格差社会: 何が問題なのか (岩波新書 新赤版 1033)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310334

作品紹介・あらすじ

低所得労働者の増大、新しい貧困層の出現、奪われる機会の平等…。教育や雇用などあらゆる場で格差が拡大するなか、いま日本社会に何が起きているのか。格差問題の第一人者である著者が、様々な統計データによって、格差の現状を詳細に検証し、不平等化が進行する日本社会のゆくえを問う。格差論の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 継続的な経済低迷は人々の不安や閉塞感を生み出し、政府の政策効果を薄め、利益の減った企業は非正規雇用の拡大を進めるなど雇用システムの変化をもたらした。

    日本の雇用システムの3本柱
    年功賃金制度
    長期雇用制度
    企業別組合

    これらの雇用システムは正社員の安心な生活をサポートし、政府にとっても支出する社会保障の負担額が少なくなる(勤続年数に応じて給与が上がり、セーフティーネットの支出が少なくて済む)などメリットがある一方で、非正規雇用者はその雇用システムの恩恵を受けることができず、賃金が低くなるばかりか、公的援助も少ない現実がある。これは、専業主婦や学生アルバイトを前提とした制度設計になってることが背景にあるが、今正社員である人も万が一倒産などでその枠を外れると厳しい状況に陥るということである。不景気が継続すれば、次世代にわたって機会の平等が奪われてしまい、一度落ちたら這い上がれない社会になってしまう、というより昔からそう言う事実はあるのだろうが、日本はさらにそういった傾向が拡大しているらしい。その結果、拡大自殺と言った犯罪が増え、さらにはこうした不遇な人たちの救済のため、社会の負担も増えることになる。格差の拡大が閉塞感や不安を生み、新たな需要を生み出しにくくするなど、政策が空回りする原因になっていると思う。筆者が挙げる、変えるべき現行制度は以下。

    国民年金に累進性を導入(今は一律で逆進性があり、多くの税金が充てられている)
    雇用保険の用途見直し(失業した人の給付のみに絞る)
    同一労働同一賃金(職務給制度)
    最低賃金の改善(モデルケースで生活保護より月収が少なくなる場合がある)
    奨学金制度の拡充

    継続的なデフレの悪循環からの脱却が鍵であると思う。まずはとにかく利益。

  •  格差社会の方が国民に分断を生みやすく分割統治がやりやすい。よって独裁政治が行いやすい。よって安倍政権は格差社会を目指しているのでしょう。
     ちなみに、安倍政権が基準とする「格差」とは、能力や実力による格差ではなく、「アベ様の覚えがいいか悪いか」による格差なのです。
     無名の四流大学でもアベ様につながれば特権により便宜を謀られたりたり、国際的に通用しないボブスレービジネスがアベ様につながって膨大な交付金をもらっていたとか、次から次へと出てきます。

     擦り寄れ、擦り寄れ、アベ様に擦り寄れ。そうでなくては出世できないぞ。
     ああアベの世やアベの世や。地獄の沙汰もアベ次第。
     学校の校庭には二宮尊徳ならぬ“二宮忖度”像が建てられたりして。
         
     さて、格差社会になって貧しい人が多くなれば、経済的徴兵制に都合が良くなります。
     アメリカでも経済的徴兵制が行われていますが、日本でもそうしたいのでしょう。
     良識ある我々は格差社会に反対していかなければなりません。
       http://sanshirou.seesaa.net/article/456893421.html

  • 一番大きいのは「若者層の貧困が深刻」で今後も増すことを言い当てている。これが2006年で、この時裕福な層は40-50代。2022年の現代はこの世代がそのまま60-70代でやはり裕福な気がする(格差はあるかもしれないが)。年金が一番高く、働いている時も給料が当たり前のように昇給しボーナスも当たり前にあった世代。

  • 2006年の本でありデータは古いものの、作者の「上層と下層の差を認めつつ、貧困者がゼロの世界を想定する」という考え方は非常に共感したと同時に、現在の日本に抜け落ちている視点だと思われる。「機会の平等」を確保するために、教育や社会保障、雇用政策を政府が積極的に行なっていくことの重要性、そのための財源として諸税の累進性を高めることが説かれており、私の価値観とは合致するものであった。また、15年ほど前の本であるにもかかわらず、構造的な問題はあまり変わっていないとも思われる。

    ただ2022年現在(もちろん2006年当時も)にこれを実現するためには下記の視点が必要かと思われる。

    ・累進性を高めつつ企業・個人の競争力を失わないためには、税以外の観点からの優遇措置等が必要ではないか?デジタル化も進み新たな産業が勃興する中で、規制改革などを税改革とセットで行うことが必要ではないか?
    ・少子高齢化が異様な速さで進む中で、果たして累進性の向上などだけで、社会保障の財源を確保できるか?高齢者の富裕層を巻き込んだ議論もなされるべきではないか?
    ・高福祉・高負担国家の課題とは何か?

    これらの視点をもりこめていればさらに評価が高いものであったと思う。

  • 2006年に発刊された本書は、ちょうど現在の状況をある程度予想して書かれてる居るため、答え合わせのような読み方も面白い。

  • まだ格差拡大

  • 格差が広がることが社会の損失になることは分かったが、低所得者に優しすぎると、今度は中・高所得者から不満がでる。いかに折り合いをつけるべきか。

  • 結局格差社会は何が問題なのか

  • 去年の北大の文化祭の変なブースで100円くらいで買った一冊。

    本自体古いのでそんな今更読む必要性もないのだが、内容も大したことないというか、なんというか。挙げればキリがないほど???な部分があったが、とにもかくにも局所的なことの一般化、印象論・感情論ばかりで個人的にははやく読み終えて次に行きたい部類の本であった。

  • 2006年の出版であり、若干の古さは否めない。最後の章の処方箋も新しさとか意外性は感じられなかった。
    もっと踏み込んだ内容を期待してしまった。

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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