沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟 (岩波新書)

著者 : 西山太吉
  • 岩波書店 (2007年5月22日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310730

作品紹介

日米の思惑が交錯した沖縄返還には様々な「密約」が存在したことが、近年相次いで公開された米公文書や交渉当事者の証言で明らかになってきた。核の持込み、日本側の巨額負担…。かつてその一角を暴きながら「機密漏洩」に問われた著者が、豊富な資料を基に「返還」の全貌を描き、今日に続く歪んだ日米関係を考察する。

沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • ジャーナリストの本らしく主観(メッセージ性)が前に出ている。問題関心に乗れれば熱く読めるのだろうが率直に言ってこの件についてさほど問題意識を持つことができなかったので冷めた。積まれている新書を消化するキャンペーン②。

  • 2007年刊行。◆山崎豊子の小説でも馴染み深い「外務省機密漏洩事件」の被告人(機密漏洩の幇助)が、沖縄返還交渉の内幕、日米密約など日本の外交交渉の問題点を明らかにする。◆国民の外交・安保への無関心、報道のありようなど著者の問題意識は、体験に裏打ちされたものである。その中でも、外交交渉における米国の計画性に対し、省庁間の未調整のみならず、情報交換すらしない問題を俎上に載せる。さらに、国益ではなく自分の利益・保身のため外交交渉の足枷を作り上げた政治家(佐藤栄作、福田赳夫、田中角栄)の有りようには暗然。
    なお、本書のいうように、思いやり予算の使われ方が追いかけられず、結局判然としない点は、さらに気を配るべきか?

  • いはゆる西山事件ではなく、密約交渉の記述

  • 沖縄返還とベトナム戦争の絡み。
    戦争に負けるということは、こういうことなんだなと思わせられる密約の内容。

  • 沖縄密約についての「真実」が書かれている。メディアのステレオタイプ化,民衆の政治的無関心によって,政府の隠蔽体質が成立し,密約のような「情報犯罪」が成立しうる。
    生まれる前のことで難しい部分が多かったが,僕ら一般市民や,メディア,政府が学ぶべき事が多く書かれてある一冊でした。

  • 60番乗り。気になる。(2012/2/8)

  • 沖縄問題にあたって密約問題は重要である。

    一部の政治家の思惑に、沖縄がつかわれてるのはきわめて不快であった。

    またアメリカのしたたかさもこの本から学べる。

    世界はニコニコ表面上は笑いながらも、その心の中では国益のためのいろいろな戦略が飛び交っているのだ。

    外交力というのはこのような戦略をとり勝つことだと思う。

    日本にはそのような外交力がなかったためこのような結果を招いてしまったといえる。

  • [ 内容 ]
    日米の思惑が交錯した沖縄返還には様々な「密約」が存在したことが、近年相次いで公開された米公文書や交渉当事者の証言で明らかになってきた。
    核の持込み、日本側の巨額負担…。
    かつてその一角を暴きながら「機密漏洩」に問われた著者が、豊富な資料を基に「返還」の全貌を描き、今日に続く歪んだ日米関係を考察する。

    [ 目次 ]
    第1章 「沖縄返還」問題の登場―その背景と日米の思惑(池田から佐藤へ ベトナム戦争と沖縄返還 ジョンソンからニクソンへ)
    第2章 核持込みと基地の自由使用―交渉とその帰結(1)(明かされた核密約 基地の自由使用と事前協議の空洞化)
    第3章 財政負担の虚構―交渉とその帰結(2)(米資産買取りの内幕 闇の主役と秘密合意 つかみ金、二億ドルの使途 追加された二つの密約)
    第4章 変質する日米同盟(安保共同宣言と新ガイドライン 日米軍事再編)
    第5章 情報操作から情報犯罪へ(密約を生む土壌 秘密体質の形成 情報犯罪は続いている)

    [ POP ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 西山太吉『沖縄密約ー「情報犯罪」と日米同盟』を読む。
    読んでいくうちに1972年の西山事件と2010年の一色事件の
    共通性に気づく。いずれも国家公務員法違反に問われた。

    僕はふと疑問に思う。
    僕たちは主権者として選挙のたびに投票を通じて
    政党、政治家に権限を託す。
    しかし、選挙と選挙の間に託した権力がどう運営されているか、
    国民が監視する仕組みは充分なのだろうか。

    沖縄返還にあたって日本がアメリカと密約と結び、
    税金の使い方を隠蔽し、責任者たちが国会でも偽証する。
    対中関係で領土が侵犯されている現実を示した映像資料を
    突然「国家機密」として一部国会議員以外には公開しない。
    国の未来を憂い、それらの情報を自己責任で公開した人間に
    社会的制裁を与える。
    一方でそもそもの国家運営について
    どこまでの情報を国民に公開するかについては議論を深めず
    仕組みも整備しない。

    その役割を期待されるメディアの機能も決して充分とは言えない。
    記者クラブでの限定された情報を
    限られたメディアが使用していることは再三再四指摘されている。
    民主党に政権交代しても期待したほどの変化は見られない。

    西山事件では情報を提供した外務事務官と記者の男女関係、
    一色事件ではインターネット時代の情報漏洩問題と犯人捜し。
    いずれも、短期間に情報を売るためによりセンセーショナルに、
    より扇情的に加工し、誘導する。
    人々が過剰な情報を消費し疲れ飽きるうちに、
    事件の本質はぼやけ次の事件に焦点がずらされ、
    すべてが忘却の彼方に追いやられる。

