カラー版 ベトナム 戦争と平和 (岩波新書 新赤版 (962))

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309628

感想・レビュー・書評

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  • ベトナム戦争の写真家、というと沢田教一が有名で彼のようにドラマチックに語られることはないけど、石川文洋も多くの衝撃的な写真をベトナムで撮っている。

    私もホーチミンの戦争博物館で彼の写真を見た。その前に書籍は幾つか読んでいたので、それらの中で既に写真は見ていたけど実際にあの博物館で目の前にしてみると「本の中の写真」ではなく現実味がひしひしと伝わってきた。

  • ベトナム戦争当時から、現在まで、写真を通してよく理解できるようになっている
    また、著者が実際に取材をして感じたことなどが記述されているので、わかりやすかった
    戦争当時の様子と、戦後の様子、二回訪れたことにより、比較されていた
    街や建物だけではなく、人の違いも明記されていた

  • 様々な表象として描かれているのは見たことがあるのに、なかなか具体的な経過に触れることができなかったアジアの15年戦争。
    手始めに規格外の数字ばかりを並べてみると、
    米兵221万徴兵、累計800万の兵士を南ベトナムに展開し、最大時54万が戦場に派遣された。
    死者はベトナム民間人200万、解放軍110万(行方不明30万)、サイゴン政府軍22万、米兵5万(行方不明2千)韓国など支援国5千。

    ざっと概略を書いておく。
    1883から続いていた仏領インドシナを1945年3月日本が武装解除しフエにバオダイ皇帝を擁立。8月日本が敗戦しホーチミンがハノイで共和国樹立宣言。フランスがサイゴンにコーチシナ自治共和国を建国し、46年暮からグエンザップ将軍指揮下のベトミン(ベトナム独立同盟)軍との間で戦闘開始。戦闘機、戦車、大砲のまえにベトミン司令部はハノイを撤退、北部山岳地帯に移動し、戦闘は長期化する。べトミン軍が増強し、53年ディエンビエンフーで激戦、補給路をたち翌年仏軍を降伏させる。五大国を中心にジュネーブ会議が開かれ、北緯17度線を国境とし仏軍は南へ移動。アメリカは協定に調印せず、サイゴンにゴディンジェム政権樹立。米はトルーマンドクトリンを踏襲したドミノ理論に基づき、仏軍の戦費を負担してきたがいよいよ仏にかわって介入を強めた。秘密警察が選挙実現運動に介入し、監獄で数十万が殺された。これに対し、60年南ベトナム解放戦線が結成され、サイゴン政府軍との間で戦闘が始まった。
    61年ケネディは400人の軍事顧問を派遣し、武器弾薬を支給した。派遣された顧問は18ヶ月で平定できる、と報告。
    63年メコンデルタで一個大隊が大敗。北ベトナムの支援がその原因と見て、トンキン湾事件(魚雷艇による攻撃、決定打となった二度目の攻撃はなくでっちあげだったことが後に判明する)をおこして北ベトナム爆撃を開始。64年またしても海兵隊が大敗したのをうけ、65年沖縄から部隊を派遣。ほかにもタイ、フィリピンの基地が使われた。
    68年1月テト(旧正月)攻勢開始、サイゴンのアメリカ大使館が一時占拠される。これを期に休戦協定交渉がはじまり、69年夏段階的引き上げを開始。73年完了。南北の分断はその後も続き、75年サイゴン陥落、戦争集結。

    ○戦後
    南ベはアメリカの援助を受けられなくなり、失業者が300万発生。120万いた華僑の半分が出国、ボートピープルとなって脱出した。
    85年暮れ、共産党大会で計画経済の反省、市場原理の導入を決議。ドイモイ(刷新)とよばれる。重工業から農業生産に転換し、外国からの投資をよびかけた。投資額順に1位から台湾、香港、オーストラリア、日本は9位。95年クリントン大統領との国交正常化発表。同じく一位から台湾、香港、日本。

