グリム童話の世界 ヨーロッパ文化の深層へ (岩波新書)

  • 岩波書店 (2006年10月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004310419

感想・レビュー・書評

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  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:新書//940.2//クリ
    資料番号:20084389
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  • 19世紀にグリム兄弟がメルヘンを蒐集した動機が、古ゲルマンの精神を今に伝えようとしたことにあることを知って興味を持った。ナポレオンのドイツ蹂躙を経験したことが直接的なきっかけらしいとのこと。ある意味民族運動の先駆け。当時に伝わるメルヘンを、中世キリスト教の影響前の状態に還元しようとする意志と熱意に感嘆する。
    たぶん日本で例えるなら、ほぼ同時期に本居宣長が行った事績に近いかと思う。宣長は、仏教が影響する前の日本の原風景を知ろうとして古事記等の研究を行ったという。
    当然今となってはグリム兄弟についても宣長についても、その目的に対する批判は簡単にできるだろう。しかし当時にあっては、メルヘンなり古事記なりの真理深層に至ることがそれぞれにとって貴重な体験と発見であり、また輝かしい研究の対象だったことが想像される。

  • グリム童話がなぜ脈々と伝えられてきたかという視点で有益だった。口承物語だった頃、いかに自然崇拝と結びついていたか、という解説が興味深い。だからこそ、魔女や魔法のイメージについてもよくわかった。そんなイメージは原始的というよりむしろキリスト教の影響であり、もともとの物語にはない後付け要素、とのこと。もとを辿ると日本民話との共通点も感じる。

  • グリム童話に代表されるメルヘンを通して、ヨーロッパ文化の古層に迫る。日本文化との対比、共通も興味深い。後半尻すぼみになった感はあるが、キリスト教以前の習俗に迫った意義はある。

    グリムの改作の意図は、ドイツナショナリズムの高揚というよりも、ドイツ文化の根源を解き明かそうとしたことにあったのかな。

    ・(冬から春の循環がテーマの)シンデレラ物語の中核にあるのは、動植物の持つ魔力に対する確固たる信仰である。この信仰は、農耕生活の始まりとともに生まれたに違いない。周知のように、世界の農耕生活は基本的に似通っている。ならばシンデレラ物語が世界中に分布しているのは、不思議なことではあるまい。
    ・メルヘンは集団記憶である。
    ・「冬追い、夏招き」という祭りは異教的な農耕儀礼。キリスト教の聖職者たちはこれを禁止できないと見て取ると、禁止する代わりにこれらの祭りをキリスト教の祝日に仕立て上げ、換骨奪胎しようとした。
    ・キリスト教はもともと悪魔学・デモノロジーという恐ろしい信仰と切っても切れない関係にある。
    ・日本のメルヘンは「人間が自ら人間に変身した動物と結婚する」。ヨーロッパのそれは「人間が動物に変身させられた人間と結婚する」。動物観の違い。

  • ところどころ、そんな根拠で言いきって大丈夫かな?ってところがありましたが、おもしろかったです。

    久々に、こういう文学部的な文章を読むと楽しいですね。
    またこういう文章、調べて書きたいと思いますね。

  • S943-イワ-R1041 000472076

  • グリム童話集の初版を読もうと思い立ち、そのテキストに手に取ってみたもの。
    今まで、この本で言う所の精神分析学的なメルヘンの解釈ばかりを目にしてきたが、日本の民話でもそうであるように、ヨーロッパでも民俗学的な意味がメルヘンに込められていると考えるのは当然の事かもしれない。
    「シンデレラ」に込められた農耕民族の民間信仰的な意味が特に興味深かった。
    また、「白雪姫」にグリム兄弟が無意識にキリスト教的な表現を入れてしまったというのも、なるほど、思った。
    私は、グリム童話の中では特に「ラプンツェル」がビジュアル的にとても美しくて好きだが、この物語もキリスト教の「失楽園」に通じるものであるというのも分かりやすかった。
    異類婚姻譚についても、私がどうもグリム童話などにおける動物に変身する(させられる)人間の話があまり好きではなく(「カエルの王様」は特に腑に落ちない)、この本の中にも紹介されている「鶴の恩返し」系の物語の方が好きだと感じるのも私が日本人だからなんだな、と納得できて良かった。動物物語に関わらず、何が何でもハッピーエンドなメルヘンよりも「古事記」のヤマトタケルなどの悲劇で終わる物語の方に魅力を感じるのもその辺りにあるのかもしれない。
    悲劇と言ってもペローの童話のようなエロティックでえぐいのは特には魅力を感じない…。どちらかと言えば、アンデルセンの創作童話派。

  • 代表的なグリム童話を題材に、類話をはじめ各地の風習、行事などを見渡しながらメルヘンの源流へと遡ってゆく考察。バジーレ版、ペロー版との比較も面白く、予備知識がなくても十分に楽しめました。中でも最終章では「蛙の王さま」に対して持っていた違和感の正体が、動物との親和性の視点から非常に分かりやすく説明されていて大変引き込まれました。キリスト教的価値観の影響力はすごい。
    ところでこの章では「鶴の恩返し」などを例に日本の昔話が動物に対して温かいとする傾向にあるのですが、残念ながら日本にも動物の婿を裏切って殺す嫁の話が存在するんですよね。「猿聟入り」とか。しかもこの場合の猿は死んで人間に変身するという救済措置もなく、悪事も働いていないのに嫁に騙されて落命するという…著者もこの話を知らないはずないと思うのですがどうなんでしょう。

  • 漠然とは知っていたつもりだったが、グリム童話がグリム兄弟の創作童話でなく、ヨーロッパの昔話集(日本の昔話と同じ作者不詳の口承伝説=メルヘンを収集、洗練化したもの)であることをはっきりと理解した。だから、「本当は恐い」というのもあるわけだ。また、日本の昔話とメルヘンに共通点があることもはじめて知った。

    ゲルマン民族信仰のキリスト教への換骨奪胎
    =アイヌ民族信仰の源義経伝説へのすり替え

    赤瀬川源平・上野東京都美術館・つながる線が上野駅のレールへ→インターネットへの連想???

