自殺予防 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.37
  • (6)
  • (13)
  • (26)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 134
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310280

作品紹介・あらすじ

年間自殺者三万人超という深刻な事態が一九九八年から続いている。国としての対策も動きはじめた今、自殺を防ぐために知っておくべきことは何だろうか。自殺という死の実態、自殺に至る心理、心の病、とくに「うつ病」との関係、遺族に対するケア、国内外での先進的な取り組みなどについて、事例も交えて具体的につづる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 精神科医によるものなので、心理的・医学的な見地からのみ書かれているのかと思いきや、非常に複合的な視点から自殺とその予防方法について考察されていて大変興味深い一冊になっている。この本の長所は何と言っても、臨床から得られた観察知見が具体的に記述され、素人でも読みながら考え、考えながら読めるような論の進め方になっている点。それでいて具体例としてのエピソードにばかり流されることなく、適度な紹介と説得力ある解説が施されていて、著者がこれまで取り組んできた自殺予防研究の蓄積の厚みを感じさせる。自殺を観念的、抽象的にではなく、極めて社会政策的に取り上げているところもまさに「自殺を予防する」という具体的な目的を目指すもので明快だ。「自殺は自由意思によって選択された死ではなく、強制された死である」という前提から始まり、「大の大人の選択だから防ぎようがない」、「死ぬ、死ぬと言ってる者に限って自殺しない」というような自殺にまつわる(自己責任論的)誤解や偏見を実に“やわらかく”批判している。自殺についての前提となる認識を与えている点で、これまで自他ともに自殺とは無縁と思っている多くの人に読まれるべき一冊と思う。

  • 自殺予防の十箇条。
    1うつ病の症状に気をつけよう。
    2原因不明の身体の不調が長引く。
    3酒量が増す。
    4安全や健康が保てない。
    5仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う。 6
    6職場や家庭でサポートが得られない。
    7本人にとって価値あるものを失う。
    8重症身体の病気にかかる。

  • ☆☆☆☆今後、万が一自分に、あるいは自分の周囲に「自殺願望」が襲いかかってきたときのために。と思い、我が家の常備薬のようなつもりで読んでみました。

    まずは、データ分析日本の自殺実態(年代別、男女別、統計推移、完全失業率との相関)、国際比較(自殺率)によって日本における自殺の特徴を明確にしたうえで、自殺の要因分析(危険因子、精神疾患との相関)の結果を紹介してゆく。そして、それらを受けて自殺予防の取り組みをフィンランド、新潟県東頸城郡の例を引いて紹介し、医療機関と地域コミュニティの連携の重要性を説いている。そして、最終章で「自殺者と家族」に焦点を絞り、原因の相関性と、遺族としての家族へのケアのあり方を説明しています。

    データや、その解説、対策にとどまらずに、テーマの合間合間に、実際に関わった“自殺及び自殺未遂”の症例があるのですが、それが良いバランスで、このテーマをぐっと身近なものに引き寄せてくれました。

    【私の視点】
    ①自殺の前にも後にも“自殺者と家族”というテーマがこの問題の大きな課題であることは、分かっていたようなつもりでいたのにあまり深く考えてこなかったテーマでした。
    「自殺の危険の高い親の背後には、自殺の危険の高い子どもがいる」(自殺予防の領域での警句)。要するに、家族全体の病理がある特定の人の自殺行動に反映している〜〜ということ。
    この本では幾つかの、自殺という病理を生み出す家族のタイプを解説しています。考えてみれば、それはかなりの確度を持ってその関連性はあるはずで、自分の過去を振り返っても、自分がこの世に生まれ落ちて初めて目にしたものは間違いなく、母親の笑顔であったはずですし、それからというもの自分で、自律的に考える力を持ち、客観的な視点で自らの意見の検証を図れるようになるまでは、親の世界観の一部を生きていたのでしょうし、当然今でも自分の計り知れないところでこの世界観が顔を覘かせては、周囲に「お父さんに似てきたね」と言われている。そんな、濃密な環境が“死生観”に影響を与えないわけがないのですね。
    そして、その家族の病理が次世代へと繋がってゆく連鎖を断ち切るための処方もほんの少しこの本で触れられてはいます。でも私が感じているのは“濃密な関係”による生の喜びと、“閉塞的な環境”による価値の倒錯を禁忌として再度打ち立て、歴史的に引き継ぐか、それができないのならば、それを“自殺”というテーマではなく、もっと普遍性のあるテーマとして教育のなかに組み込むのが良いのではないかと考えています。

