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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004310020
みんなの感想まとめ
憲法の本質を哲学的かつ政治学的に探求する一冊であり、読者に深い考察を促す内容が魅力です。憲法改正やそのプロセスについての理解を深めるための手引きとしても機能し、特にその重要性や必要性を自問自答する機会...
感想・レビュー・書評
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まず、本書は資格試験等に使われる憲法の入門書としての性格を持ち合わせていないことに注意を要する。
どちらかと言えば周辺の哲学や理論から、憲法の輪郭を探っていく類いの書であると感じた。
また、本書はそのような周辺知識が前提知識はなくとも内容に入っていけるよう、砕けた文章も多く見受けられる。気になった箇所があれば、各章ごとに「文献解題」が設置されており、出典と共に、著者の文献解説が掲載されているので、憲法を研究する方の使用にも耐え得る内容なのではなかろうかと思う。
内容も、興味深いものが多く、ちょっとした法雑学的な気持ちで読みすすめていけるのも嬉しい。
ページ数はやや少なめではあるが、内容は充実しており、引き込まれる文章が光る一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仕事のための読書。
刑法、民法、裁判所についての本を読んできて、次は会社法にしようかなと思いつつ、まずは基本を抑えるべく憲法を選択。
本書は、憲法学者である著者が、憲法について立憲主義や民主主義の観点から解説をした本です。
……。
はい、偉そうに書きましたが、正直に白状すると、この本を読んでまず心に浮かんだ気持ちは、
「む、む、むんずかしいぃ~~!!」
書名から漠然と日本の憲法の成り立ちや中身、現在議論されている問題点が集められているのかと思いきや、そうではなく。
より根本的に、憲法をもつということ、立憲主義とは国ががどうあることかについて書かれていることを理解したのが、読みはじめてしばらくたった頃。
著者独特の切れ味の鋭い文章の流れに、油断しているとすぐに頭が置いていかれてしまうので、こんな時のためにと買っておいた『もういちど読む 山川政治経済』を出してきて、立憲主義や議会制民主主義の項目を読み、言葉の定義を確認しつつ、なんとか読了。
理解が及ばない部分は多々ありつつも、私が面白かったのは、憲法学者である著者自身が、人々にとって民主政よりも大事なことは、今夜の夕御飯をはじめとしてたくさんある、と言っているところ。
学者なら、民主政は大事だよ、みんなちゃんと考えようよ、となりそうなものなのに!
それから、憲法からみて「守るべき国」という表現の「国」とは、その憲法が掲げている国体のことであって、人々が住む国土や暮らしのことではない、というところ。
私はこれまで漠然とこの二つを混同して、毎日の暮らしは大事だけど、国を守るためにそれを犠牲にしなければいけないとしたら、どうすればいいの?などと思っていた。
たぶん、私を含めて沢山の人が、
「政治ってよくわからない」
「法律ってむずかしい」
と感じていると思う。
で、私の場合は、間違えたら恥ずかしいし、とそれらを話題にするのが億劫になっていた。
でも、その感覚は実は正しくて、憲法や法律の運用はたくさんの解釈の積み重ねによって行われるものだし、利害関係の調整は常に面倒で複雑になるから、よくわからないのは、当たり前。
だから、逆にそれらをないがしろにするような人がいたら、慎重になろうくらいのことを頭にとどめておいて、普段からもっと堂々と「よくわからないね」と話していいのかもしれない。
本書の中で、立憲主義とは、「この世には、人の生き方や世界の意味について、根底的に異なる価値観を抱いている人々がいることを認め、そして、それにもかかわらず、社会生活の便宜とコストを公平に分かち合う基本的な枠組みを構築することで、個人の自由な生き方と、社会全体の利益に向けた理性的な審議と決定のプロセスとを実現することを目指す立場」と定義されています。
確かに、一緒に住んでる夫でさえ、たまに何を考えてるかよくわからない、となるわけだし。
私は、やっぱり、人間にはそれぞれの生き方があって、それが相容れなくても、まどろっこしいやり取りを重ねていくという考え方がしっくりくるなあ。
もうすぐ選挙があるけど、そういう意味では、どこがどのように勝つかというより、誰に投票したらいいかよくわからないしめんどくさいなと思いながらも、細々と、でもしぶとく投票をし続けていくことこそ、大事なのかもしれない。
あれ?
