労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310389

作品紹介・あらすじ

人間の労働が"物件費"に組み込まれ、商品以上に買い叩かれる。競争に競り勝って仕事を得ても、正社員とのポスト争いで泥沼。働く現場がダンピング攻勢にさらされている。有期雇用・派遣・パート・偽装請負…雇用の液状化現象が働き手を襲う生々しい現状報告。一人ひとりが人間として働き生きるためのオルタナティブを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 自分も非正規職員として働いた経験があり、雇用問題、労働問題は決して他人事ではないと思っている。

    有期雇用・派遣・パート・偽装請負…雇用の液状化現象が働き手を襲う生々しい現状報告。

    労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、パート法、労働者派遣法、労働組合法などいろいろな法律も出てくる。慣れてないのと知識がないことで読み進めるのに時間がかかった。

    本書自体は2006年刊行で少し古い。少し後になって派遣切りが大問題になったぐらいかな。つい先日も労働者派遣法の改正の話題が出ていたと記憶しているけど、どうやら規制緩和が進むらしい。人を変えれば派遣に無期限に任せられるとか、きっと正社員から派遣社員という流れがより強くなるんだろう。

    オランダ・モデルでは、パートタイム労働を積極的に位置づけ、ただ賃金を抑制するのではなく税金や保険料の負担も軽くして手取りが維持されるようにしているとのこと。女性の社会進出が進み(男性のパート労働の選択も増えた)、世帯収入も向上し、経済活性化につながったとのこと。こういう方策もあるんだと目からうろこが落ちた気分。労働市場のフレキシビリティなんてのは、使用者が労働者を都合よく使うための方便だとばかり思っていたけど、うまく制度を整えれば、多様な働き方、生き方を尊重する社会もできるのかもしれない、と思えた。

    日本とオランダじゃ風土も歴史も違うし、きっとオランダにはオランダの問題もあるだろうけど、なんにしても安心して暮らせる世の中になってほしい。

  • 本書で述べられている「持続可能な雇用関係」とは、「より良く生きるために働くことのできる社会」という理想論であり、一方で語られる日本の現実の雇用状況との乖離は凄まじいほどだ。同一労働同一賃金を徹底し、パートの賃金差別を撤廃したとされるオランダモデルにしても、日本の状況に当てはめたとき、「正社員」給与の大幅な切り下げという状況を想定しないわけにはいかないだろう。
    ホワイトカラー・エグザンプションのことを「知らない」と答えた人がこの期に及んで7割に上るとされる日本で、日々の労働が世界規模の市場で「商品」として並べられていることに自覚的な労働者は少ない。このような状況下で、「働く」ということのあるべき姿を追求し、原理原則にこだわろうとする著者の姿勢が多くの共感を呼ぶことができるか、注目したいと思う。

  • 問題点
    ・労働条件の切り下げ 正規→非正規
    ・非正規社員に対する賃金の低下
    ・企業の立場が強くなり、労働者に負担が押し付けられる

  • 労働についての問題点。非正規労働者の労働条件の実態を克明に記述している。

  •  規制緩和と労働の商品化に伴う熾烈な競争政策により疲弊していく労働の現場の実態を記した本。「多様な労働形態」という謳い文句が導きだすのは、不安定さのスパイラル。

     その中で起こっているのは、人件費が物件費として組み込まれるような偽装請負などの問題。悪質な企業となると、規制に反して労働者を選別したにもかかわらず、労働者から「働き続けたい」と雇用責任を問われると、「採用の自由」を盾に責任回避に走る。

     問題は失業保険などの社会保障制度が未だに旧来の終身雇用や年功序列を前提としたものに留まっていること。雇用の不安定さは社会的、経済的不安はもちろん、企業の不正、重大事故、過労の温床となる。
     
     そこで、差別が起こってもそれを告発できるよう不透明な部分の多い不合理な差別の可視化することや、さまざまな社会的格差の再生産を是正することが求められる。

     ためにはなるが、今までで知っていることも多い。それに加え、やや古い内容なので、評価はこんなものか。

  • 2011.6.11

  • [ 内容 ]
    人間の労働が“物件費”に組み込まれ、商品以上に買い叩かれる。
    競争に競り勝って仕事を得ても、正社員とのポスト争いで泥沼。
    働く現場がダンピング攻勢にさらされている。
    有期雇用・派遣・パート・偽装請負…雇用の液状化現象が働き手を襲う生々しい現状報告。
    一人ひとりが人間として働き生きるためのオルタナティブを考える。

