ポストコロニアリズム (岩波新書 新赤版 928)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309284

作品紹介・あらすじ

植民地主義のすさまじい暴力にさらされてきた人々の視点から西欧近代の歴史をとらえかえし、現在に及ぶその影響について批判的に考察する思想、ポストコロニアリズム。ファノン、サイード、スピヴァクの議論を丹念に紹介しながら、"日本"という場で「植民地主義以後」の課題に向き合うことの意味を考える、最良の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 繰り返し立ち返りたい一冊。

  • ポストコロニアリズムについて知りたければとりあえずこの本から読み始めると良いと思う。
    そこからさらに紹介された人物の本を彼ら彼女らの思想を自分の中で咀嚼し思考の海にもぐったりしながら再構成して自分のものにできたら最高だろうね

  • 「ポストコロニアリズム」本橋哲也著、岩波新書、2005.01.20
    232p ¥777 C0220 (2021.07.07読了)(2021.06.28借入)
    ◆誤植
    57頁 後ろから5行目、3行目
    58頁 3行目
    誤 ヤマノミ → 正 ヤノマミ
    南米に住むヤノマミ族がガリンペイロ(白人の金採掘者)に虐殺された記事が引用されています。元の記事の訳者は、南米についてよく知っている方のようなので間違えているとは思えないのですが、…。この本の著者は、イギリス文学が専門のようなので、やむを得ないとしても、岩波書店の校正担当が、見逃すというのは、はなはだ残念です。

    Eテレの「100分で名著」でフランツ・ファノンの『黒い皮膚・白い仮面』が取り上げられ興味を持ちました。図書館の蔵書検索で「フランツ・ファノン」をキーにして検索してみたところ、フランツ・ファノンの著作はなく、この「ポストコロニアリズム」がヒットしてきたので、読んでみることにしました。

    【目次】
    序 いま、なぜポストコロニアリズムか
    第一章 一四九二年、コロニアルな夜明け
    第二章 「食人種」とは誰のことか―カニバリズムの系譜
    第三章 植民地主義からの脱却―フランツ・ファノンとアルジェリア
    第四章 「西洋」と「東洋」―エドワード・サイードとパレスチナ
    第五章 階級・女性・サバルタン―ガヤトリ・スピヴァクとベンガル
    第六章 「日本」にとってポストコロニアリズムとは何か
    あとがきにかえて ―日本人のポストコロニアルな<責任>
    ブックガイド・映像ガイド

    ☆関連書籍(既読)
    「フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』」小野正嗣著、NHK出版、2021.02.01
    「花岡事件 異境の虹」池川包男著、現代教養文庫、1995.09.30
    「新版 悪魔の飽食」森村誠一著、角川文庫、1983.06.10
    「新版 続・悪魔の飽食」森村誠一著、角川文庫、1983.08.10
    「悪魔の飽食 第三部」森村誠一著、角川文庫、1985.08.10
    「731部隊」常石敬一著、講談社現代新書、1995.07.20
    「731」青木冨貴子著、新潮社、2005.08.05
    「従軍慰安婦にされた少女たち」石川逸子著、岩波ジュニア新書、1993.06.21
    「スペイン女王イサベルの栄光と悲劇」小西章子著、鎌倉書房、1980.12.01
    「離散するユダヤ人」小岸昭著、岩波新書、1997.02.20
    「1492年のマリア」西垣通著、講談社、2002.07.05
    「コロンブス航海誌」コロンブス著・林屋永吉訳、岩波文庫、1977.09.16
    「コロンブス」増田義郎著、岩波新書、1979.08.20
    「略奪の海 カリブ」増田義郎著、岩波新書、1989.06.20
    「コロンブス」青木康征著、中公新書、1989.08.25
    「インディアスの破壊についての簡潔な報告」ラス・カサス著・染田秀藤訳、岩波文庫、1976.06.25
    「新世界のユートピア」増田義郎著、研究社、1971.09.30
    「アリストテレスとアメリカ・インディアン」L.ハンケ著、佐々木昭夫訳、岩波新書、1974.03.28
    「エセー(一)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1965.05.16
    「エセー(二)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1965.11.16
    「エセー(三)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1966.01.16
    「エセー(四)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1966.10.16
    「エセー(五)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1967.09.16
    「エセー(六)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1967.10.16
    「ガリヴァ旅行記」スウィフト著・中野好夫訳、新潮文庫、1951.07.30
    「ロビンソン漂流記」デフォー著・吉田健一訳、新潮文庫、1951.05.31
    「アルジェリア戦争」ジュール・ロワ著・鈴木道彦訳、岩波新書、1961.06.24
    「まんがパレスチナ問題」山井教雄著、講談社現代新書、2005.01.20
    「ハイファに戻って・太陽の男たち」ガッサーン・カナファーニー著・黒田寿郎訳、河出書房新社、1978.05.20
    「不可触民」山際素男著、知恵の森文庫、2000.10.15
    「アラハバード憤戦記」牧野由紀子著、アイオーエム、2001.05.10
    「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」仲宗根政善著、角川文庫、1982.04.10
    「ひめゆりの沖縄戦」伊波園子著、岩波ジュニア新書、1992.06.19
    (「BOOK」データベースより)amazon
    植民地主義のすさまじい暴力にさらされてきた人々の視点から西欧近代の歴史をとらえかえし、現在に及ぶその影響について批判的に考察する思想、ポストコロニアリズム。ファノン、サイード、スピヴァクの議論を丹念に紹介しながら、“日本”という場で「植民地主義以後」の課題に向き合うことの意味を考える、最良の入門書。