仕事のための読書が、そうでもなかったような。
まあ、どっちでもいいか。 -
憲法とはなにか、という入門書。のはずが自分の読解力が乏しすぎて所どころわからないところが…
憲法改正という言葉はニュースを見ていれば時々(よく?)出てくるが、いったい憲法の何を改正するのか?誰が改正の是非を決めるのか?という知識は曖昧だったので、そういう意味ではこの本は根本的なことを知るうえで便利だ。
憲法改正のプロセスやその手順で重要なことなど、いろいろ考えさせられるような内容だった。憲法はその時の政権にとって都合のいい物として改変されてはいけない。普遍的で、なるべくすべての国民にとって望ましいものでなければいけないから、改憲をする場合は手短に、というわけにはいかない。開かれた場所で改憲賛成派と反対派の討議を行い、それぞれの意見を吟味してから投票をする。事項もまとめてではなく個別で。改憲を果たすためには非常に長く地道な作業を求められるんだなぁ、と感じた。けれどその地道なプロセスが、果たして本当に改憲は必要なのか?と自問する機会を与えてくれる。そしてきっと、その自問をする時間が一番大事なんだと思う。 -
安保法案を与党推薦人ながら違憲証言した注目の方をなぜ自民党は見誤ったのかを知りたかった。タイトルどおり、憲法の本質を哲学的、政治学的に追究していく内容の濃いコンパクトな一冊!。ホッブス、ルソー、カント、モンテスキュー、ロールズ・・・。昔、教科書で学んだ名前が次々に登場、正に根源から考えさせられた。「憲法9条による軍備の制限も、通常の政治のプロセスが適正に働くための規定」(P12)「従来の政府解釈で設けられている制約-たとえば集団的自衛権の否定-を吹っ飛ばそうというのであれば、その後、どう軍の規模や行動を制約していくつもりなのかという肝心な点を明らかにすべき。その見通しもなく、どこの国とどんな軍事行動について連携するつもりなのか-米が台湾を実力で防衛するとき、日本は米と組んで中国と戦争するつもりはあるのか-さしたる定見もないままに、とにかく政治を信頼してくれでは、そんな危ない話にはおいそれと乗れませんとしかいいようがない。そこまで政治が信頼できるという前提に立つのであれば、憲法などもともと無用の長物。」(P20)あまりにも的確な予言ぶりに驚き、快笑!成立を急いだ杜撰な国会の裏面を見た。「憲法改正」そのものの哲学的意味について論じる。2度の大戦も、冷戦も憲法の掲げる国の基本秩序を巡る戦いだった!日本は立憲主義の理念を持つ国。まずは日本をどういう国にしたいのかを基本的に決定することの重要性が力説される。(P59)著者は議院内閣制が優れ、大統領制が例外的に真に巧く機能している国は、独特の政治文化が存在する米国だけだとする。従って改憲による日本の首相公選制を否定する。また憲法改正の特別多数決の護持も主張する。憲法改正、或いは解釈の変更が必要だとの主張は全く見えてこない!確かに解釈で変更の余地があるような記載もあるが、少なくとも9条等の基本理念に関わる部分ではない。最後に、世界唯一国家の誕生は果たして理想か!この点も「魂なき専制」が齎され、無政府状態への堕落が予測されるとの著者の論理は明快。
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社会の授業でのことです。憲法と法律が区別して書かれていました。憲法は法律ではないのだろうか? という疑問がわいてきました。世の中では憲法改正、第九条は絶対守り通す、など様々な意見が飛び交っています。私の中では、現日本国憲法は第二次世界大戦後、アメリカ人の手によって作られたと聞いたこともあるし、ここらで、自分たちの憲法を作り替えてもいいのでは、と安易に考えたりもしていました。それで、本書を読んでみることにしました。法学も政治学もほとんど予備知識の無い人間ですから、もともとの三権分立の意味や、大統領と首相との違いが書かれているところを見て、なるほどと感心してしまいました。これで、フランスになぜ大統領と首相の両人がそろっているのか納得できました。そして、憲法というのはすべての法律の大元になっているものだということが理解できたと思います。そこの解釈の仕方が常に国会で議論になっているのだということも。こういうことって常識なんでしょうか? ひょっとして、中3生などはすでに教わっていることなのかもしれません。もし、自分も中学生のころに習っていたとすると、何にも身についていなかったということになりそうです。さて、本書には憲法改正についての手続きについてもくわしく書かれています。近々、そういうことが必要になるのかもしれません。国民の一人として、しっかり考えて投票したいものです。(この本を読むころまでは、本当に情けない状態だったんだよな。自分がです。)