    国家を逆に揺さぶるメディアとしてWikiLeaksが現れた。
    WikiLeaksが出現する背景には
    国家、メディア、個人のパワーバランスの再修正を
    テクノロジーの進化によって果たそうとする意志があるように
    僕には思える。個人でなく集合的無意識の意志である。
    道徳倫理の善悪ではなく、パワーバランスである。

    日米関係について別の視点からも見てみよう。
    リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ Jr、春原剛
    『日米同盟 vs 中国・北朝鮮 アーミテージ・ナイ緊急提言』(2010)
    を読む。
    そもそも日米同盟なしに、日本の安全は保障されるのか。
    中国、北朝鮮、ロシアの動きを見てみろ、
    とアーミテージ、ナイは言う。
    二人はアメリカ政界では、日本シンパと呼んでもいいだろう。
    中国より日本との関係をアメリカが重視する必要があると
    主張している。
    その二人が、安全は政治的そして軍事的責任を
    果たすことなしには得られない、現実を見よ、
    と日本人に警告する。

    「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」。
    イザヤ・ベンダサン(山本七平)の至言が頭に浮かぶ。
    国家、メディア、個人。安全と平和の代償。
    簡単には結論が引き出せない問題であることを真摯に受け止め、
    自分の頭で考え抜くことを続けてみたい。
    問題から目をそむけることで
    平和も安全も手に入らないことだけは確実なのだ。

    (文中敬称略)

  • 先日、ブログで書いた「運命の人」を読み終えてすぐに購入した本。小説の最後で主人公・弓成は言う。「沖縄を知れば知るほど、この国の歪みが見えてくる」。これは一体何を意味するのか。返還以降、対米関係において日本が置かれている状況とは何なのか。弓成のモデルとなった元毎日新聞記者・西山太吉さんが書いた本書は、それらの疑問に多くの示唆を与えてくれた。

    著者は、沖縄密約は返還全体を包み隠す虚構だといい、国家による「情報犯罪」と断じる。そして、返還交渉を検証することなく、これまで政府がとってきた道は(宣伝文句に使う)沖縄の負担軽減でも、(他国からの侵略に対する)抑止力の維持でもない。真相は「新たなる負担の追加」と「世界戦略への参画」という。

    そもそもなぜ密約が必要だったのか。その理由を、日米交渉を支配する1つの法則「米側がまず交渉の主導権を握り、その上で自らの利益貫徹のため、各種の戦術を巧みに駆使しながら日本側の譲歩をかちとっていく構図」に見出す。そして「対米コミットと国内説明の絶対的な矛盾の中で、吉野(※吉野文六・元外務省アメリカ局長)が指摘したように最大限の『きれいごと』を求めようとすれば、落ち着く先は、やはりそのような犯罪になる」とする。国民には「“核抜き本土並み”の返還」を謳いあげ、アメリカには巨額支出と基地の自由使用を容認。相反する約束をしておきながら、“きれいごと”を求めた必然の結果として政府は、密約に行き着いたということだ。

    交渉もずさんだった。政権の総決算を任期までに行いたい佐藤栄作首相。次期総裁を狙うために最大限の貢献を果たそうとする当時の大蔵相・福田赳夫の思惑などが交錯。日本側の交渉は首相の任期が切れる“72年”返還という目標ありきで進み、外相・大蔵相・密使の3者によって各自バラバラで行われたという。

    一方のアメリカは、「72年返還」というカードを有効に使って系統だった計画的な方法をとり、財政面と軍事面双方で大きな果実を得た。そして果実をその後、有効に発展させてもいく。アメリカは始めから返還交渉を出発点と位置づけ、今後に大きな実をつける果実の「種まき作業」とみていたのだろう。

    例えば財政面では、返還時の米資産買取り分として積算根拠(いわゆる“つかみ金”)の乏しい3億2000万㌦を日本に認めさせた。またそれ以外に密約枠として、日米地位協定上、原則米側負担だった基地の移転・改良費用を日本に負担させた。「6500万㌦(当時の234億円)の“基地施設改善費”(米密約文書)こそが、返還時点での一時金ではなく後年度負担として受け継がれ、それどころか、年々肥大していった現在の“思いやり予算”の原型となったもの」。同予算は右肩上がりに急上昇を続け、94年度には2756億円にもなっている。

    軍事面でもアメリカが当初描いた戦略が実現する。①沖縄返還を起点として、②周辺事態法(新ガイドライン、99年5月成立)、③日米軍事再編(06年5月1日採択)。著者は、それぞれの過程でアメリカの要求に従う政府の態度を説明し、「日米安保は、基地使用の弾力化と基地関係支出の日本側への転嫁(①)、そして基地使用の対象領域拡大と自衛隊の後方支援(②)、さらに日米双方の軍事力一体化・共同化(③)という形で変質を遂げてきた」と分析する。

    “買戻し”反対の世論に対抗した佐藤首相の「沖縄はタダで返ってくる。こんないいことはない」発言。沖縄返還は、国民に知らされていない形の実態があり、いまも多大な負担が積み重なっていた。1度ついた嘘は必ずほころびをみせ、また新たな嘘をつく。だからこそ早期に公開して検証を行い、“失政の芽”を断つ -。“国家の嘘”を掴んだ西山さんはそんな義務感にかられ、国家と闘い、敗れてもなお歯を食いしばって立ち上がったのだと思う。本書は全体的に論理的な説明がなされているが、文書の端々から西山さんの怒りが伝わってくる。

    くしくもいま、鳩山首相は苦境に立たされている。普天間移設を「5月までに決着させる」「腹案がある」と答弁したが徳之島案は米側に拒否され、5月決着は実現不可能な情勢。当然その状況はアメリカにみられている。また付け込まれる余地は十分ある。注視していきたい。

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