幼児期―子どもは世界をどうつかむか (岩波新書 新赤版 949)

著者 :
  • 岩波書店
3.67
  • (10)
  • (8)
  • (11)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 128
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309499

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 2008年10月05日 21:47

    しつけに関する章が特に印象に残った 
    自身の経験では、「しつけ」とは親からの矯正・強制的な印象が大きく、それはそれで必要なのではないか、ただ自分が子どもに対してどのようにすれば良いのか、と考えあぐねていたので、そういう意味でよい「気づき」になった本 

    日本での本来の「しつけ」とは 
    あらかじめ形を整えるための仮縫いを意味する着物のしつけと同じ意味で、 
    「しつけ糸を外す」ところまでは「しつけ」であり、しつけの本来の目的とは「矯正」ではなく、親の手が離れるところまで含まれているのである 

    「しつけ糸を外す」のはおとな側の仕事で、子どもが自分自身について持つことの出来た「誇り」「自尊心」を育てていくことの手助けをすることである 


    子ども「待つ」⇔おや「待ってやる」という行為が重要 
    自分の要求の実現を延期させること、 
    自己の行為や未来についてのTime Perspectiveを作り出す力を獲得させることが「しつけ」である 

    具体的なやり方としては、形式的な賞罰を与えるのではなく、おとな(お母さん)の喜びとして表現すればよいそうすれば子どもは「自分はお母さんを喜ばせることが出来るんだ!」という自尊心を養っていく 

  • 人は、成果が保障されていないものを採用する勇気をなかなか持ち得ないものである。

    教育の方法については、とかくそうで、「東大に3人入れた母親が教える~」のような、実績を出した人の本は話題になりやすいが、本質的で重要な議論でもタイトルが地味な場合などは、手に取る人が少なかったりする。

    モッテソーリ教育などは、既に実績をあげている立派な方法論かもしれないが、
    藤井四段が受けていたということが、モッテソーリ教育への信頼向上にさらに拍車をかけているだろう。

    本書は、「幼児期」という漠然としたタイトルではあるが、しつけ、遊び、表現、ことばという4つの章から構成される学術書である。

    タイトルを見る限り目的が明確な新書が世に溢れるなか、
    幼児期に子供に教えるべき重要なことは何なのかを丁寧に考察していく思考の軌跡である。

    著者の問題意識は、現代の能力至上主義を背景とした、なんでも一人でスピーディにできる人間=社会で使える人間という図式への違和感にある。

    その流れが自然と隅に追いやってしまっているのが、人間本来の対話や人との丁寧なコミュニケーションである。

    本書を読み進めていくにつれ、普段見過ごしだが、誰しもが本心では重要だと思っていることを再確認することができる。

    昨今は小さい頃から英会話をやらせたり、プログラミングをやらせたりと、とにかく社会でサバイブすることを重視した教育に重点がおかれていると感じる。

    親心としては、否定できない側面も往々にしてあるが、そんなことよりも知らないお年寄りとの会話を大切にしたり、地域社会の子供たちに揉まれて実経験を積んでいく。
    そんなことのほうが、たくましく自分の頭で考えることができる大人になるには必要なのではないか。

    これから子育てをする世代も孫を持つおじいちゃんおばあちゃん世代も関係なく、
    子育てに生かせる考え方を学べる一冊である。

    私は、この本を読んで、子供とじっくり会話することを大切にしようと心を新たにした。

  • 幼児期を、人間の成長において非常に重要な時期ととらえ、しつけ、遊び、表現、ことばの4つの面から発達の過程を探っていく。全編に貫かれるのは、現代社会への危機感であり、幼児期の心の発達が、大人になってからの生き方にも強い影響を与えるとして、今後の研究に発破をかけている。
    (2015.7)

