壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.53
  • (6)
  • (18)
  • (22)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 142
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309963

作品紹介・あらすじ

「合意だったはず」「自然のなりゆきで」-告発されて「加害者」となった男性たちは、事態を理解できず、相変わらずの言い訳を口にすると茫然と立ち尽くす。彼らはなぜ自らの加害性に無自覚なのだろうか。相談現場で接した多くの当事者の声を通して、「セクハラをする男たち」の意識のありようを探るノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 溝の口の古本屋で購入。
    著者は日本に「ホームレス」という言葉を普及させた社会学者だ
    そうです。

    この本書の帯「魔が差したはウソ!」と、岩波にしては
    面白いコピーだが、これがまさにその通り。
    面白いというか、呆れると言うか、ここまでやるかという事例の
    オンパレード。

    男性が女性を誘う時、「ちょっと相談があるんだけど・・・」
    これを男側は普通のアプローチ・誘いとして良くあること、そしてここで
    来るならばOKというサインと理解、片や女性側からすると
    仕事に関する相談と思ってしまうので断ることが出来ない、故に
    本意でなくても誘いについていくこととなる、
    この両者の決定的な違い。

    さらには派遣社員が仕事で積極的に、働きたい、お願いします、を
    言ってくることが、自分に対して積極的にアプローチをしてきていると
    思いこむ勘違い。
    (この社長は、とにかくエロかった)

    結論に近い部分で、(問題のある)男性たちにはセクハラはされる側に
    問題がある、という意識があること。そして、ありとあらゆる女性の
    しぐさをOKサイン、と強引に解釈する傾向があることと述べている。

    タイトルが「壊れる男たち」とあるが、別に社会不適合者ではなく
    普通に、しかもきちんと働いている社会人(しかも年輩だ)。
    その人たちが、こうした理性で、言うならば羊の皮をかぶって
    会社内で生きているということ。
    表沙汰にならないケースも多数あるらしいので、
    この事実は重い。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      レビュー読みながら、そうだ、そうなんだよとぶんぶん首を上下に振りながら共感しました!

      私の友人が今まさに上司のセク...
      こんにちは。

      レビュー読みながら、そうだ、そうなんだよとぶんぶん首を上下に振りながら共感しました!

      私の友人が今まさに上司のセクハラ被害にあっているので、良く分かります。
      そうなんですよね、仕事ができて真面目な人なのに。
      まさに壊れたって感じです。

      友人にも勧めてみます。
      良い本を紹介していただきました!
      2013/07/04
  • すごい、いい本。なるほどそういうことなのか、ととてもよくわかる。やっぱ、男性をやってないとわからないこともある。(ていうか、これは、男性をやってるためにわからないことがある人たち、のお話だけれども)。問題は、女性が読むと、二次被害的なつらさがあるということ。ちゃんとした人間ではない別のもの、ものいう家畜、みたいな扱いを繰り返しされているようなもんだからね。派遣社員、というカテゴリが、一部の男性からは非常に「性的存在」として(たぶん仕事の技能なんかどうでもいい)見られていて、採用はそのため、みたいなことも多々ある、というのもわかった。やっぱバイトか正社員だな。派遣はやめよう。

  • 加害者の自覚皆無の加害者たちに反吐が出そうになりながら頑張って読み切った。「言葉遊び」出て来た…。

  • さまざまに寄せられるセクハラの事例を、男側の紹介。紹介するに値するようなある程度重い事例を取り上げているのもあるだろうし、本自体が10年ほど前のものなので、そのへんを割り引く必要があるだろう。とはいえ、自分の行為や考え方のなにがだめなのか、ここまでわからない男性がいるというのはすごい。いちどその人の中で定まってしまった価値観というのは環境が変わっても簡単には変えられないなんだろう。そして、自分自身の中に、(ここまでではないにせよ)このような価値観が潜在してはいないか、と考えるとちょっと恐ろしい。

  • セクハラを意識しない男たちの事例が前半で出てくるが,これまで女性の側からとらえていた問題を男性の方角から見直していく第4章の記述が良い.男は誰でも加害者になる素質を持っており,トリガーになるのが男たちが抱える危機感と閉塞感だとの論考(p210)は素晴らしい.男たちが自覚する点として「これまで職場でも家庭でも幾重にも下駄を履かされて生きてきたことを認めなければならない」を挙げている(p214).正鵠を射ている.

