自殺予防 (岩波新書 新赤版 1028)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310280

作品紹介・あらすじ

年間自殺者三万人超という深刻な事態が一九九八年から続いている。国としての対策も動きはじめた今、自殺を防ぐために知っておくべきことは何だろうか。自殺という死の実態、自殺に至る心理、心の病、とくに「うつ病」との関係、遺族に対するケア、国内外での先進的な取り組みなどについて、事例も交えて具体的につづる。

感想・レビュー・書評

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  • (2024/01/28 2h)

  • 鬱の知人が衝動的に自殺を仄めかすことがある
    放っておかない
    いつそれが起こるかわからない
    またそれに対して、
    自分も影響を受けることがよくわかった

    鬱、プレッシャー、自殺への一歩は近い

    グラフ含めてわかりやすく説明されていた

  • 重い。
    とてもとても重いテーマ。

    でもとても優しい文体で、精神科医である筆者の熱い気持ちを感じる。

    鬱は心の風邪で、だけれども風邪が肺炎になってしまうこともある。
    みんな一生懸命に生きている。
    誰も悪くないし、誰かや自分を責めたり、責任追求なんて必要ない。

  • かなり身につまされるものあり。 何度か友人の自殺に出会ってきたから。

    この分野で長く活躍されてきた方の実地経験豊かなレポート。一度読んでから、今度はノートをとりながら二度三度と読み直して、図書館で借りていたので、Amazonで改めて購入しました。

    やはり、ケアの現場に関係していると、手元に持っておく本でしょうね。星は、勉強させていただいたって評価です。

  • 最近、テレビや新聞などで自殺についての話がよく出ます。またそれが日本の大きな社会問題になっているのです。自殺は何で?よく疑問を持っていたのですが、大人になって仕事やいろいろ経験をしてみたら自分も自殺したくなる時がたまたまあります。しかし、その勇気はないですが・・・
    自殺は仕事でのストレス、家族の分散、社会の自分に対する否認などが原因といわれますが、その様な自殺を防止するためには私たちに何ができるでしょうか?もちろん、一人一人の自覚も大事だが、社会、国がこの様な問題を解決していくためには努力をしなければなりません。

  • 精神科医によるものなので、心理的・医学的な見地からのみ書かれているのかと思いきや、非常に複合的な視点から自殺とその予防方法について考察されていて大変興味深い一冊になっている。この本の長所は何と言っても、臨床から得られた観察知見が具体的に記述され、素人でも読みながら考え、考えながら読めるような論の進め方になっている点。それでいて具体例としてのエピソードにばかり流されることなく、適度な紹介と説得力ある解説が施されていて、著者がこれまで取り組んできた自殺予防研究の蓄積の厚みを感じさせる。自殺を観念的、抽象的にではなく、極めて社会政策的に取り上げているところもまさに「自殺を予防する」という具体的な目的を目指すもので明快だ。「自殺は自由意思によって選択された死ではなく、強制された死である」という前提から始まり、「大の大人の選択だから防ぎようがない」、「死ぬ、死ぬと言ってる者に限って自殺しない」というような自殺にまつわる(自己責任論的)誤解や偏見を実に“やわらかく”批判している。自殺についての前提となる認識を与えている点で、これまで自他ともに自殺とは無縁と思っている多くの人に読まれるべき一冊と思う。

  • 740+税
    橋本

    鬱は女性が多いが自殺者は男性の方が多い。
    ①衝動性をコントロールする能力は女性の方が優れている。男性は問題解決場面で、敵対的、衝動的、行動的な行動に及ぶ傾向が強い。
    ②①とも関連するが、自殺を図ろうとする時、男性はより危険な手段をとる傾向が強い。
    ③問題を抱えてさた時に女性の方が他者に相談するといった行動に対して抵抗感が少なく柔軟な対応ができる。男性は強くなければならない、他者に弱味を見せてはならないなどの社会的制約が強く、他者への相談ができず、一人で抱え込む傾向。

    動機は?
    健康問題40.0%
    経済・生活問題31.4%
    家庭問題9.8%
    勤務問題6.3%

    高齢者が自殺者が多い傾向があるが、日本は若者の自殺者が多い、理由として受験やいじめ、仕事の環境が問題。

    ウェルテル効果の原因で第二波の被害が!
    ウェルテル効果によって、亡くなった人がでるそのことに嗅ぎつけたメディアが過剰に報道する。これによって同年齢で同種の問題を抱えた人々の間で第二波の自殺行動が見られる。

