東アジア共同体: 経済統合のゆくえと日本 (岩波新書 新赤版 919)
- 岩波書店 (2004年11月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004309192
作品紹介・あらすじ
日中韓にアセアン諸国を加えた東アジアは、米国、欧州連合とともに世界経済の三極をなしている。この地に経済圏、さらには共同体を構築する声がいま、なぜ高まっているのか。それはどうすれば実現でき、そのために日本は何をすべきなのか。長く国連やOECDの第一線で活躍し、開発の問題に取り組んできた著者ならではの熱い提言。
感想・レビュー・書評
-
2012年11冊目。
ちょっと古い本だったが、とても読みやすかったです。
日本のアジア外交がいかに米国への配慮によって制限されているかがよく分かります。
欧州で最初に鉄鋼分野の共同体ができてからEU設立、更には共通通貨ユーロ導入までが、約半世紀。
ASEAN設立がアジア統合の始まりだとすれば、2010年代はちょうど半世紀に当たります。
さて、どうなるか、といったところですね。
今後の動向も追ってみたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
▼経済学の理論上、自由貿易政策を採ることは理に適っていることである。しかしながら、集団(国際経済全体)での合理性と個々(一国内で)の行動とを一致させることは難しい。
▼アジア域内でもFTAやEPAの交渉、締結が進む中、日本にとっては農業部門がネックとなり、足を前に踏み出せずにいる(もっとも、日本は高関税と補助金とで農業を守っているようでいて、長期的に見れば自身の首を絞めているようなものなのだが)。
▼東南アジアにおいてはASEANを中心とする地域共同体が模索されている。その+3の一員である日本だが、今のまま長期的なプランを基にした戦略を立てらずにいれば、アジア地域の経済圏から占め出され孤立する可能性さえある。
▼対米配慮、対中意識は結構だが、50年、100年先の日本を考えた時、何が賢明な判断と言えるのか――本著はその手掛かりを得る一助になるに違いない。 -
前半が同じ事ばかり言ってる印象を受けたがとりあえずEU、NAFTAと地域共同体が主流になりつつある現代において日本はどの共同体にも属しておらずそれは非常に今後、経済的にもつらい。その結果、国際舞台の国連などでも発言権が低下していくってことだと認識しました。
後半は、現在いまだに未熟な東南アジアの金融市場で日本主導でシステムを構築すべき!っていうのには非常に納得できた。
読んでてつくづく思ったのが日本は未だにアメリカの属国的な感じだということ。アメリカ国債も肩代わりしてるし。。。。
そして、著者の言う『これ以上、価値が上がらない、むしろ今後下がっていくドルを持っておく必要はないし東南アジアを中心になぜ未だにドルを基軸にするのかがわからない』という意見には納得できた。
今後は、日本主導で円、もしくは人民元主導で貿易等を行うべきだという主張にも賛成です。
7章以降は楽しくてやっぱり金融好きだなと感じました。 -
東アジア共同体の実現可能性がどれほどのものか知りたくて読んだ。
うーん、感想は、著者の認識は甘々だと思います。
日本にメリットがあるとは思えないことがいっぱい挙げられているけど、それらは「度量を示すべき」って言葉で片づけてしまいます。
東アジア共同体構想の原型がASEANにあることなど、概念自体を知る分には色々と得るものがありました。 -
国連やOECDで長年働いた著者の豊富な知識とデータから書かれた本書は、東アジアにEUのような共同体を構築するためにはどうすればいいかを考える上での恰好の入門書といえる。
資源が少なく、食糧の不足が叫ばれる日本にとって、アジアの国々と密接な関係を結ぶことは、これからの日本にとって必要不可欠なことと思われる。EUのような共同体を東アジアにつくる上では、著者が言うように経済的な共同体として東アジアをつくることが確かに妥当であろう。しかし、アジアの国々と密接な関係を築くためには、当初から政治的な側面も見つめざるを得ないのではないか。それこそ30年戦争や、世界大戦を経験してきたヨーロッパが経済的な側面だけでなく、EUの中では二度と戦争を起こさないという政治的な理念のもとに築かれたことを、日本は見つめなければならない。東アジアに共同体を構築することは、すなわち日中・日韓を含めたアジアとの歴史を見つめ、政治的な側面を考慮することが必要不可欠であると思う。 -
日本・韓国・中国・東南アジア間での共同体構築
・直接投資が少ない。現状、日本はアメリカ、EUへの投資が大半である。
・外貨がアメリカへ投資され、一方でアメリカから短期的投資を受け入れている。東アジア債券市場の創設が必要。
・農業の共通政策が必要。日本は保護政策を改め、開放すべきものは開放する。その際、食料の安全基準、環境基準も構築する。
・開発輸入の促進。東アジアに日本の農業技術を指導し、代償として輸入する。
・環境技術の指導。 -
東アジア共同体そのものの定義は現在もあまりはっきりしないので、はっきりしないものについて解説するのは非常に難しいのであろう。本書を読んでもそこまでよくわからない。ただ、それをめぐる議論の入口として流し読みする分にはよかった。中国の勢いや今後の展望がよくわかる。
-
まだまだ詰めが甘いと思う。東アジア統合に理念を見出せていない感が否めない。
ただ、こういった考えが今の東アジア研究で流行ってますよ、と知ることが出来るので興味ある方は是非。