  • 岩波新書の新刊で「子どもと本」がおもしろそうかと思って手にした。カバーの折り返しを見ると本書の名前が出ていた。書店で探したがなく、近くの別の書店へ行った。そちらには置いてあった。そして、即購入し読み始めた。幼児教育の本は探したつもりだったけれど、見逃していた。もともと哲学の出身ということでか、文章がやや難しい、と感じた。そんな中、しつけの章で今まで自分が考えてきて、他であまり書かれているものを読んだことのない内容があった。それは、両親であるいは先生同士で、さらには同じ人でも別の場面で、言うことが違っていてもかまわないということ。社会に出ればいろんな人がいろんな意見を持って生きている。虫の居所が悪ければ、普段は怒らない人が急に怒り出すかもしれない。矛盾に満ちた社会に出て行くための助走期間としては、両親で言うことが違ったってかまわないはず。同じことをしても、しかる先生もいれば、笑っている先生もいる。それでいいのではないかと思う。それから、ブランコ待ちの子どもの対応について、無理矢理にでも交替させるか、あきらめて他に行くか、じっと待つか。けれど、待ちくたびれた子どもの中から、何回こいだら交替にしようと提案が出て、皆で数え始める。すると、一人遊びだったものが、大勢での遊びに変わっていく。おもしろい。終章にある「対抗文化」としての幼児期という発想はおもしろい。今まで読んだものでは、男社会に対する女・子どもの社会、という二項対立が多かったが、近年そういう枠組みで物事を考えることに少し抵抗があった。それよりも、幼児期とそれ以降という分け方がしっくりいくような気がする。もう少し体験も積んでしっかり考えていきたい。私が幼児に関わり始めて10日間。私たちの行いが、幼児期の空洞化に与しないよう、心して子どもたちに接していきたい。

  • 請求記号:I/376.11/O42
    選書コメント:
    小さな子どもを理解する一冊。教師を目指す方にお薦めです。
    (東松山図書課 逐次刊行物係)

  • 子どもの認知や発達、言語の習得や様々な体験について、その過程を詳しく解説。さまざまな研究に応用可能。

  • なんだかこの間読んだ本の肯定をしてくれているような本でした!!

    現代の子供たちのこれからの不安、精神的に不安定な大人が多くなってきている今日、今後どんどんそういうことが増えていくであろうと予測される中、どうやら幼児期の生活に端を発しているのではないか???という一冊。

    なるほどな。

    と、唸らせられる本でした。

    汚い、危ない、面倒くさい。で触らせなかったりやらせなかったり、代わりに勉強、お稽古、などなどにより対人関係や、ものとの関わり、自分の中での心の整理などは遊びの中でこそ育つ。という検証がでているそうで、そこにこそ大人になってからの精神の不安定が現れるのだそうだ。

    なんだかとてもためになる一冊でした!!!!

  •  まさに幼児期の息子を持つ身として、彼の中で起こっていることを理解するべく、読んだ。これはよい。「幼児期」というものがいかに豊かな世界であるかがわかる。
     筆者は、今日の幼児を取り巻く環境を深く憂えている。そして、早期教育や情報社会における幼児の取り扱われ方に対して危機感を持っている。幼児期がいかに幼児本人にとってどんなに大切なものか、切々と訴えてくる。
     「しつけ」「遊び」「表現」「ことば」の4分野にわたって、幼児の中でどんなことが起こっているのか、それに対して保護者や保育者はどんなことができるのかを示している。
     思わせられたのは、大切な他者としての保護者及び保育者の重要性である。幼児は自分にとって関わりの深い人を大切な他者と認識し、その人との関わりに深く影響される。大切さといっても、普通の愛情を注げばよいのだろうが、昨今はその普通の愛情すら得ることのできない環境にある幼児の話が散見される。そうした幼児の危うさを思わせられた。
     筆者の語り口は大変柔らかで親しみやすい。ちょっと冗長な気がするとともに、現在の危機を訴えるのに性急なあまり、具体的な解決に向けての提言は少ないように思った。このあたりは、2005年に出版されたことの限界なのだろう。今、この時の、最先端に知見が知りたいものだ。

  • 子どもにかかわる人、特に保育者に向けた内容。保育士を目指す者として押さえておきたい一冊。

全18件中 1 - 10件を表示

岡本夏木の作品

幼児期―子どもは世界をどうつかむか (岩波新書 新赤版 949)を本棚に登録しているひと

ツイートする