  • セクハラは絶対にいけない。
    しかし、本書に出てくる悪質なケースはさておき完全に個人的感情を抑えて業務を行うのは本当に難しい。
    若くて綺麗で明るく知的で愛想の良い女性は、業務を円滑に行う点で、確実に有利であり、多くの女性はそこを目指す。
    そのような女性を部下に持ち、男として湧き出る感情を殺して仕事をすることは、まさに苦行としか思えない。

  • 私も随分クズオトコと向き合い私なりに戦っているつもりでしたが、余りに苦し過ぎる戦いなのでこの本を半ば救いを求めるように手に取りました。

    金子さんは壮絶ですね。身勝手な屁理屈を延々聞かされ、会話や態度から滲み出すセクハラ加害者の悪に苦虫を噛み潰しつつも、冷静に事情を把握して和解なり何なりの解決をしないといけないのですから。

    私はああいう相談に来たセクハラの加害者男性の言い訳に対しては軒並み「あぁ、あんたも本物のクズですねぇ」って直言するのを堪えきれないと思います。加害者の気持ちに「男だったらそういうとこ確かにあるわ」という共感をやはり感じる点で、私にもクズオトコの心があり、現実問題クズだと自覚があるからです。だから、はっきり言っちゃう点では相談員には向いてないでしょう。とても著者みたいな仕事は出来ないし、やるのも嫌に思えてくる。その代わり、男性中心主義がしぶとく残る日本で、己の沽券にまだこだわりを持っている男性に、はっきり「人間以下」「クズオトコ」と男性の側から自覚を持って言い渡すことが大事だと私は思うので、筆者には深い共感もそうですが、憧れすら抱いてしまうほどです。

    さみしいから、人間は罪を犯すものと思っています。
    「結論を先回りしていえば、職場で加害者をパワハラやセクハラに駆り立てるものの正体は、男たちが抱えた危機感と閉塞感である。言い方を換えれば、男たちが置かれた立場の不安定さや、そこから生まれる将来に向けての不安や苛立ちの裏返しである。」(p.210)
    は全くその通りです。ただ、閉塞感と言っても分かりにくいと思い、私は「さみしさ」と呼んでいます。男はさみしさを埋めようと砂漠をさすらい、心の安らぎというオアシスを求め続ける生き物だと思います。しかし、心の安らぎ程不安定なものはありません。ステータスである上位の役職と、潤沢な資産、妻がいる家庭……昔はこれらがあれば長いこと安らぎが得られると思っていたし、実際思えたのかもしれません。長い平成不況に度重なる金融危機、それによる大量リストラ、ジェンダー観の変化、そして高い離婚率……いつまでも昔あったオアシスが今もあるわけが無いし、それも薄々分かっているのですが、次のオアシスはさぁどこに?となるともう本当に分からない。見つからないし、探せない。だから、セクハラに走る。周りもセクハラに走る人を見てみぬふりをする。食糧に飢えた集団が少ないパンを分け合うのと似ています。さみしさに対する気休めを暗黙の了解のもと分け合っている。パンがそのことに文句を言うのが飢えた集団には面白くないのは当たり前です。要するに、金と女と仕事で困っている貧乏人はいつでもセクハラの加害者に、「クズオトコ」になり得る。この本で出てきた加害者男性も、背景を見るにやはり、金か女か仕事で困っていて、満たされなくて飢えている。

