Jポップとは何か: 巨大化する音楽産業 (岩波新書 新赤版 945)

著者 :
  • 岩波書店
3.63
  • (17)
  • (35)
  • (51)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 320
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309451

作品紹介・あらすじ

一九九〇年代、日本の音楽産業は急激な成長を遂げる。CDのミリオンセラーが続出し、デジタル化や多メディア化とともに市場規模は拡大し続け、いまや日本は世界第二位の音楽消費大国である。こうした変化をもたらした「Jポップ」現象とは何か。産業構造や受容環境の変化など、音楽を取り巻く様々な要素から鋭く分析する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「エンタテインメント企画制作」中野薫先生 参考図書
    https://library.shobi-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=01031361

  • 細かい部分の誤りや認識の浅さ、勘違い振りでは定評のある著者の相変わらずの仕事ではあるのだが、概観としてはかなりのよくまとまっている(思うに新書というのはそういうものなのかもしれない)。技術革新によって再生機器が安価になりひとり1台、2台という状況になり、さらに録音媒体がヴァイナルからCDそしてデジタルデータへと安価になった。プロトゥールスに代表されるDTM技術によって制作費も大幅に節約することが出来るようになった。

    これらの技術革新とさらにバブル経済前後の「本当の豊かさ」からくる「自己表現欲求」がカラオケブームにつながりやがてカラオケは日常に溶け込んでいく。
    これらのことが総て結実し、数字に結びついたのが90年代なのだろう(外資系レコードショップの日本進出とフリッパーズやクラブDJに代表されるリスナー体質の送り手の出現も見逃せない)。


    音楽不況と呼ばれて久しいがフジロックなどのフェスブームやライヴ会場を埋め尽くす人、貸しスタジオの状況などを見るとCDや専門誌が売れなくなっただけであって、音楽自体は活性化しているのだ。自己表現欲求のあさましい対象(日本人の多くは音楽を聴く耳は持たないがカラオケを歌う喉だけは持ち合わせている)と化した日本はそれでも世界第二位の音楽消費国なのだ(ひとりあたりの購入数だと4位だそうだ。因みにノルウェーが上位なのはへぇという感じ)。


    渋谷のレコ村は一時期の勢いは衰えたとはいえ世界最高のレコード屋さんが集まっていると思う。これらの店の品揃えが象徴しているように音楽に対して誠実な聴き手(オタクともいう)は世界トップレベルの層の厚さを誇っていると思うのだが(住宅事情もあって量はアメリカとかに負けると思うけど)。


    閑話休題。

    政治ですら"J-POP"と結びついた90年代。タイアップという術しか知らないレコード会社はそのツケを払いつづけて倒れるのかもしれない。鎖国に象徴される島国根性がJ-POPという世間知らずの坊ちゃんお嬢ちゃんを生み出してしまったのかもしれない。
    最後に“「日本のポピュラー音楽が外国と肩を並べた」というファンタジー”を抱いているのは一部のマスコミ(=おっさん)であって、それこそ著者はその代表たるもんである。

  • 三葛館新書 767.8||UG

    動画サイトや配信サービスの普及でCDの売り上げが落ちているものの、現在においても私達が日頃から聴き親しんでいるJポップ。本書は、「Jポップ」という言葉が生まれた1988年ごろから2000年代半ばまでの「Jポップ」について、再生装置や録音技術の進歩・テレビとの結びつきやレコード会社の戦略・消費者の心などさまざまな観点から考察し、分かりやすくまとめています。
    日本のポピュラー音楽界について、過去を踏まえながら深く知りたい方におすすめの一冊です。
                                  (かき)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=43419

