- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004309390
作品紹介・あらすじ
明治日本には、民主主義の思想と運動の豊かな蓄積があった。「主権在民」論と「議院内閣制」論の間のせめぎあいの中で、それはどう深まり、挫折していったのか。また後の時代に何を遺したのか。福沢諭吉、植木枝盛、中江兆民、徳富蘇峰、北一輝、美濃部達吉らの議論を読み解きながら、日本の現在の姿をも照らし出す刺激的な歴史叙述。
感想・レビュー・書評
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本書は、明治における歴史的過程を「政治システム」という側面から捉えなおし、しかも日本の近代史を「上からの枠組み」ではなく、「下からのデモクラシー」という枠組みで理解するというという、歴史書としてはあまり見たことがない視点から展開している。
「大同団結運動」や「明治憲法体制の定着」「大正デモクラシー」、すべて当時の政治運動についての考察は相当この時代についての知識がないと歯が立たないほど緻密・精密としかいいようがない。
それでも、本書を読み続けることができた理由は、「第一に、日本人は二大政党制が嫌いなのではないだろうか。戦前日本で1925年から31年までの7年間、二大政党制は実現されたが、この7年間以外の約120年間、それは一度も実現していないのである」という本書の一節に衝撃を受けたからである。
本書を読んで、2009年に発足した民主党政権がわずか3年3ヶ月で崩壊した理由は、「鳩山由紀夫」の不用意な対米対応や「管直人」の特異なキャラクターにあるのではなく、日本人が意識せずに持っている「国民文化」やそれに規定された「政治システム」自身の内側にあったのではないかと驚きとともに思いついた。
しかし、本書は当時の「政治運動」だけでなく、その裏打ちたる「政治思想」や「人的評価」までも総合的というか、じつに立体的に考察している。
その内容はあまりにも専門的というか緻密であり、読んでも巨大なモニュメントの前で呆然とたたずむように圧倒されるばかりであるが、現在の日本の政治を考える上で、「明治日本」の歴史考察が生きてくるという視点に興奮する思いを持った。
本書は、日本という国家がもつ独特かつ特殊な歴史を解析した凄い本であると高く評価したい。 -
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福沢諭吉からはじまって、植木枝盛・中江兆民・徳富蘇峰・北一輝・美濃部達吉が登場。
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明治から戦後民主主義までを貫く、日本における「デモクラシーの伝統」
を規定し、その明治期における展開(二大政党制、普通選挙、君民同治
あるいは社会民主主義―「明治デモクラシー」とよぶ)を、思想史的に
叙述した著作。文体は比較的平易で、非常に読みやすい。
ひとつ疑問なのは、日本におけるデモクラシーの伝統の始点が明治維新に
置かれている点だ。また、それ以前は筆者は「王政復古以前の歴史に無知
な近代史研究者」であるがゆえに、あえて言及を避けている。
しかし、デモクラシーの伝統を言うのであれば、近代以前から展開して
いる租税協議権的発想なんかをどう位置づけるのだろうか、という点は
少し疑問に思った。
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迷ったが政治史の本なのでここ。面白い考察だと思うが、著者の悪文がすさまじく憎くなる。