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立憲主義は多様な価値観の公平な共存を図ることを目的として公私を区別するもの、という整理から、権力を制限する必然性や、多様性を否定して同一性を求めるファシズムや共産主義との相違、憲法の基本秩序としての国とその対立である戦争、憲法典改正の自己目的化への警鐘などが語られてわかりやすい。
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「資本主義の次に来る世界」と並行して読んでいて良かった。前提への疑義や問いを持ちながら現状を規定し得る法の実体について考えられた。
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高名な憲法学者が憲法の役割や立憲主義における立ち位置などを初学者にも分かりやすく解説した本である。初版は2006年とだいぶ古いがその当時より、憲法改正の機運が徐々に高まっていたのを記憶している。
本書の主な主張は憲法の硬性性を訴え、無闇な憲法改正の危険性を指摘しているという所だろうか?本書では法学者らしく精緻で論理的な議論が展開されていて、読者にも著者の主張の正当性を確認することができるだろう。
しかし物事は表裏一体である。浅学ながら偉そうなことを言うと私は法学の特徴はその対象の解釈がある程度自由にできるということにあると思う。例えば集団的自衛権を日本国憲法から容認することからも私の主張に援用することが出来ると思う。
そのある程度、自由な世界を規律づけるのは一体何であろうかと言うと、司法であったり大学の権威であると思う。本書においても自らの主張を肉づけるために高名な学者の説を引用している。確かに説得力を感じるし私も支持するものであるが前述の通り理論的な反論も可能であると感じた。
ここで僭越ながら私の憲法改正に対して持論を述べたいと思う。専門の方からしたら噴飯物だろうが素人ならではの考えもあるかと思う。
憲法改正は特に保守派が主張しリベラルは護憲的立場から反対を表明している。しかし、私はリベラル派も積極的に憲法改正の議論に立つ方がいいのではないかと思う。
その根拠が、日本国憲法のそもそもの正当性である。厳密なことはしんどいので間違っているのが前提だが、日本国憲法の前の憲法である大日本国憲法は天皇主権が謳われており、それが基本的原理であった。その憲法から国民主権を基本的原理とする日本国憲法への改正というのは本来ならば出来ないらしい。
そのため日本国憲法の正当性を付与する通説として八月革命説が導かれた。八月革命説の詳細については芦部信喜の憲法を参照して頂きたいが、要するにポツダム宣言の受諾によって一種の法的な革命が起こり政治体制が根本的に変化したとみなす説である。
この通説は法学者の間では受け入れられてるのだろうが一般的な革命という用語からイメージするものと、実際の事象とは違うのではと素人は思ってしまうのではないだろうか。革命とは非支配階級が支配階級の体制を転覆するイメージがあり、そのような定義であろう。実際には、その当時の国民は竹槍をもって本土決戦に備えていて反体制派が何かやり遂げたという歴史的事実は無いし、そもそもポツダム宣言を受諾したのは昭和天皇の聖断からである。
以上から八月革命説を支持しない私にとっては日本国憲法というのはそもそも法規範として弱いものであると思うし、改正派にも攻撃を与える余地があると思うのである。
戦後、日本国憲法は押付け憲法であるとして、保守派が改正の取り組みをしたり大日本国憲法への復権運動も展開された。それは復古的でもあるが同盟国のアメリカにとっても都合がいいものであろう。一方、憲法学者を始めとする護憲派は守勢に回らざるを得ない状況が続いていた。このままいくとこの弱い憲法が死文化してしまうか、危機を煽り改正派にとって都合のいい憲法が生まれる可能性もある。
そこで発想を転換して護憲派は積極的に憲法改正の議論に加わることによって、反戦、人権を重視する日本国憲法の理念を守ることができるかもしれない。
改憲議論を盛んにすることはむしろ護憲派にとってもメリットがあるだろう。
例えば我々一般市民に、立憲主義とは何か、人権とはなにか、日本国憲法にこめられた反戦のメッセージ?を再考することが出来るだろう。
憲法改正に向けての議論は盛んになり極端な議論も散見されるだろうが私はあまり悲観していない。それは私が大学時代に憲法学の講義を受けた経験による。彼ら彼女らは、厳しい訓練を受け、厳格な論理性を育んだプロであり、説得力のある提言を市民に提供してくれるだろう。