  • 日本の音楽がどうしてダサく感じるのか。
    この本を読んで分かった気がする。J-POPという言葉の由来からはじまり、レコードから着メロになるまでの日本の音楽業界についてしっかり、書かれていて、音楽のマーケティングとか考えるときに必要な知識ブチ込めたかなと
    CDの値段が一律なのあんまり疑問に思ってこなかったけど、今思えば かなり、気持ち悪いな
    CDは終わったって言われるけど、今も昔も変わらず 日本の音楽を取り巻く環境は劣悪じゃん(笑)
    バブルの頃 J-POPの黄金期って言われる時期に関しても今と音楽の価値は本当に変わってないと思った。
    今のマーケットの形態に満足せず、楽曲の質に力をいれて、今後も勉強していきたい

  • プログレ(?)に対するアンチテーゼとしてパンクの隆盛にふれつつも60年代以降の日本の音楽界独自の足取りを分析する。日本がバブル期を迎え経済的発展を極めるにあたってむかえった価値観の変化。人並みに暮らすことから「自分らしさ」の追求、精神的豊かさの希求。自分史ブームやバンドムーブなど自己表現自体が商品となった日本。
    Jポップとは、文化的にも世界に通用する「外国風」の音楽として立ち現れ、国内市場を掌握した。
    現在はYOU TUBE もあり着うたやCDはすたれ状況は異なるが、それでも日本のメンタリティは変わらない部分がある。

  • 音楽性だけでなく技術や記録媒体の進歩に基づく作り方・売り方や受け手の姿勢の変化まで含め「歌謡曲」とは一線を画す「Jポップ」。リアルタイムで経験した者としてちょっと違うなぁと思うところもありつつ、分かりやすい。

  •  著者が本書を執筆しようと思った動機や目的が,「あとがき」に率直に記載されているので,注目。要は,Jポップという欧米の音楽市場では総スカンであるにも拘わらず,80年代後半から90年代にかけて,国内の音楽市場はおろか,広告・テレビ業界,はたまた政界までを巻き込んだ産業が誕生し,影響力を及ぼしたのかについて,限られた資料や証言の中から実証的に表現されている。
     本書の初版は2005年4月刊行なので,もう10年経過している。この間のJポップの動き(主にAKB48やEXILEの音楽産業史)を含めて,改訂版を期待したい。

  • J-Waveは洋楽しかかけていなかった。
    デジタル化で一番とばっちりを受けたのはスタジオミュージシャン。
    CMに楽曲を提供すればレコード業界は広告費を使わずにテレビで大規模なオンエアができる。スポンサー側は広告料を支払う代わりに楽曲使用料が免除される。双方にうまみがある。
    テレビが音楽を運ぶメディアになると視覚と聴覚を満たすダンス系、ビジュアル系。
    テレビでのオンエアが終わったらCDも売れなくなった。
    日本のポップは日本市場しか考えていない。日本で売れないから世界でも売れない。世界は逆で、世界で売れなくても日本で売れるものが多い。

  • 単に音楽だけにとどまらず、再生機器や媒体の遷移や、日本という内需でなんとかなるのでガラパゴス化していてもなんとかなってるという特異な性質やメンタリティにまで踏み込んで日本の音楽の変遷を紐解いていて、非常に面白かった。
    金額ベースでみると輸出金額は0.5%と驚くべき結果。でも最近は海外の音楽より日本人の音楽よく聞くよ。ガラパゴス化の推進。まぁ、それはそれでよいと思うよ。

  • パフィーをヒットさせたソニーミュージックの仕掛けには感心する。
    満足度7

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年1月京都市生まれ。
1986年、京都大学経済学部を卒業し朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌「アエラ」編集部員。
1992~94年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。
1998~99年にアエラ記者としてニューヨークに駐在。
2003年に早期退職。
以後フリーランスの報道記者・写真家として活動している。
主な著書に『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社 2013)、『フェイクニュースの見分け方』(新潮社 2017)、『福島第1原発事故10年の現実』(悠人書院 2022年)、『ウクライナ戦争 フェイクニュースを突破する』(ビジネス社 2023)などがある。

「2023年 『ALPS水・海洋排水の12のウソ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

烏賀陽弘道の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
綿矢 りさ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×