ポスト戦後社会: シリーズ 日本近現代史 9 (岩波新書 新赤版 1050 シリーズ日本近現代史 9)

著者 :
  • 岩波書店
3.56
  • (14)
  • (29)
  • (43)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 446
感想 : 43
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310501

作品紹介・あらすじ

バブルとその後の長期不況、深まる政治不信、そして高まる社会不安。列島が酔いしれた高度成長の夢のあと、何が待ち受けていたのか。崩れゆく冷戦構造のなかで、この国は次第に周回遅れのランナーとなっていったのではないか。六〇年代半ばから現在まで、政治・経済・社会・家族…すべてが変容し崩壊していく過程をたどる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昨年度、東大を退官した吉見俊哉が2009年に出版した岩波新書です。なんで15年前の本を手にしたのか…はい、古本屋さんでめちゃ安かったからです。それが大当たり!シリーズ日本近現代史⑨と書かれていますが、この一冊、今の自分にとっては社会を見るためのコンパクトな俯瞰図になりました。年齢を重ねることのいいことは、あの時の出来事が歴史の中での意味が理解出来るようになることだと思っています。点が線になる感じ…本書によって視点をドローンのように上げて、さらひ線が面になる感覚を得ました。自分の個人史が社会史とか経済史とか産業史とかに重なる感じです。この本が書かれた後に、東日本大震災を始めとする大地震に見舞われ、福島原発のメルトダウンが起こり、特定機密情報保護法案が成立し、線状降雨帯による集中豪雨が多発し、社会がDXを騒ぎ始め、オリンピックパラリンピックが一年遅れ無観客で開催され、働き方改革関連法案が施行され、宗教二世が元首相を暗殺し、中国とアメリカの対立が激しくなり、ウクライナとロシアの戦争が起こり、AIがすべての仕事に絡んで来て、ガサ地区が爆発し、あと…まだまだあるけど…とにかくどこに行くんだ日本社会って感じの現在もこの新書の提示した地図の中で起こっているようにも思えます。「失われた10年」は「失われた20年」に、そして「失われた30年」になっています。たぶんポスト戦後社会はポスト・ポスト戦後社会に入っているのだと思いますが、それはどんな社会になっていくのだろう?…みたいなことを考える時に有用なポケット古地図でした。

  • 1970年代後半以降のポスト戦後社会は、それまでに構築されてきた日本近現代の「時間」や「主体」が、自壊していくプロセスだったと言える。

    高度成長期からの開発によって日本列島の自然は深刻なダメージを受け、産業の空洞化も進んだ。
    また郊外化や核家族化の中で、日本人は内的自我を空洞化させていった。
    新自由主義は、豊かさの幻想を打ち砕き、格差社会をまじまじと我々に見せつける。
    これらをさらに促進する効果を持ったのが、グローバリゼーションである。


    ==========


    日本の深刻な有り様から目を逸らすのではなく、それと向き合いながら悲観に陥ることなく希望や展望について思索していきたい。

  • 最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00283753

  • 日本における1970年代以降の社会を「ポスト戦後社会」と位置付け、冷戦体制の崩壊、グローバル化と新自由主義の浸透が社会の何を変えたのか論じる。

  • 「東日本大震災」という大きな出来事が起こる前の著作ではあるが、90年代までの日本現代史を概観するのにうってつけの一冊ではないだろうか。
    いわゆる編年体の書物ではなく、社会学的な視点から日本(人)の歩みを記している。10年前の著作であるため、最終章のJカルチャー輸出の記述はやや古くなっている。

  • 平成の30年の停滞は中曽根の新自由主義への転換が産み出したんだなぁ。
    この本が書かれた2008年よりさらに日本社会は悪化してるよなぁ。

  • 左翼の終わり◆豊かさの幻影のなかへ◆家族は溶解したか◆地域開発が遺したもの◆「失われた10年」のなかで◆アジアからのポスト戦後史

  • 社会

  • この九巻では、1971年の「あさま山荘」事件から1995年の「阪神淡路大震災」までの解説とこれからの日本と東アジア関係が書かれています。

全43件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉見俊哉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×