また日本国憲法の基本的理念は国民主権でありそれは改正不可能であるが憲法9条も成立経緯を踏まえると極めて改正困難であると私は思う。それはマッカーサーが憲法改正に要求したマッカーサー三原則に戦争放棄が示されておりこの基本原則を変えることは日本国憲法の主旨に反していると言えるからだ。
ここまでの議論は稚拙であり反論の余地はあろう。しかし私は日本国憲法をあえて過去の遺産とすることでその憲法の正当性を与えることになり国民主権、戦争放棄の理念がより強固になるのだろうと思う。
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憲法とは、同質の価値観が維持されていた中世の宗教世界が崩れた近代において、多様な価値観・世界観を抱く人々の公平な共存を図るための枠組みであり、国家の構成原理である。
憲法は国家の構成原理であり、近代における多くの戦争は異なる憲法を攻撃目標とする敵対であるという点、国家の憲法と憲法典が違うという点は新しい視点だった。
長谷部先生の本は初めて読んだのだが、結構保守的な立場から書いてあるように感じた。
憲法典を変えても憲法が変わるわけではないし、変更の必要がある場合でも、解釈や一般法の制定で対処できるといった改憲についての議論は納得できる部分もあるが、九条については明らかに無理のある解釈をしていると感じるし、解釈の幅が広すぎると憲法典が有名無実化してしまうおそれがあると感じる。
また、憲法典についても同じことが言えるかは難しいところだが、国際化・多様化が進む現代においては、同質性を前提とした曖昧なローコンテクストコミュニケーションは通用せず、明記が必要な部分は明記していくべきなのではないかと思う。
憲法典を変えることを自己目的としてはいけないという点については大賛成なので、憲法つまり国のあり方について、国民の間で議論がされるような土壌を作られていくといいなと思った。 -
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憲法改正を論ずる前にまずこの本を読んだ方がいい
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長谷部恭男『憲法とは何か』岩波新書 読了。多様な価値観の存在を認め、「私」の領域では個々の自由を保障。共通の利益を追求する「公」の領域では、国家の権力を憲法により制約、と立憲主義の理念を確認。その上で、憲法改正論に反駁していく。様々な思想家の思想が散りばめられ、文献解題が有意義。
2011/04/14 -
【由来】
・新書365
・「多数決を疑う」の読書案内で。この人、テレビで最近よく見る人だ。
【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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いわゆる、日本国憲法の解説書ではない。憲法は何のためにあるのか。
戦争は相手の憲法を変えるため。 -
立憲主義の発想について解説するとともに、そうした観点から現在の憲法をめぐるさまざまな問題について、著者自身の立場から明快に議論を展開している本です。
立憲主義そのものについては、おなじく新書で刊行されている『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書)のほうが、理論的および歴史的な側面からていねいに論じられているように感じました。本書でも立憲主義そのものの説明は手際よくまとめられていますが、むしろ立憲主義という発想をじっさいに使いこなすためのさまざまな視座が示されているように思います。
また、現在の憲法改正をめぐる議論には、改憲派・護憲派双方に、憲法の改正そのものが日本社会に革命的な変化をもたらすかのような理解が見られますが、著者はそうした議論が過熱する状況から距離をとり、憲法が置かれている具体的状況のなかで憲法の果たしている役割を冷静に見ようとしています。 -
岩波新書愛好会】#感想歌 憲法を創ると守ると改訂の力関係根源は何 民主主義だけではなくて人類の幸せ確保模索方法
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【目次】
はしがき(二〇〇六年二月 Y.H.) [i-iv]
目次 [v-ix]
題辞 [x]
第1章 立憲主義の成立 001
アトランタでの問い/サンチャゴでの問い
1 ドン・キホーテとハムレット 004
多元的な世界/ハムレットの「良心」
2 立憲主義の成立 008
比較不能な価値の対立/政治プロセスの適正化
3 日本の伝統と公私の区分 012
日本社会の公と私
4 本性への回帰願望? 014
「分かりやすい世界」へ?