    報道のガイドラインの作成が行われる

    自殺の危険因子
    ①自殺未遂歴→もっとも危険因子。自殺未遂の状況、方法、意図、周囲からの反応などを検討
    ②精神疾患の既住→うつ、統合失調症、パーソナリティ障害、アル症、薬物乱用
    ③サポート不足→未婚、離婚、配偶者の死別、職場の孤立
    ④性別
    自殺が多い男性、自殺未遂が多い女性
    ⑤喪失体験
    経済的損失、地位の失墜、病気や怪我、業績不振、予想外の失敗
    ⑥性格
    未熟、依存的、衝動的、極端な完全主義、抑うつ的、反社会的、孤立
    ⑦年齢
    年齢が高くなるとともに自殺率上昇
    ⑧他者の死の影響
    精神的に重要な繋がりのあった人が突然不幸な形で亡くなる。
    ⑨事故傾性
    事故を防ぐのに必要な措置を不注意にも取らない、慢心疾患への予防や医学的な助言を無視
    ⑩児童虐待
    小児期の心理的、身体的、性的虐待

    月間250時間を超えると過労死や過労自殺の率が3から5倍高まる。

    自殺直前のサイン
    感情の浮き沈み、不自然なほど明るく振る舞う、身なりに構わない、注意散漫,不眠、食欲が減るなど

    ①死にたいと言われたら
    決して誰でもよいから打ち明けたのではない、
    ②生と死の間で激しく揺れ動いている
    ③時間をかけて傾聴
    打ち明けた時は危険な状況であると同時にその悩みを受け止める絶好の機会でもある。
    ④沈黙を共有してもよい
    ⑤してはならないこと
    話をそらす、叱咤激励、価値観を抑えつけるではなく相手の話を聞く、気持ちを受け止める。
    ⑥悩みの理解をしようとする
    傾聴。相手の悩みを整理してやる。こういうことと感じているのですね。
    ⑦十分話を聴いた上田で他の選択肢を示す


    どのようにして受診に繋げるか?
    家族に伝えてほしくない人や精神科に行きたくない人が多いだろう。特に男性。その場合、大体の人が心あるいは身体的にダメージを覆っているため内科の受診を受けてもらう。内科でも精神科が入っている病院もある。内科に異常がなかったため、精神科で診てもらうこともできるであろう。私も一緒に行くからなどのアプローチも。受診しなさいと命令形ではなく一緒に働きかけることが大事である。

    うつ病患者は、そもそも几帳面で真面目な人が多い。頑固な面もある。
    決断不能はうつ病の重要な症状。だから一緒に受診しようが得策。

    まずは病気を認める
    次に入院か外来か。自殺しないようであれば外来に加え家族が協力的であれば◎

    世界状況。
    インドでは今でも自殺は犯罪とされているため、自殺に関してはほとんど関心されていない。
    高齢者の自殺が多い場合、社会的支援、若者も。経済の影響も。国ごとの取り組みが必要?
    プライマリケア医と精神科の連携が必要。

    自殺予防
    自殺予防に直接焦点を当てるのではなく、コミュニケーション能力を高める、自尊心を高める、問題解決能力を高める。フィンランドの成功事例。目標20%が30%に。長期的な視点でのアプローチが必要。

    高齢者の多い地域ではプライマリケア医の能力を高めることが自殺予防に繋がる。定期的に病院へ受診するため体調の変化が客観的に把握することができる。

    取り残された人へのケア。第二波を抑えるために。
    記念日反応、命日反応。

  • 自殺予防の十箇条。
    1うつ病の症状に気をつけよう。
    2原因不明の身体の不調が長引く。
    3酒量が増す。
    4安全や健康が保てない。
    5仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う。 6
    6職場や家庭でサポートが得られない。
    7本人にとって価値あるものを失う。
    8重症身体の病気にかかる。

  • ☆☆☆☆今後、万が一自分に、あるいは自分の周囲に「自殺願望」が襲いかかってきたときのために。と思い、我が家の常備薬のようなつもりで読んでみました。

    まずは、データ分析日本の自殺実態(年代別、男女別、統計推移、完全失業率との相関)、国際比較(自殺率)によって日本における自殺の特徴を明確にしたうえで、自殺の要因分析(危険因子、精神疾患との相関)の結果を紹介してゆく。そして、それらを受けて自殺予防の取り組みをフィンランド、新潟県東頸城郡の例を引いて紹介し、医療機関と地域コミュニティの連携の重要性を説いている。そして、最終章で「自殺者と家族」に焦点を絞り、原因の相関性と、遺族としての家族へのケアのあり方を説明しています。

