教育力 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310587

感想・レビュー・書評

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  •  本書は「教育論」の名著だと想う。

     テーマは、「教育にたずさわる者に求められる力・資質とはどのようなものか」。そして、「教育に臨む心身の構え」「具体的な教育方法」についてまとめられている。

     基本的には学校の教育者向けだろうが、人間のおよそあらゆる領域に及ぶ教育を対象にしている。


     久しぶりに齊藤孝氏の著書を読んだが、教育学者として「教育」について真っ向から論じており、大変興味深い内容だった。

     印象深い部分は、多々あるが、以下、教育の基本について書かれた部分で心に残った箇所をあげる。

    ●教育の基本原理は「あこがれる関係づくり」。教育の基本は「学び合い刺激し合う友情の関係だ」

    ●教育の根底にあるのは、あこがれの伝染である。教える者自身が、あこがれを強く持つ必要がある。「なんて素晴らしいんだ」という熱い気持ちが、相手にも伝わる。数える者がすでにあこがれの気持ちを失っている場合には、人はついてこない。

    ●教え上手ということ以前に学び上手ということである。 これは自分自身が学ぶことによって喜びを得たという経験があること、すなわち、「学ぶということは、ものすごく楽しいことなんだ」というはっきりとした自覚があるということだ。

    なるほど。教育とはそういうものか、と再認識した。

     「知識の価値への確信を」という段落も面白い。

     そこには「知識というものが人を強くし、人を幸せにする」とある。そういうことを否定する社会ではダメだという。
     
     たしかに、現代の社会において「知識」の価値は高いと想っている。何となく「知識」というものを振りかざすのは、頭でっかちのようで、良い印象がないようにも感じられるが、「知識」とは、その人の財産である。その財産を多く持つものは、人生を豊かにできる可能性も高いように想う。

  • 緒方塾には、志のある若者が集まっている。その意味では今の学校教育と直接的に比較はできない。しかし、学ぶ気構えという点では、この緒方塾の塾生たちの心意気は、すべての学ぶ者たちのお手本になる。
    「これを一言すれば―西洋日進の書を読むということは日本国中の人に出来ないことだ、自分たちの仲間に限って斯様(コン)なことができる、貧乏をしても難渋をしても、粗衣粗食、一見見る影もない貧書生でありながら、智力思想の活発高尚なることは王侯貴族も眼下に見下すという気位で、ただ六(むつ)かしければ面白い、苦中有楽、苦則楽という境遇であったと思われる。たとえばこの薬は何に利くか知らないけれども、自分たちより外にこんな苦い薬を能く呑む者はなかろうという見識で、病の在るところも問わずに、ただ苦ければもっと呑んでやるというくらいの血気であったに違いはない」
    すぐに見返りがある勉強ではない。蘭学書生といえば世間で悪く言われるばかりで、すでにやけになっている、と福沢は言っている。しかも原書はやたらと難しくて会読するのに苦しむ。しかし苦しみながらも、実は心の底で楽しんでいる。学んでいることへの誇りがあるからこそ、どんなに辛くとも充実感がある。自分たちはレベルが高いことをやっているのだ、と生徒たちが誇りを持つようにもっていくのが、教育者の仕事である。

    天才といわれる人たちの共通点は、人から言われなくても自発的に勉強し練習し続けるということだ。しかも、その量と質が充実していて飽きることがない。自分で学習法を工夫できる。だが、こうした才能のある人たちにとってさえ、出会いや環境の力は大きなものだ。

    不退転、もうあとに引けない。そこに追い込む。だから教師にとって追い込むというのは、非常に重要な技術なのだ。
    というのは、自分自身で自分を追い込める人は少ないからだ。「いまがそのときなのだ」とわかることは難しい。そのうえ、辛いことや厳しいこと、自分にとって都合の悪いことだと、どうしても逃げようとする。そこを逃がさないようにする。

  • 備忘録
    「あこがれを伝染させる力」教育の根底
    教育の基本は学ぶ意欲をかきたてること。そのためには教える者自信が、あこがれを強くもつ必要がある。