5 憲法改正論議を考える 017なぜ厳格か
特定の価値観の導入?/新しい人権・責務/九条改正論/
6 「国を守る責務」について 022
守るべき国とは何か/憲法秩序と国土・暮らし/テロの時代と平和主義
文献解題 026
第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利 035
1 国家の構成原理としての憲法 036
憲法をめぐる争い
2 ルソーの戦争状態論 038
ルソーのホッブズ批判/戦争の即時解決の道
3 三種の国民国家 040
国家像の変貌/三者の闘い
4 シュミットと議会制民主主義 043
シュミットの議会制批判/敵対関係と国家間関係/治者と被治者の自同性/ファシズムと共産主義
5 原爆の投下と核の均衡 048
原爆投下の正当化理論/「究極の緊急事態」/バビットの批判/冷戦の終結
6 立憲主義と冷戦後の世界 054
リベラルな議会制の特長/冷戦終結の意味とは
7 日本の現況と課題 057
東アジアの対立構造/憲法典の変更を言う前に
文献解題 061
第3章 立憲主義と民主主義 067
1 立憲主義とは何か 068
二つの立憲主義/近代以前と近代以後/立憲的意味の憲法/九条解釈と立憲主義
2 民主主義とは何か 072
「多数者の支配」への嫌悪/議会制とシュミットの批判/ケルゼンの議会制擁護/ハーバーマスと討議の空間/マディソンと大きな共和制/アメリカの民主制
3 民主主義になぜ憲法が必要か 081
プレコミットメントとは
文献解題 082
第4章 新しい権力分立? 087
1 ブルース・アッカーマン教授の来訪 088
1-1 モンテスキューの古典的な権力分立論 089
権力分立の眼目/影響力
1-2 「新しい権力分立」 097
三つの政治体制/何が望ましいか/三権以外の機関の独立
2 首相公選論について 097
議院内閣制との相性/小選挙区制との相性/純粋の大統領制は?/半大統領制は?
