ネットと戦争: 9.11からのアメリカ文化 (岩波新書 新赤版 913)
- 岩波書店 (2004年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004309130
作品紹介・あらすじ
9・11以後、ネットの世界では、事件そのもの、テロとイラク戦争の意味、アメリカの存在自体をめぐって、作家、詩人、評論家、知識人たちの様々な意見があふれかえっている。本書は海外文化の潮流をネットで読むための知識と技術、想像力の勘所を伝授しつつ、戦時下ともいうべき深刻でやや滑稽なアメリカ文化の現在を描き出す。
感想・レビュー・書評
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安楽椅子に座ってそこからすべてを類推する「アームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)」という有名なスタイルの名探偵が居るが、ここでの著者はそうした探偵の流儀を想起させる。現場に足を運ばず、ネットから垣間見たアメリカを率直に書き記す。だが、著者の観察眼と確かな知識に裏打ちされたそうした「観察」は並ならぬ強度を保っており、そうした高み(?)から俯瞰しえたアメリカがどれほど大きく9.11とイラク戦争で揺れたかをあぶり出すことに成功していると思う。文学者たちのナイーブさと真摯さがリアルで、どこか笑えて感動できる
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9.11以降のメディアの変化について。Googleができ変わったこと。
アメリカにおける詩の重要性。
アメリカの雑誌やサイト紹介 -
(2013.09.17読了)(2005.03.18購入)
副題「9.11からのアメリカ文化」
著者は、アメリカ文化の翻訳家です。アメリカの作家や知識人、アメリカ文化などについて、常にウォッチしているのでしょう。
この本は、9.11後のアメリカをネットを通してウォッチした結果の報告です。
雑誌『すばる』に毎月連載していたものから9.11事件の後のものを1冊にまとめたものです。テロや戦争について、生々しく論じているものと期待して読んだのですが、その面では、期待外れでした。
【目次】
序にかえて
2001年9月―自分たちが落ちていくかのような
2001年10月―腰抜けか? テロリストか? 国旗か
2001年11月―庭や朝があったあの頃
2001年12月―1939年の9月と2001年の9月
2002年1月―みんな、変わった
2002年4月―あの言葉、あのブッククラブ
2002年6月―いま調べること
2002年8月―シンクタンクから作家会議へ
2002年9月―戦争の噂のなかで
2002年10月―放言が消えた
2002年11月―休業しようが無効になろうが
2002年12月―女の喧嘩は女が食う
2003年2月―戦争に反対する詩人たち
2003年3月―ブッシュ一族の奇々怪々
2003年4月―カントリーとパルチザンと
2003年8月―失業した作家を救うには
2003年9月―ギャップのあるひとたちからの声
2003年10月―生きるのは楽しいよ
2004年2月―びっくり仰天のマッチ売りの少女
2004年4月―キルロイ、参上
2004年5月―死者たちでできた顔
あとがき―2004年9月
●デニス・ジョンソン(10頁)
「いまのところわたしは、アメリカ最大の都市で戦争を二日ほど見たことになる。でも、こういう日が何年もずるずるとつづくことを想像しよう。その何年ものあいだに爆発で大きなビルがつぎつぎ崩れ、ついには最後の一つも消えてなくなることを想像しよう。そういう何年もがやがて何十年にもなっていくのを見てきたひとびとがいることを想像しよう。短い人生が、いまわれわれがニューヨークで見たような日の連続であったひとびとのいることを想像しよう」
●スーザン・ソンタグ(17頁)
テロリストの行動を「腰抜け物の攻撃である」としたブッシュ大統領のコメントを批判したもので、じぶんの命を差し出してまでひとを殺そうとするものが腰抜けであるわけがないのだからいいかげんなことを言うな、という主旨のものである。
●ネットは宝の山(70頁)
一見どうでもいい情報は、とくに小説の翻訳の場合など、おおいに助けになる。背景にちらりとあらわれるテレビ番組とか、登場人物が買い物に出かける店とか、乗っている車の型とか、それらについてある程度知っていると、作業はずいぶん楽だ。
●都市伝説(89頁)