    [ 目次 ]
    第1章 いま何が起きているのか(「雇用の融解」がはじまった 労働ダンピング なぜ労働の商品化がすすむのか)
    第2章 ダンピングの構造(非正規雇用化 競争と格差 値崩れの連鎖 拡大していく貧富の格差)
    第3章 労働は商品ではない(労働のルール 規制緩和が非正規雇用を襲う 働き方が変わる 正規雇用の融解を促進させるもの)
    第4章 隠された差別を可視化する(格差問題へのアプローチ 性差別禁止からのアプローチ 非正規雇用の均等待遇保障 持続可能な雇用システム)
    第5章 現実の壁に向かって(ダンピング最前線に立つ公共セクター 安定した雇用を実現する 非正規雇用に正義を 正規雇用にディーセント・ワークを 契約形態を乗り越えて)

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    [ 参考となる書評 ]

  • ワーキングプアということが言われるように、フルタイム働いても生活保護給付よりも収入が少ない、ということが広がっている。派遣労働や請負労働、成果主義で崩壊する正規職員の雇用・・・によって労働力は商品化され、規制緩和やグローバル化のなかで必然的にダンピングされていく。これは選択の問題である。あるいは価値観の問題である。オランダや北欧は労働を商品化することをやめ、同一労働同一賃金の考え方を徹底し、短時間の正規労働者、ワークシェアリングを実現した。短い労働時間で、僕等日本人よりもずっと〈豊かな〉人生を手に入れ、そして生産性をも向上させた
     考えれば考えるほど無力感が広がる。日本はこのまま殺伐とした社会になっていくのだろうか。こうなってしまった原因のひとつにこの国の労働組合の問題が極めて大きいということが僕には感じられた。正規職員の既得権を守るだけで、パート職員や派遣職員と連帯せず、むしろ彼らとパイを「奪い合う」ことに汲々としている労働組合。労働運動が国民から見放されるわけである。経営者の言うように、いやむしろ積極的に「成果主義」というものを受け入れる労働組合に僕は絶望しか見ない。
     ただ、今となっては規制緩和、グローバル化のなかで、問題は個別企業ではどうすることも出来ず、きわめて政治的な、あるいは国民的コンセンサスが必要な状況になっているということが明確になる。

  • 'decent work'という言葉を初めて知りました。性別や契約形態にかかわらず平等な労働機会・処遇といったところでしょうか。「働かざるもの食うべからず」ではなく、「働くもの食えざる(状況に陥る)べからず」という基本的な人権感覚。正しい意味での実力主義と相反する部分もあるのかなー

  • 非正規雇用や派遣による雇用の流動化を「雇用の液状化」、「雇用の融解」として把え、従来の永続的な就業状態を取り戻すためにはどういう方策が必要かを論じる。

    著者は、「不安定な雇用」を全面悪として、従来の日本型終身雇用を取り戻そうとしているが、しかし、雇用の流動化は避けられない流れだろう。終身雇用が成立したのは、右肩上がりの成長が続いた 70年代、80年代の話。一回雇ったが最後、それがどんな人材であれ、30年間給与を払い続けなければならないというのは、経営者や株主にとって絶望的に勝ち目の無いギャンブルだ。

    著者は、男女雇用機会均等法について「本来是正されるべきだったのは男性差別(男は家庭を省みる必要がないので、長時間労働させても構わない)であり、男性の働き方を女性の働き方に合わせるべきだったのに、それを女性差別としてとらえて女性の労働時間制限を撤廃、男性の働き方に合わせようとしたのは失政」と喝破した。これと同じように、本来あるべき働き方は経営状況によって柔軟に人員を調整でき、個々人が自分にあった働き方を選択できる非正規雇用であり、新卒4月入社、終身社奴を前提とした正規雇用こそが撤廃されるべきではないだろうか。

    ちなみに、派遣労働者がこんなに酷いことになっているのは、派遣先から支払われる人件費が派遣元によって恒常的に搾取され、労働者に渡される賃金が非常に安く抑えられているからだ。グッドウィルのような悪徳企業は論外としても、派遣元は単なる就職斡旋業者として一時金を受け取るだけにして、派遣先は(個人事業主としての)派遣労働者と相対契約で雇用するようにすればいいのに。

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