- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004310556
作品紹介・あらすじ
新しい成長のスタート台に立った日本経済は、好景気が言われる一方で格差拡大に揺れている。成長率・予算・日銀短観・株価・金利・賃金・失業率・国際収支など、主な経済指標に着目することで何が分かるのか、データはどう作成されているのかを平明に説く。旧版から二一年、データを全面的に刷新し、日本経済の全体像を提示する。
感想・レビュー・書評
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社会人として必要な知識を身につけましょう!
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政治に歪められる月例経済報告。ビジネスの最前線で集計される日銀短観。多くの経済指標を総合的に勘案して景気を判断する景気動向指数。国内の景気動向に最も敏感に反応する鉱工業生産指数。一つ一つの指標が克明に詳説されている。景気動向のみならず、財政、金融、国民生活、物価、雇用、国際貿易、日本の今を洩れなく書ききっており、日本経済の全体像を俯瞰した心地。
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本書は日本経済の様々なデータをわかりやすく解説した経済書として高く評価できる本であると思った。
「GDP」や「経済成長」等についての詳細な解説。「日銀」や「政府」の経済的役割や「財政金融政策」、「国民生活」等々。
本書の解説は、ほとんどすべての日本経済を見る視点を網羅していると思えるが、その内容はわかりやすい。
本書のねらいの「最新の経済データの読み方を解説しながら、失われた15年以後の日本経済の全体像を描くことを試み」た点は高く評価できると感じたが、同時に2006年時点の日本経済の問題点の指摘にとどまり、その解決策にはあまり踏み込んでいないようにも思え、ちょっと物足りない思いも持った。
それにしても、本書で扱っているような豊富な経済データという物差しがあっても、なぜ政府や日銀などは有効な経済政策が打てないのだろうかという疑問ももった。
本書は、難しい経済データを目に見えるように理解できる良書である。 -
いかにデータを読み解くか。
その手法を学ぶ一冊。 -
ただこの指標は何なのかとか解説するだけでなく、その数値の裏にある経済学、時代による変わり方、それから2005年当時その数値が日本や世界経済に与える影響にどんなものがあるだろうかとゆう著者の意見も混じってます。サブプライムの問題とかがある前だから経済への見通しも結構明るくって2005年ってそんなだったんだなと思うし、今書き直されたらどうなるんだろうなってことも思います。
GDP、月例経済報告、短観、法人の種々の統計、国家予算や国債、金利にマネーサプライ、個人消費や租税負担率や物価、株価やら国際収支や為替などなど幅広く扱っており、読んでおくと勉強になります。 -
基本的な経済データの読み方から、景気の見方、生活において経済がどう関わってくるかが書いてある。
熟読が必要。 -
トピックを網羅し、コンパクトで読みやすい。中身は必ずしも平易ではないが、じっくり読めば理解できるかもという気にさせてくれる。マクロ経済の教科書としても豊富な実証データで説明してあり秀逸。
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<講義で作ったレビュー>
1 日本の経済は、いま
1.GDP
(1)GDPとは何か。
GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)とは日本国内の居住者が1年間の経済活動で生み出した付加価値の合計である。
1冊の本を例として、定価2000円のうち印刷会社や製本会社などへ支払う1500円分を差し引いた500円分が付加価値であるといえる。この付加価値の合計がGDPである。GDPを高めるにはより高度な技術、知識を用いた製品を作ることが必要である。
(2)?日本のGDP(2005年)