    ②高齢者の自殺率が高いのは、日本に限らず世界的な現象であること。
    この要因に対しても幾つか要因をもって説明しています。しかし、表面的に“はなるほど”なのですが、何人かの知人、友人を自殺で失い、自らは「なんで、そんなことを」と生への執着が強い身からすると、いつそんな魔的なモノが襲いかかってきても大丈夫なようにしておきたいという思いが、更に深い要因を見つけに行くことをやめさせない。以下その考察を書きます。
    根本的にには、人間の寿命が伸びたことにあるのでしょうが、では何故寿命が伸びると問うと、各世代のもつ世界観の多重な錯綜が社会のなかに混在していて、その社会を生きていくことは愛着を育んできた自分の世界観が少しづつ剥ぎ取られていくような失望に似た感覚として捉えられるのではないのでしょうか、それが将来の比重が軽く、ずっしりと思い過去をもつ高齢者には、当然の感覚であるように思えます。(一方で人類の進歩のためには、将来に比重をもった者の意向を優先させなくてはならない)
    この“生きる”ことの意味の将来的比重が低くなってくると精神と身体の比重も変わってくるし、今ある社会の豊かさに応じて「◯◯がしたい」という願望をもつ高齢者より、「私は生きていていいの?」という変な経済合理性にかられる人の数が増えてくるのも想像されてしまう。

    ここ(「高齢者の芯の生きがい」)からもう一度設計し直すという選択肢もありなのかもしれない。子どもの側から考えるのではなく、物理的、経済的な「幸せ」を剥ぎとった跡に残る「生きがい」を目指してつくる社会システムを誰か社会学者と哲学者がコラボして打ち立てて欲しい。
    と読後に考えてしまいました。
    2016/05/21

  • “自殺問題”の権威である高橋氏の著作。

    自殺の統計的概観、各国の事情、様々な自殺のサイン、「うつ病」、自殺予防対策、等々をまんべんなく著述。
    例えば「うつ病」治療についての項目では、各種の「抗うつ薬」の特徴まで詳述されている。
    「症例」研究の項もある。実際に自殺で亡くなった方達の“最後の日々”を辿るもので興味深い。

     網羅的にして詳細な内容がコンパクトにまとめられている。“自殺問題”に初めて取り組む人にはこの1冊で十分、な内容。

  • 信頼できる著者による医学的見地からの自殺論。
    自殺者の9割は、自殺の直前になんらかの精神疾患と認められる症状を抱えながら、そのほとんどが医師にかかっていないというデータを問題にし、主にうつ病対策の観点から自殺を減らすにはどうすればよいかを書いた本。
    文章は平易。ためになる。

  • 一家に一冊あってもいいと思います。自分のためにも、人のためにも。

  • かなり身につまされるものあり。 何度か友人の自殺に出会ってきたから。

    この分野で長く活躍されてきた方の実地経験豊かなレポート。一度読んでから、今度はノートをとりながら二度三度と読み直して、図書館で借りていたので、Amazonで改めて購入しました。

    やはり、ケアの現場に関係していると、手元に持っておく本でしょうね。星は、勉強させていただいたって評価です。

  • ・臨床の場で自殺予防に取り組む精神科医による著作。
    ・私は、身の回りで自殺が起こったという経験はないが、自殺はどの社会階層でも発生しうると気付いた。つまり、当然ながら今後も起こらない保証はない。そして、既遂後に後戻りはできない。
    ・日本に限らず世界的に見ても中高年男性の自殺が目立つという。今後も高齢化が進む日本では、自殺予防の重みはいっそう増すことだろう。また、男性の自殺率の高さが職場に起因すると考えれば、今後は社会進出をより多く経験する女性にも注意を払う必要があると考える。さらに、大きな社会変動により、若年層の自殺が世界的に見ても増える傾向にあるという。私たちの生きる現代日本もまさに変動のさなかにある。
    ・自殺は、多様な要因が複雑に絡み合って発生する。また、一定の準備期間を経て実行に至るケースが多い。精神状態、身体上の健康状態、極端な言動の変化など、サインを身落とさないことが肝要である。
    ・深刻な相談を持ちかけられたとき、当人は悩んだ挙句に相談相手を選び抜いていると考えたい。「本題」とは一見無関係な話題から入る場合もあるが、かねてから「兆候」が感じられる場合は、丁寧に傾聴することが不可欠となる。相手が言葉を紡ぎ出せなくても、沈黙を共有することもまた大切である。

  • 自殺の心理学(講談社新書)に続き、どのようにすれば、自殺を防げるかについて書いた本。テキストが多いので、若干読みにくいため★3つ

全20件中 1 - 10件を表示

高橋祥友の作品

ツイートする