    データや、その解説、対策にとどまらずに、テーマの合間合間に、実際に関わった“自殺及び自殺未遂”の症例があるのですが、それが良いバランスで、このテーマをぐっと身近なものに引き寄せてくれました。

    【私の視点】
    ①自殺の前にも後にも“自殺者と家族”というテーマがこの問題の大きな課題であることは、分かっていたようなつもりでいたのにあまり深く考えてこなかったテーマでした。
    「自殺の危険の高い親の背後には、自殺の危険の高い子どもがいる」(自殺予防の領域での警句)。要するに、家族全体の病理がある特定の人の自殺行動に反映している〜〜ということ。
    この本では幾つかの、自殺という病理を生み出す家族のタイプを解説しています。考えてみれば、それはかなりの確度を持ってその関連性はあるはずで、自分の過去を振り返っても、自分がこの世に生まれ落ちて初めて目にしたものは間違いなく、母親の笑顔であったはずですし、それからというもの自分で、自律的に考える力を持ち、客観的な視点で自らの意見の検証を図れるようになるまでは、親の世界観の一部を生きていたのでしょうし、当然今でも自分の計り知れないところでこの世界観が顔を覘かせては、周囲に「お父さんに似てきたね」と言われている。そんな、濃密な環境が“死生観”に影響を与えないわけがないのですね。
    そして、その家族の病理が次世代へと繋がってゆく連鎖を断ち切るための処方もほんの少しこの本で触れられてはいます。でも私が感じているのは“濃密な関係”による生の喜びと、“閉塞的な環境”による価値の倒錯を禁忌として再度打ち立て、歴史的に引き継ぐか、それができないのならば、それを“自殺”というテーマではなく、もっと普遍性のあるテーマとして教育のなかに組み込むのが良いのではないかと考えています。

    ②高齢者の自殺率が高いのは、日本に限らず世界的な現象であること。
    この要因に対しても幾つか要因をもって説明しています。しかし、表面的に“はなるほど”なのですが、何人かの知人、友人を自殺で失い、自らは「なんで、そんなことを」と生への執着が強い身からすると、いつそんな魔的なモノが襲いかかってきても大丈夫なようにしておきたいという思いが、更に深い要因を見つけに行くことをやめさせない。以下その考察を書きます。
    根本的にには、人間の寿命が伸びたことにあるのでしょうが、では何故寿命が伸びると問うと、各世代のもつ世界観の多重な錯綜が社会のなかに混在していて、その社会を生きていくことは愛着を育んできた自分の世界観が少しづつ剥ぎ取られていくような失望に似た感覚として捉えられるのではないのでしょうか、それが将来の比重が軽く、ずっしりと思い過去をもつ高齢者には、当然の感覚であるように思えます。(一方で人類の進歩のためには、将来に比重をもった者の意向を優先させなくてはならない)
    この“生きる”ことの意味の将来的比重が低くなってくると精神と身体の比重も変わってくるし、今ある社会の豊かさに応じて「◯◯がしたい」という願望をもつ高齢者より、「私は生きていていいの?」という変な経済合理性にかられる人の数が増えてくるのも想像されてしまう。

    ここ(「高齢者の芯の生きがい」)からもう一度設計し直すという選択肢もありなのかもしれない。子どもの側から考えるのではなく、物理的、経済的な「幸せ」を剥ぎとった跡に残る「生きがい」を目指してつくる社会システムを誰か社会学者と哲学者がコラボして打ち立てて欲しい。
    と読後に考えてしまいました。
    2016/05/21

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著者プロフィール

防衛医科大学校・防衛医学研究センター・教授。精神科医。
著書:『自殺予防』(岩波新書)、『自殺、そして遺された人々』(新興医学出版社)、『医療者が知っておきたい自殺のリスクマネジメント』『自殺のポストベンション:遺された人々への心のケア』(医学書院)、『新訂増補 自殺の危険』(金剛出版)、など。
訳書:ヘンディン『アメリカの自殺』(明石書店)、シュナイドマン『アーサーはなぜ自殺したのか』(誠信書房)など。

「2007年 『自殺で遺された人たち(サバイバー)のサポートガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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