム世界では、神の定めた道が規範であって、人間が行った行為によって世界が進歩するなどという観念はもともと存在しない。女子学生のスカーフくらいがどうして大問題になるかといえば、このような人間観、世界観の違いが二つの世界にあるからだ。

    イスラム世界と西洋文明社会との間に軋轢が生じたのは、西洋文明の側の傲りにより、世界が圧倒的なまでに非対称的なものとなったことに起因する。ヨーロッパが誇る哲学や自然科学などギリシア以来の知の大系は、もともとイスラム文明を経由した結果もたらされたものである。西洋世界が自らの世界観を絶対視せず、イスラム的世界を含めた世界を相対化することができれば、問題の解決も不可能ではない。テロの根絶などという硬直化した態度は事態を悪化させこそすれ、決して解決することはないだろう。

    個人も自由も政教分離も、語の真の意味で、いまだ手にしたことのない日本は西洋的な価値観を伴にしているとは言い難い。かといって絶対的な神への帰依などという信仰心も持ち合わせてはいない。だからこそ、どちらの立場にも偏らない中立的な位置で問題の解決にあたれたものを、絶好の機会をみすみすふいにしてしまったのは返す返すも悔やまれてならない。

  • ドイツ、オランダ、フランスの移民事情に関して考察を述べた上でまとめています。これから、日本も労働力不足で移民受け入れを検討しなければならないなか、どのような問題が生じてくるのか、どのように互いの権利を認め合うのか。議論の土台として抑えておくことが書いてあります。

  • イスラーム教徒への意識が変わった一冊だった。

  • 本書はスカーフ問題に象徴されるヨーロッパの既存社会とムスリムとの間の軋轢を、ムスリム系移民擁護の姿勢から概説する。

    1973年の石油危機以降困窮化したムスリムとそれに伴うイスラムコミュニティの創設。血統主義のドイツ、柱状社会のオランダ、ライシテのフランスで噴出する諸問題。これらの紹介と並行して逐次著者の意見が述べられていく。

    当初、掴みを得るためか我々の同情を誘う記述が多く、単なる感情論なのではと思われる点がままあった。しかし、後半になるにつれて各国事情との照合に基づいた記述が増えてゆき、論理に肉付けがなされてゆく。

    冒頭にも述べたとおり、決して本書は中立的な立場に乗っ取って書かれたものではないと思う。だが、ユーロセントリズムの陰に隠れて見えなかったヨーロッパのイスラムを知るにあたっては有益な書籍になるはずだ。

  • [ 内容 ]
    ヨーロッパ先進諸国に定住するムスリム人口は、二世、三世を含め今や一五〇〇万以上といわれている。
    増加と共に目立つようになってきた受け入れ国社会との摩擦は、何に由来するのだろうか。
    各国でのフィールドワークを踏まえて、公教育の場でのスカーフ着用をめぐる軋轢などの現状を報告し、異なった文明が共生するための可能性を探る。

    [ 目次 ]
    序章 ヨーロッパ移民社会と文明の相克
    1章 内と外を隔てる壁とはなにか―ドイツ(リトル・イスタンブルの人びと 移民たちにとってのヨーロッパ 隣人としてのムスリムへのまなざし)
    2章 多文化主義の光と影―オランダ(世界都市に生きるムスリム 寛容とはなにか ムスリムはヨーロッパに何を見たか)
    3章 隣人から見た「自由・平等・博愛」―フランス(なぜ「郊外」は嫌われるのか 啓蒙と同化のあいだ―踏絵としての世俗主義 「ヨーロッパ」とはいったい何であったか)
    4章 ヨーロッパとイスラームの共生―文明の「力」を自覚することはできるか(イスラーム世界の現状認識とジハード ヨーロッパは何を誤認したのか)

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著者プロフィール

同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科長・教授。1956年東京都生まれ。1979年東京大学教養学部科学史・科学哲学分科卒業。東京大学大学院理学系研究科地理学専門課程(修士課程)修了。東京大学助手、一橋大学大学院教授などを経て、現在に至る。専門は、現代イスラーム地域研究。著書に『となりのイスラムー世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(2016年/ミシマ社)、『イスラームから世界を見る』(2012年、ちくまプリマー新書)など多数。

「2018年 『地図・写真・データで見る 中東の国々内藤正典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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