「ビン・ラディンはなぜアメリカを憎むのか、ということについても、こんな噂が流れました。かれは昔アメリカ人の女の子とセックスしたとき、モノが小さいと言って笑われたというのです。おなじような噂は、第二次大戦のとき、ヒットラーとユダヤ人の売春婦についてありました」
●「テロとのたたかい」(102頁)
「これは戦争というよりは、アメリカの権力を拡大せよという指令であり、そういうことをこの言葉は示している」
●核の安全性(133頁)
軍が兵隊向けに作った、核はいかに安全か、をアピールするための訓練用フィルムの数々、これがあまりにもデタラメ、いいかげん、ムチャクチャ、無責任なので、ぼくは笑わざるをえなかったのだ。
☆関連図書(既読)
「テロリズムと世界宗教戦争」宮崎正弘著、徳間書店、2001.10.31
「「テロリスト」がアメリカを憎む理由」芝生瑞和著、毎日新聞社、2001.11.10
「目撃アメリカ崩壊」青木冨貴子著、文春新書、2001.11.10
「FBIはなぜテロリストに敗北したのか」青木冨貴子著、新潮社、2002.08.30
「テロリストの軌跡」朝日新聞アタ取材班、草思社、2002.04.25
(2013年10月15日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
9・11以後、ネットの世界では、事件そのもの、テロとイラク戦争の意味、アメリカの存在自体をめぐって、作家、詩人、評論家、知識人たちの様々な意見があふれかえっている。本書は海外文化の潮流をネットで読むための知識と技術、想像力の勘所を伝授しつつ、戦時下ともいうべき深刻でやや滑稽なアメリカ文化の現在を描き出す。 -
何だコレ?意味わかんなかった。
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9.11とか3.11とか関連づける傾向を なんなんだ と思ってたけど
これ読んですとんとしっくりきてしまった
構図が似ているっていうかあてはめてしまえる
9.11以降のニューヨークから学ぶべきことはたくさんあるんじゃないだろうか
どう生きるべきか
そろそろ悪い冗談はただの冗談にしてほしい
おそろしい事が起こると物事を矮小化して自分は安全だと安心するだとか 現実を直視しないことには前に進まないだろう
知らないふりをして汚染された食べ物を食べるより 知っていながらも生きるために食べ続けることを選びたい
この本はインターネットで情報を得ることを書いた本で、ただそれが9.11のあとだったから 情報のほとんどが9.11関連だったってだけで、さっぱりしていて、それが妙に現実的なのがよかった
原発関連の本も読むべきかもしれないけど、今になって俯瞰して9.11関連の本を読むのもいいんじゃないかな
終わったわけじゃないけど -
さまざまな雑誌やネット上の情報をうまく加工し、紹介しているところがいい。ここで紹介されているネット上の情報は、ほとんどが今でもアクセス可能。この本を読むなら、ネットにアクセスできる環境で読んだ方がより面白い。
直接的に9.11の話がどわーっと出るわけではないけれど、当時のアメリカのネット上の言論空間が、どうなっていたかが良くわかる。
何より面白いのは、オルタナティブでアメリカ内部の少数意見がネットにはたくさん出回っていたという点だろうか。
今の日本のネット言論空間はさてどうか? 日本の言論空間を著者のようにウオッチしている人はいるのだろうか?
そう考えながら読みました。 -
911以降のアメリカのメディアがいかにネットを使い、情報を発信したかを紹介する。ネットというメディアが主眼ではない。アメリカの文化人たちがそれを使っていかなる発言をしたのかに焦点があてられている。サイバーテロなどの脅威などが描かれていると思って借りたため、想像している内容と違って驚いた。
前書きにかえてW・H・オーデンの「1939年9月1日」という詩が引用される。なるほど、日常が跡形も無く崩れていく絶望感と、そこに無理矢理希望を見出していこうとする弱い人間の願いが同居している良い詩だ。3.11の震災で僕らが感じたことに似ていると思った。 -
アメリカ文学が好きな人は、読むと楽しいのかも。
私はアメリカ文学を知らないのでこの本の面白さを理解できませんでした。 -
9.11がネットでどう扱われていたかを振り出しに、その後の様々なネット上の動きを通して、アメリカの文化的特徴を明らかにしていこうという試みの書。
作家、詩人、評論家などのネット上に表明される意見やサイトは、興味深いものが多くとりあげられている。