約503兆円(名目)/約540兆円(実質)、約4兆5500億ドル
世界第2位(1位 米国 12兆4000億ドル)、世界の11.0%
?一人当たり名目GDP
3万5000ドル
世界第14位
経済成長の停滞により21世紀以降順位が低下した。順位を上げている国として海外からハイテク企業 の誘致に成功したアイルランド(48289ドル)や、金融業・製造業に成功したアイスランド(55517ドル)が 挙げられる。
(3)GNIとは何か。
GNI(Gross National Income:国民総所得)は国内外を問わず日本人が作り出した所得であり、GDPに海外からの所得の純受取を加えたものである。
最近の特徴として、グローバリゼーションの進展によりGNI(GNP)とGDPの格差が大きくなっており、2005年のGNIは515億円とGDPを10億円上回っている。
今後も従来以上にヒト、モノ、カネが国際間を自由に移動し、かつ人口減少により日本企業の海外直接投資や証券投資の増加が予想されることから、海外からの配当・利子の受取が増加することは確実である。そうなると今後はGDPよりもGNIで計算することが必要となる。
2 経済成長
今後の日本経済が低成長にならざるをえない3つの理由。
(1)若年労働力の不足
人口減少・少子高齢化による労働力人口の減少
(2)貯蓄率の低下
家計貯蓄率は70年代には最高20%以上だったが2004年には2.7%まで低下した。社会が高齢化がすすむと更に貯金の切り崩しがすすむことが予想される。
(3)技術革新の不足
70年〜80年代にみられた技術革新は今後はみられないと予想される。
これらの理由から、5〜10年後の経済成長率は1〜2%程度になると予想される。
3 県民所得
東京(426万円)と沖縄(204万円)では2倍以上の地域差がみられる。地域的に大都市圏では経済的に豊かで遠くは慣れるほど貧しくなる。これは産業構造の違いを反映し、第1次、第2次産業よりも第3次産業(特に金融、情報など)に傾斜している地域ほど所得が高くなる。
しかし時代によって好調な産業は変化するため、どの産業が有利かは一概に言えない。高度成長期には鉄鋼、石油化学など素材型産業を誘致した都市が高所得を得たが、石油ショック以後は省エネルギー型産業である精密機器、エレクトロニクス、自動車などの加工型産業が好調となった。例えば北海道、岩手、長崎などは高度成長期には鉄鋼、造船、石油で好調となったが、石油ショック以後は不況となった。しかし今後、中国の高成長により日本の鉄鋼等の需要が伸びれば変化する可能性もある。
<好調な県>
東京、神奈川、大阪・・・大企業の本社、金融業、情報産業が立地
愛知、滋賀、三重、栃木・・・自動車産業、事務用機器、エレクトロニクス、中部国際空港(愛知県)
<不調な県>
北海道、東北、四国、九州・・・建設業中心。公共事業の減少により低下
4 産業構造
産業構造の高度化:経済発展の歩調と合わせて、第1次、第2次、第3次産業の順にウエイトが高くなる(ペティ・クラークの法則)
日本では
1950年代・・・農林漁業、軽工業、卸・小売り
1960〜70年代・・・鉄鋼、造船、石油化学、紙・パルプ
1980年代〜・・・電子、精密、情報機器など技術集約的な高付加価値産業
産業の構造変化の要因
(1)中国や東南アジアの経済発展
最大防疫相手国として中国が対当。軽工業だけでなく重化学工業でも中国に対抗しうる高度な技術力が必要に。
(2)国民の所得増加
衣食住という生活必需品から選択的な消費・サービス(海外旅行、高度教育、医療、高級家電)に需要が変化。
(3)新しい製造業の発展
IT産業の出現といった新しいサービス業の拡大が起こった。
5.日本経済の強さ・弱さ
円の強弱はは日本の経済力を反映した。
1949年4月・・・1ドル=360円。日本の経済に対して円が高すぎるため経済が持たないと評価されていた。
10〜20年後・・・経済発展により円の切り上げ圧力が高まる。
1971年12月(スミソニアン会議)・・・1ドル=308円
1973年2月・・・変動相場制へ。
石油ショック、プラザ合意を乗り越え次第に切り上がり。
1995年4月・・・79円台