  • 11/08/17
    新しいグリム童話。でもたまに?

  • [ 内容 ]
    魔女や小人、魔法の鏡、そして継母によるいじめ、動植物への変身…。
    「シンデレラ」「白雪姫」など19世紀ドイツのグリム兄弟が編んだメルヘンは、今も世界中で愛されている。
    だが、それらは本当は何を語っているのだろうか。
    キリスト教が広まる以前の神話・伝承にまで遡り、民衆の習俗や信仰、夢や恐怖に迫る、発見に満ちた案内。

    [ 目次 ]
    序章 メルヘンとは何か
    第1章 「シンデレラ」変身譚
    第2章  冬を追い払い、夏を招くシンデレラ
    第3章 「眠れる森の美女」よりも神話的な「いばら姫」
    第4章 「ホレおばさん」からサンタクロースへ
    第5章 「白雪姫」の魔法の鏡の謎
    第6章  楽園を追われたラプンツェル
    第7章 「蛙の王さま」と「鶴の恩返し」

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 図書館の本 中央

    内容(「BOOK」データベースより)
    魔女や小人、魔法の鏡、そして継母によるいじめ、動植物への変身…。「シンデレラ」「白雪姫」など19世紀ドイツのグリム兄弟が編んだメルヘンは、今も世界中で愛されている。だが、それらは本当は何を語っているのだろうか。キリスト教が広まる以前の神話・伝承にまで遡り、民衆の習俗や信仰、夢や恐怖に迫る、発見に満ちた案内。

  • 課題を終わらせるために読んだけど、けっこう面白かった。読んでよかったと思う。

  • グリム童話に対する考え方がかわった。
    もっと、グリム童話を読んでみたくなった。

  • グリム童話からヨーロッパに連綿と受け継がれてきた文化や考え方について論じられています。
    精神分析的考察がいかに適当であるかが分かり、興味深かったです。
    臨床心理学を専攻されている方は一度読むと視野が広がるのではないでしょうか

  • 昔からの話をこういう目線から見るのも楽しい。

  • 童話には心理学的要素が含まれていると思っていたが、編纂者のグリムによって本来の意味から変わっていた。ゲルマン神話による童話には農耕思想が深く関係しており、それは世界各国の童話にも共通してあるということに驚愕。

  • グリム童話を中心としたヨーロッパに伝わる“メルヘン”を、民俗学的に解説した本です。“メルヘン”の中には多分に非キリスト教的な要素が含まれていると言うことはその内容からすぐに推察できることですが、氏はその内容を、農耕儀礼などの民間信仰から脈々と受け継がれてきたものと推測しています。例えば『シンデレラ』の「幸福な子供時代→実母の死と継母によるいじめ→王子様との幸せな結婚」もしくは「美しい少女時代→埃と灰にまみれた醜い時代→魔法によって美しくなった時代」という流れは、農耕による夏→冬→春という流れと対応していると説きます。また『白雪姫』などに見られる一度死んで蘇るという再生の思想は農耕民に特徴的な思想といっています。よっと同じ農耕民である日本にも「ねずみ浄土」(おむすびころりん)など、一度死んで(おじいさんは地下のネズミの国として描かれた黄泉の国に行った)、そして復活するという思想によって作られた昔話が存在するとしています。ヨーロッパは古代ローマ時代の後期以降キリスト教が浸透していると考えがちですが、実は民間宗教もかなり後の時代まで、具体的には近世あたりまでかなりの部分でまだ人々の心をつかんでいたのだと、氏はグリム童話などの“メルヘン”から解き明かしています。内容も日本人になじみの深いものを中心に取り上げ、また平易な文章で書かれているため私も3時間程度で読むことができました。ヨーロッパの一般民衆の持っていた文化の真相の一端に手軽にふれることのできる良書だと思います。ただ、氏の専門が文学や思想であるためか、ところどころに歴史的な誤りないしはおおざっぱにとらえすぎたところ(纏足をもとより中国人の文化だとしている点など)が見られたのが残念でした。

  • グリム童話は各地口伝のものをなるべく忠実にまとめたメルヘンで、他の著者だと話が少し誇張されていたり曲げられたりしていて・・・<br>
    とまぁ、童話にもいろいろあるのだと言うことが分かって面白かった。<br>
    メルヘンには、その地特有の文化や信仰、時代背景というものが裏にある。アンチキリストの私としては、地方土着の宗教がまだメルヘンを通して生きていることが分かり、面白いなぁ!と思った♪

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著者プロフィール

高橋義人(たかはし・よしと)
1945年、栃木県生まれ。1968年、慶應義塾大学文学部卒業。慶應義塾大学助手、京都大学教養部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在は、京都大学名誉教授。平安女学院大学特任教授。文学博士。
主な著書
『形態と象徴─ゲーテと〈緑の自然科学〉』(岩波書店、1988年)/『ドイツ人のこころ』(岩波新書、1993年)/『魔女とヨーロッパ』(岩波書店、1995年)/ゲーテ『色彩論【完訳版】』(共訳、工作舎、1999年)/『グノーシス 異端と近代』(共編著、岩波書店、2001年)/『グリム童話の世界』(岩波新書、2006年)などがある。

「2011年 『教養のコンツェルト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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