グリム童話の世界―ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 152
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310419

作品紹介・あらすじ

魔女や小人、魔法の鏡、そして継母によるいじめ、動植物への変身…。「シンデレラ」「白雪姫」など19世紀ドイツのグリム兄弟が編んだメルヘンは、今も世界中で愛されている。だが、それらは本当は何を語っているのだろうか。キリスト教が広まる以前の神話・伝承にまで遡り、民衆の習俗や信仰、夢や恐怖に迫る、発見に満ちた案内。

感想・レビュー・書評

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  •  メルヘンとは何か。蒐集したメルヘンには太古のドイツの神話や信仰が潜んでいる。グリムは気づいた。ナポレオンに蹂躙されたドイツにはフランスに負けない文化があると。グリムは、古代ゲルマン信仰をその原形のまま取り出し保存した。グリムによって編纂された手稿と七版の童話集から、その脚色の過程を遡行していくと、メルヘンが真に語る声が聞こえてきた。

  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:新書//940.2//クリ
    資料番号:20084389
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  • 19世紀にグリム兄弟がメルヘンを蒐集した動機が、古ゲルマンの精神を今に伝えようとしたことにあることを知って興味を持った。ナポレオンのドイツ蹂躙を経験したことが直接的なきっかけらしいとのこと。ある意味民族運動の先駆け。当時に伝わるメルヘンを、中世キリスト教の影響前の状態に還元しようとする意志と熱意に感嘆する。
    たぶん日本で例えるなら、ほぼ同時期に本居宣長が行った事績に近いかと思う。宣長は、仏教が影響する前の日本の原風景を知ろうとして古事記等の研究を行ったという。
    当然今となってはグリム兄弟についても宣長についても、その目的に対する批判は簡単にできるだろう。しかし当時にあっては、メルヘンなり古事記なりの真理深層に至ることがそれぞれにとって貴重な体験と発見であり、また輝かしい研究の対象だったことが想像される。

  • グリム童話がなぜ脈々と伝えられてきたかという視点で有益だった。口承物語だった頃、いかに自然崇拝と結びついていたか、という解説が興味深い。だからこそ、魔女や魔法のイメージについてもよくわかった。そんなイメージは原始的というよりむしろキリスト教の影響であり、もともとの物語にはない後付け要素、とのこと。もとを辿ると日本民話との共通点も感じる。

  • グリム童話に代表されるメルヘンを通して、ヨーロッパ文化の古層に迫る。日本文化との対比、共通も興味深い。後半尻すぼみになった感はあるが、キリスト教以前の習俗に迫った意義はある。

    グリムの改作の意図は、ドイツナショナリズムの高揚というよりも、ドイツ文化の根源を解き明かそうとしたことにあったのかな。

    ・(冬から春の循環がテーマの)シンデレラ物語の中核にあるのは、動植物の持つ魔力に対する確固たる信仰である。この信仰は、農耕生活の始まりとともに生まれたに違いない。周知のように、世界の農耕生活は基本的に似通っている。ならばシンデレラ物語が世界中に分布しているのは、不思議なことではあるまい。
    ・メルヘンは集団記憶である。
    ・「冬追い、夏招き」という祭りは異教的な農耕儀礼。キリスト教の聖職者たちはこれを禁止できないと見て取ると、禁止する代わりにこれらの祭りをキリスト教の祝日に仕立て上げ、換骨奪胎しようとした。
    ・キリスト教はもともと悪魔学・デモノロジーという恐ろしい信仰と切っても切れない関係にある。
    ・日本のメルヘンは「人間が自ら人間に変身した動物と結婚する」。ヨーロッパのそれは「人間が動物に変身させられた人間と結婚する」。動物観の違い。

  • ところどころ、そんな根拠で言いきって大丈夫かな?ってところがありましたが、おもしろかったです。

    久々に、こういう文学部的な文章を読むと楽しいですね。
    またこういう文章、調べて書きたいと思いますね。

  • S943-イワ-R1041 000472076

  • グリム童話集の初版を読もうと思い立ち、そのテキストに手に取ってみたもの。
    今まで、この本で言う所の精神分析学的なメルヘンの解釈ばかりを目にしてきたが、日本の民話でもそうであるように、ヨーロッパでも民俗学的な意味がメルヘンに込められていると考えるのは当然の事かもしれない。
    「シンデレラ」に込められた農耕民族の民間信仰的な意味が特に興味深かった。
    また、「白雪姫」にグリム兄弟が無意識にキリスト教的な表現を入れてしまったというのも、なるほど、思った。
    私は、グリム童話の中では特に「ラプンツェル」がビジュアル的にとても美しくて好きだが、この物語もキリスト教の「失楽園」に通じるものであるというのも分かりやすかった。
    異類婚姻譚についても、私がどうもグリム童話などにおける動物に変身する(させられる)人間の話があまり好きではなく(「カエルの王様」は特に腑に落ちない)、この本の中にも紹介されている「鶴の恩返し」系の物語の方が好きだと感じるのも私が日本人だからなんだな、と納得できて良かった。動物物語に関わらず、何が何でもハッピーエンドなメルヘンよりも「古事記」のヤマトタケルなどの悲劇で終わる物語の方に魅力を感じるのもその辺りにあるのかもしれない。
    悲劇と言ってもペローの童話のようなエロティックでえぐいのは特には魅力を感じない…。どちらかと言えば、アンデルセンの創作童話派。

  • 代表的なグリム童話を題材に、類話をはじめ各地の風習、行事などを見渡しながらメルヘンの源流へと遡ってゆく考察。バジーレ版、ペロー版との比較も面白く、予備知識がなくても十分に楽しめました。中でも最終章では「蛙の王さま」に対して持っていた違和感の正体が、動物との親和性の視点から非常に分かりやすく説明されていて大変引き込まれました。キリスト教的価値観の影響力はすごい。
    ところでこの章では「鶴の恩返し」などを例に日本の昔話が動物に対して温かいとする傾向にあるのですが、残念ながら日本にも動物の婿を裏切って殺す嫁の話が存在するんですよね。「猿聟入り」とか。しかもこの場合の猿は死んで人間に変身するという救済措置もなく、悪事も働いていないのに嫁に騙されて落命するという…著者もこの話を知らないはずないと思うのですがどうなんでしょう。

  • ブクログに登録しとうとして気づきました。
    …私、この本持ってる。(笑)

    自分の中で興味関心が異常に高い分野の本だ、ということを肝に銘じて、じっくり読みたいと思います。。。

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