  • ポストコロニアリズムとはなにかを、わかりやすく解説している入門書です。

    まずは、コロンブスにはじまる植民地支配がとりあげられています。そこでは、自分たちとは異なる文化を生きる他者を一定のイメージによって囲い込んできたことが、具体的に解説されています。

    つづいて著者は、ファノン、サイード、スピヴァクらの仕事をコンパクトに紹介し、最後にアイヌ、沖縄、いわゆる従軍慰安婦の問題をとりあげ、現代の日本におけるポストコロニアリズムの観点からの問題提起をおこなっています。

    ポストコロニアリズムの議論は、本書で紹介されているスピヴァクの学生に対することばが示すように、講壇で語られるだけの思想ではなく、現代社会のアクチュアルな問題に密接に結びついていることを見落としてはならないように思います。しかしそれだけに、ポストコロニアリズムの考え方を入門書という枠組みのなかで紹介することは、困難な仕事であるようにも思います。本書は比較的平明なことばで書かれた入門書ではありますが、提起されている問題を共有できない読者にとっては、議論が上滑りしているという印象をいだかせてしまうのではないかという気もします。

  •  ポストコロニアリズムとは何か。

     そもそもコロニアリズムとは何かということでコロンブスの話から始まり、ポストコロニアリズムとしてファノン(アルジェリア)、サイード(パレスチナ)、スピヴァク(インド)が、最後にアイヌや沖縄を軸に日本について語られる。
     コロニアリズムとは征服者によっ規定されることがその最初の重要な要素なのだと思った。ただ独立するだけではその呪縛からは逃れられない。ポストコロニアリズムとはその他者から規定された自己を意識し、その他者とただ対立するだけでなく新たな関係を築いていくことなのではないかと感じた。
     確かに世界は精神的にも物質的にも植民地主義を脱していないと思う。
     
     新書とは思えぬ読み応え。巻末のブックガイドもありがたい。

  • 戦争、暴力のいろいろな形が窺われ、契機となる書だ。

  • 歴史的経緯で搾取されていた人種の人々の行動が、搾取した側と生活水準が同等になるくらいまである程度許されるという考え方であり、考え方としてはアファーマティブ・アクションに近い。だが、どの程度までがポストコロニアリズムの考えで許容されどこまでが許容されないかがいまいちわからない。考え方として必要なのはわかるが、いまいち現実味にかけるというイメージ。実際、逆に差別されているとして行動をしている在特会とかいるわけだし。

  • 異文化はあなたのすぐそばにある、しかし気づかないだけ…それに気づかせてくれるポストコロニアル研究の手引き書!

  • 人に勧めたので、本橋哲也『ポストコロニアリズム』岩波新書、再読。冒頭で植民地主義の歴史を扱い、西洋近代のプロジェクトを検討。後半はファノン、サイード、スピヴァクを取り上げ、三人の現実との格闘からその思想を概観する(現場での人間的出会いと理論的普遍化の結合)。良くできた入門書です。

    『ポストコロニアリズム』でスピヴァクの興味深いエピソードありましたので紹介。

    あるとき大学の教室で、ひとりの学生が「先生の言われるように、自分の出自を自覚したり、自分がどんな特権的な位置から話をしたり知識を得たりしているかについていつも意識的であろうとすると、僕みたいに白人で男で中産階級のアメリカ人学生は何も言う資格がないんじゃないでしょうか」と。

    「そうやってあなたに何も言えなくさせている、それはあなたの階級とか出身とかお金とか、そういうものでしょ。こうやっていっしょに勉強しているのは、そのような特権的なあり方をあなたが自分で知って、それをひとつづつ自分から引き剥がしていくプロセスなんだ、と考えてみたら」とスピヴァク

    サイードやスピヴァクとの出会いが、おそらく吉野作造研究にも影響を与えているし、そういう自覚と連帯、試行錯誤の挑戦者が自分の先輩にいたということは驚きでもあり、誇りでもあり、そこから自身を照射する対鏡にもなっているのではないかと思います。

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著者プロフィール

1955年、東京生まれ。東京大学文学部英文科卒業後、ヨーク大学で博士号取得。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。専門はイギリス文学、カルチュラル・スタディーズ。著書に『ポストコロニアリズム』(岩波新書、2005年)、『ディズニー・プリンセスのゆくえ』(ナカニシヤ出版、2016年)、『深読みミュージカル』(青土社、新装版2019年)など、訳書にヒューム『征服の修辞学』(共訳、法政大学出版局、1995年)、バーバ『文化の場所』(共訳、法政大学出版局、新装版2012年)などがある。

「2020年 『帝国の島々 漂着者、食人種、征服幻想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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