悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))

著者 : 森達也
  • 岩波書店 (2005年11月18日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309826

悪役レスラーは笑う―「卑劣なジャップ」グレート東郷 (岩波新書 新赤版 (982))の感想・レビュー・書評

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  • 稀代の悪役レスラー「グレート東郷」とは何者なのか?という問いかけを追跡する旅。
    数年前、著者が監修?してNHKで特集していたプロレスラー列伝から本書を知り、東郷に興味を持った。その後、DVDで試合も初めて観た。試合内容はともかく、登場から最後までの雰囲気がとても怪しく大いに楽しめる。大観衆の中で1人憎まれるためには、大いなる勇気と恍惚が必要であっただろう。
    日本に対し敵国意識が旺盛であった戦後アメリカマット界に君臨し、一世を風靡した大悪役東郷。お約束な世間のコードにのって分かり易い「悪」に徹することで巨万の富を築いたが、また、プロレスラー力道山を育てた一人でもあり、その後、日本マット界へ執着し続けることにもなった。
    東郷の半生をその活躍と心理面から辿り、東郷の実体に迫ることで、形成されたコードの根源を探る社会派ミステリーでもある。

  • 『悪役レスラーは笑う(森達也)』。
    戦後日米で活躍し、圧倒的に嫌われたヒールレスラー、グレート東郷の生涯を描いた一冊だ。
    リングの内外で非常に評判の悪かった東郷だが、国民的英雄でもあった力道山からは大変敬われていたという。
    それは何故か――。というのがこの本の大きな縦軸となっている。ぼく自身は、これまでプロレスにはあまり興味を持ってこなかったので、グレート東郷といっても名前を聞いたことがあるような気がするくらいだ。もしかしたらそれはグレートカブキだったかもしれないし、グレート草津だったかもしれない。義太夫ではないのは確かだが。

    戦後、テレビのプロレス中継は野球と相撲と並ぶ一大人気コンテンツだった。14インチの街頭テレビに2万人が集まったこともあるという。本書ではそんな戦後プロレス史の変遷にも触れている。グレート東郷についての謎は、知る人があまりに少なく、東郷の内面には迫ることなく終わってしまったのは少し残念だ。東郷については出自さえも定かではないらしい。

  • 岩波新書がプロレスを扱うというのは意外だったが、『悪役レスラーは笑う』は何か面白そうだぞという期待はあった。刊行と同時に購入していたにもかかわらず、読まずにいた。しかし最近の打ち続く雨のために電車通勤を余儀なくされ、それを機に読み始めた。いやあ、まいった。これは会心のドキュメンタリーではないか!  グレート東郷の出自をめぐって、やれ中国系だいや韓国だと、情報は錯綜する。日本のプロレス界の実は立役者でありながら、その男の生年も出自もなぞに満ちているなんて、なんと言うか、おおらかな時代だったんだと思う。今ではありえないことではないか。それはまさに、筆者の言うとおり、あいまいな領域を残すプロレスに似て、一種のロマンともなりうるわけだ。 筆者の森達也のていねいで執拗な取材も好感が持てる。 読んでいる途中で気づいたのだが、森達也は自主制作映画『A』『A2』をつくった人ではないか! 偶然いがいの何ものでもないが、僕はこの映画を数日前に見たばっかりだったのだ。これらのドキュメンタリー映画についてはいろいろ語りたいことは多いのだが、たしかに森達也という人の人間を見つめる眼には何か共通するこだわりを感じる。それは何だろう。「自分なりに理解したい・自分なりに把握したい・自分なりに納得したい」こう思うことは良くあるが、あきらめようとするときの自己納得にも似たようなその感覚・・・とでも言おうか。ともかく、この本はまぎれもなくおもしろい。テレビ放送黎明期のプロレスの位置づけについてもイメージが湧いた。森達也は注目だ。

  • ドキュメンタリー作家森達也氏の「悪役レスラーは笑う」、岩波新書、2005.11発行です。1911年生まれ、1973年没のグレート東郷を描きながら日本のプロレス界を一望した秀作だと思います。アメリカでは卑劣なジャップ、日本では売国奴、守銭奴などと呼ばれたグレート東郷ですが、力道山は東郷の悪口を一回も言わなかったそうです。力道山はノースコリア、東郷はサウスコリア、共にコリア出身の二人が日本のプロレスの礎をつくり、そのファイトに日本国民は熱狂し、自信と誇りを取り戻した。誰も気づかなかった哀しい国威発揚と。

  • グレート東郷という存在は、日本プロレス史に欠くことのできない存在。力道山が東郷と組まなければ、外人選手の招聘は力道山の限られたコネクションに頼らざるを得ず、日本プロレスという組織が存続できたかどうか怪しいと思う。

  •  太平洋戦争終結直後にアメリカで日本人ヒールを演じ巨万の富を得た謎多きプロレスラー、ディック東郷に迫る。
     
     実際の国籍に関係なく嫌われている国をデフォルメしたヒールを演じるプロレスの外国人ギミック。かつてその頂点としてアメリカンドリームをつかんだディック東郷。一方で日本のプロレスのパイオニアの力道山はコリアンでありがならそれを秘密にして日本のヒーローとなった。ディック東郷と創設期の日本のプロレスには民族の虚実が複雑に絡み合っている。
     作者は当時の関係者に取材しディック東郷は何人だったのかを追っていく。しかし、純粋な日本人、中国系、韓国系、沖縄系など様々な説が出て追えば追うほどディック東郷の真相は分からなくなっていく。まるでこの本自体がプロレスのギミックのように感じた。

     虚実が入り乱れリアルを超えたドラマができあがっていく。それがこの本でありプロレスであると思う。
     プロレスファンは必読の一冊。

  • ≪目次≫
    プロローグ
    第1章  虚と実の伝説
    第2章  伝説に隠された<謎>
    第3章  笑う悪役レスラー
    あとがき

    ≪内容≫
    日本のプロレスの創生期に活動していた「日系レスラー」グレート東郷の
    ノンフィクション。何かしっくりこない結論(出自は結局わからない)だが、
    プロレス界の様子や戦後すぐの時期の社会の様子などが垣間見えて意外と面白かった。

  • 感想未記入

  • 終戦直後、アメリカで活躍したヒールレスラー、グレート東郷について追った本。

    既にグレート東郷が故人である上に資料が少ないので仕方がなかったのかも知れませんが、結局新しい発見も何も無かったなぁ、というのが読後を通じての感想です。
    特に森は全編を通してグレート東郷の出生を明らかにしようと奮闘するのですが、結局何も分からないまま終わりました。
    なぜここまで森がグレート東郷の出生にこだわったかが分かりません。多分その後のナショナリズム批判やネット右翼批判に繋げる為だとは思うのですが、曖昧な情報を使って安易にそういう方向に結び付けない方が良かったのではないでしょうか。

    全くグレート東郷について知らない人なら、それなりに楽しめるかもしれません。

  • [ 内容 ]
    第2次大戦直後のアメリカ・プロレス界にて、「卑劣なジャップ」を演じて巨万の富を稼いだ伝説の悪役レスラー、グレート東郷。
    さまざまな資料や証言から浮かび上がるその男の素顔は、現代に何を問いかけるのか。

    [ 目次 ]
    プロローグ――ある<記憶>をめぐって
    第1章 虚と実の伝説
    第2章 伝説に隠された<謎>
    第3章 笑う悪役レスラー

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