    ○枯葉剤
    枯葉剤は十年で8千万リットル撒かれた。マングローブはじめ森林が3割減ったとされ、奇形、未熟児などが多数うまれた。
    ○不発弾
    1100万トン。二次対戦の二倍。不発弾は百年後でも残るとされる。
    ○遺骨の発掘
    ヴァンヴァンさんの名案。ペニシリンの小瓶に氏名、死亡した場所、出生地、生年月日、部隊を書いた紙を油と一緒にいれて、遺体の口の中に入れて埋葬。このメソッドのおかげで戦後遺骨の発掘が効率よく行われ、95年時点で2千人発掘された、と

  • ベトナムに行く前に読み始めたのに、マレーシアから帰ってきてからようやく読み終わった。

    ホーチミンの戦争博物館でこの人の写真を昨年みて、興味をもったのだった。文学者ではないので、文章は記録風で、心揺さぶられるようなものではないし、緻密でもないが。
    かえってそれが、米国の不条理さをシンプルに伝える(北ベトナムの2度目の攻撃はなかったのに、とか、民衆でも探して殺す「サーチ&デストロイ」作成とか、、、もちろん、枯葉剤のことも)。
    やや時系列の入り乱れた記述は気にもなるが。

    ただ、写真の訴えるものは大きい。
    もっと写真メインの本でもよかったな。新書なんかではなくて。

  • ベトナム人の自由と独立の為の強い意志に敬意を払うと共に、アメリカの横暴に怒り。

  • ジャーナリズムは大事だねえと月並みな感想。
    多くの死体の写真はそれだけで、戦争は絶対に嫌だと思わせるもんな。

    後半に集められた、平和が戻ったベトナムの写真も、前半の悲惨さがあっただけに一層際立つ。

  • 開高健のレポートは人間の内面の戦争を描き、石川文洋の写真は人間の外側の戦争を目撃する。どちらも必要なんだなと思った。
    撃たれて倒れた妻や母親に、駆け寄るでもなく、すがりつくでもなく、傍らに呆然と立ちすくみ、少し離れたところにしゃがみこんで泣きじゃくる。殺された兵士は糸の切れたあやつり形のように、埃っぽい道に放り出されている。雷に撃たれたわけでも、交通事故にあったわけでもない。これが人間の仕事だ。
    写真はもちろん、プロの書き手ではないからこその、素直で真っ直ぐな文章。

  • 著者はベトナム戦争時、米軍に従軍した戦場カメラマンである。写真はベトナム戦争中の農村や市街の民間人の生活の様子や遺体なども写されている。ベトナム戦争は戦争中も悲惨だったが、枯葉剤の影響による奇形児や不発弾で2001年に2人の息子と自分の脚を失った父親の写真など戦後何十年たっても消えてない現実を直視する上で貴重な本だった。

  •  冷戦の狭間で発生した、アメリカとベトナムの戦争の事を、数多くの写真と現地を体験した筆者の文章で表現している本。ベトナム戦争の情景を克明に捉えた写真が多く使われている。
     その中には、本物の遺体写真や枯葉剤の影響による障害に苦しむ人々を捉えたものなど、目を背けたくなるものも多くある。特に、標本として保管されている奇形児の数の多さにはゾッとさせられる。また、「敵の肝臓を食べると戦死しない」という言い伝えに従って、処理された敵兵の生々しい写真もある。

     いつの時代も、戦争で真っ先に苦しむのは力ない国民であり、徴兵、捕虜、そして大切な家族を目の前で失う事を余儀なくさせる。戦争後も不発弾に巻き込まれてしまい、病院に担ぎ込まれる人が後を絶たない。

    自分用キーワード
    ドミノ理論 トンキン湾事件 グエン・ヴァン・チュー大統領 スペシャルフォース(ベトナム戦争) サーチ・アンド・デストロイ(索敵撃滅) ロバート・S・マクナマラ『回顧録』(北ベトナムを過小評価し、かつベトナムの歴史・文化の無知、近代兵器の効力に限界があった、と記述)   

  • ベトナム戦争の通史的な本がないかと、図書館に訪れたが、いい本がなかった。
    それで、この本を借りたが、まことにつまらなかった。
    なぜに、北ベトナム軍を「解放軍」と称するのか、わたしには理解できない。
    ベトナム戦争に関していい本はないか。

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著者プロフィール

報道写真家

「2011年 『ベトナム検定』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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