    おそらく、セクハラという考えに反発を持つ男性の多くは、「それじゃあ、大人の恋はどこですればいいんだ!? 会社の女性に手を出そうものならセクハラになるとすれば、 ただでさえ自分の貴重な人生の大半を会社で奪われるっていうのにどこに出会いと希望がある?」と思っているに違いないと思います。実際にそうして婚期を逃す人も男女問わず日本には多い気がします。そういう人達には、「働き過ぎ。仕事にうつつを抜かしてボヤボヤしているからだ」と言いたいところですが、もっと根本的な話として、「だったら仕事とプライベートのメリハリくらいつけろ」と言いたい。会社勤めを一回でもすると分かりますが、日本の職場は余りに仕事とプライベートの区別がなさすぎる。定時終わって飲みに行くのも、「仕事付き合い」のだらしない延長でしかない。同僚同士の飲みならそういうことは少ないかもしれない。しかし、上司が場にいるとなると仕事かプライベートかの判断は上司が決めます。そういうところにまで権力を振るってくる。セクハラ・パワハラが無くならないわけです。男らしさの崩壊を踏まえて、筆者は最後にジェンダーフリーを強く推していますが、そんな小手先の考えじゃ何も変わらないしどうでもいい、日本の労働環境を改善するほうが先だ、と私は思っています。

  • 犯罪加害者の主張を事例を下に書いている本著。セクハラ・パワハラなど地位・立場の高い人間→低い人間へ行わる傾向や加害者の理不尽で、意味の通らない主張。読んでいて、吐き気を感じた。著者は、セクハラやパワハラなど企業の労働者問題にスポットを当てて、書かれてる。

  • 怖いです。男の立場から言って何が嫌がられてるかわかんない。当たり前の感覚が向こうに取っては嫌なことに写る。この本では当たり前のように悪い行為だと書かれてるけど本人に自覚がないのが怖い。つまり、自分にも当てはまる可能性が十分にあるということ。

  • セクハラに苦しむ女性の訴えを聞き入れ、セクハラを行う男性と応対をするという、労働相談に携わった経験を持つ著者による本。
    上司と部下、正社員と派遣社員、人事と新入社員といった立場の違いを利用した相談を一例として取りあげている(この中には対価型と呼ばれる形態も含まれている)。
    読んでいて、男性の身勝手な言い訳には何度となくイライラとさせられる。これがいい歳をした男の発言なのだろうか。
    最後の章で職場で加害者をパワハラやセクハラに駆り立てるものは、従来の雇用形態が崩れたことからくる危機感と閉塞感、置かれた立場の不安定さ・そこから生まれる将来への不安や苛立ちの裏返しにあると論じている。
    「家庭・職場では男が優位」という過去の風習にとらわれ、苦しむ姿があるとのことである。
    悪い本ではないと思うが、セクハラを行う理由についてこれといって統計的なデータを用いていないのが少し気になった。

全29件中 1 - 10件を表示

プロフィール

1943年生まれ。労働ジャーナリスト。長年東京都の職員として労働相談に従事し、社会派のルポライターとして活躍。ホームレスという言葉を日本で初めて紹介して社会問題として提起し、セクハラ、パワハラ問題など幅広く人権問題に取り組んできた。2008年には「職場のハラスメント研究所」を設立し、所長として講演活動などに取り組んでいる。
著書に、『職場のモンスター』(マイコミ新書)、『壊れる男たち セクハラはなぜ繰り返されるのか』(岩波新書)、『労働相談裏現場リポート』(築地書館)、『パワーハラスメントなんでも相談 職場のいじめ・いやがらせで困っていませんか』(日本評論社)、『役人はなぜウソをつくのか』(日本評論社)、『地方公務員の人・間・関・係 ここだけのエクスキューズ』(ぎょうせい)、『職場相談員のためのセクハラ防止完全マニュアル』(築地書館)、『事例・判例でみるセクハラ対策』(築地書館)、『雇用を守る制度活用法』(旬報社)、『知って得するフリーター読本』(明石書店)、『ホームレスになった』(筑摩書房)など。
共著に『「解雇・退職」対策ガイド 辞めさせられたとき辞めたいとき 増補改訂版』(緑風出版)、『セクシュアル・ハラスメント 新版』(有斐閣)など。

金子雅臣の作品

ツイートする