桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 180
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309369

作品紹介・あらすじ

一面を同じ色で彩っては、一斉に散っていくソメイヨシノ。近代の幕開けとともに日本の春を塗り替えていったこの人工的な桜は、どんな語りを生み出し、いかなる歴史を人々に読み込ませてきたのだろうか。現実の桜と語られた桜の間の往還関係を追いながら、そこからうかび上がってくる「日本」の姿、「自然」の形に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 面白い切り口であったが、どうも踏み込めなかったところがあって、残念な作品となっている。
    サクラと戦争というところは、きれいにかわしてしまった。
    1963年生まれで、比較社会論や日本社会論が領域で、サクラを語ろうとする。
    若いにもかかわらず、文章は老成している。どうも、変な感じだ。
    サクラに関連する本をよく読みこんでいて、感心はする。収拾の幅の広さに、さすがだと思うが、自家不和合性、S遺伝子のことを述べているが、サクラの遺伝子と進化の過程などの背景などが明らかにされていない。

    サクラは サは穀物(イネ)の精霊、クラは、神の座すところ、冬が過ぎて、春となるときに
    最初に、穀物の精霊が舞い降りてくるところ、それが サクラ。

    染井村(豊島区駒込)で、育成された。明治5年のころだったといわれる。
    オオシマザクラとエドヒガンの交配でできたといわれている。
    自然交配、人為的交配、枝変わりなのか、わかっていない。
    明治23年(1890年)藤野寄命が学術的に同定。ソメイヨシノと命名。
    明治33年に学術雑誌に掲載。翌年 松村任三が正式に新種として記載。
    そのころ 吉野桜は ヤマザクラだった。徳川吉宗はヤマザクラの愛好者だった。

    サクラの歴史は連綿と続いているようだが、昨今のソメイヨシノの風景は明治中ごろから始まっているのであり、その前はサクラの風景も変わっていたが、ソメイヨシノの風景で昔をイメージしている。ソメイヨシノの前はヤマザクラダッタかもしれないが、多品種のサクラをそんなに多くないサクラをめでていたかもしれない。

    吉野はサクラの名所で 行った事はないヒトでもわかっていた。
    それで、ソメイヨシノという名前は 卓越していた。ネーミングの持つ普及力。
    ソメイヨシノは 急速に普及していくが、サクラに 意味がこめられるようになった。
    斉藤正二はいう(昭和55年)
    『人間がサクラをどう見るのか、サクラの中にいかなるシンボルを読み取るのか、という問いに対する正しい答えは、それはすべて関係によって決まるのであり、サクラ自身になにか意味上の実体があるのではない、ということになる。』
    サクラのゼロ記号性。

    靖国神社の誕生から読み解く。
    靖国神社は木戸孝允によって、明治2年戊辰戦争の霊を祭るために建立。そのときの名前は東京招魂社と呼ばれていた。サクラも木戸孝允によって植えられたとされている。
    日本というものに 深くサクラがかかわっていく。
    明治という時代に 国のためと私のため ということを区別する必要がなかった。

    人工/自然、東京/吉野、西欧/日本、一神教/多神教、父/母

    赤瀬川原平はいう
    『ソメイヨシノのお花見も大好きだけど、あの白い花だけを満開にさせる美しさというのは、
    やはり西洋好みではないかと思う。どことなく分析的な父性的合理主義というか、あるいは一神教的なニュアンスが感じられる。一方吉野のヤマザクラの方は赤い葉が混じり、青い葉もまじり、 これが多神教というとこじつけかもしれないけれど、清濁あわせ飲む様な味わいの深さがあって、そこに母性的な縫い糸の多様さを感じてしまう。』

    それが 時代とともに サクラは変化していく。
    ソメイヨシノのもつ、一斉に咲く集団性による美しさ、わずか10日間で花の生命を終える、さらさらと散っていく。そのことが、違った意味で使われるようになる。日本らしさや日本人らしさにつながる。大和魂。

    咲きみちて花より外の色もなし  足利義政
    願わくは花の下にて春死なむ   西行
    花の雲鐘は上野か浅草か     松尾芭蕉

    花のイメージを ソメイヨシノのイメージで、読んでしまう。

    敷島の大和心を人問わば 朝日ににほふ山桜花  本居宣長

    ヤマザクラに託した本居宣長もいた。

    井上哲次朗は言う(大正2年 1913年)
    『桜花は百花中散り際の最も潔白にしてかつ優美なるものなり。
    わが邦の武士はただ桜花の如き気象精神を具有すべきのみならず、またその生命を捨つるにあたりて、桜花のごとく潔白ならざるべからざるなり。換言すれば、桜花は我が日本民族のまさに具有すべき気象精神を表現するものにほかならず。』