2006年11月・・・115円
(2009年5月・・・95円)
円はドルに対して趨勢的に上昇したが、最近はやや円安気味。一方でユーロに対しては下落。日本経済の成長性には翳りが見え始め、実質実行レートは大きく減価している。
景気の見方
1.月例経済報告
(1)政府と日銀の対立
政府と日銀の間には景気の見方についてかなりの見解の相違がある。
日銀・・・楽観的:金融政策の担当者として金融政策に負担がかかることを避けようとするため。
政府・・・慎重:赤字削減を最優先に考える立場上、経済の建て直しについては財政ではなく金融政策によることが望ましいと考えるため。
<対立の例>
2001年3月 :ゼロ金利政策の解除
日銀は政府の反対を押し切ってゼロ金利政策を解除。結果デフレに陥り、再びゼロ金利政策に逆戻り。
2006年2〜3月:量的金融緩和の解除を巡り、激しい対立
政府はデフレ脱却がまだ先であるとの見解を理由に緩和に反対したが、日銀 福井俊彦総裁は介助を強行。
(2)政府内部の対立
内閣府…エコノミスト集団として専門的な立場から景気分析するが、同時に行財政改革についての熱心。
財務省…財政の担当者として財政赤字の圧縮を考え、支出削減や増税に積極的である一方で、天下り先の確保の観点から、管轄する政府関係機関の廃止・縮小には反対。
経済産業省…産業界(中小企業)の代弁者として財政赤字には寛容。多数の関係機関の維持に熱心。
関係各省の利害の調整から、内閣府の景気判断は当たり障りのない表現に終始することが多い。
2.日銀短観の2つの特徴
(1)企業の業況判断
(「良い」と回答した企業の割合)−(「悪い」と回答した企業の割合)の計数から、その水準や変化方向を時系列で比較することで景気の現況や将来を見る。
企業規模、業種別にかなり細かに企業の景況感が判断できるようになっている特徴。
(2)企業の設備投資、売上、収益などについて計画、実績、見通し、修正の変化のプロセスを追うことができる。
前期計画、実績、当期見通しが発表されるから、企業の現状・計画・修正の動きを跡づけることができるほか、経済環境の変化に合わせて企業マインドがいかに変化するか、見通しをいかに修正するかなどが判断できる。
3.景気動向指数の3つの特徴
(1)景気の現状は一致系列(11指標)の過半数が3カ月前よりも改善していれば、景気は良いと判断する。
(2)今後の景気は、先行系列(12指標)のうち50%以上が3か月にわたって改善を示すときは、景気は回復局面にあるとし、下回れば不況色が強まっていると判断する。
(3)遅行系列はあまり重要視されず、あくまでも事後観察である。
景気動向指数は、景気が改善しているか悪化しているかの方向を示す「景気の風見鶏」であって、どのくらい変化しているのかはわからない。これに代わって景気拡大のスピードを判断する指標としては「景気合成指数」が有効である。また景気動向指数はあくまでも過去の経験、観察を踏まえて作成されており「理論なき実証」との批判を受ける。
4.鉱工業生産
・在庫投資の景気調整機能
短期的な景気悪化は在庫統制によって発生する。ある主要な産業で在庫調整が長引き、商品が倉庫に山積みになるとこの分野の企業は生産を縮小せざるを得ない。在庫が適正水準にならない限り生産が停滞し、景気が悪化する。在庫調整が設備過剰や雇用調整を引き起こせば、景気悪化は長期化する。逆に景気がよくて在庫が定期性水準を下回るようになれば、企業は設備投資や雇用増に動き出す。
<例>2004年…電機・電子産業では生産が過大となる一方、売れ行きが鈍化したため在庫が増加し、兆世に時間がかかったため景気調整が長引いた。
近年、ベルトコンベア方式から、製造工程で在庫を適切に調整可能なセル方式への転換が進んでいる。
5.法人企業統計
経済の成長にとってもっとも大きな役割と果たすのは企業の設備投資であり、企業の設備投資が大きく増えれば経済成長率も高くなる。
企業の在庫、設備投資の動きは、財務省が発表している法人企業統計で把握できる。法人企業統計は全産業、製造業、非製造業、業種別など詳細な統計が四半期ごとに発表される。
