小説の読み書き (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 209
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310242

作品紹介・あらすじ

小説家は小説をどう読み、また書くのか。近代日本文学の大家たちの作品を丹念に読み解きながら、「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を、小説家の視点から考える斬新な試み。読むことは書くことに近づき、読者の数だけ小説は書かれる。こんなふうに読めば、まだまだ小説だっておもしろい。小説の魅力が倍増するユニークな文章読本。

感想・レビュー・書評

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  • 「小説の読み書き」というタイトルからだと「ああ、小説の書き方みたいな本かなぁ」と思うのだけれども、その実は至極まっとうな文藝評論集でした。

     文藝評論、いや、評論というジャンルは、評論のとっかかりが身近であればあるほどいいもんだと思います。そうじゃないとどうなるかと云うと、テレビに出ておいしいもの食べて、なんやかコメントを言う、悪しき「評論家」像に近づいていってしまう。「うまーい!」だの「まったりとしていてそれでいて生臭い」だの言うだけでお金がもらえる職業が評論家だと思われると困っちゃう。
     そうじゃなくて、評論家だってなんらかの視点やものの考え方を読者に与える存在であっていいはづで、そのためには出来るだけ己が身にひきつけねばならない。真のオリジナルは各人の中にしかないわけだからして。

     井伏鱒二の『山椒魚』にたいするとっかかかりかたが好きだ。太宰治が山椒魚を呼んで「興奮した!」とはいうものの、自分としてはあんまり別に特にそうでもない。じゃあ、「山椒魚」を読んだ太宰少年が、どこが面白くて「興奮」したのか? ほれほれ、これが「評論」ですよ。これだったらちょっと原稿料とってもいいと思うでしょう。

     小説家としての佐藤正午作品は寡聞にして読んだことがないのだけれども、この本を見るにつけ、ものの書き手として非常に真摯だなぁと思って読みました。
     やや「俺ってこういう人間だから!」という押し付けがましい部分が面倒くさいなぁと思う部分もありますが、文藝評論としてはかなり面白い部類に入ると思います。

  • 図書館本。131

  • 岩波 図書に連載

    [ 目次 ]
    川端康成『雪国』
    志賀直哉『暗夜行路』
    森鴎外『雁』
    永井荷風『つゆのあとさき』
    夏目漱石『こころ』
    中勘助『銀の匙』
    樋口一葉『たけくらべ』
    三島由紀夫『豊饒の海』
    山本周五郎『青ベか物語』
    林芙美子『放浪記』
    井伏鱒二『山椒魚』
    太宰治『人間失格』
    横光利一『機械』
    織田作之助『夫婦善哉』
    芥川龍之介『鼻』
    菊池寛『形』
    谷崎潤一郎『痴人の愛』
    松本清張『潜在光景』
    武者小路実篤『友情』
    田山花袋『蒲団』
    幸田文『流れる』
    結城昌治『夜の終る時』
    開高健『夏の闇』
    吉行淳之介『技巧的生活』
    佐藤正午『取り扱い注意』

  • 小説家佐藤正午が、芥川龍之介や太宰治ら大作家たちの小説について、分析したり、突っ込んだり、要は(敬意を込めながら)言いたいことを言っている本。
    例えば、当時中学生の太宰治が、井伏鱒二の「山椒魚」を読んで、坐っていられないくらい興奮したという話に対し、中学生の自分はどちらかといえば「すわっていられないくらいに退屈した」といじけてみせつつ、太宰がなぜそんなに興奮したのかを推理していく。
    そんな深読みをするのか、そんな所に目をつけるのかと、最初から最後まで新鮮だった。

  • 絵画が、その背景を知った上で見ることで感動が何倍にもなるのと同じように、小説の場合も、著者が何を意図しているのか、どんな背景があるのかを知った上で読む方が面白い。或いは後から。

  • 25人の小説家の代表作を著者が読んでコメントする面白い企画の本だ."図書”で読んだ記憶も一部あったが,改めて通読すると,著者がかなり素直な気持ちを書き記していることに感心した.勘違いも数点あるが,それを素直に改訂している姿勢は,政治家に見せたいものだ.取り上げていた中で大作は三島の「豊饒の海」だと思うが,これはしっかり読んだ.かなり昔なので,佐藤の評価とは相いれない部分があったが,小説家が小説を考える事例は少ないので,面白かった.文章の癖をそれぞれの作家から引き出しているのは,職業的なものだろう.

  • リリース:茂樹さん
    ミスターいんぎんです。

  • 2017年7月9日に紹介されました!

  • 独特な視点から読み解く。

  • たぶん絶版になっているだろう。故に本屋で探すのは無駄で図書館で蔵書検索してコードNo.で引っ張り出して来たレア本。
    しかしまぁよくこんな大それた企画に手を出したもんだ。日銭目当てとは言えやる気ないなら止めとけばいいのに…と読んでいるこっちがヒヤヒヤのヤバい内容。
    引く手数多のビッグネームにケチを付けることに飽き足らず句読点の打ち方から文法の添削までやってのける心臓は正午さんらしいと言えばそうなのだが勝手適当な解釈をした挙句読者の指摘を受け訂正することもなく追記で誤魔化すという大胆さにはまったく恐れ入る。
    佐藤正午検定(もちろんないが)準二級以上の読解力と包容力がない方は読まない方が無難の問題作

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著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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