    しかし、佐藤俊樹は、寸止め してしまったのだろうか。もったいない。
    そして サクラの本当のルーツまで追いかけない。日本のよってきたところを論じない。
    戦争の中で 極限までシンボル化されたサクラの残骸が、日本のさまざまな思想的な潮流の中に息づいているなかで、日本人のサクラ好みの風潮は変わっていない。

  • いろんな桜語りをたくさんの本や文章から取り上げ、集合的無意識の語り口の多さを述べ、冷静に事実を追求して書いている姿勢に好感が持てる。
    無意識に桜に観念を投影してしまわずに論理性と実証性が必要。

  • 『桜が創った「日本」』というタイトルから、日本人の伝統的な美意識を象徴するソメイヨシノが、じつは江戸末期に登場した品種であるという「神話」を解体する、といった内容を予想していましたが、いい意味で裏切られました。

    著者の議論は、「本来の日本の桜はヤマザクラ」といった、ソメイヨシノの「神話」を相対化しようとするまなざしが、ソメイヨシノの「神話」を前提に成立していることにまで及んでいこうとします。

    近代日本の種々の「神話」を解体するカルチュラル・スタディーズにはやや食傷気味でしたが、「神話」を相対化しようとする試みがみずからのまなざしをのぞき込むように反転するスリリングな議論構成には、新鮮な驚きを感じました。

  • 日本中全ての桜の8割がソメイヨシノで、それらは皆同じ遺伝子を持つクローンだとは初めて知った。一斉にわっと咲きパッと散る桜に、古来からの日本人性を重ねがちだが、このクローン桜が広まったのは、この100年程度、しかも人為的な仕業という。こうした事実と裏腹に日本人の複雑な「桜」
    観が形成されてきた理由が本書のテーマで、多くの文献を引用しながら、この問いに答えを探している。

  • 日本人は桜が大好きと言われているけれど、まとまってパっと咲いてパッと散るソメイヨシノは江戸末期にできた品種であるとか、明治中期までは花=桜ではなかったとか、いろいろお勉強になりました。
    でも、すっごく読みにくい本だった。
    ちょっと自分の論理に酔ってる感じの文章で、客観的にわかりにくい。
    わかりやすそうに書いていて、実は論理飛躍があってわかりにくい本。
    あまりおススメはしません。

  • 桜語りがなぜ自分から全体にパッと飛ぶのかの説明がほしかった

  • 高校の図書館にて、桜に惹かれて読んだ本。

    桜、特にソメイヨシノについて、身近にありながら知らないことがたくさん書いてあり、すごくおもしろかった。

  •  桜は日本の美、と言い切る人のための本。
     

     今、日本の各地で見る事ができる染井吉野という桜の一品種が作り出されたのは、江戸時代のこと。
     染井吉野という花の特徴は、葉よりも先に花が咲いて、しかもその花が大きいために、一カ所に多数の木が植えられた状態で開花すると、とても見応えがあること。
     それに、染井吉野の木は、同じ木から接ぎ木して創った個体、いわば同一人物ですので、開花時期が地方ごとに綺麗にそろう事も特徴である。
     そのあたりを普段はあまり意識しないけれども、他の桜(例えば、山桜や紅枝垂桜、大島桜、寒緋桜など)とは大きく違う特徴であることの解説から始まり、桜について語る時に日本人が作りだしてきた想像の源泉を辿り、桜に託されて来た幻想がどのように構築されてきたかを丁寧に解説している。

  • 卒業、入学、就職、そして出会いと別れ、と4月始まりの日本社会の節目を彩ってきた桜。そしてその八割を占めるソメイヨシノ。そのソメイヨシノがオオシマザクラとエドヒガンの交配によって生まれたことは有名ですが、明治初期の誕生してクローンによってしか繁殖しないことは意外と知られていないのではないでしょうか。そのソメイヨシノをめぐる「桜語り」がいかにナショナリズムと結合した幻想を生み、そして戦後復興に大きな役割を果たしてきたかを考察しています。

  • ビブリオバトル首都決戦2011 準決勝にて紹介した本です。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授

「2018年 『社会が現れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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