企業活動の成果は営業収益に現れる。まっ先にチェックすべきものは営業利益であるが、さらに経常利益でもうけや損失を見ることが大切になる。最近では連結決算によりグループ全体で評価することも重要となった。
2005年度の法人企業統計によると、金融・保険業を除いた全産業の経常利益は、前年度に比べて15.6%増と大幅に増え、過去最高の51兆7000億円となった。日本企業がバブル期の後遺症からほぼ脱したことがわかった。
6.住宅投資
・新設住宅が増加に転じている3つの理由
(1)団塊ジュニア世代が住宅取得年代となっていること。
(2)団塊世代が仕事からの引退に備えて住み替えに動き出していること。
(3)超金融緩和が終盤を迎えるとの予想から、金利上昇前の駆け込み的住宅建設の動きが強まっているため。
新設住宅着工戸数は景気の先行指標として利用可能であり、景気上昇のスピードや持続性などを判断する上で重要な指標となる。より正確に住宅投資の動きを把握するには住宅着工戸数よりも住宅着工面積のほうが適している。
7.公共投資
・公共投資の景気への効果減少の2つの理由
(1)乗数低下の議論
内閣府の計量モデルによると1970年代の乗数は2倍強であったが、90年代には1倍強となり、景気刺激効果が減少している。
(2)地方の財源不足
中央政府が景気刺激のために公共事業を増やすことを決めても、地方の公共事業は補助事業が主であるため、地方が財源不足であれば公共事業を増やすことが困難となる。 -
非常に勉強になる本だと思う。
特に、景気の読み方。
各種景気分析の代表的な指標が紹介されている。
これはきちんと抑えておけば、ある程度、
未来の予測は可能になるのではないだろうか。
他、本著では、世代間対立の話を取り上げ、
将来的には消費税増税は免れられないだろうと結んでいる。
若年層と高齢者の利害対立は、為政者を利するだけだが、
この国の方向はそう向かっている様に思う。
消費者物価指数についても、
性能の上がったパソコンが同じ値段であるこにより、
物価が代わらないことは、おかしいのではないかと筆者は疑問を呈している。
とはいえ、それを物価に盛り込むことも、
その高性能なパソコンを消費者が求めていなければ、意味の無い指標だろという。
家計調査は面倒なので、暇な公務員と主婦しかしていない。
そんな、データの取り方によって結果が変わる数値が信用できるのかどうか。
そういう問いかけもしている。
一度熟読をお勧めしたい。 -
専門は建築と情報なので、経済は全くの素人であるし、経済の講義を取った事が
ないので、これはどこかで勉強しなきゃならないと考え、取りあえず独学してるのだが
手っ取り早く、経済を読み取りたいと考え、本書を借りて読んでみた。
内容は、政府から発表されている多くの経済指標データ(GDP、日銀短観、株価、
国際収支等)の読み方、分析の仕方を項目別に述べている内容になっている。
まぁ、高校生程度の知識があれば読める内容になってると思うが、久しく
経済から離れていた者にとっては、ちょっと理解しにくく感じるかもしれない。
しかし、価格と内容を考えるとかなりコストパフォーマンスは高いと思われる。
全部は分からなくてもいいから、さっと一通り読んでみれば、なんとなく概要が
掴めて、次の学習時には理解度は上がるだろう。
個人的には、第二章「景気の見方」
1.月例経済報告
2.日銀短観
3.景気動向指数
4.鉱工業生産
5.法人企業統計
あたりがなんとな〜く理解してたけど、あやふやな感じだったので
まぁ、理解が深まった感じである。しかし、著者が言うように、経済データの読み方
及び分析の仕方が、注意を払わないとすぐ間違ってしまうので、深い洞察力が
必要なのは言うまでもない。
今後は、定期的に経済指標データを観測していこうと思う。 -
おすすめ 経済の状態というのは好景気・不況、貿易黒字・赤字など様々に分析されるが、その大きな枠組みを目次で示し、それぞれの経済指標を簡潔な形で解説。一国経済の全体像と個々の指標の関連及びひとつひとつの指標の役割がバランスよく理解できる。「中庸」の見本を示せと言われればこの本ですな。教科書は体裁を整えるため、些末な(普段ほとんど使わないような)ことを多々載せるものですが、新書の面目躍如たるところを遺憾なく発揮した本です。