    「あこがれ」が学ぶ意欲に火をつける


    勉強することにより自制心が生まれる
    「積極的に受動的な構え」学ぶか前の基本
    「専門的力量・人間的魅力」教師に求められる
    「真似る力」「段取り力」「コメント力」 生きる力 p47
    学ぶことの大切さ面白さを伝える総合力が大切な力 p48
    「テキスト探しの力」先生の能力として重要p82
    「学び続ける人生は楽しい」このメッセージを伝えることが教育者の使命
    文学は論理の下にある感情を理解する力を養う 理解力 p89
    人間に対する理解力
    「感動と習熟」教師が生徒に与えるべきものp96
    「見通し力教師にとって大切 p98」
    「対話力」教師にとって一番必要 p98
    「二つの時間を生きる」①相手と一体化で見る②一つ先を見る
    p104
    ひと通り教える p109
    社会は人を弾く p109 信頼・信用
    信用を得るために何が必要なのか。これをしっかり教えるのが教育者の使命
    「見ぬいて見ぬいて我慢する。見守る力」教師にとって重要 p117

    「提供する力」教育者の中に類型として二つの能力が必要とされる↓
    ①個別台頭的に課題を見抜き、練習メニューを臨機応変に工夫できる力
    ②スタンダードな教育力 p118

    情報収集能力 学ぶ意欲 即座にやる行動力 p124
    学ぶことは才能ではなく職業の義務
    「学ぶことは祝祭である」ということを伝えるのが教師の仕事

    学校の先生は文化遺産の継承者
    いろいろな可能性を排除しないように、たくさんのいいものを出会わせることが必要 p144
    自分で伸びていける人→自分で自分を教育できる人
    愛国心論議 国家ではなく日本の文化人類の文化を愛することが優先されるべきである p148「審美力」を育てる
    「言葉の力を信じる力」教育力の1つ
    一期一会感覚を持たせる p164
    緊張と弛緩シカン の空気を作る力
    「待つ力」「ほめる力」 p178
    場がだめなときは、自分に責任があると思うのがリーダー(教師)資質 p186
    ゲーム化の基本は限定・ポイント制・ごほうび p193
    編纂能力 p196
    「将来の自由」207



    『菊と刀』『名人伝』p27  『ムカツクからだ』p169 『ピンポン』p182

  • 「教師は教えることの専門家であると同時に,学ぶことの専門家」という著者の言葉に共感する。
    また著者はこうも言う。「教育にとって無関係なことは,世の中にほとんど」ありえず,「そういうものを全部吸収して次の日に生かせる仕事というのは,幸せな仕事」であると。

    その通りだと思う。教師は毎日が勝負なのだ。それだけに,子どもを育てるということの責任は重い。教師にとって必要な知見や資質を斬新な視点から考えさせてくれる書であった。

  • 学校で学ぶ勉強が社会で役に立たない。とよく言われるが本当にそうなのか。知識とは、知識を使うプロセス、そして知識を獲得するプロセスの二つに分けられ、社会でも十分に役に立つ。それが歴史や理科のよくわからない単語であってもだ。学校の勉強は、本当に役にたつのだ。それを一つ一つ詳しく見ている本でもある。
    メインは教師が持つ力、持つべき力について論じられ、教育はどのように行われ、どのような意味を持つのかについてわかりやすく書かれた本である。

  • 今一度、教育について考える良い機会になった。また、実際に教育の現場で使えるテクニックや、役立つ文献情報もたくさんあって良い。

  • この本は、本当にそうそう…って、言葉にできないことが言葉になっている…という感覚で、その上さらにまとめてある…すごい。
    大切な一冊です。

  • 教育に関する本だが、仕事には教育がつきもの。何かを教えることに関係している人には、読んでほしい。教える際の心構えと教え方のヒントが満載。

  • 教育者に必要な事柄について。

    立ち位置としては、当然ながら、学校教育からの視点が中心。
    (古い時代における『私塾』へのあこがれは感じるが。)

    筆者の考える理想の教育・教育者像が描かれる。
    確かに、すばらしいだろう、できれば。
    これを読んで教師を目指す若者がいるとしたら、きっかけとしては良いかもしれないがそのままで教師になろうとするのは危険だろう。世の中そんなに甘くはないというか、上手くいくことばかりではない。ギリギリのところで努力をしている人からしたら、辞める後押しにもなり得る。

    あこがれを伝播させるために先生は学び続ける姿勢をもち、太陽のようであるべし。

  • 教育の理想についてかかげられた本。
    教育者は研究者でなければならないという。
    ただ、理想が高すぎる様な気がした。

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著者プロフィール

齋藤 孝(さいとう たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。学者、作家、文化人の役割で多くのメディアに登場している。
2001年『身体感覚を取り戻す』で第14回新潮学芸賞を受賞。2001年発行の『声に出して読みたい日本語』は250万部を超えるヒットとなり、第56回毎日出版文化賞特別賞を受賞。
その他、『語彙力こそが教養である』など多くの著書があり、発行部数は1000万部を超える。『こども孫子の兵法』など監修作のヒットも多い。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

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