3 日本はどこまで「制約された議会内閣制」といえるか 106
「最悪の体制」/日本の議院内閣制/官僚機構の「中立性」/行政・司法への制約について/内閣法制局という存在
4 二元的民主政――「新権力分立論」の背景 112
一元的民主政と二元的民主政/国の根本原理と憲法/憲法政治と通常政治
文献解題 117
第5章 憲法典の変化と憲法の変化 125
1 「憲法改正は必要か」という質問 126
質問の不思議
2 国民の意識と憲法改正 128
憲法典改正なしの根本変更/フランスの事例
3 実務慣行としての憲法 132
法と道徳/一次レベルから二次レベルへ/二次レベルのルールと専門家集団/三次レベルのルールへ
4 憲法とそれ以外の法 139
法の回復への欲求か/憲法と憲法典
文献解題 142
第6章 憲法改正の手続 147
1 改憲の発議要件を緩和することの意味 147
1-1 なぜ多数決なのか――その1 150
多数者の幸福/なぜ特別多数決か
1-2 なぜ多数決なのか――その2 153
コンドルセの定理/なぜ特別多数決か
2 憲法改正国民投票について 156
あるべき国民投票制度/熟議機関の設定/公正な討議の機会/個別の論点ごとの投票
文献解題 165
終章 国境はなぜあるのか 169
1 国境はなぜあるのか――功利主義的回答 171
統治の実効性/人権の実効的保障
2 国境はなぜあるのか――「政治的なるもの」 174
カントとホッブズ/シュミットの人間と国家/生の意味をかけた闘い
3 国境はいかに引かれるべきか 181
通常正当化テーゼ/手段としての国家・国境
4 境界線へのこだわり 185
国境の恣意性と相対性/境界線の自己目的化
文献解題 187 -
長谷部恭男氏(1956年~)は、憲法学・公法学を専門とし、日本公法学会常務理事、国際憲法学会(IACL)副会長を務める、現東京大学名誉教授。
本書は憲法改正の議論が盛んになった2006年の出版であるが、立憲主義における憲法とは如何なるもので、如何に運用されるべきなのか、そして、それを踏まえて憲法改正についてどう考えるべきなのかを論じている。
本書の主な主張、印象に残った点は以下である。
◆立憲主義とは、この世には、生き方や世界の意味について根底的に異なる価値観を持つ人々がいることを認め、それにもかかわらず、社会生活の便宜とコストを公平に分かち合う枠組みを構築することで、個人の自由な生き方と、社会全体の利益に向けた理性的な決定のプロセスとを実現することを目指す立場である。そのために、公と私の分離、硬性の憲法典、権力の分立、違憲審査、軍事力の限定などの制度がある。
◆立憲主義の考え方に立つ憲法は、政治のプロセスが本来の領域を越えて個々人の良心に任されるべき領域に入り込んだり、政治のプロセスの働き自体を損ねかねない危険な選択をしないよう、予め選択の幅を制限するというのが主な役割である。昨今の憲法改正論議では、この理解が十分でないという懸念を抱く。
◆憲法とは国家の基本となる構成原理で、近代においては、(リベラルな)議会制民主主義、全体主義、共産主義の3つが憲法を決定するモデルとなったが、全体主義は第二次世界大戦において、共産主義は冷戦の終結において、それぞれ消滅した。
◆日本が憲法典を変更しようとするのであれば、①日本の基本秩序たる憲法は何なのかを見定める、②冷戦後の世界において、日本がどのような憲法原理に立つ国家になろうとしているのかを決定する、③国民の生命と財産の安全の確保という国家としての最低限の任務を果たすために、また、立憲主義という基本的な社会基盤を守るために、日本は外交・防衛の面で何をし、何をすべきではないかを改めて確認する、必要がある。そしてこれらは、憲法典の改正云々に関わらず、検討されるべきものである。
◆リベラル・デモクラシーには、大統領制、イギリス型議院内閣制、制約された議院内閣制(ドイツや日本)の3つがあるが、国の根本原理を変革する政治過程・「憲法政治」と、日常的な利害調整に関わる政治過程・「通常政治」の二つの政治過程を区別し、的確に運営するためには「制約された議院内閣制」が最適である。
◆成熟した国家にとっては、「憲法」とは「憲法典」のテクストのみを表すのではなく、テクストを素材に法律専門家集団が紡ぎだす慣行の集まりこそが「憲法」である。即ち、重要なことは、シンボリックにテクストを改廃することではなく、「憲法」を如何に変えるかである。
◆憲法改正の国民投票制度については、①国会による改正発議から国民投票まで最低2年以上の期間を置くこと、②国民投票までの期間に、賛成意見と反対意見とに平等かつ広く開かれた発言・討議の機会を与えること、③投票は、複数の論点に亘る改正案について一括して行うのではなく、個別の論点ごとに行うことにより、有権者が十分な情報と熟慮に基づいて投票が行われるようにするべきである。
憲法改正については様々なスタンスからの意見があるが、改憲の実現を公言する安倍首相の自民党総裁3選が決まった今、自分の立ち位置を確立するために、改めて読んでおく意味のある一冊と思う。
(2007年5月了)
この本が好きな人におすすめの本
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